中国とロシアの関係は、欧米の自由主義から自国の体制を護るという共通の敵の為に協力関係にあります。一方では、陸続きの長い国境線を接していることから、対立の長い歴史があり、その対立の緊張感が高まる時期には、第三国の日本との外交態度も変えてきていたことは、諸兄がご承知の通りです。
最近では、ロシアが極東艦隊増強や、カムチャッカ半島周辺での大規模演習を行っていますが、これは北方領土の日本への牽制と言う見方もさることながら、米中の西太平洋~インド洋へかけての攻防への布石、北極海への中国の覇権拡大への抑止力といった見方が本命との見解が増えてきましたね。
ロシア 極東の海でも攻勢強化 - 遊爺雑記帳
日中、日露の関係の情報が多い中、数少ない中露関係の最新情報の記事がありました。
ロシアもご多分に漏れず、中国の覇権拡大攻勢に悩まされ警戒を強めているのですね。
覇権拡大は、人口進出(静かに侵攻されるのでもっとも脅威)や、農産物や農地という形でもあるということです。長文になりますが、抜粋して備忘録とさせていただきます。
農地・農業での進出は以下。
台湾海峡、東シナ海から西太平洋・第二列島線への覇権拡大。南シナ海での諸国との攻防。インド洋での真珠の首飾り作戦。この広範囲な戦線での展開に加え、ロシアとの国境近辺では、極東の町や農地からカザフ・ベラルーシの争奪争いと、360度に渡る戦線拡大をする中国。
かつては、ロシア(ソ連)との間でことを構える時は、日本に擦り寄ってから始めていましたが、今ではお構いなしで直接硬軟織り交ぜてがっぶりよつという姿勢です。
このバイタリティには、敵ながら感心してしまいますが、驕れる平家は久しからず。逆に峠の頂上感を感じるのは遊爺だけでしょうか。
同時に、ロシアに内在する弱点も再認識しました。
主力ガス田の枯渇に伴い、極東や北極圏での開発と、欧州の脱露依存による販路縮小に伴う販路開拓が及ぼす、高騰する資源の輸出で成長してきた経済(=農工業などの実体経済での成長力欠如の実態)への先行き不安については触れてきましたが、その改革策を新たに構築を迫られている現状は、根が深く・広い様ですね。
しかも、中国の浸食に遭い、防衛策に迫られている。
プーチン新大統領のロシアが、日本に支援要請のシグナルを送り始めてきているのに、改めて納得します。
冷静沈着な対応が、日本政府にも、実業界にも望まれます。
# 冒頭の画像は、黒河市付近のアムール川
雪化粧したハイマツ 撮影場所; 六甲高山植物園
↓よろしかったら、お願いします。
最近では、ロシアが極東艦隊増強や、カムチャッカ半島周辺での大規模演習を行っていますが、これは北方領土の日本への牽制と言う見方もさることながら、米中の西太平洋~インド洋へかけての攻防への布石、北極海への中国の覇権拡大への抑止力といった見方が本命との見解が増えてきましたね。
ロシア 極東の海でも攻勢強化 - 遊爺雑記帳
日中、日露の関係の情報が多い中、数少ない中露関係の最新情報の記事がありました。
ロシアもご多分に漏れず、中国の覇権拡大攻勢に悩まされ警戒を強めているのですね。
覇権拡大は、人口進出(静かに侵攻されるのでもっとも脅威)や、農産物や農地という形でもあるということです。長文になりますが、抜粋して備忘録とさせていただきます。
変動2012 第2部 上 ユーラシア シベリア 中国依存警戒 (3/19 読売朝刊)
<前略>
極東・シベリアのロシア住民の生活は、もはや中国抜きでは成り立たない。
ところが、ブラゴベシチェンスクと黒河の間には、橋がない。夏場はフェリーが運航する。黒河の当局者が「ロシア側が架橋を拒んだ。『中国人が押し寄せる』と考えている」と、その理由を明かした。ロシアには、圧倒的な人口を持つ中国への本能的な恐怖がある。
確かに、黒竜江、吉林、遼寧の東北3省だけで極東・シベリア全域の約4倍、1億人以上を抱える中国からは、商人、運び屋、建設労働者、農民らがロシア側に続々と流入してくる。実数は不明だ。露極東研究所のアレクサンドル・ラーリン研究員は同地域で働く中国人数を約25万と推計する。一方で「200万人いる。20~25年後、ここのあるじは中国人だ」(地元の元下院議員)と危機意識をあおる声もある。
5月に大統領に復帰するプーチン首相は今、中国の発展を「帆船(ロシア経済)を動かす風」と呼ぶ。欧米に対峙しながら「強いロシア」の栄光を実現するには、世界第2の経済大国となった「戦略的パートナー」・中国に接近するしかない。
だが、中露の融合と並行して、露側では浸透と吸収への警戒が膨らむ。露政府当局者は「シベリアが中国に吸い込まれる」と語った。
プーチン氏も1月、「シベリアは死活的に重要な地域だ」と断言。クレムリン直轄の極東開発事業に30兆ルーブル(約87兆円)を投資、500万人の新規雇用を創出する計画だ。翌月には「中国移民の流入を注視し続ける」と述べた。事実上のシベリア防衛宣言だった。
ウラジオストクの太平洋艦隊など極東での急速な戦力増強も、日米同盟だけでなく、中国をにらんだ戦略配置とみられている。
中国の浸透現場は、国境地帯に限らない。2月下旬、北京のビルの一室で、露製電子部品を扱うロシア人業者が中国人と2時間以上話し込んでいた。商談は成立せず、疲れた顔で業者が語った。「今の客は中国軍関係者だ。ステルス戦闘機用特殊塗料の原料に興味を持っていた。この手の話が増えている」
露悩ます盟友・中国 最大の貿易相手国 旧ソ連圏奪い合い
<中略>
中国との連携は、欧米との対抗軸を支える。中露両国は2月、国連安全保障理事会で拒否権を行使、シリア非難決議案を葬った。欧米式の民主化圧力に共に抵抗し、軍事面でも、03年以降、上海協力機構の枠組みで合同演習を繰り返す。
「強いロシア」の土台となる経済分野でも、中露は関係を深める。ロシア最大の貿易相手は一昨年、ドイツから中国に代わった。欧州外交筋は「ロシアは、ユーロ危機で疲弊する欧州と組んでも成長が見込めないと見限っている」と語る。
蜜月の演出の裏側で、中露は火花を散らす。
極東・シベリアで軍備増強を急ぐロシアは、先進兵器の対中輸出を抑えるようになった。中国に輸出した兵器の技術が盗用されていると疑っているからだ。これに対して中国は、旧ソ連時代に軍需産業が集中し、今も高い技術があるウクライナに接近、ロシアの神経を逆なでしている。
中国に対するプーチン氏の警戒感が色濃く投影したと受け止められたのが、昨年10月に発表された「ユーラシア同盟」構想だ。
旧ソ連圏の部分的再統合の青写真といえる内容で、ロシア、カザフスタン、ベラルーシの関税同盟を手始めに、自由貿易圏、共通の経済・通貨政策を持つ超国家機構への発展を想定している。「最終的に政治、安全保障面での統合を目指している」との観測もある。
ただ、中国は経済力を背景に、そのカザフ、ベラルーシにも接近する。
カザフと国境を接する中国新彊ウイグル自治区のホルゴスでは、昨年末、中国、カザフ共同の「国際国境協力センター」がオープンした。国境をまたぐ広大な自由貿易区を作り、ユーラシアの一大物流拠点を目指す。
ベラルーシには同年9月、中国全国人民代表大会の呉邦国・常務委員長が訪問、道路整備や鉄道電化事業を対象に10億ドルの低利融資を表明、中国企業進出計画もまとめた。1994年から独裁体制を敷き、今はプーチン氏と距離を置きつつあるベラルーシのルカシェンコ大統領は今年1月、中国の国営メディアとの会見で「中国のような友人がいることを誇りに思う」と密接な関係を強調した。
「衛星国」とみなすカザフ、ベラルーシが、中露を両てんびんにかける状況にロシアのいらだちは募る。
<前略>
極東・シベリアのロシア住民の生活は、もはや中国抜きでは成り立たない。
ところが、ブラゴベシチェンスクと黒河の間には、橋がない。夏場はフェリーが運航する。黒河の当局者が「ロシア側が架橋を拒んだ。『中国人が押し寄せる』と考えている」と、その理由を明かした。ロシアには、圧倒的な人口を持つ中国への本能的な恐怖がある。
確かに、黒竜江、吉林、遼寧の東北3省だけで極東・シベリア全域の約4倍、1億人以上を抱える中国からは、商人、運び屋、建設労働者、農民らがロシア側に続々と流入してくる。実数は不明だ。露極東研究所のアレクサンドル・ラーリン研究員は同地域で働く中国人数を約25万と推計する。一方で「200万人いる。20~25年後、ここのあるじは中国人だ」(地元の元下院議員)と危機意識をあおる声もある。
5月に大統領に復帰するプーチン首相は今、中国の発展を「帆船(ロシア経済)を動かす風」と呼ぶ。欧米に対峙しながら「強いロシア」の栄光を実現するには、世界第2の経済大国となった「戦略的パートナー」・中国に接近するしかない。
だが、中露の融合と並行して、露側では浸透と吸収への警戒が膨らむ。露政府当局者は「シベリアが中国に吸い込まれる」と語った。
プーチン氏も1月、「シベリアは死活的に重要な地域だ」と断言。クレムリン直轄の極東開発事業に30兆ルーブル(約87兆円)を投資、500万人の新規雇用を創出する計画だ。翌月には「中国移民の流入を注視し続ける」と述べた。事実上のシベリア防衛宣言だった。
ウラジオストクの太平洋艦隊など極東での急速な戦力増強も、日米同盟だけでなく、中国をにらんだ戦略配置とみられている。
中国の浸透現場は、国境地帯に限らない。2月下旬、北京のビルの一室で、露製電子部品を扱うロシア人業者が中国人と2時間以上話し込んでいた。商談は成立せず、疲れた顔で業者が語った。「今の客は中国軍関係者だ。ステルス戦闘機用特殊塗料の原料に興味を持っていた。この手の話が増えている」
露悩ます盟友・中国 最大の貿易相手国 旧ソ連圏奪い合い
<中略>
中国との連携は、欧米との対抗軸を支える。中露両国は2月、国連安全保障理事会で拒否権を行使、シリア非難決議案を葬った。欧米式の民主化圧力に共に抵抗し、軍事面でも、03年以降、上海協力機構の枠組みで合同演習を繰り返す。
「強いロシア」の土台となる経済分野でも、中露は関係を深める。ロシア最大の貿易相手は一昨年、ドイツから中国に代わった。欧州外交筋は「ロシアは、ユーロ危機で疲弊する欧州と組んでも成長が見込めないと見限っている」と語る。
蜜月の演出の裏側で、中露は火花を散らす。
極東・シベリアで軍備増強を急ぐロシアは、先進兵器の対中輸出を抑えるようになった。中国に輸出した兵器の技術が盗用されていると疑っているからだ。これに対して中国は、旧ソ連時代に軍需産業が集中し、今も高い技術があるウクライナに接近、ロシアの神経を逆なでしている。
中国に対するプーチン氏の警戒感が色濃く投影したと受け止められたのが、昨年10月に発表された「ユーラシア同盟」構想だ。
旧ソ連圏の部分的再統合の青写真といえる内容で、ロシア、カザフスタン、ベラルーシの関税同盟を手始めに、自由貿易圏、共通の経済・通貨政策を持つ超国家機構への発展を想定している。「最終的に政治、安全保障面での統合を目指している」との観測もある。
ただ、中国は経済力を背景に、そのカザフ、ベラルーシにも接近する。
カザフと国境を接する中国新彊ウイグル自治区のホルゴスでは、昨年末、中国、カザフ共同の「国際国境協力センター」がオープンした。国境をまたぐ広大な自由貿易区を作り、ユーラシアの一大物流拠点を目指す。
ベラルーシには同年9月、中国全国人民代表大会の呉邦国・常務委員長が訪問、道路整備や鉄道電化事業を対象に10億ドルの低利融資を表明、中国企業進出計画もまとめた。1994年から独裁体制を敷き、今はプーチン氏と距離を置きつつあるベラルーシのルカシェンコ大統領は今年1月、中国の国営メディアとの会見で「中国のような友人がいることを誇りに思う」と密接な関係を強調した。
「衛星国」とみなすカザフ、ベラルーシが、中露を両てんびんにかける状況にロシアのいらだちは募る。
農地・農業での進出は以下。
シベリア耕す中国農民 冬の野菜9割中国産 (3/19 読売朝刊)
<前略>
地元当局者によると、東寧県の農民らがロシアで借りている農地は21万ヘクタール以上に達する。旧ソ連が崩壊した後の1990年代、モノ不足のロシアに大勢の中国人商人が中国産野菜を持ち込み始め、その際に広大な遊休農地に目を付けたことが始まりだ。
大型建設機械などを扱う民間企業「華信集団」は2004年、露側で4万ヘクタールの農地を49年間借りる契約を結んだ。2億元(約26億円)を投資、現在は中国人200人、ロシア人100人が働く大農場となっている。
黒竜江省社会科学院の曲偉院長は、中国側がロシアで借りている農地は約40万ヘクタールと推計、「中露の農業協力は世界最大規模だ」と語った。極東・シベリアの遊休農地は全体で1000万ヘクタールあると見られ、まだまだ協力は拡大できるという。
ロシアの極東・シベリアでは冬場、市場に出回る野菜や果物の8~9割が中国産だ。加えて中国人がロシアの土地を耕す。ウラジオストクの食品店従業員(65)は「中国人に食べさせてもらっているようなものだ」と苦笑いした。
<前略>
地元当局者によると、東寧県の農民らがロシアで借りている農地は21万ヘクタール以上に達する。旧ソ連が崩壊した後の1990年代、モノ不足のロシアに大勢の中国人商人が中国産野菜を持ち込み始め、その際に広大な遊休農地に目を付けたことが始まりだ。
大型建設機械などを扱う民間企業「華信集団」は2004年、露側で4万ヘクタールの農地を49年間借りる契約を結んだ。2億元(約26億円)を投資、現在は中国人200人、ロシア人100人が働く大農場となっている。
黒竜江省社会科学院の曲偉院長は、中国側がロシアで借りている農地は約40万ヘクタールと推計、「中露の農業協力は世界最大規模だ」と語った。極東・シベリアの遊休農地は全体で1000万ヘクタールあると見られ、まだまだ協力は拡大できるという。
ロシアの極東・シベリアでは冬場、市場に出回る野菜や果物の8~9割が中国産だ。加えて中国人がロシアの土地を耕す。ウラジオストクの食品店従業員(65)は「中国人に食べさせてもらっているようなものだ」と苦笑いした。
台湾海峡、東シナ海から西太平洋・第二列島線への覇権拡大。南シナ海での諸国との攻防。インド洋での真珠の首飾り作戦。この広範囲な戦線での展開に加え、ロシアとの国境近辺では、極東の町や農地からカザフ・ベラルーシの争奪争いと、360度に渡る戦線拡大をする中国。
かつては、ロシア(ソ連)との間でことを構える時は、日本に擦り寄ってから始めていましたが、今ではお構いなしで直接硬軟織り交ぜてがっぶりよつという姿勢です。
このバイタリティには、敵ながら感心してしまいますが、驕れる平家は久しからず。逆に峠の頂上感を感じるのは遊爺だけでしょうか。
同時に、ロシアに内在する弱点も再認識しました。
主力ガス田の枯渇に伴い、極東や北極圏での開発と、欧州の脱露依存による販路縮小に伴う販路開拓が及ぼす、高騰する資源の輸出で成長してきた経済(=農工業などの実体経済での成長力欠如の実態)への先行き不安については触れてきましたが、その改革策を新たに構築を迫られている現状は、根が深く・広い様ですね。
しかも、中国の浸食に遭い、防衛策に迫られている。
プーチン新大統領のロシアが、日本に支援要請のシグナルを送り始めてきているのに、改めて納得します。
冷静沈着な対応が、日本政府にも、実業界にも望まれます。
# 冒頭の画像は、黒河市付近のアムール川
雪化粧したハイマツ 撮影場所; 六甲高山植物園
↓よろしかったら、お願いします。