中国の経済減速と、原油価格暴落とが発信源となり、「リーマンショック」に匹敵する世界経済の悪化が起きようとしていると、警鐘をならしておられました。
これまで、この「中原ショック」について触れさせていただいていますが、夫々の近況と展望の記事を、読売が載せていました。備忘録として、掲載させていただきます。
世界同時株安は、対策として打てるものがあるとすれば、「原油価格管理」だと、随所で書かせていただいてきましたが、産油各国がシェアの確保を狙い、チキンレースを展開する様相を呈していました。
しかし、止まらない価格下落への対策として、OPECの主要国やロシアが協議を始めていました。
原油価格の低迷を受け、サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)加盟国3か国とロシアが生産量を1月の水準に据え置くことで合意、イランもこれを支持したことで、産油国間で生産調整に向けた模索が始まった。断交するサウジとイランが政治対立を超えて協調するかは不透明で、今後、ほかの産油国も巻き込んだ駆け引きが過熱しそうだ。
【テヘラン=中西賢司、カイロ=溝田拓士】増産を凍結する方針で合意した2日後の18日、サウジのジュベイル外相は、AFP通信に「減産する用意はない」と語った。原油安を招く供給過剰を解消するため、サウジ自らが身を削る意思はないと強調したものだ。生産調整に参加するかどうかの態度をはっきりさせないイランをけん制する狙いがあるとみられる。
サウジは、原油による収入の減少で、今年の財政赤字が10兆円規模に膨らむと見込んでおり、原油安に歯止めはかけたい。一方で、中東で覇権を竸うイランを利したくないのも本音だ。
安全保障面での焦りもある。反体制派を支援するシリア内戦では、最近、イランとロシアの支援を受けるアサド政権の優勢が目立つ。イランが原油収入で経済力を高めれば、軍事介入を強めるのは必至だ。
イランは増産凍結方針を支持した。しかし、共同歩調をとれば、1月の経済制裁解除で弾みをつけようとしている経済復興のシナリオに狂いが生じかねない。
ロイター通信によると、イランのザンギャネ石油相は、ベネズエラなどと増産凍結を協議した17日の石油担当相会合で、制裁で失った市場占有率を取り戻すことにこだわったという。
過去20年をみると、世界の原油生産量は増加し、現在、サウジやロシアの生産量はこれまでの最高水準に達している。経済制裁下のイランは生産量を減らしたため「原油安は、対イラン制裁中に増産を進めた国の責任だ」として、サウジなどを批判していた。
イランの産油量は昨年12月、日量288万バレルと制裁強化前の11年の8割の水準に落ち込んだ。制裁解除を受け、日量100万バレルの増産戦略を描く。ただ、施設の老朽化のため「すぐに増やせるのは日量50万バレル程度まで」(外交筋)とされ、さらに増産するには油田開発などに相応の時間がかかる。仮にイランが増産凍結に応じたとしても、すでに生産し備蓄している原油で輸出を増やしつつ、増産体制の整備を急ぐのではないかとの見方も出ている。
増産凍結合意 米露も好影響
【モスクワ=田村雄、ワシントン=安江邦彦】タス通信によると、ロシアのエネルギー省のモロドツォフ次官は18日、「ロシアは1月11日時点で1.9%の増産だった。ロシアは、この傾向を維持できる」と述べ、16日の合意を改めて歓迎した。ロシアは、歳入の約5割をエネルギー分野に依存する。原油安などの影響で、財政赤字は昨年、約2兆ルーブル(約3兆円)に達した。イランが増産凍結合意を支侍したことにより、指標となるテキサス産軽質油(WTI)の先物価格は一時の1バレル=20ドル台半ばから上昇し、19日も30ドル前後となった。16日の合意では1月の生産水準を維持でき、ロシアは原油収入増が見込める。
米オバマ政権は昨年、イラン核合意をまとめ、経済制裁解除に踏み切った。野党・共和党は昨年、原油輸出の40年ぶりの解禁を主導し、1月から輸出が本格的に始まった。採掘技術の発展で「シェールオイル」産出が増え石油業界から要請があったためだが、共和党にはイランへの対抗の意図もある。ただ、輸出解禁も原油安の一因となっていた。
「シェールオイル」は巨額の開発資金を必要とするため、WTIの先物価格が1バレル=30ドル前後ではまだ採算割れが続出する。今回の合意をきっかけに原油価格がさらに上がれば、米石油関連企業が息を吹き返す可能性がある。
原油供給体制が、シェールオイルの出現で増えていたところに、イラクの制裁解除で、更に供給能力が増し、他方、中国の経済減速による原油使用量の減速。そのダブルパンチに加えて、かつての様なコントロール機能を失った「OPEC」が、生産調整機能を低減させていることは明らかで、諸兄がご承知のことですね。
当初は、エジプトが米国のシェールガスの台頭を潰す為に価格競争を仕掛けたとか、ロシアの力による現状変更をけん制するため、ロシア経済の源の資源輸出に打撃を与える為とかといった、解説者の声が聞こえていました。需給バランスだけでなく、政治的な思惑があるというものでした。
政治的思惑が、価格下落の原因のひとつであれば、決着は困難で、状況は長引くと考えていました。
産油各国の、仁義なきチキンレースが続くのかと、憂慮していましたが、各国の危機意識が高まったのでしょうか、価格調整の会合が開かれました。
そこで、合意されたのは、減産調整までは至りませんでしたが、増産の停止。イラクも賛意を示したとのことです。
減産までとなると、ようやく制裁解除され、原油の増産での経済立て直しが求められるイランの賛同が得られないとの認識で、増産なしの現状維持の線で、産油各国の合意が見られたのですね。
ただ、宗教的にも激しく対立するエジプトとイラク。生産調整の先行きに、かつての「OPEC」の様な結束力を望むことは難しく、楽観は出来ませんね。
中国経済の減速については、中国政府の対応にも原因があったとし、証券当局トップの肖氏は、「株式市場や取引制度の未熟さを露呈してしまった」と非を認め、李克強首相も、「技術的な対応が不十分だった。関連部門は教訓として総括すべきだ」と述べています。
中国の要人が素直に非を認めるのは自分の失脚にもつながる話で、国民性からも信じられない素直さです。経済減速の深刻化を人為的ミスと原因転嫁することで覆い隠そうとしていると疑うのは、考えすぎでしょうか。
「機内持ち込みの荷物が多すぎます。これ以上は買い物できませんよ」
旧正月(春節)連休中の2月9日。羽田空港で航空会社の職員が、大型の旅行かばんを多く抱えた中国人観光客に声を張り上げた。「爆買い」はなお日本経済に恩恵を及ぼしているが、中国本土に目を向ければ、「官製バブル」の崩壊で痛手を被った人が少なくない。
逃げた投資家
「資産の1割が消えた」
北京市内の証券会社の店頭。退職後に株の取引を始めた65歳の女性は、大幅な値下がりで市場の取引が停止したことを示す株価ボードの前で力なく語った。
1月4日、年明け最初の取引で上海、深圳両株式市場の株価は7%も急落した。
「時限爆弾が破裂した」
年明けの株安を予測していた金融専門家はうめいた。
2015年夏に株価が急落した「チャイナショック」を受け、証券当局は上場企業の大株主に対し、「半年間の株式大量売却禁止」を通知した。それが、今年1月8日に期限が切れる「時限爆弾」であった。
大株主が大量の売りを出す前に、個人投資家が売り抜けを図った。別の市場関係者は「穴が開いた船から、投資家が我先に逃げ出した」と話す。
中国の代表的な株価指数である上海総合指数は15年末から約20%下落、ピークだった15年6月のほぼ半分の水準に落ち込んだ。今年1月14日には証券当局トプの肖鋼氏が「1億人近い個人投資家らの財産権を保護する職責を怠った」として個人投資家に提訴さた。
1月下旬。著名な米投資家ジョージ・ソロス氏がスイスで語った刺激的な言葉が追い打ちをかけた。
「(08年の)リーマン・ショックは米国が発端だった。今回は中国だ。中国済はハードランディング避けられない」
ソロス氏の率いるヘッジファンドは15年夏までに、保有する中国の電子商取引大手「アリババ集団」や検索大手「百度」の株式の人半を売り払っていた。説得力は十分である。
中国政府のあせりを物語るように、共産党機関紙・人民日報をはじめ、各紙が連日、「あり得ない」と反論を繰り返した。
見せかけの活況
官製バブルのきっかけは14年11月に遡る。
中国人民銀行(中央銀行)が2年4か月ぶりに利下げに踏み切った。国営メディアも投資を推奨する記事を載せた。不動産バブルへの国民の不満が体制批判につながることを避け、株式投資に目を向けさせる。それが中国政府の狙いだった。
14年初めに2100ポイント程度だった上海指数は、14年末には約1.5倍に上昇。15年3月には証券口座が2億件を超えた。個人投資家の売買は全体の8割を占め、「全国民が株式投資中」とまで言われた。
だが、個人の大半は「うわさで銘柄を選ぶ」(市場関係者)レベル。元手が足りない投資家に、高利でお金を貸す「ヤミの業者」も暗躍し、市場は見せかけの活況に沸いた。
上海指数が15年6月、5000ポイントを超えた後、バブルは突如はじけた。証券当局が、手元資金より大きな売買ができる「信用取引」の規制に乗り出したためだった。
その後も止まらぬ株安に、証券当局トップの肖氏は今年1月、年間業務を総括する会議でこう述べた。
「株式市場や取引制度の未熟さを露呈してしまった」
会議は肖氏が投資家に訴えられた2日後に開かれた。政府は、幹部が反省を口にする異例の事態を中国メディァに大きく報道させた。インサイダー取引が疑われる証券会社などの摘発も強化した。国民の不満を解消する狙いが透けて見える。
2月14日。李克強首相は国務院常務会議(閣議に相当)で、「当局の市場安定化策は正しかった」と強弁する一方、「技術的な対応が不十分だった。関連部門は教訓として総括すべきだ」と語った。
株がダメなら為替
景気減速を受け、習近平指導部は、16年の経済成長率の目標を、これまでより低い「6.5~7%」に引き下げる方針だ。
国民の間では通貨・人民元を手放す「元離れ」も広がる。元がドルに対して値下がりすれば、将来、ドルを元に戻した時に利益を得られる。ドル預金をする日本人が、円安になるほどもうかるのと同じ理屈だ。
「政府の対策は信用できない。株がダメなら為替でもうけるしかない」
上海のある男性(60)は最近、家族3人の年間制限額の上限に当たる15万が(約1700万円)分の人民元を両替したという。
世界株安の震源地となった中国。経済の動向は全世界に影響する。異質な巨大市場に対し、国内外の投資家が厳しい目を向けている。
止まらない世界同時株安(原油価格協議で一服感はありますが)と円高。「中原ショック」が、「リーマンショック」の様な世界経済破綻に発展するのか。まだまだ警戒が必要ですね。
余談ですが、中国経済の失速と原油安が同時に紙面で掲載されるようになってきました。「中原ショック」という言葉が、広まるかもしれません。。 (^^;
# 冒頭の画像は、中国証券当局トプの肖鋼氏
この花の名前は、シラヤマギク
竹島に関する動画 / 政府広報 - YouTube
杉原由美子氏による絵本「メチのいた島」読み聞かせ - YouTube
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