遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

原発がなくても電力は足りると言う説があるが

2011-07-10 00:19:49 | 新エネルギー

 総理大臣が、経産大臣や玄海町長、佐賀県知事に上らせた梯子を外し、ひとりパフォーマンスを行ったことで、点検停止した原発の再稼働が見込めなくなってしまいました。ストレステストは、本家のECでも原発の現状の稼働を停止することなく進められているものですが、風を吹かせて煽り立てるマスコミのせいか、日本では原発稼働の必須条件のように取りざたされています。もとより、椅子にしがみつくことが最優先で政治の混乱を生じさせることに専念している狂人菅にとっては、狙い通りの世間の反応で、官邸生活がお気に入りで一日も長居したい夫人とともにほくそ笑んで乾杯していることでしょう。
 好むと好まざるとにかかわらず、来春には全原発が停止してしまう日本。停止を決めたドイツでさえ10年後とし、他国からの輸入の担保もあるのに、国民生活や、産業への影響と対策はいまだ示されていません。
 そのなかで、原発が停止しても電力は足りると言う説がちらほら聞こえます。注目しているのですが、以下の記事がありましたので、遊爺の備忘録として抜粋転載させていただきます。
 

「原発なしで電力は賄える」は本当か:資源・エネルギー:ECO JAPAN -成長と共生の未来へ-

<前略>
|設備があっても100%の供給はできない

 広瀬氏は、電力会社が保有する原発以外の水力、火力の発電設備と、他社からの受電で需要を賄えるから、原発を全廃できると主張している。この主張には、3つの大きな誤解がある。
 まず、水力発電の設備能力と、実際に可能な発電量は異なる。水力発電所は常に100%の設備能力で供給できるわけではない。2番目に、石油火力のなかには昭和30年代に建設されたものもある。これも常に100%の能力で使用できる保証はない。そして3番目の誤解は、他社受電に、卸電力事業者である日本原子力発電の原発が発電した電力が含まれている。彼が示す「原発なしでも大丈夫」の根拠そのものが、原発全廃になっていないわけだ。

<中略>

 
まず、水力発電について検証してみよう。水力発電の方式には、自流式、貯水式、揚水式の3つがある。自流式は流れ込み式とも呼ばれ、自然の流れを利用するので需要のピークに合わせて発電することはできない。一方、ほかの2方式はピークに合わせて放流し、発電が可能だ。もちろん貯水式の場合、空梅雨で雨が降らなければ発電できない。揚水式は主に原発の夜間電力を利用して、水をダムに揚げて放流するもので、ピーク需要に対応できる。ちなみに原発がなければ、高値の化石燃料をたいて水を揚げることになる。
 それでは実際、水力は最大電力が必要な時、どの程度稼働していたのだろうか。最新の2008年のデータによると、東電の水力発電の設備能力は898万6000kWであるのに対し、実際に発電した最大の出力は、646万kWだった。上述したような理由から、設備能力の72%しか利用できなかったわけだ。このことから、約250万kW分の供給力を見込めないことが分かった。ほかの電力会社の水力発電の事情も、似たり寄ったりだ。関西電力は設備能力が819万kWあるのに対し、実際の最大出力は616万kWで、75%しか利用していない。中部電力は522万kWに対し、349万kWで67%だ。広瀬氏の資料によれば、関電の余力は101万9000kW。この時点で需要を賄えなくなる。
 火力はすべて利用できるだろうか。これも難しい。1979年に起きた第2次石油危機を受けて、国際エネルギー機関(IEA)は石油火力の新設を、原則、禁止した。これを受けて、日本でも石油火力は新設されず、既存の石油火力も、石炭や液化天然ガス(LNG)火力に転換していった。電力会社は現在も、老朽化が進んだ石油火力でさえ、ピーク需要に対応するために保有し続けている。しかし、設備の古さと効率の悪さは否めない。

<中略>

|卸電力に含まれる原子力の発電

 さらに、問題は「他社受電」と呼ばれる、卸電力事業者と卸供給事業者から電力会社が買う電力だ。「一般電気事業者」と呼ばれる東電など地域ごとの電力会社に電力を供給する事業を手掛ける卸電力事業者には、水力と石炭火力が中心の電源開発(Jパワー)と、原子力発電の日本原子力発電の2社がある。日本原子力発電は、東海第2と敦賀1、2号機の262万kWの原発を保有している。原発を全廃するなら、この他社受電分も目減りする。
 2008年のデータによると、東電はピーク時に1179万kWの電力を他社から受けている。このうち、124万kWは原発だ。関電は、原発から80万kWの電力供給を受けている。中電は69万kWだ。この数字には東北電力と北陸電力の原発からの融通電力が含まれているが、原発の電力であることに変わりはない。
 水力、火力、他社受電のすべてで、広瀬氏の主張が成立しないことが分かった。仮にすべての火力が100%稼働し、今年が節電モードで従来よりも最大電力需要が下回ったとしても、関電では原発なしでは電力供給に大きな問題が生じる。東電も供給力はぎりぎりだ。火力が100%稼働する前提で東電と関電の電力需給状況を図-2と図-3に示した(注:水力の発電能力と他社受電のデータは送電端、火力の能力と需要量は発電端の数字で、供給の数字を発電端に合わせると数%供給が増えるが、大きな影響はない)。
 広瀬氏は、自家発電があるので供給力に不安はないとも主張しているが、現在ある自家発のうち、供給力に余裕がある発電所は、既に電力会社と長期契約を締結して電力を供給する卸供給事業を行っているか、直接、需要家に電力を販売しているはずだ。設備を遊ばせている会社はないだろう。今回の原発停止をきっかけに、新たに電力供給を始めようという自家発などはほとんどないわけだ。電力の供給に不安を覚え、これから自家発を新設する企業があるかもしれないが、現在の燃料価格を考えると経済性が不透明で、それほど多くの企業が今から自家発の設置に踏み切るとも思えない。


|発送電分離で供給は増えるのか

<中略>

 
広瀬氏は、発送電を分離すれば、電力の供給量が増えるとも主張している。しかし、なぜ供給が増えるのか、その理由は明確ではない。既に送電については託送制度が導入され、競争力のあるコストで発電できる事業者は卸供給事業などに参入しているだろう。発送電を分離すれば、送電コストが下がるから、新規参入が増えるとの主張があるかもしれないが、発送電を分離すると、逆に送電コストが上昇して、新規参入が困難になる可能性が高い。
 つまり、こういうことだ。電力会社は総括原価主義と呼ばれる方式で、コストに適正利潤を加えた電力料金が認められている。この結果として電力会社の利益水準は一般的に低いレベルにある。
 収益性を測るには、総資産額に対し、いくらの利益があったかを見るのが一番分かりやすい。総資産利益率、「ROA」だ。震災の影響がなかった直近のデータでは、日本の電力のROAは一番高い中部電力でも2.0%、最も低い東北電力は0.8%だ。1兆円の資産があるとすれば、利益は80億円しかない計算だ。
 日本の他業種の同規模の企業と比較すれば、ROAはかなり低い。また、米国の大手電力会社のROAを見るとサザン社が3.3%、アメリカンエレクトリック社が2.8%、コンソリデーティッドエジソン社で2.6%だ。
 もし、発送電を分離し、送電部門を売却した場合、購入した企業が1%や2%の利益率で満足するだろうか。東電の送配電部門の資産は5兆円だ。5兆円に対し500億円しか利益がないような投資をする企業があるだろうか。結局、今の電力会社が得ているような利益水準では普通の投資家は満足しないだろう。発送電分離により、送電料金の値上げが起こる可能性が高い。
 新規に参入した結果、値上げではなく無駄を削ることで利益を出す事業者もいるという反論があるかもしれない。電力部門の自由化の結果、送電部門のコストカットを断行したニュージーランドでは98年、オークランド市で5週間にわたる停電が起きた。高い信頼性と、定期的な補修が必要な送電部門でのコストカットがいかに難しいかを物語る。

 結局、
すぐにも原発抜きで電力供給を実現する魔法は存在しない
ということだ。中長期には、送電線網の増強を図りながら再生可能エネルギーの導入を増やすしか方法はないだろう。欧州と異なり、電力の輸出入が不可能な日本がただちに取れる選択肢は限られている。
 電力料金は産業の競争力と、国民生活に直結している。もし、原発の発電量のすべてを火力の電気で賄うとなると、電力料金の大幅値上げは避けられない。産業によっては、エネルギーコストが安い海外に拠点を移す企業も出てくるだろう。また、今200万人を超える生活保護受給者がいることも忘れてはいけない。貧困家庭では電力料金の価格弾性値は極めて低く、電力料金値上げの影響は非常に大きい。
 
原発はいやだという感情論だけでは、エネルギー問題を論じることはできない
。エネルギーコスト、産業の競争力、国民生活への影響も考慮しながら、エネルギー供給の面から解決策を見つけていくしかない。データに基づいて冷静に議論したい。


  広瀬隆氏とは、すでにご承知の方が多いとは存じますが、リンクの元記事に書かれれているように、『「原発全廃」でも電力不足は起きない!』と言う記事を「週刊朝日」6月10日号に、載せている人で、原子力撤廃運動の論客として広く注目さている方なのだそうですね。
 テレビ朝日のモーニングバードの玉川氏(=経産大臣が罷免することで話題の経産省K氏を、都内のあちこち引き回して、無駄な官舎と言わさせて歩いていたりする鳥越俊太郎の申し子。テレビ朝日の社員なので言っていることはテレビ朝日の責任範囲の公認の見解)が、橋下知事に原発が無くてもいけるとご注進していた数値が、ネットで観たという机上の保有設備能力値でした。橋下知事もさすがによく調べさせますとあしらっていましたが。

 「設備能力」と実際の「有効能力」に差があるのは常識ですが、机の上での仕事ばかりやっているライターやテレビ局の人にはわからないのでしょうか?
 原発以外の電力として遊爺が注目しているのは、卸電気事業者や、PPS(特定規模電気事業者)の供給余力です。電力自由化や発送電分離が、安価な電力をこれらの業者から得られるという説は見聞きするのですが。
 # 卸電気事業者やPPS他については、既にご承知の方が多いとは存じますが、以下をご参照ください。
  
日本の電力会社 - Wikipedia
 
 卸電気事業者は、日本原子力発電とJ-POWERで、記事で指摘される通り、日本原子力発電は原子力発電です。J-POWERは、佐久間ダムで有名な水力(揚水式&ダム式)と火力ですが、近年不評をかこっていた反ダム建設やCO2対策から原子力発電所の新設を一本釣りまぐろで有名な大間ですすめていて、対岸の函館などでの反対運動が報じられていますね。
 PPSでは、NTTファシリティーズ・東京ガス・大阪ガスが共同出資している「エネット」が注目されます。大阪府庁などは「エネット」の電力を使用していますが節電を始めていたのを、橋下知事が節電中止令を出したり、また節電を始めたりしていますね。
 
asahi.com(朝日新聞社):大阪府庁「やっぱり節電します」 冷房止める場合も - 政治

 これらの電力供給余力が、原発停止分をカバーできるのか、火力に負うところがあるが、あれだけ盛り上がっていたCO2削減に逆行することは、子孫に負の遺産を残すことになるがどうするのかが課題ですね。
 Jパワーでは使用可能水量を増やすことで、数%の供給力アップを準備しているのだそうです。
 
Jパワー、水力パワー全開で電力を供給 - MSN産経ニュース

 自由化や発送電分離で、安価で安定した原子力発電量に代わりうる電力供給者を産み出すのでしょうか?
 エネットの武井社長は、独占企業に任せず、再生可能エネルギーをはじめ多様な電源を活用していかねばならないとし、発送電分離で安価な電力供給が実現可能となるとしています。また、全電力の 1%にすぎない卸電力を活性化させることを、発送電分離より先に行う手もあると答えています。
 
電力料金値上げ、「発送電分離」でブレーキを エネットの武井社長に聞く :日本経済新聞

 福島第一の被害に遭われた方々には、安直なお見舞いがはばかられるほどのご苦労と、人生設計の崩壊には言葉がみつかりません。しかし、福島第二は大事故には至らず、女川は逆に避難所になっています。この差はなになのか、原発発はすべて即時停止すべきなのか(ドイツでも10年後を目指している)、マスコミに踊らされて極論に走ることなく考えることが必要だとは、遊爺も賛成です。
 廃棄物の最終処理がいまだに確立していない原発に代わる、地球環境を破壊しないエネルギーの開発に注力することが望まれるのは、世界中のだれもがねがっていることにはちがいはないのですから。

 原発はなくても電力は賄える説。来春までには順次停止してしまいますので、原発の電力がなくなることは実現します。その時、国民の暮らしや、産業活動、雇用はどうなるのでしょう。今15%削減云々が、全国平均30%、最悪の関電管内では50%の削減が必要な現状とされています。50%の節電生活は想像を絶するものですし、産業活動は不可能に近くなると想像されます。






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