北極海の海氷減少傾向が進んでいる事で、北洋航路が注目されていることは、諸兄がご承知の通りです。
物流の航路としての活用、資源開発などの他に、軍事側面での変化も注目されています。
トランプ大統領が8月、デンマーク自治領グリーンランド購入構想を発表。その直後デンマーク首相が一笑に付したため、9月初旬のデンマーク訪問を中止する出来事があました。
温暖化により北洋航路の重要性が増すことに鑑み、同島に対する地下資源開発権と軍事戦略上の橋頭保確保および中国の進出阻止がトランプ大統領の狙いだったと、環日本海経済研究所共同研究員の杉浦敏広氏
北極圏の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図について解説された記事があります。
トランプ大統領の発言は、あまりに唐突な発言ではありましたが、米国の「グリーンランド購入構想」自体は正しい方向性を示しており、軍事戦略としては至極真っ当な認識だと杉浦氏。
トルーマン大統領は1946年、グリーンランドを1億ドル相当の金塊で購入を目論みましたが、これは失敗。ゆえに、トランプ大統領がグリーンランド購入を考えても不思議ではないとも。
グリーンランドは日本の6倍の面積をもつ世界最大の島。雪と氷に閉ざされた島ですが、米軍事基地もある軍事上重要な島であり、今後同島は地下資源・軍事戦略・北洋航路要衝の地になると。
北極海の氷が融けることで、軍事バランス的にはどのような影響があるのか。すでに原子力潜水艦は北極海を自由に行き来しているので、劇的に軍事環境が変化することはないとの見解があるのだそうですが、北極圏における天然資源開発と北洋航路の開拓をうたう「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」にプーチン大統領が今年5月に署名・発効させています。
ロシア艦隊は、かつて日本海海戦で日本が勝利した様に、南下戦略でのウラジオストクへは遠路の南周りが必要でしたが、北極海の氷が溶けて航行が可能となれば、その弱点が解消され、太平洋からインド洋にかけての行動が容易になるのですね。
北洋航路を活用することにより、北洋艦隊から太平洋艦隊への兵站補給が容易になり、ペトロパブロフスク海軍基地周辺のインフラが整備・拡充され、軍事力が強化される。
軍事環境が劇的に変化して、太平洋における制海権の軍事バランスがロシア側に傾く可能性もでてくると杉浦氏。
「(北洋航路が拓かれても)劇的に軍事環境が変化することはない」との日本国内での専門家の声があるが、軍事の専門家がそのような認識でいること自体、日本の対露研究が遅れていることの証左ではないでしょうかと。
太平洋進出に向け、北方四島でも基地や軍備を増強しているロシア。四島返還どころか、ゼロ島返還に変化した由縁のひとつでもある、北極海の海氷減少でもあるのでした。
# 冒頭の画像は、北極海を航行する砕氷船
この花の名前は、オタカラコウ
↓よろしかったら、お願いします。
物流の航路としての活用、資源開発などの他に、軍事側面での変化も注目されています。
トランプ大統領が8月、デンマーク自治領グリーンランド購入構想を発表。その直後デンマーク首相が一笑に付したため、9月初旬のデンマーク訪問を中止する出来事があました。
温暖化により北洋航路の重要性が増すことに鑑み、同島に対する地下資源開発権と軍事戦略上の橋頭保確保および中国の進出阻止がトランプ大統領の狙いだったと、環日本海経済研究所共同研究員の杉浦敏広氏
北極圏の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図について解説された記事があります。
日本がロシアの海軍力増強に協力か 地球温暖化がもたらす軍事バランスの劇的変化 | JBpress(Japan Business Press) 2019.10.10(木)
杉浦 敏広
<前略>
「(北極海の氷が溶けても)劇的に軍事環境が変化することはない」のでしょうか?
本稿では、北極圏の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を考察したいと思います。
中距離核戦力(INF)全廃条約破棄後、米露中の軍拡競争が始まり、米中貿易摩擦は泥沼化の様相を呈しています。中国は今年10月1日の建国70周年記念日に過去最大の軍事パレードを挙行しました。
世界経済の行方が混沌としているなか、近年注目すべき現象が顕在化してきました。北極海の海氷減少傾向に歯止めがかからなくなってきたのです。
氷が薄くなるにつれ、北極圏における北洋航路開拓と資源開発競争が激化して、北極圏は今後、世界の耳目を驚かせる地域になるでしょう。
ちなみに、ロシア運輸省は北洋航路の2018年貨物輸送量は1700万トンであったが、2024年には8000万トンになるとの予測を発表しています。
筆者は軍事関係は全くの素人ですが、本稿では北極海の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を、想像を交えて分析してみたいと思います。
「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」 プーチン大統領が署名・発効
北極圏とは北緯66度33分以北を指し、沿岸8か国が領土や領海を有する地域です。
ロシアのV.プーチン大統領(67歳)は2019年5月13日、「エネルギー安全保障ドクトリン」に署名、同ドクトリンは発効しました。
同ドクトリンは北極圏における天然資源開発と北洋航路の開拓を鼓舞しています。
ロシア極東と北極圏開発を管掌するトルトネフ副首相(極東連邦管区大統領代表)は2019年7月末、プーチン大統領に対し、ロシアの国営石油会社ロスネフチと世界最大の天然ガス会社ガスプロムを批判する書簡を提出。書簡要旨は以下の通りです。
「ロシア国営石油・ガス会社に北極海大陸棚における69鉱床の探鉱・開発権を付与したが、2012年以降2019年7月までの7年半で、5本の探鉱井しか掘削していない。競争がないので、権利の上に胡坐をかいている」
「北極圏開発にはノルウェー方式を採用して、露民間石油・ガス企業と外資に北極圏大陸棚開発事業への参入を認めるべき」
この抗議書簡に対し、ロスネフチのI.セーチン社長(58歳)とガスプロムのA.ミーレル社長(57歳)は直ちに、なぜ遅れているのかプーチン大統領に説明しました。
ロシア/北洋航路の開拓
ロシアは近年、国家予算を投入して積極的に北洋航路開拓を推進しています。
「Yamal LNG」社は北極圏ヤマル半島東岸に液化天然ガス(LNG)生産工場を建設しました(年間550万トン×3系列=1650万トン)。
同工場は2018年末までにフル稼働態勢に入り、2019年8月までに累計20百万トンのLNGを出荷。夏場4か月間は砕氷型LNG輸送船を投入して、東航路でベーリング海峡を通過し、アジア諸国にLNGを輸出しています。
冬場の西航路では、砕氷型LNG輸送船は主に欧州市場向けにLNGを輸出していますが、アジア向けの場合は東航路の2倍以上の航海日数を要します。
冬場のアジア向け航路が経済的にメリットのある航路であるかどうかは、LNG輸送船の運航費用やLNG販売価格などとの見合いの問題になるでしょう。
なお、ヤマル半島対岸のグィダン半島でもLNG工場建設構想(Arctic LNG 2)が進行中で、日本の企業も参加して2025年までにフル稼働を目指しています(年間660万トン×3系列=1980万トン)。
参考までに、北洋航路に投入される砕氷型LNG輸送船は「Yamal LNG」用15隻、「Arctic LNG 2」用は17隻の予定にて、「Arctic LNG 2」用17隻はこれから建造されることになります。
<中略>
ロシア海軍のアキレス腱
4艦隊を有するロシア海軍ですが、バルト艦隊が大西洋に出るためにはデンマーク・ノルウェー・スウェーデンに囲まれた2海峡を通らねばならず、NATO(北大西洋条約機構)軍に監視されています。
有事の際には海峡は封鎖され、バルト艦隊は大西洋に進出できなくなります。
黒海艦隊にはボスポラス・ダーダネルス海峡やジブラルタル海峡などのチョークポイント(*戦略的阻止点)があります。
北方艦隊の東航路はベーリング海峡があり、太平洋艦隊は対馬・宗谷・津軽の3海峡を通過しないと日本海から太平洋に進出できません。
すなわち、すべての艦隊司令部から出撃するロシア艦船はチョークポイントを通らないと、太平洋・大西洋に出られないのです(*北方艦隊の西航路はチョークポイントなしに大西洋に進出可能)。
しかし一つだけ、チョークポイントのない天然の良港があります。
それはカムチャッカ半島の不凍港、ロシア太平洋艦隊第7戦隊の母港ペトロパブロフスクです。
同港からは艦船が自由に太平洋に進出でき、同港南側のヴィリュチンスクには原子力潜水艦の基地もありますが、この天然の良港は電力不足と兵站補給困難という2つのアキレス腱を抱えています。
エピローグ 北洋航路の隠された意図
上述通り2018年の北洋航路による輸送実績は1700万トンでしたが、2024年には8000万トン以上の輸送量になると予測されています。
ロシア運輸省の予測では、2024年の輸送量予測8000万トンの主要内訳はLNGが4700万トン、原油が1200万トン、石炭が1900万トンになっています。
では、もし北洋航路が拓けると、状況はどのように変化するのでしょうか?
サンクトペテルブルクからウラジオストクまで約1万4000キロの航路となり、南廻り航路と比べ8000キロ以上短縮され、日露戦争の日本海海戦におけるバルチック艦隊の悲劇が避けられます。
また北極海コラ半島からベーリング海峡を通過すれば、ウラジオストクまでは約2~3週間の航路に短縮されます。
北洋航路途上のカムチャッカ半島ペトロパブロフスクにはLNG積替え基地建設構想が浮上しており、日本企業も参加を検討していると報じられています。
LNG積替え基地が建設されるとLNGを利用してガス火力発電が可能になり、ペトロパブロフスクの電力不足問題も解決されることでしょう。
すなわち、北洋航路を活用することにより、北洋艦隊から太平洋艦隊への兵站補給が容易になり、ペトロパブロフスク海軍基地周辺のインフラが整備・拡充され、軍事力が強化されることが予見されます。
その結果、軍事力を強化されたロシア水上部隊や原子力潜水艦部隊が、カムチャッカ半島ペトロパブロフからチョークポイントを通過することなく、自由に太平洋に進出できることになります。
これが何を意味するのかと申せば、軍事環境が劇的に変化して、太平洋における制海権の軍事バランスがロシア側に傾く可能性もでてくるということです。
日本の高名な軍事評論家は、「(北洋航路が拓かれても)劇的に軍事環境が変化することはないと思います」と述べていますが、軍事の専門家が上記のような認識でいること自体、日本の対露研究が遅れていることの証左ではないでしょうか。
後世の歴史家に、「日本は(結果として)ロシアの秘密潜水艦基地強化に協力した。それも官民挙げて。本当のことだ」と言われることのないように、北洋航路の意義をコインの両面から分析・評価することが今こそ求められているのではないかと愚考する次第です。
杉浦 敏広
<前略>
「(北極海の氷が溶けても)劇的に軍事環境が変化することはない」のでしょうか?
本稿では、北極圏の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を考察したいと思います。
中距離核戦力(INF)全廃条約破棄後、米露中の軍拡競争が始まり、米中貿易摩擦は泥沼化の様相を呈しています。中国は今年10月1日の建国70周年記念日に過去最大の軍事パレードを挙行しました。
世界経済の行方が混沌としているなか、近年注目すべき現象が顕在化してきました。北極海の海氷減少傾向に歯止めがかからなくなってきたのです。
氷が薄くなるにつれ、北極圏における北洋航路開拓と資源開発競争が激化して、北極圏は今後、世界の耳目を驚かせる地域になるでしょう。
ちなみに、ロシア運輸省は北洋航路の2018年貨物輸送量は1700万トンであったが、2024年には8000万トンになるとの予測を発表しています。
筆者は軍事関係は全くの素人ですが、本稿では北極海の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を、想像を交えて分析してみたいと思います。
「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」 プーチン大統領が署名・発効
北極圏とは北緯66度33分以北を指し、沿岸8か国が領土や領海を有する地域です。
ロシアのV.プーチン大統領(67歳)は2019年5月13日、「エネルギー安全保障ドクトリン」に署名、同ドクトリンは発効しました。
同ドクトリンは北極圏における天然資源開発と北洋航路の開拓を鼓舞しています。
ロシア極東と北極圏開発を管掌するトルトネフ副首相(極東連邦管区大統領代表)は2019年7月末、プーチン大統領に対し、ロシアの国営石油会社ロスネフチと世界最大の天然ガス会社ガスプロムを批判する書簡を提出。書簡要旨は以下の通りです。
「ロシア国営石油・ガス会社に北極海大陸棚における69鉱床の探鉱・開発権を付与したが、2012年以降2019年7月までの7年半で、5本の探鉱井しか掘削していない。競争がないので、権利の上に胡坐をかいている」
「北極圏開発にはノルウェー方式を採用して、露民間石油・ガス企業と外資に北極圏大陸棚開発事業への参入を認めるべき」
この抗議書簡に対し、ロスネフチのI.セーチン社長(58歳)とガスプロムのA.ミーレル社長(57歳)は直ちに、なぜ遅れているのかプーチン大統領に説明しました。
ロシア/北洋航路の開拓
ロシアは近年、国家予算を投入して積極的に北洋航路開拓を推進しています。
「Yamal LNG」社は北極圏ヤマル半島東岸に液化天然ガス(LNG)生産工場を建設しました(年間550万トン×3系列=1650万トン)。
同工場は2018年末までにフル稼働態勢に入り、2019年8月までに累計20百万トンのLNGを出荷。夏場4か月間は砕氷型LNG輸送船を投入して、東航路でベーリング海峡を通過し、アジア諸国にLNGを輸出しています。
冬場の西航路では、砕氷型LNG輸送船は主に欧州市場向けにLNGを輸出していますが、アジア向けの場合は東航路の2倍以上の航海日数を要します。
冬場のアジア向け航路が経済的にメリットのある航路であるかどうかは、LNG輸送船の運航費用やLNG販売価格などとの見合いの問題になるでしょう。
なお、ヤマル半島対岸のグィダン半島でもLNG工場建設構想(Arctic LNG 2)が進行中で、日本の企業も参加して2025年までにフル稼働を目指しています(年間660万トン×3系列=1980万トン)。
参考までに、北洋航路に投入される砕氷型LNG輸送船は「Yamal LNG」用15隻、「Arctic LNG 2」用は17隻の予定にて、「Arctic LNG 2」用17隻はこれから建造されることになります。
<中略>
ロシア海軍のアキレス腱
4艦隊を有するロシア海軍ですが、バルト艦隊が大西洋に出るためにはデンマーク・ノルウェー・スウェーデンに囲まれた2海峡を通らねばならず、NATO(北大西洋条約機構)軍に監視されています。
有事の際には海峡は封鎖され、バルト艦隊は大西洋に進出できなくなります。
黒海艦隊にはボスポラス・ダーダネルス海峡やジブラルタル海峡などのチョークポイント(*戦略的阻止点)があります。
北方艦隊の東航路はベーリング海峡があり、太平洋艦隊は対馬・宗谷・津軽の3海峡を通過しないと日本海から太平洋に進出できません。
すなわち、すべての艦隊司令部から出撃するロシア艦船はチョークポイントを通らないと、太平洋・大西洋に出られないのです(*北方艦隊の西航路はチョークポイントなしに大西洋に進出可能)。
しかし一つだけ、チョークポイントのない天然の良港があります。
それはカムチャッカ半島の不凍港、ロシア太平洋艦隊第7戦隊の母港ペトロパブロフスクです。
同港からは艦船が自由に太平洋に進出でき、同港南側のヴィリュチンスクには原子力潜水艦の基地もありますが、この天然の良港は電力不足と兵站補給困難という2つのアキレス腱を抱えています。
エピローグ 北洋航路の隠された意図
上述通り2018年の北洋航路による輸送実績は1700万トンでしたが、2024年には8000万トン以上の輸送量になると予測されています。
ロシア運輸省の予測では、2024年の輸送量予測8000万トンの主要内訳はLNGが4700万トン、原油が1200万トン、石炭が1900万トンになっています。
では、もし北洋航路が拓けると、状況はどのように変化するのでしょうか?
サンクトペテルブルクからウラジオストクまで約1万4000キロの航路となり、南廻り航路と比べ8000キロ以上短縮され、日露戦争の日本海海戦におけるバルチック艦隊の悲劇が避けられます。
また北極海コラ半島からベーリング海峡を通過すれば、ウラジオストクまでは約2~3週間の航路に短縮されます。
北洋航路途上のカムチャッカ半島ペトロパブロフスクにはLNG積替え基地建設構想が浮上しており、日本企業も参加を検討していると報じられています。
LNG積替え基地が建設されるとLNGを利用してガス火力発電が可能になり、ペトロパブロフスクの電力不足問題も解決されることでしょう。
すなわち、北洋航路を活用することにより、北洋艦隊から太平洋艦隊への兵站補給が容易になり、ペトロパブロフスク海軍基地周辺のインフラが整備・拡充され、軍事力が強化されることが予見されます。
その結果、軍事力を強化されたロシア水上部隊や原子力潜水艦部隊が、カムチャッカ半島ペトロパブロフからチョークポイントを通過することなく、自由に太平洋に進出できることになります。
これが何を意味するのかと申せば、軍事環境が劇的に変化して、太平洋における制海権の軍事バランスがロシア側に傾く可能性もでてくるということです。
日本の高名な軍事評論家は、「(北洋航路が拓かれても)劇的に軍事環境が変化することはないと思います」と述べていますが、軍事の専門家が上記のような認識でいること自体、日本の対露研究が遅れていることの証左ではないでしょうか。
後世の歴史家に、「日本は(結果として)ロシアの秘密潜水艦基地強化に協力した。それも官民挙げて。本当のことだ」と言われることのないように、北洋航路の意義をコインの両面から分析・評価することが今こそ求められているのではないかと愚考する次第です。
トランプ大統領の発言は、あまりに唐突な発言ではありましたが、米国の「グリーンランド購入構想」自体は正しい方向性を示しており、軍事戦略としては至極真っ当な認識だと杉浦氏。
トルーマン大統領は1946年、グリーンランドを1億ドル相当の金塊で購入を目論みましたが、これは失敗。ゆえに、トランプ大統領がグリーンランド購入を考えても不思議ではないとも。
グリーンランドは日本の6倍の面積をもつ世界最大の島。雪と氷に閉ざされた島ですが、米軍事基地もある軍事上重要な島であり、今後同島は地下資源・軍事戦略・北洋航路要衝の地になると。
北極海の氷が融けることで、軍事バランス的にはどのような影響があるのか。すでに原子力潜水艦は北極海を自由に行き来しているので、劇的に軍事環境が変化することはないとの見解があるのだそうですが、北極圏における天然資源開発と北洋航路の開拓をうたう「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」にプーチン大統領が今年5月に署名・発効させています。
ロシア艦隊は、かつて日本海海戦で日本が勝利した様に、南下戦略でのウラジオストクへは遠路の南周りが必要でしたが、北極海の氷が溶けて航行が可能となれば、その弱点が解消され、太平洋からインド洋にかけての行動が容易になるのですね。
北洋航路を活用することにより、北洋艦隊から太平洋艦隊への兵站補給が容易になり、ペトロパブロフスク海軍基地周辺のインフラが整備・拡充され、軍事力が強化される。
軍事環境が劇的に変化して、太平洋における制海権の軍事バランスがロシア側に傾く可能性もでてくると杉浦氏。
「(北洋航路が拓かれても)劇的に軍事環境が変化することはない」との日本国内での専門家の声があるが、軍事の専門家がそのような認識でいること自体、日本の対露研究が遅れていることの証左ではないでしょうかと。
太平洋進出に向け、北方四島でも基地や軍備を増強しているロシア。四島返還どころか、ゼロ島返還に変化した由縁のひとつでもある、北極海の海氷減少でもあるのでした。
# 冒頭の画像は、北極海を航行する砕氷船
この花の名前は、オタカラコウ
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