遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

東電が経常黒字 でも、除染費用を未払い

2013-11-01 23:57:22 | 東日本大震災
 電力10社の平成25年9月中間連結決算が出そろいました。東電、関電、中国電力が前年同期の赤字から脱却して黒字に転じています。なかでも、東電、関電は大幅な黒字転換を果たしていますが、電力料金の値上げ、修繕費の先送り、猛暑での電力使用量の伸びや、東電では競争入札の拡大による資材費の圧縮、関電では、大飯原発の稼働による燃料費の削減が寄与したのだそうです。
 ところが、東電は一方では、法律で定められた除染費用の国が立て替えた請求分の403億円の請求に対して、67億円しか支払わず、336億円の支払いを滞らせています。(4~9月の経常黒字は、1,416億円)
 
電力10社、合計で震災後初の経常黒字 4~9月:日本経済新聞
 
東電3年ぶり経常黒字 1416億円、値上げ・コスト削減効果 9月中間決算 (11/1 産経)

 
東京電力が31日発表した平成25年9月中間連結決算は、経常損益が電気料金の値上げやコスト削減の効果で1416億円の黒字(前年同期は1662億円の赤字)となった。黒字は福島第1原発事故が起きる前の22年中間決算以来3年ぶり。ただ、経営再建の前提となる柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)の再稼働時期が見通せないなど、道のりは依然険しい。

 通期で2期連続経常赤字の東電は
26年3月期の経常黒字化を必達目標に掲げている。上期の黒字化で金融機関からの新規融資が止まる事態は避けられた
格好。最終損益は原子力損害賠償支援機構から交付される資金6662億円を特別利益に計上したことなどから6161億円の黒字(同2994億円の赤字)だった。同資金は福島第1原発事故の賠償に全額使われる。
 東電は昨年4月に企業向けの電気料金を平均14・9%、同年9月に家庭向け料金も平均8・46%それぞれ
値上げし、今夏は猛暑で電力販売が伸びた
。また、発電設備の工事の先送りなどで修繕費を前年同期比367億円削減するなどして収益改善につなげた。
 9月27日には柏崎刈羽6、7号機の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請したが、規制委は福島第1原発の汚染水をめぐるトラブルの解決を最優先し、審査は棚上げされている。コスト削減方法の検討が必要なため通期の業績予想は「未定」とした。

 広瀬直己社長はこの日の会見で「原発の再稼働が何年もないことが決定すれば、修繕の繰り延べにも限度がある」と述べ、
原発の長期停止が続く場合は料金の再値上げが避けられないことを示唆した。

 東電の最終損益は、6,161億円になるのだそうです。
 国が立て替えた除染費用の支払いについては以下の状況。
 

東電、除染費336億円未払い…会計検査院指摘 : ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

会計検査院は、昨年7月に実質国有化された東京電力に初めての検査を行い、報告書を16日発表した。
 福島第一原子力発電所事故を巡る除染費用について、国が立て替えた後に東電へ請求した403億円のうち、336億円が未回収だと指摘した。ただ、東電の負担範囲について関係省庁の意見が異なり、支払いの着地点は見えない。賠償金の請求書の処理などの賠償業務では、価格競争が不十分だとして改善を求めており、
東電の経営姿勢が問われそう
だ。

 報告書は除染費用について、国が東電に請求した403億円のうち、回収は67億円にとどまると指摘した。ただ、東電は、除染で出た土を保管する仮置き場の設置費などを「除染費用に含まれるのか明確でない」として支払いを保留し、国にも一定の負担を求めている。
東電に理解を示す経済産業省は財務省と協議を始めたが、財務省は反発している

 国は除染費用として2013年度までに約1兆3000億円を計上した。除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設の計画が具体化すれば、費用は1兆~2兆円膨らむ可能性がある。
法律では「(東電は)請求があった時は速やかに支払うよう努めなければならない」と定めている


 
東電は「一企業では負いきれない」(広瀬直己社長)と訴え
、経産省も「東電の経営が見通せなくなれば、人材流出が進み、事故収束が滞る恐れがある」(幹部)と理解を示す。
 一方、財務省は「長期的に除染費用を回収する枠組みが確立しており、除染で東電の経営が行き詰まることはあり得ない」(幹部)として、東電の姿勢を批判する。
除染費用は国が東電に請求するが、最終的には電力各社の負担金で賄う仕組みだからだ。

 一連の報道で、ひっかかりを感じるのは、遊爺だけでしょうか。遊爺がひっかかるのは以下。
 一つ目は、東電は、今期(26年3月期)の経常黒字必達を目指してコストダウンや修繕費の先送りを推進していること。私企業ですから、当然のことですが、やはり利益優先で動いているのかと感じさせられました。
 なので、汚染水処理も対策が放置され進められていなかったし、タンクも安普請だし、タンクの足元の漏水防止の囲いも低く大雨ではあふれる構築だった。安全より、コストダウンが優先されているとしか考えられない諸々の連発する不行き届きに納得してしまいます。

 2つ目は、除染費用について「一企業では負いきれない」という社長の発言。テレビ報道でも、法律に反する支払保留に対する質問に、回答者は上から目線で請求内容がおかしいものがあると強気の発言をしていました。
 事故は誰が起こしたのか、まるで他人事で、責任のかけらも感じられません。国会事故調が人災と指摘したことが、国会で審議を進められず棚上げになり、東電に事故への自社の責任意識が皆無だから出て来る発言でしょう。
 津波による天災のせいで、東電に責任はないとでも思っているかのようです。津波対策をした女川は、逆に被災者の避難施設の役割を果たしたというのにです。
 日本は法治国家なのに、法律で定められた支払うべきお金を支払わないで、逆に一企業では支払えないと開き直っているのです。
 何故マスコミはもっとつっこまないのでしょう。

 その答えは、3つ目の、経産省の過保護と財務省との対立です。
 東電のお役所対策が、津波対策の不実施や、馬淵氏の地下水対策不実施を産んで、今の窮状を産んでいるのに、いまだに経産省は東電にコントロールされています。国会事故調が一言で集約した事故原因の、「規制当局は電力事業者の『虜』となっていた」状態が、今でも経産省では続いているのですね。

 国会は、国会事故調の結論を受けた行動をして、事故調の結論に沿った処分と対策の法制化を進める義務があります。
 政府は、その決定に沿って執行しなくてはなりません。そこで初めて前述のような東電の他人事の様な発言や経営姿勢は是正されるものと考えます。
 今からでも遅くありません。一旦、破産整理し、株主や債権者にも負担をしていただき、国の管理で再スタートすることが最善の道でしょう。勿論、現場の最前線の人材は厚遇し、入れ替えるのは、無責任な経営層です。現場や社員の方々も、頭上の硬直した重石を取り除くことで、やる気を出していただけることでしょう。

 国会=与党と政府に、決断が求められます。



 # 冒頭の画像は、福島原発事故に関する報告書を、横路孝弘衆院議長に提出する国会原発事故調査委の黒川清委員長




  さくらんぼ、天城吉野


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2 コメント

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東電周辺の守旧派 (RYU)
2013-11-03 14:43:13
東電が破産する事はないでしょう。電力業界は、広告費だけで3000億円かけて、公論の醸成を進めて来たものの、それだけの莫大な資本でも収益全体の2%で、金額だけ観れば、電力事業は立派な実業だ、と言えます。沖縄を入れれば十電の企業体は独占状態であり、ほとんど財閥に近いと思いますので、他の電力会社との財政協力も要請して、再建に向けた努力を始めるべきです。

そうした、あまりに巨大な企業体であるがゆえに、情報統制は強いのでしょうが、それが隠蔽に繋がっては元も子もありません。内外の情報開示による、原発での不手際があった際には、現場と本社で早急に対処できる体制作りが必要で、もっと、高度技術者を本社の要職に就けるべきです。

原子力ムラの弊害は、暴発の危機のある、余りに危険な技術で、特別な聖域と化しているために、国が保護せざるを得ない、という状態にあり、エネルギー源を変える事のできる電力会社に対して、半官の保安院、機構など、周辺のシェアホルダーが政策転換によって、資金を得られなくなる事で、東電だけでなく、そうした国の補助を極力ダウンして、独立経営と中立方針を図る機構の改革も必要だと思います。
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Re: 東電周辺の守旧派 (遊爺)
2013-11-07 00:10:46
RYU 様 コメントをありがとうございます。

 東電の今後について続報がありましたので、以下をアップしました。ご笑覧ください。

 東電へのなし崩しの国税投入の前に、東電のステークフォルダーが責任をはたすべき - 遊爺雑記帳
 http://blog.goo.ne.jp/yuujii_1946/e/5927817b2353a17a7d0cde7d3b796933
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