遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

豪の潜水艦選定 北京の共産党関係者は「中国の外交上の勝利だ」と

2016-04-27 23:58:58 | EEZ 全般
 オーストラリアのターンブル首相は、日独仏が受注を争っていた次期潜水艦の共同開発相手にフランス企業を選定したと、26日に発表しました。
 日本国内では、受注競争に負けたと悲嘆する声があり、一方の中国では、「中国外交の勝利」との声があがっています。
 遊爺は、中国の味方をするわけではなく、破談になって良かったと慶んでいます。
 次世代戦闘機ではステルス性能が競われていますが、潜水艦は静音性能と潜航航続距離(or 時間)が求められています。日本の「そうりゅう型」潜水艦の静音性能は、他の追随を許さず、中国の現状能力では発見不可能とされるレベルであることは衆知のことですね。
 国外への輸出については、その技術機密の漏えいが危惧されることから、反対意見が主流でした。
 しかし、日豪の安全保障連携の絆を強化する為に、安倍首相とアボット前首相との親交関係の中で、日本国内の反対世論を押し切って安倍首相が輸出を決断したのでした。
 それが、いつの間にか、仏・独を加えた三国の競合入札となり、日本国内では競合に負けずに入札を獲得すべきとの世論に代わってしまっていました。

 そして今回、受注出来なかったと悲嘆する声が多数になっています。悲嘆する理由は、輸出の金額が稼げなかったこと。
 裏を返せば、理由は問わず何でもいいから金を稼げという、お金至上主義の発想。
 武器輸出禁止を唱えていた声は、どこへ行ったのでしょう。なんでもいいから、政府を批判すればいいと言う姿勢が、武器輸出反対を唱え、輸出の商談に敗れたら、敗れたことを批判することに変わっているのではありませんか?
 
 中国は、豪の「そうりゅう型」導入断念を、中国外交の勝利と喜んでいるのですね。この一事がすべてを物語っていますね。
 

豪潜水艦選定 日豪接近に警戒感「中国外交の勝利」 (4/27 産経)

 【北京=矢板明夫】オーストラリアの次期潜水艦の共同開発相手に日本が選ばれなかったことについて、北京の共産党関係者は「中国の外交上の勝利だ」との感想
をもらした。
 豪州が日本の「そうりゅう型」潜水艦をベースにした提案を採用する可能性がささやかれた昨年夏頃から、中国メディアは「日本の野心が南太平洋に膨張した」などと伝え、警戒感を強めた。
「そうりゅうが採用されれば、地域の軍事バランスが崩れる。日本は軍事的トラブルメーカーになろうとしている」
と分析する軍事評論家もいた。
 
中国が最も警戒したのは、潜水艦の共同開発による日豪の軍事的接近だったとみられる。共産党関係者は「南シナ海で日米豪の3強と対峙(たいじ)することを避けることは中国にとって大きな外交課題
だ」と語った。

 2015年9月、豪州で
ターンブル政権が発足すると、中国当局は豪州への外交攻勢を展開。ターンブル首相の息子は中国の政府系シンクタンクに所属した元共産党幹部の娘と結婚しており、豪州の歴代政権の中で最も親中的といわれている。また、豪州にとり中国は最大の貿易相手国で、鉱石などの主な輸出先でもある。中国は経済分野で「アメとムチ」を使い分けながら潜水艦問題で豪州に圧力をかけた可能性
がある。
 中国としては同年10月、中国企業が南シナ海に近い豪州北部
ダーウィン港の99年間の「リース権」を獲得したのに続く、対豪州外交の成果となった。

 中国が南シナ海の領土・領海空権を重視する理由は、「一帯一路」の海路の基点でもあり、エネルギー輸入路であること。また日本にとってもエネルギー輸入海路であり、エネルギー安全保障には重要な海域なのですが、そこを中国が制圧できることがあります。太平洋戦争の発端の理由として、この海路を断たれて日本のエネルギー輸入が封鎖されたことであったのは衆知のことですね。
 もう一つ重要な理由に、中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略があります。米国の空母艦隊の中国への接近を阻止するもので、潜水艦から発射されるJL-1(巨浪1号)、JL-2(巨波2号)の回遊が発見され辛い深海として、浅い東シナ海より重視されているのですね。
 その中国の戦略で脅威なのは、世界でトップクラスの日本の空や海での潜水艦哨戒探知能力。その一環で重要な役割を占めるのが、静音性能が秀逸な「そうりゅう型」潜水艦なのです。勿論、艦船にとっても、脅威です。

 世界の羨望の技術で、アボット首相から輸出の引き合いがあった時に、日本国内の世論を抑えて安倍首相が決断し、魚雷やミサイルは米国制を搭載することにし、日米豪の共同開発ということでの豪州への輸出の計画が立ち上げられたのでした。
 

豪潜水艦 官邸主導…海自は消極的 (4/27 産経)

 オーストラリアの次期潜水艦の共同開発相手選定で日本が敗れた背景には、総選挙を控えた豪ターンブル政権が現地の雇用を優先させたことがあるようだ。だが、その判断は結果的に、日本の最新鋭潜水艦の調達に反発してきた中国を利する事態を招いた
。南シナ海の軍事拠点化を強行する中国を米国、豪州とともに牽制(けんせい)しようとする日本政府の戦略にも誤算が生じた。

◆輸出未経験はリスク
 今月15日、海上自衛隊の潜水艦「はくりゅう」が豪国防軍との共同訓練のため、日本の潜水艦として初めて豪州に寄港した。日本が受注を目指す「そうりゅう型」で現地では「試運転」ともてはやされた。しかし、皮肉にも演習初日の20日、豪州の国家安全保障会議(NSC)が潜水艦調達先から日本を「除外した」-と地元メディアが報道。
日本の入札対応が「官僚的」で「熱意が欠けていた」
ことを担当者が懸念したのだという。
 他にも豪州側関係者からは異口同音に、
仏独に比べ日本が「経験不足から出遅れ、豪軍の競争評価手続きでの売り込み努力も致命的に劣っていた」
と指摘する声があがる。要は武器輸出での日本の未経験が“リスク”と見なされたわけだ。

◆地元雇用問題も影響
 ターンブル首相は26日、防衛産業が集積する南部アデレードで会見し、フランスとの潜水艦の自国内建造で、計2800人の雇用が維持されると胸を張った。鋼材なども極力、豪州産を使うという。
 ターンブル氏は7月2日の総選挙で野党労働党に対抗するため、雇用問題に力を入れようとしている。ローウィ国際政策研究所(シドニー)のユアン・グラハム氏は、潜水艦選定で「政局も考慮されたと思われて仕方ない」と指摘する。
 
中国の王毅外相は2月、訪中したビショップ豪外相との共同会見で「日本は第二次大戦の敗戦国。武器輸出を規制されてきた歴史的経緯を考慮すべきだ」と述べ、豪州に圧力をかけた。中国との経済的関係を重視するターンブル氏は一方で、安全保障で日米豪の連携重視を繰り返す。だが、今回の判断が「中国を喜ばせる結果となったのは確か」
(グラハム氏)だ。

◆「機密が漏れる懸念」

<中略>


 安倍首相が豪州を重視するのは、日本のシーレーン(海上交通路)の要衝である南シナ海を中国が脅かし、自由な航行を守るには豪州との安全保障面の強化が欠かせないからだ。
 海自と豪海軍の連携も進むが、海自幹部が「
もともと官邸が押し込んできた話だった。機密情報が中国に漏れる懸念があった」と胸をなで下ろすように、政府が豪州との共同開発に積極的だったのに反して、海自には最高機密が集積する潜水艦の情報流出を懸念し、消極的な考え方が強かったという。日本側のチグハグさが豪州に「熱意に欠けていた」とみなされた可能性もある。 (小川真由美、シンガポール 吉村英輝)

 ジョン・ハワード(親日)⇒ケビン・ラッド(親中)⇒ジュリア・ギラード(親日)⇒ケビン・ラッド(親中)⇒トニー・アボット(親日)⇒マルコム・ターンブル(史上随一の親中)と変遷を繰り返す豪政権。まして、ライセンス移譲付での豪国内生産となれば、政権の如何にかかわらずスパイなどによる機密漏えいの危険はぬぐえません。
 安倍首相のアボット首相との絆強化で始まった輸出協力の話。三国の競合見積もりに話が変わった時点で降りればよかった話です。

 豪州では、相次いで日米の自動車メーカーが撤退を決め、自動車製造メーカーが居なくなるという事態を招いています。
 
トヨタ自、2017年末までに豪州生産撤退へ | ロイター

 「そうりゅう型」潜水艦も、日本で生産すれば、日本で使用する物との量産メリットが出て、日豪両国にとってもコストダウンになるという話はありますが、ターンブル首相の雇用確保優先の政策は、国益を総合判断されたものですから、中国が喜んでいる結果になっても、他国の遊爺がとやかく素人見解を申し上げるわけにはいきません。

 インドでも、日仏独の潜水艦導入競合見積もりの話がありましたが、その後どうなったかは不明です。日本が自前で「そうりゅう型」潜水艦を増設する計画を増やして、東シナ海や日本のシーレーンの安全保障確保を進めるのが王道ですね。あんなに中国が嫌がっるほど抑止力があるのですから。
 
インドの次期潜水艦、日本の「そうりゅう」型か? 日米豪印の体制強化と現地紙報道 | ニュースフィア


 # 冒頭の画像は、シドニーのクッタバル基地に入港する海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」




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暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…?




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