台湾の人々は、ウクライナで起きた戦争がどう展開するかをつぶさに追っている。彼らのほぼ誰もがウクライナの大義に共感を抱くが、台湾自体の将来をめぐる結論は大きく割れていると、WSJ。
一方では、社会が固く結束すれば、一見無敵に思える敵でも打ち負かすことができるという教訓だと捉え、懸念される中国の侵略に抵抗する台湾の取り組みを鼓舞するものだと受け止めている。
他方では、ウクライナの各都市が煙に包まれる画像から、正反対の教訓を導き出す人々もいる。戦争は最悪の事態であり、たとえ痛みを伴う妥協が必要でも、中国の逆鱗(げきりん)に触れないよう台湾はあらゆる手を尽くすべきという考え方だと、WSJ。
二つの対立する見解は、来年1月に予定される台湾総統選挙で終始争点となるだろうと。
台湾内部で戦わされる議論や軍備強化への決意は、米国が軍事的にどの程度関与するかにも影響するのは必至。
中国指導部は台湾に対する論調を強め、「祖国統一」を成し遂げるためには武力行使も辞さないと繰り返している。また台湾の防衛力を疲弊させるため、中国は周辺海域・空域で探査を活発化させている。米中央情報局(CIA)は、習近平国家主席が台湾侵攻に向けた中国軍の準備を整える期限を2027年に設定したと推測しているのだそうです。
蔡氏には再出馬の資格はないが、与党・民主進歩党(民進党)の総統候補である頼清徳・副総統も同様に、台湾の独立を守り、中国が強める威圧に抵抗すると公約している。
一方、最大野党・国民党は立場が異なる。「われわれは中国との対話を望み、それが可能だと考えている。実現すれば、間違いなく緊張を緩和させ、偶発的な戦争が起きないようにし、確実に意図的な戦争が起きないようにする」。国民党の夏立言・副主席は6月、今年2度目となる中国訪問に出発する直前のインタビューでそう語ったのだそうです。
総統選では、国民党の総統候補である侯友宜・新北市長は今週、中国との関係を改善した後、兵役義務期間を4カ月に戻すと公約した。
昨秋の統一地方選では国民党が勝利したが、今のところ民進党の頼氏が世論調査でリードしている。第三勢力候補である中道派の柯文哲・前台北市長も高い支持を得ており、予測をさらに難しくしていると、WSJ。
中国指導部は、ロシア軍がウクライナでどうつまずくかを注意深く見守ってきた。ロシア軍は多数の死傷者を出し、相次ぐ軍の後退に見舞われている。それが民間軍事会社ワグネルが起こした先月の短い反乱の引き金になった。
習氏が、ロシアの難局を理由に台湾侵攻の決意を鈍らせる兆候はない、と米当局者は言っているのだそうです。
米国には台湾防衛について拘束力のある義務はなく、この問題では「戦略的曖昧さ」政策を長年維持してきた。とはいえジョー・バイデン米大統領は、中国が武力による台湾制圧に乗り出した場合、ウクライナとは異なり、米軍が直接介入すると繰り返し警告している。
ただ米軍が派遣される前に、台湾は最初の一撃に自力で抵抗する必要があるだろう。それについては最近改善されたものの、今のところ準備万端には程遠い、と多くの米当局者やアナリストは指摘すると、WSJ。
台湾軍ではプロ意識と兵士の士気が特に懸念材料だ、と西側当局者らは話している。台湾の主な軍幹部養成学校の前身は、1920年代に中国南部に設立された黄埔軍官学校。ここはソ連出身の教官に大きく依存していた。そのため時代遅れのソ連式軍事文化や教義が今も根強く残っている、と防衛アナリストらは指摘しているのだそうです。
現在、徴集兵の大半は中国人民解放軍を撃退する方法ではなく、床掃除や草むしりに時間を費やしている、と台湾軍の李喜明・元参謀総長(退役海軍大将)は語る。李氏は軍の準備態勢について声高に批判していると、WSJ。
「ただ同じことを4カ月の代わりに1年やるなら問題がある。悪評も立つ」と李氏は指摘。「問題は訓練の内容であって期間ではない。どれだけ長く行うかよりもどう行うかがはるかに重要だ」。台湾軍は訓練の改善に取り組んでいると、李氏。
台湾軍はまた、プロの兵士の引き留めにも苦労している。台湾国防部は最近の報告書の中で、過去5年間にキャリア兵士の約20%が契約満了予定日前に軍を辞める決定をしたと述べたのだそうです。
蔡総統が率いる民進党は2016年から政権を担っている。同党は国民党の一党支配に対する1980年代の民主化運動に端を発し、本土の中国人と自分たちを区別する台湾人の気質に訴えかけてきた。
「台湾の民間人はかつて軍との距離があまり近くなかった。昔の軍隊は外部から来たもので、内部から発生したわけではなかった。民間人と兵士の間には大きな溝があった」。そう話すのは、民進党の立法院(国会)国防委員会の主要メンバー王定宇・立法委員(国会議員)。
「ただ、これは古い状況だと言わざるを得ない」と王氏は続けた。蔡総統の下で「軍に民主主義を守る必要があると認識させ」、軍民間の関係は変化したと。
もっとも、まだ一般市民の間に新たな軍との向き合い方は広がらず、兵役に敬意を払ったり、魅力を感じたりすることは少ないようだとも。
数週間後に入隊するワン・チュンウェイさんは、「全くの時間の浪費だ」。それより自宅に残り、家族経営の会社で働きたかったと語った。「中国に占領されようがされまいが、どうでもいい。いずれにせよわれわれの家族は中国から来たのだから」と。
昨年台湾軍に入隊したフィル・ピーさん(21)は、兵役期間に学んだことは皆無に近いと振り返った。新型コロナウイルス関連の規制のため、マスク着用中の運動は過酷すぎると判断され、徴集兵は走ることさえなかった、と彼は言う。数えるほどだが、射撃訓練は行ったと。
台北の繁華街、西門町でインタビューした他の若者たちも異口同音に、中国の絶大な力を考えれば、自分の命を犠牲にすることにはほとんど意味がないと語ったと、WSJ。
台湾の国防大学の学生、イーハオさんは例外だった。「ウクライナで戦争が起きる前、ロシアの軍事力は中国よりも強大で、台湾の軍事力はウクライナよりも強いと教わった」。「彼らがこれほど長く抵抗できたのなら、台湾は必ず持ちこたえられる」と。
「若者たちは中国との統一を望んでいない」と台湾空軍の元副司令、張延廷・退役中将は言う。「だが独立を望むならば、戦う必要がある。そこに対立点がある」とも。
6月に海軍兵学校を卒業し、中尉となったライ・イーチーさん。彼女はウクライナ兵たちの勇敢さと強じんさを知って奮い立ったと話す。「われわれもそのような精神と決意を体現しなければいけない」と。
台湾有事は、日本の有事との認識は、日本でどのくらい認識されているのでしょう。
尖閣諸島の実効支配の為に、尖閣諸島の領海侵入を受けている沖縄。
ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国は、台湾近海に弾道ミサイルを発射しましたが、5発が沖縄県・波照間島南西のEEZ内に撃ち込まれました。
https://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/
にも拘わらず、玉城県知事は、中国に朝貢姿勢外交。
https://blog.goo.ne.jp/yuujii_1946/e/ca1144a3fae6380e73a7fced35bdd2b0
どうする、日本の台湾有事への備え。
# 冒頭の画像は、軍事基地の訓練を視察した蔡総統。
この花の名前は、クラリーセージ
↓よろしかったら、お願いします。
台湾が迫られる選択「ウクライナか、香港か」 - WSJ
ロシアのウクライナ侵攻から台湾が得た二つの対立する教訓 Yaroslav Trofimov and Joyu Wang (以下 WSJと略称) 2023年 7月 11日
【台北(台湾)】台湾の人々は、ウクライナで起きた戦争がどう展開するかをつぶさに追っている。彼らのほぼ誰もがウクライナの大義に共感を抱くが、台湾自体の将来をめぐる結論は大きく割れている。
一方では、社会が固く結束すれば、一見無敵に思える敵でも打ち負かすことができるという教訓だと捉え、懸念される中国の侵略に抵抗する台湾の取り組みを鼓舞するものだと受け止めている。他方では、ウクライナの各都市が煙に包まれる画像から、正反対の教訓を導き出す人々もいる。戦争は最悪の事態であり、たとえ痛みを伴う妥協が必要でも、中国の逆鱗(げきりん)に触れないよう台湾はあらゆる手を尽くすべきという考え方だ。
二つの対立する見解は、来年1月に予定される台湾総統選挙で終始争点となるだろう。中国の軍事力が拡大する中、台湾の民主主義政権がいかに防衛を見直すべきかを方向づけることになる。台湾内部で戦わされる議論や軍備強化への決意は、仮に中国が人口2400万人と世界の先端半導体生産能力の大半を有する台湾の制圧に乗り出した場合、米国が軍事的にどの程度関与するかにも影響するのは必至だ。
中国共産党が1949年に本土を掌握して以来、台湾はずっと侵略の脅威にさらされてきた。だがロシアによるウクライナ侵攻は、台湾の人々に戦争は前触れなく始まるかもしれないことを痛感させた。中国指導部は台湾に対する論調を強め、「祖国統一」を成し遂げるためには武力行使も辞さないと繰り返している。また台湾の防衛力を疲弊させるため、中国は周辺海域・空域で探査を活発化させている。米中央情報局(CIA)は、習近平国家主席が台湾侵攻に向けた中国軍の準備を整える期限を2027年に設定したと推測している。
「ウクライナが強調したのは、攻撃的な隣人が一方的に行動を起こそうと決める可能性が少なからずあることだ」。非政府組織(NGO)フォワード・アライアンスの創設者イーノック・ウー氏はそう話す。同NGOは台湾の民間人に対し、緊急対応と応急処置の訓練を提供し始めた。「われわれは存亡に関わる脅威に直面している。だから防衛という任務に社会全体を巻き込まなければならない」
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統はすでに兵役義務期間を来年より4カ月から1年に延長すると表明している。台湾が米国から対艦ミサイル「ハープーン」数百発などを新たに購入するのに合わせ、軍事費も増額している。蔡氏には再出馬の資格はないが、与党・民主進歩党(民進党)の総統候補である頼清徳・副総統も同様に、台湾の独立を守り、中国が強める威圧に抵抗すると公約している。
元国家安全保障当局者で、頼氏の広報担当者を務めるヴィンセント・チャオ氏は、ウクライナは台湾に、いかに自国を守るべきか、いかに志を同じくする民主主義国家と連携を築くかについて「素晴らしい教訓」を与えた、と語る。
一方、最大野党・国民党は立場が異なる。「われわれは中国との対話を望み、それが可能だと考えている。実現すれば、間違いなく緊張を緩和させ、偶発的な戦争が起きないようにし、確実に意図的な戦争が起きないようにする」。国民党の夏立言・副主席は6月、今年2度目となる中国訪問に出発する直前のインタビューでそう語った。
ウクライナの悲劇は、中国政府への働きかけをなお一層不可欠なものにしている、と同氏は続けた。
国民党の総統候補である侯友宜・新北市長は今週、中国との関係を改善した後、兵役義務期間を4カ月に戻すと公約した。
昨秋の統一地方選では国民党が勝利したが、今のところ民進党の頼氏が世論調査でリードしている。第三勢力候補である中道派の柯文哲・前台北市長も高い支持を得ており、予測をさらに難しくしている。
中国指導部は、ロシア軍がウクライナでどうつまずくかを注意深く見守ってきた。ロシア軍は多数の死傷者を出し、相次ぐ軍の後退に見舞われている。それが民間軍事会社ワグネルが起こした先月の短い反乱の引き金になった。だがすでに香港が享受してきた高度な自治と市民の自由を抑圧した習氏が、ロシアの難局を理由に台湾侵攻の決意を鈍らせる兆候はない、と米当局者は言う。
台湾と中国本土は手ごわい自然の障壁――130キロメートル近い海域――に隔てられている。いかなる形の侵攻も、2022年2月にロシア軍の戦車隊列がウクライナ国境を越えたのに比べてずっと複雑なものとなる。中国軍部隊を運ぶ船艦や航空機は、台湾のミサイルの標的となり、当初、中国側に多数の死傷者が出る可能性が高い。
台湾は島であることから、弾薬や発電所燃料など重要物資の確保の面もより複雑になる。万一、中国軍が上陸拠点を複数作ることに成功した場合、面積がウクライナのわずか6%と狭い台湾では、戦略をそこから深化させるのは難しい。これは大半のウォーゲーム(机上演習)で立証されている。
「台湾にとって、(旧約聖書に登場する)少年ダビデが巨人ゴリアテに立ち向かうような状況だ」。台湾軍の報道官である孫立芳少将はそう述べた。「だがここはわれわれの故国であり、民主主義と自由のライフスタイルはその価値観の一部だ。どんなことをしてでも守り抜く」
米国には台湾防衛について拘束力のある義務はなく、この問題では「戦略的曖昧さ」政策を長年維持してきた。とはいえジョー・バイデン米大統領は、中国が武力による台湾制圧に乗り出した場合、ウクライナとは異なり、米軍が直接介入すると繰り返し警告している。ただ米軍が派遣される前に、台湾は最初の一撃に自力で抵抗する必要があるだろう。それについては最近改善されたものの、今のところ準備万端には程遠い、と多くの米当局者やアナリストは指摘する。
「台湾の人々は100%コミットするべきだ。そうでなければ、米国や他の国々が支援に駆けつける意味がない」。バージニア州アーリントンにあるミッチェル航空宇宙研究所の所長であるデビッド・デプトゥラ米退役空軍中将はそう語る。
過去1年に増額されたとはいえ、台湾の軍事予算は国内総生産(GDP)比2.4%にとどまる。米国は同3%を大きく超え、ポーランドは4%、イスラエルは約5%だ。台湾軍ではプロ意識と兵士の士気が特に懸念材料だ、と西側当局者らは話している。台湾の主な軍幹部養成学校の前身は、1920年代に中国南部に設立された黄埔軍官学校。ここはソ連出身の教官に大きく依存していた。そのため時代遅れのソ連式軍事文化や教義が今も根強く残っている、と防衛アナリストらは指摘する。
昨年末、兵役義務期間は1年に延長されたが、教育による繰り延べがあり、徴兵年齢にある市民の多くは2028年まで1年まるまる兵役に就くことはない。また有益な技能が身につかないとの声が多い徴集兵の訓練が、今後どの程度近代化されるかは不明だ。
現在、徴集兵の大半は中国人民解放軍を撃退する方法ではなく、床掃除や草むしりに時間を費やしている、と台湾軍の李喜明・元参謀総長(退役海軍大将)は語る。李氏は軍の準備態勢について声高に批判している。
「ただ同じことを4カ月の代わりに1年やるなら問題がある。悪評も立つ」と李氏は指摘。「問題は訓練の内容であって期間ではない。どれだけ長く行うかよりもどう行うかがはるかに重要だ」。台湾軍は訓練の改善に取り組んでいると話す。
台湾はまた、高度な訓練を受けた空軍パイロットなど、プロの兵士の引き留めにも苦労している。台湾国防部は最近の報告書の中で、過去5年間にキャリア兵士の約20%が契約満了予定日前に軍を辞める決定をしたと述べた。報告書によると、昨年だけで3700人以上が退職を願い出た。
蔡総統が率いる民進党は2016年から政権を担っている。同党は国民党の一党支配に対する1980年代の民主化運動に端を発し、本土の中国人と自分たちを区別する台湾人の気質に訴えかけてきた。
「台湾の民間人はかつて軍との距離があまり近くなかった。昔の軍隊は外部から来たもので、内部から発生したわけではなかった。民間人と兵士の間には大きな溝があった」。そう話す民進党の王定宇・立法委員(国会議員)は、立法院(国会)国防委員会の主要メンバーを務める。
「ただ、これは古い状況だと言わざるを得ない」と王氏は続けた。蔡総統の下で「軍に民主主義を守る必要があると認識させ」、軍民間の関係は変化した。政府は兵士の給与を引き上げ、訓練プログラムの近代化を進めている(外国人教官を招く、台湾軍の一部部隊を米国での演習に派遣するなど)と説明した。
もっとも、まだ一般市民の間に新たな軍との向き合い方は広がらず、兵役に敬意を払ったり、魅力を感じたりすることは少ないようだ。数週間後に入隊するワン・チュンウェイさんは、台湾の多くの若い男性と同様、兵役経験が楽しみではないと語った。「何も期待しない。全くの時間の浪費だ」。それより自宅に残り、家族経営の会社で働きたかったと語った。「中国に占領されようがされまいが、どうでもいい。いずれにせよわれわれの家族は中国から来たのだから」
昨年台湾軍に入隊したフィル・ピーさん(21)は、兵役期間に学んだことは皆無に近いと振り返った。新型コロナウイルス関連の規制のため、マスク着用中の運動は過酷すぎると判断され、徴集兵は走ることさえなかった、と彼は言う。数えるほどだが、射撃訓練は行ったという。
台北の繁華街、西門町でインタビューした他の若者たちも異口同音に、中国の絶大な力を考えれば、自分の命を犠牲にすることにはほとんど意味がないと語った。
「若者たちは中国との統一を望んでいない」と台湾空軍の元副司令、張延廷・退役中将は言う。「だが独立を望むならば、戦う必要がある。そこに対立点がある」
台湾の国防大学の学生、イーハオさんは例外だった。「ウクライナで戦争が起きる前、ロシアの軍事力は中国よりも強大で、台湾の軍事力はウクライナよりも強いと教わった」と彼は言う。「彼らがこれほど長く抵抗できたのなら、台湾は必ず持ちこたえられる」。彼は軍から発言を認められていないため、自分の姓を使うことを望まなかった。
6月に海軍兵学校を卒業し、中尉となったライ・イーチーさん。彼女はウクライナ兵たちの勇敢さと強じんさを知って奮い立ったと話す。「われわれもそのような精神と決意を体現しなければいけない」
ロシアのウクライナ侵攻から台湾が得た二つの対立する教訓 Yaroslav Trofimov and Joyu Wang (以下 WSJと略称) 2023年 7月 11日
【台北(台湾)】台湾の人々は、ウクライナで起きた戦争がどう展開するかをつぶさに追っている。彼らのほぼ誰もがウクライナの大義に共感を抱くが、台湾自体の将来をめぐる結論は大きく割れている。
一方では、社会が固く結束すれば、一見無敵に思える敵でも打ち負かすことができるという教訓だと捉え、懸念される中国の侵略に抵抗する台湾の取り組みを鼓舞するものだと受け止めている。他方では、ウクライナの各都市が煙に包まれる画像から、正反対の教訓を導き出す人々もいる。戦争は最悪の事態であり、たとえ痛みを伴う妥協が必要でも、中国の逆鱗(げきりん)に触れないよう台湾はあらゆる手を尽くすべきという考え方だ。
二つの対立する見解は、来年1月に予定される台湾総統選挙で終始争点となるだろう。中国の軍事力が拡大する中、台湾の民主主義政権がいかに防衛を見直すべきかを方向づけることになる。台湾内部で戦わされる議論や軍備強化への決意は、仮に中国が人口2400万人と世界の先端半導体生産能力の大半を有する台湾の制圧に乗り出した場合、米国が軍事的にどの程度関与するかにも影響するのは必至だ。
中国共産党が1949年に本土を掌握して以来、台湾はずっと侵略の脅威にさらされてきた。だがロシアによるウクライナ侵攻は、台湾の人々に戦争は前触れなく始まるかもしれないことを痛感させた。中国指導部は台湾に対する論調を強め、「祖国統一」を成し遂げるためには武力行使も辞さないと繰り返している。また台湾の防衛力を疲弊させるため、中国は周辺海域・空域で探査を活発化させている。米中央情報局(CIA)は、習近平国家主席が台湾侵攻に向けた中国軍の準備を整える期限を2027年に設定したと推測している。
「ウクライナが強調したのは、攻撃的な隣人が一方的に行動を起こそうと決める可能性が少なからずあることだ」。非政府組織(NGO)フォワード・アライアンスの創設者イーノック・ウー氏はそう話す。同NGOは台湾の民間人に対し、緊急対応と応急処置の訓練を提供し始めた。「われわれは存亡に関わる脅威に直面している。だから防衛という任務に社会全体を巻き込まなければならない」
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統はすでに兵役義務期間を来年より4カ月から1年に延長すると表明している。台湾が米国から対艦ミサイル「ハープーン」数百発などを新たに購入するのに合わせ、軍事費も増額している。蔡氏には再出馬の資格はないが、与党・民主進歩党(民進党)の総統候補である頼清徳・副総統も同様に、台湾の独立を守り、中国が強める威圧に抵抗すると公約している。
元国家安全保障当局者で、頼氏の広報担当者を務めるヴィンセント・チャオ氏は、ウクライナは台湾に、いかに自国を守るべきか、いかに志を同じくする民主主義国家と連携を築くかについて「素晴らしい教訓」を与えた、と語る。
一方、最大野党・国民党は立場が異なる。「われわれは中国との対話を望み、それが可能だと考えている。実現すれば、間違いなく緊張を緩和させ、偶発的な戦争が起きないようにし、確実に意図的な戦争が起きないようにする」。国民党の夏立言・副主席は6月、今年2度目となる中国訪問に出発する直前のインタビューでそう語った。
ウクライナの悲劇は、中国政府への働きかけをなお一層不可欠なものにしている、と同氏は続けた。
国民党の総統候補である侯友宜・新北市長は今週、中国との関係を改善した後、兵役義務期間を4カ月に戻すと公約した。
昨秋の統一地方選では国民党が勝利したが、今のところ民進党の頼氏が世論調査でリードしている。第三勢力候補である中道派の柯文哲・前台北市長も高い支持を得ており、予測をさらに難しくしている。
中国指導部は、ロシア軍がウクライナでどうつまずくかを注意深く見守ってきた。ロシア軍は多数の死傷者を出し、相次ぐ軍の後退に見舞われている。それが民間軍事会社ワグネルが起こした先月の短い反乱の引き金になった。だがすでに香港が享受してきた高度な自治と市民の自由を抑圧した習氏が、ロシアの難局を理由に台湾侵攻の決意を鈍らせる兆候はない、と米当局者は言う。
台湾と中国本土は手ごわい自然の障壁――130キロメートル近い海域――に隔てられている。いかなる形の侵攻も、2022年2月にロシア軍の戦車隊列がウクライナ国境を越えたのに比べてずっと複雑なものとなる。中国軍部隊を運ぶ船艦や航空機は、台湾のミサイルの標的となり、当初、中国側に多数の死傷者が出る可能性が高い。
台湾は島であることから、弾薬や発電所燃料など重要物資の確保の面もより複雑になる。万一、中国軍が上陸拠点を複数作ることに成功した場合、面積がウクライナのわずか6%と狭い台湾では、戦略をそこから深化させるのは難しい。これは大半のウォーゲーム(机上演習)で立証されている。
「台湾にとって、(旧約聖書に登場する)少年ダビデが巨人ゴリアテに立ち向かうような状況だ」。台湾軍の報道官である孫立芳少将はそう述べた。「だがここはわれわれの故国であり、民主主義と自由のライフスタイルはその価値観の一部だ。どんなことをしてでも守り抜く」
米国には台湾防衛について拘束力のある義務はなく、この問題では「戦略的曖昧さ」政策を長年維持してきた。とはいえジョー・バイデン米大統領は、中国が武力による台湾制圧に乗り出した場合、ウクライナとは異なり、米軍が直接介入すると繰り返し警告している。ただ米軍が派遣される前に、台湾は最初の一撃に自力で抵抗する必要があるだろう。それについては最近改善されたものの、今のところ準備万端には程遠い、と多くの米当局者やアナリストは指摘する。
「台湾の人々は100%コミットするべきだ。そうでなければ、米国や他の国々が支援に駆けつける意味がない」。バージニア州アーリントンにあるミッチェル航空宇宙研究所の所長であるデビッド・デプトゥラ米退役空軍中将はそう語る。
過去1年に増額されたとはいえ、台湾の軍事予算は国内総生産(GDP)比2.4%にとどまる。米国は同3%を大きく超え、ポーランドは4%、イスラエルは約5%だ。台湾軍ではプロ意識と兵士の士気が特に懸念材料だ、と西側当局者らは話している。台湾の主な軍幹部養成学校の前身は、1920年代に中国南部に設立された黄埔軍官学校。ここはソ連出身の教官に大きく依存していた。そのため時代遅れのソ連式軍事文化や教義が今も根強く残っている、と防衛アナリストらは指摘する。
昨年末、兵役義務期間は1年に延長されたが、教育による繰り延べがあり、徴兵年齢にある市民の多くは2028年まで1年まるまる兵役に就くことはない。また有益な技能が身につかないとの声が多い徴集兵の訓練が、今後どの程度近代化されるかは不明だ。
現在、徴集兵の大半は中国人民解放軍を撃退する方法ではなく、床掃除や草むしりに時間を費やしている、と台湾軍の李喜明・元参謀総長(退役海軍大将)は語る。李氏は軍の準備態勢について声高に批判している。
「ただ同じことを4カ月の代わりに1年やるなら問題がある。悪評も立つ」と李氏は指摘。「問題は訓練の内容であって期間ではない。どれだけ長く行うかよりもどう行うかがはるかに重要だ」。台湾軍は訓練の改善に取り組んでいると話す。
台湾はまた、高度な訓練を受けた空軍パイロットなど、プロの兵士の引き留めにも苦労している。台湾国防部は最近の報告書の中で、過去5年間にキャリア兵士の約20%が契約満了予定日前に軍を辞める決定をしたと述べた。報告書によると、昨年だけで3700人以上が退職を願い出た。
蔡総統が率いる民進党は2016年から政権を担っている。同党は国民党の一党支配に対する1980年代の民主化運動に端を発し、本土の中国人と自分たちを区別する台湾人の気質に訴えかけてきた。
「台湾の民間人はかつて軍との距離があまり近くなかった。昔の軍隊は外部から来たもので、内部から発生したわけではなかった。民間人と兵士の間には大きな溝があった」。そう話す民進党の王定宇・立法委員(国会議員)は、立法院(国会)国防委員会の主要メンバーを務める。
「ただ、これは古い状況だと言わざるを得ない」と王氏は続けた。蔡総統の下で「軍に民主主義を守る必要があると認識させ」、軍民間の関係は変化した。政府は兵士の給与を引き上げ、訓練プログラムの近代化を進めている(外国人教官を招く、台湾軍の一部部隊を米国での演習に派遣するなど)と説明した。
もっとも、まだ一般市民の間に新たな軍との向き合い方は広がらず、兵役に敬意を払ったり、魅力を感じたりすることは少ないようだ。数週間後に入隊するワン・チュンウェイさんは、台湾の多くの若い男性と同様、兵役経験が楽しみではないと語った。「何も期待しない。全くの時間の浪費だ」。それより自宅に残り、家族経営の会社で働きたかったと語った。「中国に占領されようがされまいが、どうでもいい。いずれにせよわれわれの家族は中国から来たのだから」
昨年台湾軍に入隊したフィル・ピーさん(21)は、兵役期間に学んだことは皆無に近いと振り返った。新型コロナウイルス関連の規制のため、マスク着用中の運動は過酷すぎると判断され、徴集兵は走ることさえなかった、と彼は言う。数えるほどだが、射撃訓練は行ったという。
台北の繁華街、西門町でインタビューした他の若者たちも異口同音に、中国の絶大な力を考えれば、自分の命を犠牲にすることにはほとんど意味がないと語った。
「若者たちは中国との統一を望んでいない」と台湾空軍の元副司令、張延廷・退役中将は言う。「だが独立を望むならば、戦う必要がある。そこに対立点がある」
台湾の国防大学の学生、イーハオさんは例外だった。「ウクライナで戦争が起きる前、ロシアの軍事力は中国よりも強大で、台湾の軍事力はウクライナよりも強いと教わった」と彼は言う。「彼らがこれほど長く抵抗できたのなら、台湾は必ず持ちこたえられる」。彼は軍から発言を認められていないため、自分の姓を使うことを望まなかった。
6月に海軍兵学校を卒業し、中尉となったライ・イーチーさん。彼女はウクライナ兵たちの勇敢さと強じんさを知って奮い立ったと話す。「われわれもそのような精神と決意を体現しなければいけない」
一方では、社会が固く結束すれば、一見無敵に思える敵でも打ち負かすことができるという教訓だと捉え、懸念される中国の侵略に抵抗する台湾の取り組みを鼓舞するものだと受け止めている。
他方では、ウクライナの各都市が煙に包まれる画像から、正反対の教訓を導き出す人々もいる。戦争は最悪の事態であり、たとえ痛みを伴う妥協が必要でも、中国の逆鱗(げきりん)に触れないよう台湾はあらゆる手を尽くすべきという考え方だと、WSJ。
二つの対立する見解は、来年1月に予定される台湾総統選挙で終始争点となるだろうと。
台湾内部で戦わされる議論や軍備強化への決意は、米国が軍事的にどの程度関与するかにも影響するのは必至。
中国指導部は台湾に対する論調を強め、「祖国統一」を成し遂げるためには武力行使も辞さないと繰り返している。また台湾の防衛力を疲弊させるため、中国は周辺海域・空域で探査を活発化させている。米中央情報局(CIA)は、習近平国家主席が台湾侵攻に向けた中国軍の準備を整える期限を2027年に設定したと推測しているのだそうです。
蔡氏には再出馬の資格はないが、与党・民主進歩党(民進党)の総統候補である頼清徳・副総統も同様に、台湾の独立を守り、中国が強める威圧に抵抗すると公約している。
一方、最大野党・国民党は立場が異なる。「われわれは中国との対話を望み、それが可能だと考えている。実現すれば、間違いなく緊張を緩和させ、偶発的な戦争が起きないようにし、確実に意図的な戦争が起きないようにする」。国民党の夏立言・副主席は6月、今年2度目となる中国訪問に出発する直前のインタビューでそう語ったのだそうです。
総統選では、国民党の総統候補である侯友宜・新北市長は今週、中国との関係を改善した後、兵役義務期間を4カ月に戻すと公約した。
昨秋の統一地方選では国民党が勝利したが、今のところ民進党の頼氏が世論調査でリードしている。第三勢力候補である中道派の柯文哲・前台北市長も高い支持を得ており、予測をさらに難しくしていると、WSJ。
中国指導部は、ロシア軍がウクライナでどうつまずくかを注意深く見守ってきた。ロシア軍は多数の死傷者を出し、相次ぐ軍の後退に見舞われている。それが民間軍事会社ワグネルが起こした先月の短い反乱の引き金になった。
習氏が、ロシアの難局を理由に台湾侵攻の決意を鈍らせる兆候はない、と米当局者は言っているのだそうです。
米国には台湾防衛について拘束力のある義務はなく、この問題では「戦略的曖昧さ」政策を長年維持してきた。とはいえジョー・バイデン米大統領は、中国が武力による台湾制圧に乗り出した場合、ウクライナとは異なり、米軍が直接介入すると繰り返し警告している。
ただ米軍が派遣される前に、台湾は最初の一撃に自力で抵抗する必要があるだろう。それについては最近改善されたものの、今のところ準備万端には程遠い、と多くの米当局者やアナリストは指摘すると、WSJ。
台湾軍ではプロ意識と兵士の士気が特に懸念材料だ、と西側当局者らは話している。台湾の主な軍幹部養成学校の前身は、1920年代に中国南部に設立された黄埔軍官学校。ここはソ連出身の教官に大きく依存していた。そのため時代遅れのソ連式軍事文化や教義が今も根強く残っている、と防衛アナリストらは指摘しているのだそうです。
現在、徴集兵の大半は中国人民解放軍を撃退する方法ではなく、床掃除や草むしりに時間を費やしている、と台湾軍の李喜明・元参謀総長(退役海軍大将)は語る。李氏は軍の準備態勢について声高に批判していると、WSJ。
「ただ同じことを4カ月の代わりに1年やるなら問題がある。悪評も立つ」と李氏は指摘。「問題は訓練の内容であって期間ではない。どれだけ長く行うかよりもどう行うかがはるかに重要だ」。台湾軍は訓練の改善に取り組んでいると、李氏。
台湾軍はまた、プロの兵士の引き留めにも苦労している。台湾国防部は最近の報告書の中で、過去5年間にキャリア兵士の約20%が契約満了予定日前に軍を辞める決定をしたと述べたのだそうです。
蔡総統が率いる民進党は2016年から政権を担っている。同党は国民党の一党支配に対する1980年代の民主化運動に端を発し、本土の中国人と自分たちを区別する台湾人の気質に訴えかけてきた。
「台湾の民間人はかつて軍との距離があまり近くなかった。昔の軍隊は外部から来たもので、内部から発生したわけではなかった。民間人と兵士の間には大きな溝があった」。そう話すのは、民進党の立法院(国会)国防委員会の主要メンバー王定宇・立法委員(国会議員)。
「ただ、これは古い状況だと言わざるを得ない」と王氏は続けた。蔡総統の下で「軍に民主主義を守る必要があると認識させ」、軍民間の関係は変化したと。
もっとも、まだ一般市民の間に新たな軍との向き合い方は広がらず、兵役に敬意を払ったり、魅力を感じたりすることは少ないようだとも。
数週間後に入隊するワン・チュンウェイさんは、「全くの時間の浪費だ」。それより自宅に残り、家族経営の会社で働きたかったと語った。「中国に占領されようがされまいが、どうでもいい。いずれにせよわれわれの家族は中国から来たのだから」と。
昨年台湾軍に入隊したフィル・ピーさん(21)は、兵役期間に学んだことは皆無に近いと振り返った。新型コロナウイルス関連の規制のため、マスク着用中の運動は過酷すぎると判断され、徴集兵は走ることさえなかった、と彼は言う。数えるほどだが、射撃訓練は行ったと。
台北の繁華街、西門町でインタビューした他の若者たちも異口同音に、中国の絶大な力を考えれば、自分の命を犠牲にすることにはほとんど意味がないと語ったと、WSJ。
台湾の国防大学の学生、イーハオさんは例外だった。「ウクライナで戦争が起きる前、ロシアの軍事力は中国よりも強大で、台湾の軍事力はウクライナよりも強いと教わった」。「彼らがこれほど長く抵抗できたのなら、台湾は必ず持ちこたえられる」と。
「若者たちは中国との統一を望んでいない」と台湾空軍の元副司令、張延廷・退役中将は言う。「だが独立を望むならば、戦う必要がある。そこに対立点がある」とも。
6月に海軍兵学校を卒業し、中尉となったライ・イーチーさん。彼女はウクライナ兵たちの勇敢さと強じんさを知って奮い立ったと話す。「われわれもそのような精神と決意を体現しなければいけない」と。
台湾有事は、日本の有事との認識は、日本でどのくらい認識されているのでしょう。
尖閣諸島の実効支配の為に、尖閣諸島の領海侵入を受けている沖縄。
ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国は、台湾近海に弾道ミサイルを発射しましたが、5発が沖縄県・波照間島南西のEEZ内に撃ち込まれました。
https://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/
にも拘わらず、玉城県知事は、中国に朝貢姿勢外交。
https://blog.goo.ne.jp/yuujii_1946/e/ca1144a3fae6380e73a7fced35bdd2b0
どうする、日本の台湾有事への備え。
# 冒頭の画像は、軍事基地の訓練を視察した蔡総統。
この花の名前は、クラリーセージ
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