中国で今夏、深刻な電力不足が起きる恐れが出てきた。火力発電用石炭の価格が上昇する一方で、中国政府は電力料金を抑制。収益が悪化した発電会社が稼働率を引き下げている。電力会社の業界団体によればピーク時の不足は3000万キロワットに達する見込みで、標準的な原子力発電所30基分の発電能力に相当する。日系など外資企業にも影響が広がりそうだ。
中国では火力発電が総発電能力の7割強を占める。標準的な発電用石炭の価格は足元で前年同期比2割高。中東・北アフリカ情勢緊迫で発電燃料の原油・ガス価格が上昇。東京電力福島第1原子力発電所の事故で「世界的に火力発電需要が増えるとの読み」(関係者)も加わり、発電用石炭の価格を押し上げているという。
一方で物価抑制を重視する政府は、4月中旬に送電会社への卸価格を数%引き上げただけ。発電会社の7割が赤字に陥り、石炭購入を減らし発電所稼働を抑えている。
政府は地方政府に夏場の電力不足を警告、電力割り当て計画の策定を指示した。工場が集積する浙江省や江蘇省では既に一部の地方政府が供給制限に着手。地域や業種ごとに時間帯を決め、輪番停電を実施している。外資への大規模な供給制限は未実施だが、一部の日系製造業は自家発電装置の燃料備蓄など対応策検討に入った。多くの企業が自家発電で工場の稼働継続を計画しており、軽油不足も起きている。(北京=多部田俊輔)
豪クイーンズランド州での、過去半世紀最悪の豪雨被害による石炭鉱山稼働率低下(15%稼働)による電力や鉄鋼向け高級炭の値上がりがあったのですが、福島第一の事故により、火力発電用燃料の高騰が輪をかけているのだそうですね。
余談となりますが、火力発電の燃料は主として石油、石炭、天然ガス(液化天然ガス=LNG)の3つですが、我が国での原子力や水力なども含めた全体の発電電力量に占める比率(2007年度実績)は、LNG27%、石炭25%、石油は13%なのだそうで、石油の比率はオイルショック以前に66%だったものが大幅に低減されていたのでした。(原子力は約30%)
さらに、CO2や硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじんなどが発生する石炭ですが、日本の石炭ガス化複合発電(IGCC)技術により、石油並のCO2排出量に低減させ、発電効率も向上させ、低質炭も使用でき、資源の長期安定供給が可能なことから、石炭は脱原発電源としても注目されているのですね。
CO2を削減、石炭火力発電の新技術とは?[エネルギー事情]All About
中国の現状は、旧式の火力発電で、CO2等の排出量の多さが注目され、黄砂に付着して日本へも害が及んでいることは、諸兄がご承知の通りです。
ただ、国営企業の多い中国で、電力が発電と送電で別会社となっていて、発電会社が赤字を理由に発電量を減らすという話には驚きです。
自由主義経済の日本では、独占企業となっている電力会社の発電と送電の分離と自由化がようやく話題となっていますし、電力料金は、原料価格変動に応じ自動的にスライドされることとなっていますから、こと電力に関しては、中国の方が自由化されていることになります。
その自由化が、逆に供給不安定化を招いて、中国の今夏の電力供給不足を生じているとは、皮肉な話でもありますし、日本の自由化論でも参考にせねばならないところでしょう。
もうひとつ余談で恐縮ですが、大口電力料金の内の「随時調整契約」「計画調整契約」について以前に触れていました。
夏の電力不足対策 - 遊爺雑記帳
今朝の「ウェークアップ! ぷらす」に出演した、河野太郎議員が指摘していましたが、この類の契約は現存しているが、先の計画停電では実施されることなく、正規電気料金を払っている一般家庭などに停電を強要していたとのことです。
河野太郎公式サイト | これが需給調整契約だ
河野太郎公式サイト | この夏、本当に電力は足りないのか
経産大臣や、節電大臣の怠慢は糾弾され、しかるべき処置がとられねばならないと考えます。河野氏もテレビやホームページで言うだけでなく、国民や企業に及ぼした影響の責任について、国会でもっと強く追及すべきでしょう。
冒頭の写真は、豪クイーンズランドの洪水被害をうけた炭鉱です
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火力発電や原子力発電の資源は、仰るとおりに有限ですね。また、両者を合わせて90%超を占めているのも現実ですね。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data1016.html
天然ガスや石油で、50~60年。石炭で100年あまり。日本が保有する資源として注目されるメタンハイドレードも、日本の電力換算で100年。地熱発電は、日本の資源量が有限ではありませんが、2,000 ~ 2,300万KWと言われていて、原発の約半分=日本の15%。原子力を止めた分を補うのにも足りません。
> 民族間そして国家間の貧富の差は増加するだろう。これに端を発した世界的規模の紛争が生じなければ良いが。
火力、原子力の資源が尽きる時(100年後?)までには、新しい資源や技術が発見、開発されていることを願うばかりですね。
新たにダムを建設できる河も世界規模で見て多くないだろう。森林伐採等により、むしろ内陸部の砂漠化が大きな問題となっている。風力発電も、設置可能な風力を確保できる地域は限られている。地熱発電、波動発電にいたっては限られた電力しか供給できないだろう。
中東では、大規模な太陽熱発電所の建設計画が有るそうだ。長距離電力伝送によりヨーロッパまで供給する計画だ。これとて、日照時間の長い、低緯度砂漠地帯であるから可能な計画である。西欧および日本では太陽光発電が脚光を浴びているが、産業やインフラ維持等に必要となる増加量は到底確保できない。
今回の震災で20~30%の電力削減の不便さは十分に身にしみて理解させられた。小子高齢化により介護の一部をロボットに頼る計画もある。人力の省力化、便利さはエネルギー消費の増加により賄われる。
今後、各国の原子力発電の見直しにより電力コスト、エネルギーコストは増加するだろう。生活の豊かさや便利さは、人類の努力代償としての普遍要求である。また、人類の進歩の原動力でもある。しかし、エネルギーコストの上昇により、民族間そして国家間の貧富の差は増加するだろう。これに端を発した世界的規模の紛争が生じなければ良いが。