7月11、12日に香港で、9月の立法会選挙に向けた民主派候補を選ぶ予備選挙が行われたのだそうです。立法会選挙のための予備選が実施されるのは今回が初めて。
汎民主派(親中派に対する民主派全体を指す)候補らの出馬調整のため非公式選挙であり、むしろパフォーマンスに近い。
この予備選挙は、9月の立法会選挙で、汎民主派が立法会の70議席の過半数の35議席以上を獲得するために、各少数政党が票を食い合わないようにする調整が第一の目的。
同時に、国安法違反として出馬資格を奪われるかもしれない候補者たちが市民から十分に支持を得ているということを可視化するためでもあった。
そういう意味では、投票行動自体が中国政府、香港政府ににらまれる可能性があり、投票に行くのはかなり勇気と覚悟のいることだろうが、主催者予想の3倍以上の61万人の有権者がこの日、自主的に投票に出かけた。
初期集計では、中国からの独立志向が強い急進的な勢力の本土派候補が大きくリードする展開を見せたと福島香織さん。
選挙は7月11、12日の2日にわたって行われたが、初日に、選挙の集計などに協力している香港民意研究所が警察の強制捜査を受けてパソコンと資料を押収されそうになるなど、あからさまな妨害もあったのだそうです。
しかし、逆にそうした妨害を受けたことが、いっそう市民の足を投票所に運ばせたのかもしれないと福島さん。
いまのところ、直接選挙枠18議席、区議会枠3議席、衛生サービス業1議席は固いとみられているが、本選挙に向け、多数政党乱立で割れた票をどう集約して、目標の35議席以上にもっていくかの戦略が、民主派・本土派に求められると。
この予備選挙について、香港大学法学部副教授の戴耀廷(ベニー・タイ)は選挙終了後の記者会見で「香港市民が一緒になって作り出した奇跡」と形容。
「国安法という悪法のもとで行われたが、60万人以上の市民がこの法による恫喝を恐れず、投票を通じて声を上げた。これが(候補者調整より)さらに意義深い」とも。
そして、「香港市民は民主の追求を諦めたことはない。この予備選挙がそのことをはっきり示した。権力者たちが、このことを慎重に受け止めることを願う」と。
行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)は、ベニー・タイのこのメッセージに対して「汎民主派の予備選挙の狙いが、過半数議席をとり、香港政府の政策を妨害することであれば、香港国安法の政権転覆罪に問われる可能性がある」と冷ややかに言い放ったのだそうです。
香港政府は、「民主派の予備選活動は、政治を混乱させることが目的だという告発が寄せられている。そうならば、国安法第22条の国家政権転覆罪を構成するものだ」と。
さらに中国中央政府の出先機関、中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)報道官は、「(予備選挙は、)現行の選挙制度に対する深刻な挑戦であり、立法会選挙の公平公正を深刻に破壊し、その他の選挙に参加する人たちの合法的権利を著しく損なうものである」と極めて強い口調で非難しているのだそうです。
中聯弁はベニー・タイ副教授に対し、国安法違反の疑いがある、として名指しで非難しているのだそうです。
選挙とは、政権を選択する最も平和的で穏便なシステムだと福島さん。
その選挙の意義を頭から否定すれば、中央政府も香港政府も民衆に「いやなら暴力革命をやってみろ」と迫っているのと同じではないかと。
もちろん香港市民は暴力革命など行わない。民主選挙の次に民主的な、デモという手法で抵抗する。
だが政権はそんな香港市民に暴徒やテロのレッテルを張り、武力鎮圧の口実にする。
こんな恐ろしい中共のやり方を、国際社会の一員として座視していいはずがない。
その穏便な政治の是正方法を国安法が禁じるというなら、国安法こそ、香港の政治経済社会をマヒさせ、香港政府を転覆させる最大の原因になりうると福島さん。
米国のトランプ大統領が7月14日、香港自治法に署名したことは、諸兄がご承知の通りです。
香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁や、中国政治家・官僚、香港政治家・官僚を特定し、その米国内資産を凍結し、ビザ発給を停止、彼らと大規模取引する中国の銀行とのドル取引を禁じることも可能となったのですね。
日本もそろそろ「遺憾」表明だけではなく、覚悟をきっちり決めるときだろうと福島さん。
人道の見地からも、法治と自由を尊ぶ世界の一員としても、香港人が諦めていないのなら、私たちも香港を見捨ててはならないと。
日本として、私たちに出来ることは、何があるのでしょう。
尖閣諸島の領海を含む海域に連続侵入している中共。
先ず国賓としての招聘は中止とし、天安門事件の後の国際社会の包囲網に穴を開けた、天皇の政治利用の轍を繰り返さないこと。
習近平の覇権拡大の暴挙の姿勢を抑止しようと、与野党が一致して立ち向かっている米国と歩調を合わせ、その野望を抑止することですね。
# 冒頭の画像は、香港立法会議員選挙・民主派予備選の投票に並ぶ香港市民。
アシタバの蕾
↓よろしかったら、お願いします。
汎民主派(親中派に対する民主派全体を指す)候補らの出馬調整のため非公式選挙であり、むしろパフォーマンスに近い。
この予備選挙は、9月の立法会選挙で、汎民主派が立法会の70議席の過半数の35議席以上を獲得するために、各少数政党が票を食い合わないようにする調整が第一の目的。
同時に、国安法違反として出馬資格を奪われるかもしれない候補者たちが市民から十分に支持を得ているということを可視化するためでもあった。
そういう意味では、投票行動自体が中国政府、香港政府ににらまれる可能性があり、投票に行くのはかなり勇気と覚悟のいることだろうが、主催者予想の3倍以上の61万人の有権者がこの日、自主的に投票に出かけた。
初期集計では、中国からの独立志向が強い急進的な勢力の本土派候補が大きくリードする展開を見せたと福島香織さん。
香港市民の希望と勇気が生み出した奇跡の選挙 「国安法」が施行されるなか61万人が民主派予備選に投票(1/4) | JBpress(Japan Business Press) 2020.7.16(木) 福島 香織
7月11、12日に香港で、9月の立法会選挙に向けた民主派候補を選ぶ予備選挙が行われた。これは9月6日に予定されている立法会選挙の、地区ごとの直接選挙枠(35議席)と、職能団体枠の区議会議員枠(5議席)および衛生サービス業枠の選挙に出馬する民主派候補を絞り込むための民間選挙である。選挙を主催したのは、香港の民主化制度研究の学者、民主派政党・団体メンバー、現役議員らが参与する民間組織「民主動力」だ。
香港でこうした立法会選挙のための予備選が実施されるのは今回が初めて。また、国家安全維持法(国安法)が施行されて以降、初めて行われる直接選挙行動でもあった。
これはあくまで汎民主派(親中派に対する民主派全体を指す。民主派、本土派、自決派などの勢力に分類される)候補らの出馬調整のため非公式選挙であり、むしろパフォーマンスに近い。しかし、それでも61万人の有権者が、香港の7月の炎天下、1時間以上並んで投票し、初期集計では本土派候補が大きくリードする展開を見せた。本土派は民主派の中で比較的中国からの独立志向が強い急進的な勢力である。
主催者予想では、投票者数は17万人前後だとみていた。17万人という数字は、2019年11月の区議選挙で汎民主派が獲得した票数の1割に相当する。
この予備選挙は、9月の立法会選挙で、汎民主派が立法会の70議席の過半数の35議席以上を獲得するために、民主派・本土派・自決派の各少数政党が票を食い合わないようにする調整が第一の目的である。また同時に、国安法違反として出馬資格を奪われるかもしれない候補者たちが市民から十分に支持を得ているということを可視化するためでもあった。そういう意味では、投票行動自体が中国政府、香港政府ににらまれる可能性があり、投票に行くのはかなり勇気と覚悟のいることだろう。
だから主催者予想の3倍以上の有権者がこの日、自主的に投票に出かけたことは、2019年6月15日の200万人規模の平和デモ実施と並ぶ奇跡の市民パワーの出現だと、感動せざるをえない。香港市民の9月の立法会選挙にかける思いがどれほど切実であるか、国際社会に知らしめた。
「国安法」施行の中で記録的な投票数
選挙では、香港の各区250に投票所を設置。投票所のQRコードを使ったスマートフォンによる電子投票と紙による投票が行われ、あわせて61万人が投票した。
選挙は7月11、12日の2日にわたって行われたが、初日に、選挙の集計などに協力している香港民意研究所が警察の強制捜査を受けてパソコンと資料を押収されそうになるなど、あからさまな妨害もあった。幸いパソコンの押収を防ぐことはできたが、この妨害によって12日の投票所の開始時刻は正午になってしまった。だが、逆にそうした妨害を受けたことが、いっそう市民の足を投票所に運ばせたのかもしれない。
この予備選挙によって、5つの直接選挙区の候補と、職能団体枠のなかの区議会議員枠(他の職能団体に属さない有権者が投票)および衛生サービス業枠の候補者を絞り込む。6月13~20日まで1万香港ドルの供託金とともに出馬登録を受け付け、24日に51人の候補者が発表された。
直接選挙区は、「九龍東区」「九龍西区」「新界東区」「新界西区」「香港島区」の5つ。最終的な出馬調整結果はこの原稿執筆時点では出ていないが、得票数をみると九龍東区のトップは元デモシスト事務局長で、国際社会でも注目されている黄之鋒(ジョシュア・ウォン)で、2位の現役立法会議員の譚文豪(公民党)よりも得票数が1万票近く多かった。
九龍西区では、例年の7月1日民主化デモ主催の民主人権陣線呼びかけ人で昨年(2019年)11月の区議選で沙田区議にも当選した社民連の岑子杰がトップ、2位が無所属本土派の香港大学生の張崑陽だった。
新界東区のトップは無所属の元立場新聞記者、何桂藍。2019年7月21日の元朗駅で起きた「白シャツ襲撃事件」のとき、白シャツの暴漢に殴られながらもカメラを回し続けた勇気ある、あの「立場姐さん」だ。新界西区は本土派の現役立法会議員の朱凱廸チームがトップ。香港島区は民主党の現役立法会議員の許智嶺らがトップ。
職能枠の区議会枠のトップは現役立法会議員にして元朗区議、民主党最年少中央委員の邝俊宇。2016年も区議会枠から出馬し最多票をとり“票王”と呼ばれた。
衛生サービス業では、新型コロナ肺炎流行初期の段階で、中国人の香港渡航禁止を求めた医療関係者ストライキで名を馳せた余慧明(香港医官局員工陣線主席)がトップだった。
政党別にみると、得票率からいえば無所属その他が35%、民主党が12.44%、公民党が12.04%。
いまのところ、直接選挙枠18議席、区議会枠3議席、衛生サービス業1議席は固いとみられている。香港の多数政党乱立で割れた票をどう集約して、35議席以上にもっていくかの戦略が、民主派・本土派に求められる。ただ、ここに香港国安法という妨害が入るはずだ。今回トップ、2位と上位にありながら、直前に出馬資格を取り消された場合は、候補者がその後継を指名し票を逃がさないようにすることになっている。
この予備選挙について、香港大学法学部副教授の戴耀廷(ベニー・タイ)は選挙終了後の記者会見で「香港市民が一緒になって作り出した奇跡」と形容した。
「香港史上4回、大型の民間投票(非公式投票)が行われてきた。2014年の和平占中(オキュパイセントラル)の発起による普通選挙のやり方を選択する公民投票は79万人が参加した。ただし、人数こそ今回の選挙より多かったが、大部分が投票所に行く必要のない携帯電話による電子投票であり、投票所に行ったのはわずか7万人だった。だが、今回ははるかに多い市民が投票所にいった。・・・この投票数は実際、記録的だ」
「今回の投票は、国安法という悪法のもとで行われたということが重要だ。60万人以上の市民がこの法による恫喝を恐れず、投票を通じて声を上げた。これが(候補者調整より)さらに意義深い。・・・以前の民間投票は、逮捕されたり他人に告発されたりすることを恐れる必要はなかった。だが、今回はこのような恫喝のもとで、それでも60万人の人たちが投票しに街に出てきたのだ」
「香港市民は民主の追求を諦めたことはない。この予備選挙がそのことをはっきり示した。権力者たちが、このことを慎重に受け止めることを願う」
香港政府は選挙を厳しく非難
だが行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)は、ベニー・タイのこのメッセージに対して「汎民主派の予備選挙の狙いが、過半数議席をとり、香港政府の政策を妨害することであれば、香港国安法の政権転覆罪に問われる可能性がある」と冷ややかに言い放った。「こういう状況があれば、対処の必要がある」。
さらに香港政府は次のような声明を発表した。「民主派の予備選活動は、形式、プロセス、結果にかかわらず、香港の選挙法律の承認も認可も等しく与えられない」「今回の選挙主催者の、立法会で過半数議席をとろうという呼びかけは、香港政府の予算案を否決し、政治を混乱させることが目的だという告発が寄せられている。そうならば、香港政府はこれを国安法第22条の国家政権転覆罪を構成するものだとする」。
さらに中国中央政府の出先機関、中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)報道官は7月13日夜、この選挙について「反対派少数団体と(民主派の)有名人たちが、外部勢力の支持をえて、考え抜いて、策謀をめぐらし、今回のいわゆる“予備選”なるものを行った。これは現行の選挙制度に対する深刻な挑戦であり、立法会選挙の公平公正を深刻に破壊し、その他の選挙に参加する人たちの合法的権利を著しく損なうものである」と極めて強い口調で非難した。
さらに民主派が予備選挙の建前で、市民の個人情報、有権者資料を大量に取得したことはプライバシー条例に違反する容疑があり、「このような赤裸々な違法行為に対しては、我々は高い関心を寄せており、厳しい譴責を行い、香港政府が法に基づき、厳粛に処理することを固く支持する」とした。
中聯弁はベニー・タイ副教授に対し「立法会をコントロールし、予算案を否決し、香港特区政府をマヒさせ、香港全体をかき乱そうとし、国家政権転覆を狙っている」として、国安法違反の疑いがある、として名指しで非難している。
国安法こそが香港政府を転覆させる
ここまで読んでいただいたら、すでにお分かりだろう。中国中央政府は三権分立の意義や、選挙というものの機能を根本的に理解していないのだ。
選挙で選ばれた有権者の代表である立法会議員が、政府の予算の使い道が不当であり、有権者の利益と合致していない、と判断すれば予算案を否決することは合法である。それが「基本法」(香港特別行政区基本法)にも規定される立法会の権力なのだ。
それを「政府機能をマヒさせる」とか「政権転覆を狙っている」などと言って、違法とすること自体が、深刻な法治の破壊である。中央政府や香港政府が「法に基づき対処する」と発言すること自体がもはや支離滅裂で、失笑ものなのだ。そのことを、優秀な官僚キャリアを積んできたキャリー・ラムがまさか理解していない、とでもいうのだろうか。
選挙とは、政権を選択する最も平和的で穏便なシステムだ。為政者が人々の望む政治を行えない、その能力がない、あるいは人々の望みや幸せを考慮する意思がなく、その結果、政治経済社会がどうしようもなく停滞したとき、選挙システムがあれば、人々は暴力革命という野蛮な手段を使わずとも、政権をスムーズに交代させることができる。その選挙の意義を頭から否定すれば、中央政府も香港政府も民衆に「いやなら暴力革命をやってみろ」と迫っているのと同じではないか。
もちろん香港市民は暴力革命など行わない。民主選挙の次に民主的な、デモという手法で抵抗する。だが政権はそんな香港市民に暴徒やテロのレッテルを張り、武力鎮圧の口実にする。こんな恐ろしい中共のやり方を、国際社会の一員として座視していいはずがない。このやり方を強く非難し、やめさせようと努力するのは内政干渉などではなく、人道の問題であり、人としての良心の問題だろう。
その穏便な政治の是正方法を国安法が禁じるというなら、国安法こそ、香港の政治経済社会をマヒさせ、香港政府を転覆させる最大の原因になりうる、といえるだろう。
私たちも香港を見捨ててはならない
米国のトランプ大統領が7月14日、香港自治法に署名した。香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁が、これで可能となった。
香港一国二制度破壊に関与した中国政治家・官僚、香港政治家・官僚を特定し、その米国内資産を凍結し、ビザ発給を停止、彼らと大規模取引する中国の銀行とのドル取引を禁じることもありうる。
これは世界経済にも大きな影響を与えるだけに、すぐさま実行されるものではないかもしれない。だが、少なくとも香港の自治を守るために、そして法治と自由の価値観と秩序に対する中共の破壊行為に対し、それなりの痛みを覚悟して戦う姿勢を米国がはっきりと打ち出したということだろう。この戦いが、世界を巻き込む金融戦争のステージに突入することになるかもしれない。
だから、日本もそろそろ「遺憾」表明だけではなく、覚悟をきっちり決めるときだろう。まずは、9月の香港立法会選挙をなんとしても無事に、何者にも妨害されずに実施させることだ。人道の見地からも、法治と自由を尊ぶ世界の一員としても、香港人が諦めていないのなら、私たちも香港を見捨ててはならない、と思うのだ。
7月11、12日に香港で、9月の立法会選挙に向けた民主派候補を選ぶ予備選挙が行われた。これは9月6日に予定されている立法会選挙の、地区ごとの直接選挙枠(35議席)と、職能団体枠の区議会議員枠(5議席)および衛生サービス業枠の選挙に出馬する民主派候補を絞り込むための民間選挙である。選挙を主催したのは、香港の民主化制度研究の学者、民主派政党・団体メンバー、現役議員らが参与する民間組織「民主動力」だ。
香港でこうした立法会選挙のための予備選が実施されるのは今回が初めて。また、国家安全維持法(国安法)が施行されて以降、初めて行われる直接選挙行動でもあった。
これはあくまで汎民主派(親中派に対する民主派全体を指す。民主派、本土派、自決派などの勢力に分類される)候補らの出馬調整のため非公式選挙であり、むしろパフォーマンスに近い。しかし、それでも61万人の有権者が、香港の7月の炎天下、1時間以上並んで投票し、初期集計では本土派候補が大きくリードする展開を見せた。本土派は民主派の中で比較的中国からの独立志向が強い急進的な勢力である。
主催者予想では、投票者数は17万人前後だとみていた。17万人という数字は、2019年11月の区議選挙で汎民主派が獲得した票数の1割に相当する。
この予備選挙は、9月の立法会選挙で、汎民主派が立法会の70議席の過半数の35議席以上を獲得するために、民主派・本土派・自決派の各少数政党が票を食い合わないようにする調整が第一の目的である。また同時に、国安法違反として出馬資格を奪われるかもしれない候補者たちが市民から十分に支持を得ているということを可視化するためでもあった。そういう意味では、投票行動自体が中国政府、香港政府ににらまれる可能性があり、投票に行くのはかなり勇気と覚悟のいることだろう。
だから主催者予想の3倍以上の有権者がこの日、自主的に投票に出かけたことは、2019年6月15日の200万人規模の平和デモ実施と並ぶ奇跡の市民パワーの出現だと、感動せざるをえない。香港市民の9月の立法会選挙にかける思いがどれほど切実であるか、国際社会に知らしめた。
「国安法」施行の中で記録的な投票数
選挙では、香港の各区250に投票所を設置。投票所のQRコードを使ったスマートフォンによる電子投票と紙による投票が行われ、あわせて61万人が投票した。
選挙は7月11、12日の2日にわたって行われたが、初日に、選挙の集計などに協力している香港民意研究所が警察の強制捜査を受けてパソコンと資料を押収されそうになるなど、あからさまな妨害もあった。幸いパソコンの押収を防ぐことはできたが、この妨害によって12日の投票所の開始時刻は正午になってしまった。だが、逆にそうした妨害を受けたことが、いっそう市民の足を投票所に運ばせたのかもしれない。
この予備選挙によって、5つの直接選挙区の候補と、職能団体枠のなかの区議会議員枠(他の職能団体に属さない有権者が投票)および衛生サービス業枠の候補者を絞り込む。6月13~20日まで1万香港ドルの供託金とともに出馬登録を受け付け、24日に51人の候補者が発表された。
直接選挙区は、「九龍東区」「九龍西区」「新界東区」「新界西区」「香港島区」の5つ。最終的な出馬調整結果はこの原稿執筆時点では出ていないが、得票数をみると九龍東区のトップは元デモシスト事務局長で、国際社会でも注目されている黄之鋒(ジョシュア・ウォン)で、2位の現役立法会議員の譚文豪(公民党)よりも得票数が1万票近く多かった。
九龍西区では、例年の7月1日民主化デモ主催の民主人権陣線呼びかけ人で昨年(2019年)11月の区議選で沙田区議にも当選した社民連の岑子杰がトップ、2位が無所属本土派の香港大学生の張崑陽だった。
新界東区のトップは無所属の元立場新聞記者、何桂藍。2019年7月21日の元朗駅で起きた「白シャツ襲撃事件」のとき、白シャツの暴漢に殴られながらもカメラを回し続けた勇気ある、あの「立場姐さん」だ。新界西区は本土派の現役立法会議員の朱凱廸チームがトップ。香港島区は民主党の現役立法会議員の許智嶺らがトップ。
職能枠の区議会枠のトップは現役立法会議員にして元朗区議、民主党最年少中央委員の邝俊宇。2016年も区議会枠から出馬し最多票をとり“票王”と呼ばれた。
衛生サービス業では、新型コロナ肺炎流行初期の段階で、中国人の香港渡航禁止を求めた医療関係者ストライキで名を馳せた余慧明(香港医官局員工陣線主席)がトップだった。
政党別にみると、得票率からいえば無所属その他が35%、民主党が12.44%、公民党が12.04%。
いまのところ、直接選挙枠18議席、区議会枠3議席、衛生サービス業1議席は固いとみられている。香港の多数政党乱立で割れた票をどう集約して、35議席以上にもっていくかの戦略が、民主派・本土派に求められる。ただ、ここに香港国安法という妨害が入るはずだ。今回トップ、2位と上位にありながら、直前に出馬資格を取り消された場合は、候補者がその後継を指名し票を逃がさないようにすることになっている。
この予備選挙について、香港大学法学部副教授の戴耀廷(ベニー・タイ)は選挙終了後の記者会見で「香港市民が一緒になって作り出した奇跡」と形容した。
「香港史上4回、大型の民間投票(非公式投票)が行われてきた。2014年の和平占中(オキュパイセントラル)の発起による普通選挙のやり方を選択する公民投票は79万人が参加した。ただし、人数こそ今回の選挙より多かったが、大部分が投票所に行く必要のない携帯電話による電子投票であり、投票所に行ったのはわずか7万人だった。だが、今回ははるかに多い市民が投票所にいった。・・・この投票数は実際、記録的だ」
「今回の投票は、国安法という悪法のもとで行われたということが重要だ。60万人以上の市民がこの法による恫喝を恐れず、投票を通じて声を上げた。これが(候補者調整より)さらに意義深い。・・・以前の民間投票は、逮捕されたり他人に告発されたりすることを恐れる必要はなかった。だが、今回はこのような恫喝のもとで、それでも60万人の人たちが投票しに街に出てきたのだ」
「香港市民は民主の追求を諦めたことはない。この予備選挙がそのことをはっきり示した。権力者たちが、このことを慎重に受け止めることを願う」
香港政府は選挙を厳しく非難
だが行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)は、ベニー・タイのこのメッセージに対して「汎民主派の予備選挙の狙いが、過半数議席をとり、香港政府の政策を妨害することであれば、香港国安法の政権転覆罪に問われる可能性がある」と冷ややかに言い放った。「こういう状況があれば、対処の必要がある」。
さらに香港政府は次のような声明を発表した。「民主派の予備選活動は、形式、プロセス、結果にかかわらず、香港の選挙法律の承認も認可も等しく与えられない」「今回の選挙主催者の、立法会で過半数議席をとろうという呼びかけは、香港政府の予算案を否決し、政治を混乱させることが目的だという告発が寄せられている。そうならば、香港政府はこれを国安法第22条の国家政権転覆罪を構成するものだとする」。
さらに中国中央政府の出先機関、中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)報道官は7月13日夜、この選挙について「反対派少数団体と(民主派の)有名人たちが、外部勢力の支持をえて、考え抜いて、策謀をめぐらし、今回のいわゆる“予備選”なるものを行った。これは現行の選挙制度に対する深刻な挑戦であり、立法会選挙の公平公正を深刻に破壊し、その他の選挙に参加する人たちの合法的権利を著しく損なうものである」と極めて強い口調で非難した。
さらに民主派が予備選挙の建前で、市民の個人情報、有権者資料を大量に取得したことはプライバシー条例に違反する容疑があり、「このような赤裸々な違法行為に対しては、我々は高い関心を寄せており、厳しい譴責を行い、香港政府が法に基づき、厳粛に処理することを固く支持する」とした。
中聯弁はベニー・タイ副教授に対し「立法会をコントロールし、予算案を否決し、香港特区政府をマヒさせ、香港全体をかき乱そうとし、国家政権転覆を狙っている」として、国安法違反の疑いがある、として名指しで非難している。
国安法こそが香港政府を転覆させる
ここまで読んでいただいたら、すでにお分かりだろう。中国中央政府は三権分立の意義や、選挙というものの機能を根本的に理解していないのだ。
選挙で選ばれた有権者の代表である立法会議員が、政府の予算の使い道が不当であり、有権者の利益と合致していない、と判断すれば予算案を否決することは合法である。それが「基本法」(香港特別行政区基本法)にも規定される立法会の権力なのだ。
それを「政府機能をマヒさせる」とか「政権転覆を狙っている」などと言って、違法とすること自体が、深刻な法治の破壊である。中央政府や香港政府が「法に基づき対処する」と発言すること自体がもはや支離滅裂で、失笑ものなのだ。そのことを、優秀な官僚キャリアを積んできたキャリー・ラムがまさか理解していない、とでもいうのだろうか。
選挙とは、政権を選択する最も平和的で穏便なシステムだ。為政者が人々の望む政治を行えない、その能力がない、あるいは人々の望みや幸せを考慮する意思がなく、その結果、政治経済社会がどうしようもなく停滞したとき、選挙システムがあれば、人々は暴力革命という野蛮な手段を使わずとも、政権をスムーズに交代させることができる。その選挙の意義を頭から否定すれば、中央政府も香港政府も民衆に「いやなら暴力革命をやってみろ」と迫っているのと同じではないか。
もちろん香港市民は暴力革命など行わない。民主選挙の次に民主的な、デモという手法で抵抗する。だが政権はそんな香港市民に暴徒やテロのレッテルを張り、武力鎮圧の口実にする。こんな恐ろしい中共のやり方を、国際社会の一員として座視していいはずがない。このやり方を強く非難し、やめさせようと努力するのは内政干渉などではなく、人道の問題であり、人としての良心の問題だろう。
その穏便な政治の是正方法を国安法が禁じるというなら、国安法こそ、香港の政治経済社会をマヒさせ、香港政府を転覆させる最大の原因になりうる、といえるだろう。
私たちも香港を見捨ててはならない
米国のトランプ大統領が7月14日、香港自治法に署名した。香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁が、これで可能となった。
香港一国二制度破壊に関与した中国政治家・官僚、香港政治家・官僚を特定し、その米国内資産を凍結し、ビザ発給を停止、彼らと大規模取引する中国の銀行とのドル取引を禁じることもありうる。
これは世界経済にも大きな影響を与えるだけに、すぐさま実行されるものではないかもしれない。だが、少なくとも香港の自治を守るために、そして法治と自由の価値観と秩序に対する中共の破壊行為に対し、それなりの痛みを覚悟して戦う姿勢を米国がはっきりと打ち出したということだろう。この戦いが、世界を巻き込む金融戦争のステージに突入することになるかもしれない。
だから、日本もそろそろ「遺憾」表明だけではなく、覚悟をきっちり決めるときだろう。まずは、9月の香港立法会選挙をなんとしても無事に、何者にも妨害されずに実施させることだ。人道の見地からも、法治と自由を尊ぶ世界の一員としても、香港人が諦めていないのなら、私たちも香港を見捨ててはならない、と思うのだ。
選挙は7月11、12日の2日にわたって行われたが、初日に、選挙の集計などに協力している香港民意研究所が警察の強制捜査を受けてパソコンと資料を押収されそうになるなど、あからさまな妨害もあったのだそうです。
しかし、逆にそうした妨害を受けたことが、いっそう市民の足を投票所に運ばせたのかもしれないと福島さん。
いまのところ、直接選挙枠18議席、区議会枠3議席、衛生サービス業1議席は固いとみられているが、本選挙に向け、多数政党乱立で割れた票をどう集約して、目標の35議席以上にもっていくかの戦略が、民主派・本土派に求められると。
この予備選挙について、香港大学法学部副教授の戴耀廷(ベニー・タイ)は選挙終了後の記者会見で「香港市民が一緒になって作り出した奇跡」と形容。
「国安法という悪法のもとで行われたが、60万人以上の市民がこの法による恫喝を恐れず、投票を通じて声を上げた。これが(候補者調整より)さらに意義深い」とも。
そして、「香港市民は民主の追求を諦めたことはない。この予備選挙がそのことをはっきり示した。権力者たちが、このことを慎重に受け止めることを願う」と。
行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)は、ベニー・タイのこのメッセージに対して「汎民主派の予備選挙の狙いが、過半数議席をとり、香港政府の政策を妨害することであれば、香港国安法の政権転覆罪に問われる可能性がある」と冷ややかに言い放ったのだそうです。
香港政府は、「民主派の予備選活動は、政治を混乱させることが目的だという告発が寄せられている。そうならば、国安法第22条の国家政権転覆罪を構成するものだ」と。
さらに中国中央政府の出先機関、中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)報道官は、「(予備選挙は、)現行の選挙制度に対する深刻な挑戦であり、立法会選挙の公平公正を深刻に破壊し、その他の選挙に参加する人たちの合法的権利を著しく損なうものである」と極めて強い口調で非難しているのだそうです。
中聯弁はベニー・タイ副教授に対し、国安法違反の疑いがある、として名指しで非難しているのだそうです。
選挙とは、政権を選択する最も平和的で穏便なシステムだと福島さん。
その選挙の意義を頭から否定すれば、中央政府も香港政府も民衆に「いやなら暴力革命をやってみろ」と迫っているのと同じではないかと。
もちろん香港市民は暴力革命など行わない。民主選挙の次に民主的な、デモという手法で抵抗する。
だが政権はそんな香港市民に暴徒やテロのレッテルを張り、武力鎮圧の口実にする。
こんな恐ろしい中共のやり方を、国際社会の一員として座視していいはずがない。
その穏便な政治の是正方法を国安法が禁じるというなら、国安法こそ、香港の政治経済社会をマヒさせ、香港政府を転覆させる最大の原因になりうると福島さん。
米国のトランプ大統領が7月14日、香港自治法に署名したことは、諸兄がご承知の通りです。
香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁や、中国政治家・官僚、香港政治家・官僚を特定し、その米国内資産を凍結し、ビザ発給を停止、彼らと大規模取引する中国の銀行とのドル取引を禁じることも可能となったのですね。
日本もそろそろ「遺憾」表明だけではなく、覚悟をきっちり決めるときだろうと福島さん。
人道の見地からも、法治と自由を尊ぶ世界の一員としても、香港人が諦めていないのなら、私たちも香港を見捨ててはならないと。
日本として、私たちに出来ることは、何があるのでしょう。
尖閣諸島の領海を含む海域に連続侵入している中共。
先ず国賓としての招聘は中止とし、天安門事件の後の国際社会の包囲網に穴を開けた、天皇の政治利用の轍を繰り返さないこと。
習近平の覇権拡大の暴挙の姿勢を抑止しようと、与野党が一致して立ち向かっている米国と歩調を合わせ、その野望を抑止することですね。
# 冒頭の画像は、香港立法会議員選挙・民主派予備選の投票に並ぶ香港市民。
アシタバの蕾
↓よろしかったら、お願いします。