ウクライナでの戦争は、今後数十年間にわたって、戦闘というものの理解に大きな影響を及ぼすことになると、英エコノミスト誌。
現代の紛争は対ゲリラ活動の作戦に限られるのではないかとか、犠牲者のあまり出ないサイバー空間での戦いへと進化するのではないかといった幻想は、今回の戦争で吹き飛んだと。
今日では最新のテクノロジーと大量殺戮、そして大量の弾丸消費がセットになり、一般市民や同盟国、民間企業まで巻き込んだ新種の高強度戦争が展開されていると。
将来戦われる紛争で優位に立つ方法を独裁政権が研究していることは、ほぼ間違いないと、エコノミスト誌。
リベラルな民主主義国はこのような死と破壊にひるむのではなく、工業化の進んだ国同士でも戦争は十分に起こりうるのだと認識し、それに備え始めなければならない。
ウクライナの大量殺戮の現場からは3つの大きな教訓が読み取れると。
第1の教訓は、戦場が透明になりつつあるということ。
これからは人工衛星に装着されたすべてを見通すセンサーや、ドローンの編隊のことを考えなければならないと。
ロシア軍の将官の無線連絡をとらえたり、カモフラージュされた戦車の輪郭を割り出したりするのだ。
こうした情報は人工衛星を介してリレーされ、前線にいる最下級の兵士に伝えられたり、これまでになかったような正確さと射程距離を誇る大砲やロケット弾の照準を定めるのに利用されたりする。
未来の戦争では偵察への依存度が高まることを意味している。
軍は新しい戦い方、すなわち機動力、分散、潜伏、偽装などを柱とする戦い方を開発しなければならない。
第2の教訓は、たとえ人工知能(AI)の時代であろうとも、戦争になればやはり何十万人というヒトや何百万個もの装備や弾薬といったモノがかかわってくるということだと、エコノミスト誌。
的を見据えて正確に撃てるようになったことで、死者数が急増している。
大量のヒトやモノをどのように調達・維持していくのかが、テクノロジーのおかげで変わることになるかもしれないと。
米軍の制服組のトップであるマーク・ミリー統合参謀本部議長は6月30日、10~15年後には最新部隊の3分の1がロボットになっていると予言した。
パイロットのいない空軍部隊や乗組員のいない戦車を思い浮かべるといいと、エコノミスト誌。
とは言え、足元の2020年代にも戦えなければならない。
損耗率が高くなる事態に備えて備蓄を補充したり、戦争に必要なハードウエアを現在よりもはるかに大量に生産できる工業力を構築したり、軍のマンパワーを十二分に確保しておいたりする必要があるとも。
第3の教訓は、大規模な戦争の境界線は幅が広くて不明瞭だということだそうです。
ウクライナでは、文民が犠牲者として戦争にのみ込まれたが、同時に参加者にもなっている。
田舎に住む老婦人がスマートフォンのアプリを使って味方の砲撃を支援できる時代に。
ウクライナの戦場で使用されるソフトウエアは、外国にある大手テクノロジー企業のクラウドサーバーに導入されている。
攻撃目標のデータはフィンランドの企業が提供し、米国企業の人工衛星を介して通信を行っている。
新しい境界線は新しい問題も生み出している。
文民の戦争参加が増えているために、法的、倫理的な問題が浮上しているのだそうです。
ウクライナでは恐らく、双方が核兵器を使うぞと脅し合ったことが戦いをエスカレートさせない方向に作用したと、エコノミスト誌。
だが、台湾をめぐる戦いが始まったら、米国も中国も宇宙空間で相手を攻撃したくなるだろう。
そうなれば核戦争にエスカレートする恐れがあるとも。
独裁制で不安定なロシアは、今後数十年にわたって西側に脅威をもたらし続ける恐れがある。
中国の軍事的影響力の拡大はアジアにおける不安定要因であり、独裁制の世界的な復活は紛争をより発生しやすくする恐れを秘めている。
ウクライナで今日展開されている、高度な兵器を使う新種の戦争の教訓を学ばない軍隊は、それを学んだ軍隊に敗れかねないと、エコノミスト誌。
# 冒頭の画像は、ドローンから荷物を受け取る米海兵隊員、6月22日フィリピンでの訓練で。
この花の名前は、ダイヤーズカモミール
↓よろしかったら、お願いします。
現代の紛争は対ゲリラ活動の作戦に限られるのではないかとか、犠牲者のあまり出ないサイバー空間での戦いへと進化するのではないかといった幻想は、今回の戦争で吹き飛んだと。
今日では最新のテクノロジーと大量殺戮、そして大量の弾丸消費がセットになり、一般市民や同盟国、民間企業まで巻き込んだ新種の高強度戦争が展開されていると。
ハイテク戦争の新時代が始まった 戦争の未来、ウクライナの戦場からの教訓 | JBpress (ジェイビープレス) 2023.7.10(月) 英エコノミスト誌 2023年7月8日号
テクノロジーによって戦場が様変わりした。民主主義国も対応しなければならない。
大きな戦争は、それを戦う国とその国民にとって悲劇だ。
また、世界が紛争に備えるやり方を一変させ、世界の安全保障にも重大な影響を及ぼす。
米国の南北戦争の際、英国とフランスとドイツは戦地にオブザーバーを派遣し、ゲティスバーグなどでの戦いを研究させた。
1973年の第4次中東戦争における戦車戦を見た米国は、ベトナムで敗れた軍隊から1991年の湾岸戦争でイラクを打ち負かした軍隊への変身を加速させた。
そしてその湾岸戦争をきっかけに、中国の指導者たちは人民解放軍の再建に乗り出し、今日あるような恐るべき軍隊に変えた。
戦闘の理解を変えるウクライナ戦争
ウクライナでの戦争は、欧州では1945年以来の大規模な戦争だ。
今後数十年間にわたって、戦闘というものの理解に大きな影響を及ぼすことになる。
現代の紛争は対ゲリラ活動の作戦に限られるのではないかとか、犠牲者のあまり出ないサイバー空間での戦いへと進化するのではないかといった幻想は、今回の戦争で吹き飛んだ。
むしろ今日では最新のテクノロジーと大量殺戮、そして大量の弾丸消費がセットになり、一般市民や同盟国、民間企業まで巻き込んだ新種の高強度戦争が展開されている。
となれば、将来戦われる紛争で優位に立つ方法を独裁政権が研究していることは、ほぼ間違いない。
リベラルな民主主義国はこのような死と破壊にひるむのではなく、工業化の進んだ国同士でも戦争は十分に起こりうるのだと認識し、それに備え始めなければならない。
本誌エコノミストが今週号の特集記事で論じているように、ウクライナの大量殺戮の現場からは3つの大きな教訓が読み取れる。
透明化する戦場
第1の教訓は、戦場が透明になりつつあるということだ。
双眼鏡や地図のことはもう忘れよう。
これからは人工衛星に装着されたすべてを見通すセンサーや、ドローンの編隊のことを考えなければならない。どちらも安価で、いろいろな場所でデータを集める。
すると、ますます改良されているアルゴリズムがそれを処理し、干し草の山の中から細い針を見つけ出すような芸当をやってのける。
ロシア軍の将官の無線連絡をとらえたり、カモフラージュされた戦車の輪郭を割り出したりするのだ。
こうした情報は人工衛星を介してリレーされ、前線にいる最下級の兵士に伝えられたり、これまでになかったような正確さと射程距離を誇る大砲やロケット弾の照準を定めるのに利用されたりする。
このように戦場での姿が丸見えになるということは、未来の戦争では偵察への依存度が高まることを意味している。
敵に見つかる前に敵を見つけ出すこと、ドローンか人工衛星かにかかわらず敵のセンサーを使用不可能にすること、そして敵が戦場でデータをやりとりする手段をサイバー攻撃や電子戦争、昔ながらの爆発物などを用いて使えないようにすることが重要になる。
軍は新しい戦い方、すなわち機動力、分散、潜伏、偽装などを柱とする戦い方を開発しなければならない。
新しいテクノロジーに投資できない、あるいは新しいドクトリンを開発できない大規模な軍隊は、それらができる小さな軍隊に圧倒されてしまう。
AI時代でも重要な物量
第2の教訓は、たとえ人工知能(AI)の時代であろうとも、戦争になればやはり何十万人というヒトや何百万個もの装備や弾薬といったモノがかかわってくるということだ。
ウクライナでの犠牲者の数は深刻なレベルに達している。
的を見据えて正確に撃てるようになったことで、死者数が急増しているのだ。
兵士はこれに適応するために、第1次世界大戦の激戦地ヴェルダンやパッセンダーレのそれに匹敵する塹壕を掘っている。
装備や弾薬の消費量もすさまじい。
ロシアは1年間で1000万発の砲弾を発射した。
ウクライナは1カ月間で1万機のドローンを失っており、反転攻勢のために昔ながらのクラスター弾を融通してくれるよう支援国に要請している。
最終的には、こうした大量のヒトやモノをどのように調達・維持していくのかが、テクノロジーのおかげで変わることになるかもしれない。
米軍の制服組のトップであるマーク・ミリー統合参謀本部議長は6月30日、10~15年後には最新部隊の3分の1がロボットになっていると予言した。
パイロットのいない空軍部隊や乗組員のいない戦車を思い浮かべるといい。
とはいえ、軍隊は2030年代だけでなく足元の2020年代にも戦えなければならない。
つまり、損耗率が高くなる事態に備えて備蓄を補充したり、戦争に必要なハードウエアを現在よりもはるかに大量に生産できる工業力を構築したり、軍のマンパワーを十二分に確保しておいたりする必要がある。
7月11、12両日に開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、西側諸国がこうした目標に向けて同盟を引き続き活気づけていけるか否かの試金石になる。
広く不明瞭な境界線
第3の教訓は、20世紀でもかなりの場面で当てはまったもので、大規模な戦争の境界線は幅が広くて不明瞭だということだ。
アフガニスタンやイラクにおける西側の紛争を実際に戦ったのは、小規模なプロの軍隊であり、本国の文民の負担は軽かった。
(ただし、現地の人々は数々の悲劇に見舞われることが多かった)
ウクライナでは、文民が犠牲者として戦争にのみ込まれた――これまでに9000人超が命を落としている――が、同時に参加者にもなっている。
ここでは、田舎に住む老婦人がスマートフォンのアプリを使って味方の砲撃を支援できるのだ。
また今日では、昔ながらの軍産複合体の枠を超え、新しいタイプの民間企業が非常に重要な存在になった。
ウクライナの戦場で使用されるソフトウエアは、外国にある大手テクノロジー企業のクラウドサーバーに導入されている。
攻撃目標のデータはフィンランドの企業が提供し、米国企業の人工衛星を介して通信を行う。
コミットメントのレベルに差があるものの、支援国とのネットワークはウクライナへの物資供給や、ロシアとの貿易禁止措置、各種制裁の執行に役立っている。
台湾をめぐる米中衝突のリスク
新しい境界線は新しい問題も生み出している。
文民の戦争参加が増えているために、法的、倫理的な問題が浮上している。
戦闘地域に拠点を持たない民間企業であっても、戦争の当事国と関わりがあればバーチャル攻撃や本物の武力攻撃を受ける恐れがある。
新たな企業が参加するにつれ、いずれかの企業が単一障害点(SPOF、システムの構成要素のうち、そこが止まるとシステム全体が止まってしまう要素のこと)にならないよう、各国政府は万全を期す必要がある。
同じ戦争は一つとしてない。
インドと中国の戦いは世界の屋根の上で起こるかもしれない。
台湾をめぐる中国と米国の衝突では空軍力と海軍力、そして長距離ミサイルがもっと多く使われ、貿易の混乱が生じるだろう。
ウクライナでは恐らく、双方が核兵器を使うぞと脅し合ったことが戦いをエスカレートさせない方向に作用した。
NATOは核武装した敵と直接対峙したわけではないし、ロシアの脅威もこれまでのところはこけおどしだった。
だが、台湾をめぐる戦いが始まったら、米国も中国も宇宙空間で相手を攻撃したくなるだろう。
そうなれば核戦争にエスカレートする恐れがある。早期警戒や指揮統制に用いられる人工衛星が無効化された場合は特にそうだ。
シリコンバレーと激戦地ソンム
リベラルな社会としては、ウクライナの恐ろしい状況から離れたい、軍備の近代化に要する費用と努力も回避したいという誘惑に駆られる。
しかし、このような紛争、つまり工業化された大きな国同士の戦いが一回限りの珍しいことだと決めつけるわけにはいかない。
独裁制で不安定なロシアは、今後数十年にわたって西側に脅威をもたらし続ける恐れがある。
中国の軍事的影響力の拡大はアジアにおける不安定要因であり、独裁制の世界的な復活は紛争をより発生しやすくする恐れを秘めている。
ウクライナで今日展開されている、高度な兵器を使う新種の戦争の教訓を学ばない軍隊は、それを学んだ軍隊に敗れかねない。
テクノロジーによって戦場が様変わりした。民主主義国も対応しなければならない。
大きな戦争は、それを戦う国とその国民にとって悲劇だ。
また、世界が紛争に備えるやり方を一変させ、世界の安全保障にも重大な影響を及ぼす。
米国の南北戦争の際、英国とフランスとドイツは戦地にオブザーバーを派遣し、ゲティスバーグなどでの戦いを研究させた。
1973年の第4次中東戦争における戦車戦を見た米国は、ベトナムで敗れた軍隊から1991年の湾岸戦争でイラクを打ち負かした軍隊への変身を加速させた。
そしてその湾岸戦争をきっかけに、中国の指導者たちは人民解放軍の再建に乗り出し、今日あるような恐るべき軍隊に変えた。
戦闘の理解を変えるウクライナ戦争
ウクライナでの戦争は、欧州では1945年以来の大規模な戦争だ。
今後数十年間にわたって、戦闘というものの理解に大きな影響を及ぼすことになる。
現代の紛争は対ゲリラ活動の作戦に限られるのではないかとか、犠牲者のあまり出ないサイバー空間での戦いへと進化するのではないかといった幻想は、今回の戦争で吹き飛んだ。
むしろ今日では最新のテクノロジーと大量殺戮、そして大量の弾丸消費がセットになり、一般市民や同盟国、民間企業まで巻き込んだ新種の高強度戦争が展開されている。
となれば、将来戦われる紛争で優位に立つ方法を独裁政権が研究していることは、ほぼ間違いない。
リベラルな民主主義国はこのような死と破壊にひるむのではなく、工業化の進んだ国同士でも戦争は十分に起こりうるのだと認識し、それに備え始めなければならない。
本誌エコノミストが今週号の特集記事で論じているように、ウクライナの大量殺戮の現場からは3つの大きな教訓が読み取れる。
透明化する戦場
第1の教訓は、戦場が透明になりつつあるということだ。
双眼鏡や地図のことはもう忘れよう。
これからは人工衛星に装着されたすべてを見通すセンサーや、ドローンの編隊のことを考えなければならない。どちらも安価で、いろいろな場所でデータを集める。
すると、ますます改良されているアルゴリズムがそれを処理し、干し草の山の中から細い針を見つけ出すような芸当をやってのける。
ロシア軍の将官の無線連絡をとらえたり、カモフラージュされた戦車の輪郭を割り出したりするのだ。
こうした情報は人工衛星を介してリレーされ、前線にいる最下級の兵士に伝えられたり、これまでになかったような正確さと射程距離を誇る大砲やロケット弾の照準を定めるのに利用されたりする。
このように戦場での姿が丸見えになるということは、未来の戦争では偵察への依存度が高まることを意味している。
敵に見つかる前に敵を見つけ出すこと、ドローンか人工衛星かにかかわらず敵のセンサーを使用不可能にすること、そして敵が戦場でデータをやりとりする手段をサイバー攻撃や電子戦争、昔ながらの爆発物などを用いて使えないようにすることが重要になる。
軍は新しい戦い方、すなわち機動力、分散、潜伏、偽装などを柱とする戦い方を開発しなければならない。
新しいテクノロジーに投資できない、あるいは新しいドクトリンを開発できない大規模な軍隊は、それらができる小さな軍隊に圧倒されてしまう。
AI時代でも重要な物量
第2の教訓は、たとえ人工知能(AI)の時代であろうとも、戦争になればやはり何十万人というヒトや何百万個もの装備や弾薬といったモノがかかわってくるということだ。
ウクライナでの犠牲者の数は深刻なレベルに達している。
的を見据えて正確に撃てるようになったことで、死者数が急増しているのだ。
兵士はこれに適応するために、第1次世界大戦の激戦地ヴェルダンやパッセンダーレのそれに匹敵する塹壕を掘っている。
装備や弾薬の消費量もすさまじい。
ロシアは1年間で1000万発の砲弾を発射した。
ウクライナは1カ月間で1万機のドローンを失っており、反転攻勢のために昔ながらのクラスター弾を融通してくれるよう支援国に要請している。
最終的には、こうした大量のヒトやモノをどのように調達・維持していくのかが、テクノロジーのおかげで変わることになるかもしれない。
米軍の制服組のトップであるマーク・ミリー統合参謀本部議長は6月30日、10~15年後には最新部隊の3分の1がロボットになっていると予言した。
パイロットのいない空軍部隊や乗組員のいない戦車を思い浮かべるといい。
とはいえ、軍隊は2030年代だけでなく足元の2020年代にも戦えなければならない。
つまり、損耗率が高くなる事態に備えて備蓄を補充したり、戦争に必要なハードウエアを現在よりもはるかに大量に生産できる工業力を構築したり、軍のマンパワーを十二分に確保しておいたりする必要がある。
7月11、12両日に開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、西側諸国がこうした目標に向けて同盟を引き続き活気づけていけるか否かの試金石になる。
広く不明瞭な境界線
第3の教訓は、20世紀でもかなりの場面で当てはまったもので、大規模な戦争の境界線は幅が広くて不明瞭だということだ。
アフガニスタンやイラクにおける西側の紛争を実際に戦ったのは、小規模なプロの軍隊であり、本国の文民の負担は軽かった。
(ただし、現地の人々は数々の悲劇に見舞われることが多かった)
ウクライナでは、文民が犠牲者として戦争にのみ込まれた――これまでに9000人超が命を落としている――が、同時に参加者にもなっている。
ここでは、田舎に住む老婦人がスマートフォンのアプリを使って味方の砲撃を支援できるのだ。
また今日では、昔ながらの軍産複合体の枠を超え、新しいタイプの民間企業が非常に重要な存在になった。
ウクライナの戦場で使用されるソフトウエアは、外国にある大手テクノロジー企業のクラウドサーバーに導入されている。
攻撃目標のデータはフィンランドの企業が提供し、米国企業の人工衛星を介して通信を行う。
コミットメントのレベルに差があるものの、支援国とのネットワークはウクライナへの物資供給や、ロシアとの貿易禁止措置、各種制裁の執行に役立っている。
台湾をめぐる米中衝突のリスク
新しい境界線は新しい問題も生み出している。
文民の戦争参加が増えているために、法的、倫理的な問題が浮上している。
戦闘地域に拠点を持たない民間企業であっても、戦争の当事国と関わりがあればバーチャル攻撃や本物の武力攻撃を受ける恐れがある。
新たな企業が参加するにつれ、いずれかの企業が単一障害点(SPOF、システムの構成要素のうち、そこが止まるとシステム全体が止まってしまう要素のこと)にならないよう、各国政府は万全を期す必要がある。
同じ戦争は一つとしてない。
インドと中国の戦いは世界の屋根の上で起こるかもしれない。
台湾をめぐる中国と米国の衝突では空軍力と海軍力、そして長距離ミサイルがもっと多く使われ、貿易の混乱が生じるだろう。
ウクライナでは恐らく、双方が核兵器を使うぞと脅し合ったことが戦いをエスカレートさせない方向に作用した。
NATOは核武装した敵と直接対峙したわけではないし、ロシアの脅威もこれまでのところはこけおどしだった。
だが、台湾をめぐる戦いが始まったら、米国も中国も宇宙空間で相手を攻撃したくなるだろう。
そうなれば核戦争にエスカレートする恐れがある。早期警戒や指揮統制に用いられる人工衛星が無効化された場合は特にそうだ。
シリコンバレーと激戦地ソンム
リベラルな社会としては、ウクライナの恐ろしい状況から離れたい、軍備の近代化に要する費用と努力も回避したいという誘惑に駆られる。
しかし、このような紛争、つまり工業化された大きな国同士の戦いが一回限りの珍しいことだと決めつけるわけにはいかない。
独裁制で不安定なロシアは、今後数十年にわたって西側に脅威をもたらし続ける恐れがある。
中国の軍事的影響力の拡大はアジアにおける不安定要因であり、独裁制の世界的な復活は紛争をより発生しやすくする恐れを秘めている。
ウクライナで今日展開されている、高度な兵器を使う新種の戦争の教訓を学ばない軍隊は、それを学んだ軍隊に敗れかねない。
将来戦われる紛争で優位に立つ方法を独裁政権が研究していることは、ほぼ間違いないと、エコノミスト誌。
リベラルな民主主義国はこのような死と破壊にひるむのではなく、工業化の進んだ国同士でも戦争は十分に起こりうるのだと認識し、それに備え始めなければならない。
ウクライナの大量殺戮の現場からは3つの大きな教訓が読み取れると。
第1の教訓は、戦場が透明になりつつあるということ。
これからは人工衛星に装着されたすべてを見通すセンサーや、ドローンの編隊のことを考えなければならないと。
ロシア軍の将官の無線連絡をとらえたり、カモフラージュされた戦車の輪郭を割り出したりするのだ。
こうした情報は人工衛星を介してリレーされ、前線にいる最下級の兵士に伝えられたり、これまでになかったような正確さと射程距離を誇る大砲やロケット弾の照準を定めるのに利用されたりする。
未来の戦争では偵察への依存度が高まることを意味している。
軍は新しい戦い方、すなわち機動力、分散、潜伏、偽装などを柱とする戦い方を開発しなければならない。
第2の教訓は、たとえ人工知能(AI)の時代であろうとも、戦争になればやはり何十万人というヒトや何百万個もの装備や弾薬といったモノがかかわってくるということだと、エコノミスト誌。
的を見据えて正確に撃てるようになったことで、死者数が急増している。
大量のヒトやモノをどのように調達・維持していくのかが、テクノロジーのおかげで変わることになるかもしれないと。
米軍の制服組のトップであるマーク・ミリー統合参謀本部議長は6月30日、10~15年後には最新部隊の3分の1がロボットになっていると予言した。
パイロットのいない空軍部隊や乗組員のいない戦車を思い浮かべるといいと、エコノミスト誌。
とは言え、足元の2020年代にも戦えなければならない。
損耗率が高くなる事態に備えて備蓄を補充したり、戦争に必要なハードウエアを現在よりもはるかに大量に生産できる工業力を構築したり、軍のマンパワーを十二分に確保しておいたりする必要があるとも。
第3の教訓は、大規模な戦争の境界線は幅が広くて不明瞭だということだそうです。
ウクライナでは、文民が犠牲者として戦争にのみ込まれたが、同時に参加者にもなっている。
田舎に住む老婦人がスマートフォンのアプリを使って味方の砲撃を支援できる時代に。
ウクライナの戦場で使用されるソフトウエアは、外国にある大手テクノロジー企業のクラウドサーバーに導入されている。
攻撃目標のデータはフィンランドの企業が提供し、米国企業の人工衛星を介して通信を行っている。
新しい境界線は新しい問題も生み出している。
文民の戦争参加が増えているために、法的、倫理的な問題が浮上しているのだそうです。
ウクライナでは恐らく、双方が核兵器を使うぞと脅し合ったことが戦いをエスカレートさせない方向に作用したと、エコノミスト誌。
だが、台湾をめぐる戦いが始まったら、米国も中国も宇宙空間で相手を攻撃したくなるだろう。
そうなれば核戦争にエスカレートする恐れがあるとも。
独裁制で不安定なロシアは、今後数十年にわたって西側に脅威をもたらし続ける恐れがある。
中国の軍事的影響力の拡大はアジアにおける不安定要因であり、独裁制の世界的な復活は紛争をより発生しやすくする恐れを秘めている。
ウクライナで今日展開されている、高度な兵器を使う新種の戦争の教訓を学ばない軍隊は、それを学んだ軍隊に敗れかねないと、エコノミスト誌。
# 冒頭の画像は、ドローンから荷物を受け取る米海兵隊員、6月22日フィリピンでの訓練で。
この花の名前は、ダイヤーズカモミール
↓よろしかったら、お願いします。