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全国に拡大された「緊急事態宣言」は、5月6日までの期限が延長されることとなりました。
メディアでは感染者数の増減が日々大きく取り上げられ、一喜一憂の世論を醸し出しています。検査数がいくらで、そのうちの感染者が幾人という発表ではなく、ただ感染者数だけを発表しその数値にこだわる、非科学的な現象。それに異を唱える少数の声はかき消されています。
いつにメディアの「報道しない自由」による偏向です。故意なのか、単なる無知なのか。厚労省の隠蔽なのか?
更に、感染拡大に関し、もっとも重要な決め手として「8割の人との接触削減」が挙げて求められています。
日本では数少ない疫学理論の専門家である厚生労働省の新型コロナクラスター対策班の西浦博氏(北海道大学教授)が、専門家会議の頭越しに発表したものですが、今や日本国の基本施策となっています。
TVのワイドショーで、一部の解説者の方が、根拠不明なので、多くの科学者に根拠を公開してほしいと述べておられました。しかし、その声も黙殺され、他の科学者の声があがらないのを不思議に思っていましたが、私の探し方が足らなかった様で、たまたま二つの記事に遭遇しましたので備忘録としてアップさせていただきました。
今や全国民に求められている「8割削減」。その内容について、多くの専門家による検証。討議が広くなされることを希望します。
西浦氏が発表したのは「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%(41万8000人)が死亡する」というシミュレーション。
どういうモデルで計算したのかはわからないと池田氏。
まずわからないのは、今、このカーブのどこにいるのかということだと。
これは「新型コロナウイルスに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字」だという。その根拠になったのは、武漢のデータだという。これは日本が初期の武漢のように何もしないで感染爆発したらどうなるかという計算なのだと。
西浦氏も「実際にこうなるとは思っていない」と認め、「個人的な立場で発表した試算だ」という。
「8割の接触減をしないと医療が崩壊する」という警告をしたいのが真意だろうと池田氏。
西浦氏は3月19日の専門家会議の資料で「感染爆発(オーバーシュート)が起こる」というシミュレーションを発表したが、その後も爆発しなかった。
このとき想定していた基本再生産数(1人が何人に感染させるかという係数)は2.5だったが、専門家会議の実測データでは実効再生産数は1以下。このときから理論と現実が大きくずれていたのだそうです。
余談ですが、日本の実効再生産数は早くから1以下と言うことに関しての議論が最近聞かれますが、ここでは触れません。
彼の「感染爆発する」という予言は外れっぱなしだった。これはシミュレーションではなくフィクションなのだと池田氏。
しかし、4月7日に安倍首相の発令した緊急事態宣言は、西浦氏の「東京都で感染爆発が起こる」というシミュレーションにもとづいていた。全国展開も緊急事態宣言に消極的な官房長官を押し切る形で、それが全国に拡大されました。
(クルーズ船での全員PCR検査実施の重い腰を上げようとした厚労省にストップをかけたの菅氏。一連の消極姿勢の根拠は謎です。)
西浦氏は意図的に政府を踏み超え、マスコミに訴えて自分の主張を押し通す道を選んだ。これは1930年代に日本を軍国主義に導いた「青年将校」と同じであると池田氏。
マスコミはこぞって彼の勇気をたたえ、緊急事態宣言は「遅きに失した」という。
「金か命か」などというトレードオフは存在しない。金がなくなると、命も救えないのだと池田氏。
問題は、その両立です。8割削減で両立が出来るのか。多くの方面の専門家の声が、待たれます。
筑波大学大学院、数理物質系の中村潤教授の説が紹介されていました。
「専門家委員会」が天下りで出してくる「ブラックボックス」型の結論が本当に正しいものであるかを「追試」し、専門の議論と突き合わせて検討、結果を広く世に問う内容。
まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発している内容だと、東京大学大学院情報学環准教授の伊東乾氏。
政府の説明と、中村潤児教授のシミュレーション、どちらに説得力があり、皆さん自身、どのように理解し、納得されますかと。
素人の遊爺に判断は出来ませんが、少なくともオープンな姿勢は、科学者として正しいことは理解できます。
「中村モデル」の元となる計算は、厚生労働省「専門家チーム」などの発表に対して、まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発している。
厚生省発の「予測」「8割」などは、科学的な発表の基本要件を満たしていませんと伊東氏。
中村<基本モデル>は極めて初歩的に組み立てられており、高校、高等工業専門学校や大学教養程度の数学の準備があれば、誰でも理解できるシンプルで透明な構造なのだそうです。
西浦氏は、安倍首相が、7~8割の削減と度々発言されることに対して、7割などと言ったことはない。8割で無ければだめと主張しておられます。試算された結果を主張されるのは、学者として当然です。なら、その試算の根拠を広く公開し、多くの科学者を説得すべきです。
中村氏は公開し、広く意見を求めておられます。
治療薬もクチンもない未知の新型コロナウイルス。これ以上の爆発を防げるか否かは、真の意味で日本人が一人ひとり「知るべし」の自覚に立って自衛できるかに懸かっていますと伊東氏。
専門家委員会偏重から、医師会や大阪府知事等の提案が聞き入れられるようになってきた政府。
国民に対し開かれた柔軟な姿勢で、かつ果敢な英断も発揮し、日本をワンチームにまとめていくリーダーシップの発揮をお願いします。
# 冒頭の画像は、西浦北海道大学教授
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茶ノ木の花
↓よろしかったら、お願いします。
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メディアでは感染者数の増減が日々大きく取り上げられ、一喜一憂の世論を醸し出しています。検査数がいくらで、そのうちの感染者が幾人という発表ではなく、ただ感染者数だけを発表しその数値にこだわる、非科学的な現象。それに異を唱える少数の声はかき消されています。
いつにメディアの「報道しない自由」による偏向です。故意なのか、単なる無知なのか。厚労省の隠蔽なのか?
更に、感染拡大に関し、もっとも重要な決め手として「8割の人との接触削減」が挙げて求められています。
日本では数少ない疫学理論の専門家である厚生労働省の新型コロナクラスター対策班の西浦博氏(北海道大学教授)が、専門家会議の頭越しに発表したものですが、今や日本国の基本施策となっています。
TVのワイドショーで、一部の解説者の方が、根拠不明なので、多くの科学者に根拠を公開してほしいと述べておられました。しかし、その声も黙殺され、他の科学者の声があがらないのを不思議に思っていましたが、私の探し方が足らなかった様で、たまたま二つの記事に遭遇しましたので備忘録としてアップさせていただきました。
今や全国民に求められている「8割削減」。その内容について、多くの専門家による検証。討議が広くなされることを希望します。
「新型コロナで42万人死ぬ」という西浦モデルは本当か 架空シミュレーションで国民を脅す「青年将校」 | JBpress(Japan Business Press) 2020.4.17(金) 池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長
4月15日、厚生労働省の新型コロナクラスター対策班の西浦博氏(北海道大学教授)は、記者会見で「人と人との接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナで死亡する」というショッキングな予測を発表した。マスコミは大騒ぎになったが、菅義偉官房長官は翌日の記者会見で「政府の公式見解ではない」と否定した。これはどうなっているのだろうか。
85万人が重症になって42万人が死亡する
西浦氏は、日本では数少ない疫学理論の専門家である。彼が発表したのは「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%(41万8000人)が死亡する」というシミュレーションである。
どういうモデルで計算したのかはわからないが、4月15日にクラスター対策班のツイッターで次のような図が出た。
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まずわからないのは、今、このカーブのどこにいるのかということだ。横軸の0が現在だとすると新規感染者が毎日500人ということになるが、これは4月9日ごろのデータと一致する。したがってここから放置した場合に感染爆発が起こると想定しているものと思われる。
これだと日本の新規感染者数はこれから指数関数的に増え、4月25日には毎日1100人に激増するはずだが、これは統計データと合わない。新規感染者数は4月12日をピークに減り始め、15日には455人である(厚労省の集計)。
ここで西浦氏の説明をよく読むと、これは「新型コロナウイルスに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字」だという。その根拠になったのは、武漢のデータだという。これは日本が初期の武漢のように何もしないで感染爆発したらどうなるかという計算なのだ。
シミュレーションではなくフィクション
これに対して官房長官は「(試算の)前提とは異なり、すでに緊急事態宣言を発出して、国民に不要不急の外出自粛など協力をお願いしている」とコメントした。西浦氏も「実際にこうなるとは思っていない」と認め、「個人的な立場で発表した試算だ」という。
彼はこの試算で何をいいたかったのだろうか。おそらく「8割の接触減をしないと医療が崩壊する」という警告だろう。
日本経済新聞のインタビューでは、「流行の始まりから終わりまでに重篤な状態になる人が15~64歳で累計約20万人、65歳以上で同約65万人にのぼる。政府は人工呼吸器を1万5千台以上確保する方針だが、人口10万人当たり10台程度にとどまる」という。
これは奇妙な話だ。85万人の重症患者に1万5000台しか人工呼吸器がなかったら、80万人以上が死亡するだろう。しかし今の全国の重症患者数は168人。人工呼吸器には十分余裕がある。
西浦氏は3月19日の専門家会議の資料で「感染爆発(オーバーシュート)が起こる」というシミュレーションを発表したが、その後も爆発しなかった。
このとき想定していた基本再生産数(1人が何人に感染させるかという係数)は2.5だったが、専門家会議の実測データでは実効再生産数は1以下。このときから理論と現実が大きくずれていた。西浦氏はずっと再生産数は2.5だと主張し続けてきたが、現実には感染者数は4月上旬でピークアウトした。
要するに彼のモデルはデータを無視したお話であり、彼の「感染爆発する」という予言は外れっぱなしだった。これはシミュレーションではなくフィクションなのだ。
政府を踏み超えて暴走する「クーデター」
西浦氏は政府の諮問機関である専門家会議のメンバーではなく、厚労省クラスター対策班の現場メンバーに過ぎない。なぜ彼は専門家会議の頭越しにこんな非常識な(自分でも信じていない)数字を発表したのだろうか。バズフィードのインタビューで彼はこう語っている。
科学的なエビデンスに基づいて、現時点でどれぐらいが亡くなると予測され、どれぐらいが重症になって、人工呼吸器やICUのベッドなどがどれほど足りなくなるかを示しました。
あの公表は、猛反対を食らいました。厚労省の幹部たちからも「いいのか?」「この図はどうしても削除できないのか」など、かなり事前に止められたのです。僕は一歩前に進むことをあの時に決断していました。
その「一歩前に進む決断」が今回の記者会見というわけだ。彼の動機は感染症の専門家として感染爆発を放置することはできないという純粋な心情だろうが、その結果、日本中が大騒ぎになり、緊急事態宣言が全国に拡大されることになった。
これは偶然とは思えない。4月7日に安倍首相の発令した緊急事態宣言も、西浦氏の「東京都で感染爆発が起こる」というシミュレーションにもとづいていた。今回も緊急事態宣言に消極的な官房長官を押し切る形で、それが全国に拡大される。
全国で外出を自粛させれば、毎日450人増える感染者が400人に減るぐらいの効果はあるかもしれないが、これでGDPが3割吹っ飛んだら、日本経済は壊滅する。日本経済は、感染症の研究者が考えているよりはるかに複雑なのだ。
それを総合的に判断するのが政府の役割だが、西浦氏は意図的に政府を踏み超え、マスコミに訴えて自分の主張を押し通す道を選んだ。これは1930年代に日本を軍国主義に導いた「青年将校」と同じである。
あのときも彼らは農村の貧困を救うためには日本軍の大陸進出が必要だと考え、それをためらう政府首脳をクーデターで暗殺した。民衆は純粋な青年将校に拍手を送り、1931年の五・一五事件では助命嘆願に100万を超える署名が集まった。
西浦氏の「クーデター」が戦争を誘発するとは思えないが、政府の意思決定を混乱させ、日本経済を破壊することは間違いない。マスコミはこぞって彼の勇気をたたえ、緊急事態宣言は「遅きに失した」という。これもいつか来た道である。
その結果、倒産や失業で新型コロナの死者よりはるかに多くの命が失われるだろう。1998年に金融危機で日本経済が崩壊したとき、自殺者は2万3000人から3万1000人に激増し、その後も長く3万人台だった。「金か命か」などというトレードオフは存在しない。金がなくなると、命も救えないのだ。
4月15日、厚生労働省の新型コロナクラスター対策班の西浦博氏(北海道大学教授)は、記者会見で「人と人との接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナで死亡する」というショッキングな予測を発表した。マスコミは大騒ぎになったが、菅義偉官房長官は翌日の記者会見で「政府の公式見解ではない」と否定した。これはどうなっているのだろうか。
85万人が重症になって42万人が死亡する
西浦氏は、日本では数少ない疫学理論の専門家である。彼が発表したのは「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%(41万8000人)が死亡する」というシミュレーションである。
どういうモデルで計算したのかはわからないが、4月15日にクラスター対策班のツイッターで次のような図が出た。
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まずわからないのは、今、このカーブのどこにいるのかということだ。横軸の0が現在だとすると新規感染者が毎日500人ということになるが、これは4月9日ごろのデータと一致する。したがってここから放置した場合に感染爆発が起こると想定しているものと思われる。
これだと日本の新規感染者数はこれから指数関数的に増え、4月25日には毎日1100人に激増するはずだが、これは統計データと合わない。新規感染者数は4月12日をピークに減り始め、15日には455人である(厚労省の集計)。
ここで西浦氏の説明をよく読むと、これは「新型コロナウイルスに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字」だという。その根拠になったのは、武漢のデータだという。これは日本が初期の武漢のように何もしないで感染爆発したらどうなるかという計算なのだ。
シミュレーションではなくフィクション
これに対して官房長官は「(試算の)前提とは異なり、すでに緊急事態宣言を発出して、国民に不要不急の外出自粛など協力をお願いしている」とコメントした。西浦氏も「実際にこうなるとは思っていない」と認め、「個人的な立場で発表した試算だ」という。
彼はこの試算で何をいいたかったのだろうか。おそらく「8割の接触減をしないと医療が崩壊する」という警告だろう。
日本経済新聞のインタビューでは、「流行の始まりから終わりまでに重篤な状態になる人が15~64歳で累計約20万人、65歳以上で同約65万人にのぼる。政府は人工呼吸器を1万5千台以上確保する方針だが、人口10万人当たり10台程度にとどまる」という。
これは奇妙な話だ。85万人の重症患者に1万5000台しか人工呼吸器がなかったら、80万人以上が死亡するだろう。しかし今の全国の重症患者数は168人。人工呼吸器には十分余裕がある。
西浦氏は3月19日の専門家会議の資料で「感染爆発(オーバーシュート)が起こる」というシミュレーションを発表したが、その後も爆発しなかった。
このとき想定していた基本再生産数(1人が何人に感染させるかという係数)は2.5だったが、専門家会議の実測データでは実効再生産数は1以下。このときから理論と現実が大きくずれていた。西浦氏はずっと再生産数は2.5だと主張し続けてきたが、現実には感染者数は4月上旬でピークアウトした。
要するに彼のモデルはデータを無視したお話であり、彼の「感染爆発する」という予言は外れっぱなしだった。これはシミュレーションではなくフィクションなのだ。
政府を踏み超えて暴走する「クーデター」
西浦氏は政府の諮問機関である専門家会議のメンバーではなく、厚労省クラスター対策班の現場メンバーに過ぎない。なぜ彼は専門家会議の頭越しにこんな非常識な(自分でも信じていない)数字を発表したのだろうか。バズフィードのインタビューで彼はこう語っている。
科学的なエビデンスに基づいて、現時点でどれぐらいが亡くなると予測され、どれぐらいが重症になって、人工呼吸器やICUのベッドなどがどれほど足りなくなるかを示しました。
あの公表は、猛反対を食らいました。厚労省の幹部たちからも「いいのか?」「この図はどうしても削除できないのか」など、かなり事前に止められたのです。僕は一歩前に進むことをあの時に決断していました。
その「一歩前に進む決断」が今回の記者会見というわけだ。彼の動機は感染症の専門家として感染爆発を放置することはできないという純粋な心情だろうが、その結果、日本中が大騒ぎになり、緊急事態宣言が全国に拡大されることになった。
これは偶然とは思えない。4月7日に安倍首相の発令した緊急事態宣言も、西浦氏の「東京都で感染爆発が起こる」というシミュレーションにもとづいていた。今回も緊急事態宣言に消極的な官房長官を押し切る形で、それが全国に拡大される。
全国で外出を自粛させれば、毎日450人増える感染者が400人に減るぐらいの効果はあるかもしれないが、これでGDPが3割吹っ飛んだら、日本経済は壊滅する。日本経済は、感染症の研究者が考えているよりはるかに複雑なのだ。
それを総合的に判断するのが政府の役割だが、西浦氏は意図的に政府を踏み超え、マスコミに訴えて自分の主張を押し通す道を選んだ。これは1930年代に日本を軍国主義に導いた「青年将校」と同じである。
あのときも彼らは農村の貧困を救うためには日本軍の大陸進出が必要だと考え、それをためらう政府首脳をクーデターで暗殺した。民衆は純粋な青年将校に拍手を送り、1931年の五・一五事件では助命嘆願に100万を超える署名が集まった。
西浦氏の「クーデター」が戦争を誘発するとは思えないが、政府の意思決定を混乱させ、日本経済を破壊することは間違いない。マスコミはこぞって彼の勇気をたたえ、緊急事態宣言は「遅きに失した」という。これもいつか来た道である。
その結果、倒産や失業で新型コロナの死者よりはるかに多くの命が失われるだろう。1998年に金融危機で日本経済が崩壊したとき、自殺者は2万3000人から3万1000人に激増し、その後も長く3万人台だった。「金か命か」などというトレードオフは存在しない。金がなくなると、命も救えないのだ。
西浦氏が発表したのは「感染拡大の防止策を実施しなかった場合、重症患者が累計85万3000人になり、その49%(41万8000人)が死亡する」というシミュレーション。
どういうモデルで計算したのかはわからないと池田氏。
まずわからないのは、今、このカーブのどこにいるのかということだと。
これは「新型コロナウイルスに対して何も対策をしない丸腰だった場合の数字」だという。その根拠になったのは、武漢のデータだという。これは日本が初期の武漢のように何もしないで感染爆発したらどうなるかという計算なのだと。
西浦氏も「実際にこうなるとは思っていない」と認め、「個人的な立場で発表した試算だ」という。
「8割の接触減をしないと医療が崩壊する」という警告をしたいのが真意だろうと池田氏。
西浦氏は3月19日の専門家会議の資料で「感染爆発(オーバーシュート)が起こる」というシミュレーションを発表したが、その後も爆発しなかった。
このとき想定していた基本再生産数(1人が何人に感染させるかという係数)は2.5だったが、専門家会議の実測データでは実効再生産数は1以下。このときから理論と現実が大きくずれていたのだそうです。
余談ですが、日本の実効再生産数は早くから1以下と言うことに関しての議論が最近聞かれますが、ここでは触れません。
彼の「感染爆発する」という予言は外れっぱなしだった。これはシミュレーションではなくフィクションなのだと池田氏。
しかし、4月7日に安倍首相の発令した緊急事態宣言は、西浦氏の「東京都で感染爆発が起こる」というシミュレーションにもとづいていた。全国展開も緊急事態宣言に消極的な官房長官を押し切る形で、それが全国に拡大されました。
(クルーズ船での全員PCR検査実施の重い腰を上げようとした厚労省にストップをかけたの菅氏。一連の消極姿勢の根拠は謎です。)
西浦氏は意図的に政府を踏み超え、マスコミに訴えて自分の主張を押し通す道を選んだ。これは1930年代に日本を軍国主義に導いた「青年将校」と同じであると池田氏。
マスコミはこぞって彼の勇気をたたえ、緊急事態宣言は「遅きに失した」という。
「金か命か」などというトレードオフは存在しない。金がなくなると、命も救えないのだと池田氏。
問題は、その両立です。8割削減で両立が出来るのか。多くの方面の専門家の声が、待たれます。
筑波大学大学院、数理物質系の中村潤教授の説が紹介されていました。
「専門家委員会」が天下りで出してくる「ブラックボックス」型の結論が本当に正しいものであるかを「追試」し、専門の議論と突き合わせて検討、結果を広く世に問う内容。
まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発している内容だと、東京大学大学院情報学環准教授の伊東乾氏。
根拠不明、政府の「8割減」に物申す 科学的見地から国民の自発的行動を促す「中村モデル」を見よ | JBpress(Japan Business Press) 2020.4.18(土) 伊東 乾
政府は4月16日夜、東京など7つの都府県に出されていた「緊急事態宣言」を日本全国に拡大することを決定、発表しました。
5月の連休に人々が出歩き、新型コロナウイルス肺炎のパンデミック爆発を予防するため「最低でも7割、できれば8割」人と人との「接触削減」を実現したいから、とのことです。
<中略>
もし、現在より半分、5割の人にしか会わないことにしても、新型コロナウイルスの感染は急激に増え続けます。
それを6割まで増やすと、プラスマイナスゼロになります。ということは、今のままの状態が続くので、とんでもない事態が続きます。
ところが6割を少し過ぎるところから、急激に感染の度合いが減少して行き、7割になるとかなりの感染拡大抑止が期待できる。
さらに8割まで行けば、著しい抑止効果が期待でき、これを9割まで徹底しても、そんなに効果に変わりはない・・・。
「中村モデル」は、闇雲に「8割にどうしてもこだわりたい」とか「最低でも7割」とか、無根拠なご託宣を並べません。
5割削減なら、今と大差なく患者が増えますよ、それが6割、つまり現在の40%まで対人接触を減らすと、やっとトントンになるんです。
ところが6割を過ぎたら顕著にコロナの威力を減らすことができるんです。これを何とか頑張って7割にしていきましょう。
もし8割まで行けば、9割以上の削減と、ほとんど変わりないところまで抑制できると期待できます。ぜひ、皆さん協力してください・・・。
こう説明し呼びかけている。どうですか?
政府の説明と、中村潤児教授のシミュレーション、どちらに説得力があり、皆さん自身、どのように理解し、納得されますか?
透明なメカニズムの科学的防疫リテラシー
中村潤児先生は、筑波大学大学院、数理物質系の教授で、感染症の「専門家」ではありません。
元来のご専門は化学、お医者さんでもなければ公衆衛生のスペシャリストでもありませんが、研究室のホームページ(http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~nakamura_lab/)に挙げられた上記のグラフの解説は、大学で理工系に進んだ人であれば8割がたの人が平易に理解できる、極めてシンプルなモデルで、誰もが納得するものです。
「この連載でご紹介させていただきたいと思いますが・・・」と中村潤児先生にメールをお送りしたところ、一般の方向けの解説を中村先生ご自身が送ってくださいました。
<中略>
中村モデルは、数理シミュレーションに関連するあらゆる科学者が見て、大半が合理的と納得がいく仮定に限局した、今回感染の「基本モデル」と言ってよいと思います。
<中略>
接触6割減、接触7割減、接触8割減などの市民の行動が変わったときにk(感染者が平均して1日に何人に感染させて市中に感染者が増えるか)がどのように変化していくかをいろいろなケースや地域について解析していきます。
それは現在の技術で容易なことです。どのような政治的判断をするか、どのように市民が行動するかは、scientificなデータを見ながら考えるべきと思います。
この緊急事態における行政の対策にScienceが感じられません。
<中略>
サイエンスの後付け、補強作業
「中村モデル」の大本は、極めて薄い溶液(希薄溶液)の中での化学反応の速度を、速度係数と呼ばれる量に「接触削減」と同様の効果を持たせて計算したシミュレーションから出発されました。
さらに、計算の過程では、数理物質科学の専門家としてモデルを組み、東京大学理学部数学科の稲葉寿さんが書かれた解説「微分方程式と感染症数理疫学」(https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~inaba/inaba_science_2008.pdf)や、現在話題の人となっている西浦博氏と稲葉さんの共著「感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題」(https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/54-2-461.pdf)などを参考に検討してまとめられたもので、専門家の批判的検討を乞うものとして、広く公開されています。
あえて言うなら「専門家委員会」が天下りで出してくる「ブラックボックス」型の結論が本当に正しいものであるかを「追試」し、専門の議論と突き合わせて検討、結果を広く世に問うものとなっています。
こうした姿勢が、狭く「専門家」だけに集中するのでなく、広く科学者全般、さらには社会一般に開かれた姿勢として有効、重要であることは、3.11福島第一原子力発電所事故の時点で、日本社会はいやというほど痛感したはずです。
中村モデルのリリース姿勢は、それを踏まえた、オーソドックスな科学成果の社会への問いかけになっています。
国民を信頼しない天下りで疫病は防げない
つまり「中村モデル」の元となる計算は、厚生労働省「専門家チーム」などの発表に対して、まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発しているわけです。
「原子力村」という言葉と並べて「村」と呼ぶつもりはありませんが、現在の日本政府の対策は、あまりにも「専門家委員会」の名で括られた、一部の見解に限局されています。
それを受けて発せられるはずの官邸からの指示も純然たる予防公衆衛生措置から、マスクの配布、経済支援まで、率直に申して原則を欠き、ダッチロール状態であるのが、誰の目にも明らかです。
科学的な根拠を明示し、政策の妥当性を予測しながら進めないと、少なくとも新型ウイルスの蔓延に伴う感染者増、犠牲者増を食い止めることなど、できるはずがありません。
厚生省発の「予測」「8割」などは、科学的な発表の基本要件を満たしていません。
「西浦計算」やそのグラフなどは、モデルの中身が伏せられているので、何を仮定しているか、あらゆるサイエンティストにさっぱりわけが分かりません。
85万人の重症、41万人の犠牲者が「最悪」とも全く限らない。「立場上、言えることに限界がある」という、科学と無関係な忖度のみ、強く感じた科学者が多いかと思います。
出てくるグラフはしばしば初歩的な誤りを含み、例えば「ネズミ算式」の増加が、鋭く尖った点で「ネズミ算式」の減少に接続するような図は、考察を示す「メモ」のようなものです。
実際の患者数推移を表すものであるわけがないのは、関係する科学者全員には周知のはずですが、マスメディアに登場すると、アナウンサーも芸能人コメンテーターも、さらには解説委員(?)の中にも救いようのない誤りを口にする人がいるのも3.11直後とそっくりです。
原因を作っているのは、投稿論文審査ならエディターに差し戻されるレベルの不用意な絵柄が出回っていることに原因があると言わねばなりません。
心底、怒っている科学者は決して少なくないと思います。
加えて、これは私自身の経験ですが「日本では、こんなものが流通している」と海外主要大学の研究者に示し、絶句して呆れられました。
科学は、結果を天下りで示しません。大学入試に記述式テストを導入するのは、思考の過程を示すことで、真の実力が見えるからにほかならない。
「なぜ8割でなければならないのか」
接触削減の根拠、その思考の過程が見えていない、現在の行政の情報発信は「拙速削減」にしかなっておらず、およそ効果は期待できないリスクを恐れます。
さらに、そうしてレクチャー、ペーパを棒読みにするだけの責任者、官僚や閣僚、中身の理解を欠いたまま「6割だ7割だ」と子供がカンニング・ペーパを丸写しするような発表、記者に突っ込まれるとすぐ立ち往生してしまう。
こうした仕儀は、あらゆる点で科学的疫学の本道から完全に外れています。
ちなみに、中村さんは、導電性プラスティックを発見された白川英樹先生も奉職された、筑波大学物質系の数理物質科学の教授ですが、ご縁をいただいたのはサイエンスではありません。
筑波で月に一度ご一緒する「聖書講読」バイブル・スタディの仲間、クリスチャンの先輩です。
科学コミュニティとは独立した全くプライベートの友人で、ウイルスも伝染病も専門とは直接関係していません。
逆に言えば、科学の専門コミュニティの利害(「疫学村」とは言いませんが・・・)と無関係に、一個人、あるいは一クリスチャンである科学者として、こんな発表では誰も理解できないし、医療崩壊は目に見えているという憤りをもって、異なる専門の科学者数人が雑談するところから、こうしたシミュレーションが作られました。
中村<基本モデル>は極めて初歩的に組み立てられており、高校、高等工業専門学校や大学教養程度の数学の準備があれば、誰でも理解できるシンプルで透明な構造をしています。
中村先生はあくまで謙虚で「専門家が見て瑕疵があれば指摘してほしい」と言われます。
こうした計算の結果の妥当性などを細かく読み解き、さらに進んだ複雑な状況をシミュレートするような段になれば、医師である人、また数理疫学の専門家である人の知識や経験が生かされる領域になるでしょう。
しかし、いま「6割ではダメなのか?」「なぜ8割」などと問われた時、マスコミに面白おかしく「8割おじさんのこだわり」のように取り上げさせても、国民の防疫リテラシーは何一つ上がることがありません。
「由らしむべし 知らしむべからず」では乗り切れない
東アジアには、古くは論語に由来し、日本でも徳川家康あたりが徹底した、非常によろしくない政治的「悪習」があります。
それは「由(よ)らしむべし 知らしむべからず」という為政者の処世訓です。
人民というのは、道理を理解することがなかなかできない。でもそれに従わせることはできる・・・。
そこから転じて、被支配階層は、統治の理由など理解しないのだから、いちいち説明する必要はない。ただ従わせておけばよいのだという権威主義です。
恰幅がよい西浦氏は、今回調べてみるとまだ全然若年で、私の最初の学生と同じ年配の若手であると知りました。きっと本人はまともな研究者なのだと思います。
しかし、政府の委員として国民に情報発信するマナーは、サイエンスの観点からは全くなっていません。
翻って、中村潤児先生は本当に温和な方で、怒ったりはしておられないけれど、原理の1の1から考え直し、再構築した内容を内外の責任ある科学者に送付しておられるとのことです。
個人的には、「専門家委員会」にも科学者として日本国民に誠実に対処する姿勢へと脱皮してほしいと思います。
いまのままでは、救える命をみすみす危険にさらす可能性を高めてしまうでしょう。それを未然に防ぐことこそが、本来のミッションであるはずです。
「知らしむべからず」を卒業できるか?
防疫は、メカニズムを理解せずに形だけ真似していても、確度高く感染を予防することはできません。
例えば、医師や看護師が、雨がっぱやシャワーキャップなどで形だけ「防疫」もどきの紛争をしても、ウイルスを防ぐことなど不可能です。
事実、ニューヨークでは資材が不足し、ゴミ袋に穴をあけて使っていた看護師が、袋の中に入り込んだウイルスと「3密」状態となって命を落とした例があると報道されます。
この「3密」という、日本独自の標語も、国際基準からみると穴だらけで、極めて問題の多いことを指摘しておかねばなりません。
私は医師でもなければ疫学の専門家でもありませんが、今回のパンデミックでは物理を背景とする情報の教官として ミュンヘン工科大学フェイスブックAI倫理研究所が呼びかけて作られたグローバルAI倫理コンソーシアム(https://ieai.mcts.tum.de/global-ai-ethics-consortium/)の日本責任者を委嘱され「COVID-19」対策のデータアクセス問題などで専門の立場の仕事を分担しています。
その観点から記します。
政府が「国民のウイルス・リテラシーはしょせん低いもの」と仮定して防疫政策を進めると、およそ勝算はありません。
逆に「国民のウイルス・リテラシー」の高さを想定し、常にそれを高める方向で施策を打っているドイツは、現時点では医療崩壊を食い止めることに成功しています。
これは「プロテスタンティズム」の基本的な姿勢に立脚するもので、ミュンヘン工大のAI倫理ポリシーも完全にこれと一致しています。
そこから記します。
本当に8割接触削減を実現したいのなら、広く社会に科学的なメカニズムを説き、仮に計算を理解しない人にも、5割6割では感染は増え続ける、7割減つまり現状の3割程度にコンタクトを減らすと、劇的な効果が期待できることなどを、値引きなく、平易に説明すべきです。
「希望を持つことができる可能性をこのような場合に数理科学シミュレーションは予言すること、その可能性にあなたも賭けてみませんか?」と条理を尽くし、相手の理性を信頼し、それに期待して、手洗いであれ接触削減であれ、マスク着用や消毒の徹底であれ、「知らしむべし」でリテラシーを向上させなければ、いつまでたっても感染拡大は収まらないでしょう。
ドイツでは、自身も2週間にわたって隔離生活を送ったアンゲラ・メルケル首相が、一切国民に値引きすることなく、行政の長として、また一人の感染可能性を疑われた個人として、一切値引きのない、誠実で科学的な言葉で、国民のひとりひとりに語りかけました。
もちろん、メルケル博士は分析化学にも領域の近い理論物理の専門家でもありますが・・・。
両国の施策を見るものとして。天と地の差を感じました。
本件を共に検討する各国の指導的大学すべて、共通して、科学的な防疫メカニズムを「知らしむ」こと、一人ひとり理解に基づいた判断と行動、もっといえば国民の主体性に対する信頼が、この全人類的危機を乗り切る唯一最大のカギであるとの共通前提のもとに仕事しています。
日本での「COVID-19」感染、これ以上の爆発を防げるか否かは、真の意味で日本人が一人ひとり「知るべし」の自覚に立って自衛できるかに懸かっています。
それがなければ、極めて残念ですが、全国一律の「緊急事態宣言」の効力は、極めて低いものに留まることになるでしょう。
政府は4月16日夜、東京など7つの都府県に出されていた「緊急事態宣言」を日本全国に拡大することを決定、発表しました。
5月の連休に人々が出歩き、新型コロナウイルス肺炎のパンデミック爆発を予防するため「最低でも7割、できれば8割」人と人との「接触削減」を実現したいから、とのことです。
<中略>
もし、現在より半分、5割の人にしか会わないことにしても、新型コロナウイルスの感染は急激に増え続けます。
それを6割まで増やすと、プラスマイナスゼロになります。ということは、今のままの状態が続くので、とんでもない事態が続きます。
ところが6割を少し過ぎるところから、急激に感染の度合いが減少して行き、7割になるとかなりの感染拡大抑止が期待できる。
さらに8割まで行けば、著しい抑止効果が期待でき、これを9割まで徹底しても、そんなに効果に変わりはない・・・。
「中村モデル」は、闇雲に「8割にどうしてもこだわりたい」とか「最低でも7割」とか、無根拠なご託宣を並べません。
5割削減なら、今と大差なく患者が増えますよ、それが6割、つまり現在の40%まで対人接触を減らすと、やっとトントンになるんです。
ところが6割を過ぎたら顕著にコロナの威力を減らすことができるんです。これを何とか頑張って7割にしていきましょう。
もし8割まで行けば、9割以上の削減と、ほとんど変わりないところまで抑制できると期待できます。ぜひ、皆さん協力してください・・・。
こう説明し呼びかけている。どうですか?
政府の説明と、中村潤児教授のシミュレーション、どちらに説得力があり、皆さん自身、どのように理解し、納得されますか?
透明なメカニズムの科学的防疫リテラシー
中村潤児先生は、筑波大学大学院、数理物質系の教授で、感染症の「専門家」ではありません。
元来のご専門は化学、お医者さんでもなければ公衆衛生のスペシャリストでもありませんが、研究室のホームページ(http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~nakamura_lab/)に挙げられた上記のグラフの解説は、大学で理工系に進んだ人であれば8割がたの人が平易に理解できる、極めてシンプルなモデルで、誰もが納得するものです。
「この連載でご紹介させていただきたいと思いますが・・・」と中村潤児先生にメールをお送りしたところ、一般の方向けの解説を中村先生ご自身が送ってくださいました。
<中略>
中村モデルは、数理シミュレーションに関連するあらゆる科学者が見て、大半が合理的と納得がいく仮定に限局した、今回感染の「基本モデル」と言ってよいと思います。
<中略>
接触6割減、接触7割減、接触8割減などの市民の行動が変わったときにk(感染者が平均して1日に何人に感染させて市中に感染者が増えるか)がどのように変化していくかをいろいろなケースや地域について解析していきます。
それは現在の技術で容易なことです。どのような政治的判断をするか、どのように市民が行動するかは、scientificなデータを見ながら考えるべきと思います。
この緊急事態における行政の対策にScienceが感じられません。
<中略>
サイエンスの後付け、補強作業
「中村モデル」の大本は、極めて薄い溶液(希薄溶液)の中での化学反応の速度を、速度係数と呼ばれる量に「接触削減」と同様の効果を持たせて計算したシミュレーションから出発されました。
さらに、計算の過程では、数理物質科学の専門家としてモデルを組み、東京大学理学部数学科の稲葉寿さんが書かれた解説「微分方程式と感染症数理疫学」(https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~inaba/inaba_science_2008.pdf)や、現在話題の人となっている西浦博氏と稲葉さんの共著「感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題」(https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/54-2-461.pdf)などを参考に検討してまとめられたもので、専門家の批判的検討を乞うものとして、広く公開されています。
あえて言うなら「専門家委員会」が天下りで出してくる「ブラックボックス」型の結論が本当に正しいものであるかを「追試」し、専門の議論と突き合わせて検討、結果を広く世に問うものとなっています。
こうした姿勢が、狭く「専門家」だけに集中するのでなく、広く科学者全般、さらには社会一般に開かれた姿勢として有効、重要であることは、3.11福島第一原子力発電所事故の時点で、日本社会はいやというほど痛感したはずです。
中村モデルのリリース姿勢は、それを踏まえた、オーソドックスな科学成果の社会への問いかけになっています。
国民を信頼しない天下りで疫病は防げない
つまり「中村モデル」の元となる計算は、厚生労働省「専門家チーム」などの発表に対して、まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発しているわけです。
「原子力村」という言葉と並べて「村」と呼ぶつもりはありませんが、現在の日本政府の対策は、あまりにも「専門家委員会」の名で括られた、一部の見解に限局されています。
それを受けて発せられるはずの官邸からの指示も純然たる予防公衆衛生措置から、マスクの配布、経済支援まで、率直に申して原則を欠き、ダッチロール状態であるのが、誰の目にも明らかです。
科学的な根拠を明示し、政策の妥当性を予測しながら進めないと、少なくとも新型ウイルスの蔓延に伴う感染者増、犠牲者増を食い止めることなど、できるはずがありません。
厚生省発の「予測」「8割」などは、科学的な発表の基本要件を満たしていません。
「西浦計算」やそのグラフなどは、モデルの中身が伏せられているので、何を仮定しているか、あらゆるサイエンティストにさっぱりわけが分かりません。
85万人の重症、41万人の犠牲者が「最悪」とも全く限らない。「立場上、言えることに限界がある」という、科学と無関係な忖度のみ、強く感じた科学者が多いかと思います。
出てくるグラフはしばしば初歩的な誤りを含み、例えば「ネズミ算式」の増加が、鋭く尖った点で「ネズミ算式」の減少に接続するような図は、考察を示す「メモ」のようなものです。
実際の患者数推移を表すものであるわけがないのは、関係する科学者全員には周知のはずですが、マスメディアに登場すると、アナウンサーも芸能人コメンテーターも、さらには解説委員(?)の中にも救いようのない誤りを口にする人がいるのも3.11直後とそっくりです。
原因を作っているのは、投稿論文審査ならエディターに差し戻されるレベルの不用意な絵柄が出回っていることに原因があると言わねばなりません。
心底、怒っている科学者は決して少なくないと思います。
加えて、これは私自身の経験ですが「日本では、こんなものが流通している」と海外主要大学の研究者に示し、絶句して呆れられました。
科学は、結果を天下りで示しません。大学入試に記述式テストを導入するのは、思考の過程を示すことで、真の実力が見えるからにほかならない。
「なぜ8割でなければならないのか」
接触削減の根拠、その思考の過程が見えていない、現在の行政の情報発信は「拙速削減」にしかなっておらず、およそ効果は期待できないリスクを恐れます。
さらに、そうしてレクチャー、ペーパを棒読みにするだけの責任者、官僚や閣僚、中身の理解を欠いたまま「6割だ7割だ」と子供がカンニング・ペーパを丸写しするような発表、記者に突っ込まれるとすぐ立ち往生してしまう。
こうした仕儀は、あらゆる点で科学的疫学の本道から完全に外れています。
ちなみに、中村さんは、導電性プラスティックを発見された白川英樹先生も奉職された、筑波大学物質系の数理物質科学の教授ですが、ご縁をいただいたのはサイエンスではありません。
筑波で月に一度ご一緒する「聖書講読」バイブル・スタディの仲間、クリスチャンの先輩です。
科学コミュニティとは独立した全くプライベートの友人で、ウイルスも伝染病も専門とは直接関係していません。
逆に言えば、科学の専門コミュニティの利害(「疫学村」とは言いませんが・・・)と無関係に、一個人、あるいは一クリスチャンである科学者として、こんな発表では誰も理解できないし、医療崩壊は目に見えているという憤りをもって、異なる専門の科学者数人が雑談するところから、こうしたシミュレーションが作られました。
中村<基本モデル>は極めて初歩的に組み立てられており、高校、高等工業専門学校や大学教養程度の数学の準備があれば、誰でも理解できるシンプルで透明な構造をしています。
中村先生はあくまで謙虚で「専門家が見て瑕疵があれば指摘してほしい」と言われます。
こうした計算の結果の妥当性などを細かく読み解き、さらに進んだ複雑な状況をシミュレートするような段になれば、医師である人、また数理疫学の専門家である人の知識や経験が生かされる領域になるでしょう。
しかし、いま「6割ではダメなのか?」「なぜ8割」などと問われた時、マスコミに面白おかしく「8割おじさんのこだわり」のように取り上げさせても、国民の防疫リテラシーは何一つ上がることがありません。
「由らしむべし 知らしむべからず」では乗り切れない
東アジアには、古くは論語に由来し、日本でも徳川家康あたりが徹底した、非常によろしくない政治的「悪習」があります。
それは「由(よ)らしむべし 知らしむべからず」という為政者の処世訓です。
人民というのは、道理を理解することがなかなかできない。でもそれに従わせることはできる・・・。
そこから転じて、被支配階層は、統治の理由など理解しないのだから、いちいち説明する必要はない。ただ従わせておけばよいのだという権威主義です。
恰幅がよい西浦氏は、今回調べてみるとまだ全然若年で、私の最初の学生と同じ年配の若手であると知りました。きっと本人はまともな研究者なのだと思います。
しかし、政府の委員として国民に情報発信するマナーは、サイエンスの観点からは全くなっていません。
翻って、中村潤児先生は本当に温和な方で、怒ったりはしておられないけれど、原理の1の1から考え直し、再構築した内容を内外の責任ある科学者に送付しておられるとのことです。
個人的には、「専門家委員会」にも科学者として日本国民に誠実に対処する姿勢へと脱皮してほしいと思います。
いまのままでは、救える命をみすみす危険にさらす可能性を高めてしまうでしょう。それを未然に防ぐことこそが、本来のミッションであるはずです。
「知らしむべからず」を卒業できるか?
防疫は、メカニズムを理解せずに形だけ真似していても、確度高く感染を予防することはできません。
例えば、医師や看護師が、雨がっぱやシャワーキャップなどで形だけ「防疫」もどきの紛争をしても、ウイルスを防ぐことなど不可能です。
事実、ニューヨークでは資材が不足し、ゴミ袋に穴をあけて使っていた看護師が、袋の中に入り込んだウイルスと「3密」状態となって命を落とした例があると報道されます。
この「3密」という、日本独自の標語も、国際基準からみると穴だらけで、極めて問題の多いことを指摘しておかねばなりません。
私は医師でもなければ疫学の専門家でもありませんが、今回のパンデミックでは物理を背景とする情報の教官として ミュンヘン工科大学フェイスブックAI倫理研究所が呼びかけて作られたグローバルAI倫理コンソーシアム(https://ieai.mcts.tum.de/global-ai-ethics-consortium/)の日本責任者を委嘱され「COVID-19」対策のデータアクセス問題などで専門の立場の仕事を分担しています。
その観点から記します。
政府が「国民のウイルス・リテラシーはしょせん低いもの」と仮定して防疫政策を進めると、およそ勝算はありません。
逆に「国民のウイルス・リテラシー」の高さを想定し、常にそれを高める方向で施策を打っているドイツは、現時点では医療崩壊を食い止めることに成功しています。
これは「プロテスタンティズム」の基本的な姿勢に立脚するもので、ミュンヘン工大のAI倫理ポリシーも完全にこれと一致しています。
そこから記します。
本当に8割接触削減を実現したいのなら、広く社会に科学的なメカニズムを説き、仮に計算を理解しない人にも、5割6割では感染は増え続ける、7割減つまり現状の3割程度にコンタクトを減らすと、劇的な効果が期待できることなどを、値引きなく、平易に説明すべきです。
「希望を持つことができる可能性をこのような場合に数理科学シミュレーションは予言すること、その可能性にあなたも賭けてみませんか?」と条理を尽くし、相手の理性を信頼し、それに期待して、手洗いであれ接触削減であれ、マスク着用や消毒の徹底であれ、「知らしむべし」でリテラシーを向上させなければ、いつまでたっても感染拡大は収まらないでしょう。
ドイツでは、自身も2週間にわたって隔離生活を送ったアンゲラ・メルケル首相が、一切国民に値引きすることなく、行政の長として、また一人の感染可能性を疑われた個人として、一切値引きのない、誠実で科学的な言葉で、国民のひとりひとりに語りかけました。
もちろん、メルケル博士は分析化学にも領域の近い理論物理の専門家でもありますが・・・。
両国の施策を見るものとして。天と地の差を感じました。
本件を共に検討する各国の指導的大学すべて、共通して、科学的な防疫メカニズムを「知らしむ」こと、一人ひとり理解に基づいた判断と行動、もっといえば国民の主体性に対する信頼が、この全人類的危機を乗り切る唯一最大のカギであるとの共通前提のもとに仕事しています。
日本での「COVID-19」感染、これ以上の爆発を防げるか否かは、真の意味で日本人が一人ひとり「知るべし」の自覚に立って自衛できるかに懸かっています。
それがなければ、極めて残念ですが、全国一律の「緊急事態宣言」の効力は、極めて低いものに留まることになるでしょう。
政府の説明と、中村潤児教授のシミュレーション、どちらに説得力があり、皆さん自身、どのように理解し、納得されますかと。
素人の遊爺に判断は出来ませんが、少なくともオープンな姿勢は、科学者として正しいことは理解できます。
「中村モデル」の元となる計算は、厚生労働省「専門家チーム」などの発表に対して、まともにサイエンスに関わる人間なら、100人が100人持っていた「不満」から出発している。
厚生省発の「予測」「8割」などは、科学的な発表の基本要件を満たしていませんと伊東氏。
中村<基本モデル>は極めて初歩的に組み立てられており、高校、高等工業専門学校や大学教養程度の数学の準備があれば、誰でも理解できるシンプルで透明な構造なのだそうです。
西浦氏は、安倍首相が、7~8割の削減と度々発言されることに対して、7割などと言ったことはない。8割で無ければだめと主張しておられます。試算された結果を主張されるのは、学者として当然です。なら、その試算の根拠を広く公開し、多くの科学者を説得すべきです。
中村氏は公開し、広く意見を求めておられます。
治療薬もクチンもない未知の新型コロナウイルス。これ以上の爆発を防げるか否かは、真の意味で日本人が一人ひとり「知るべし」の自覚に立って自衛できるかに懸かっていますと伊東氏。
専門家委員会偏重から、医師会や大阪府知事等の提案が聞き入れられるようになってきた政府。
国民に対し開かれた柔軟な姿勢で、かつ果敢な英断も発揮し、日本をワンチームにまとめていくリーダーシップの発揮をお願いします。
# 冒頭の画像は、西浦北海道大学教授
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茶ノ木の花
↓よろしかったら、お願いします。
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