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インドネシア当局は、2021年4月にロンボク海峡で沈没したインドネシア海軍潜水艦の引き揚げを、中国海軍の協力を得て作業を開始した。
水深の深いロンボク海峡は、潜水艦にとって極めて重要な海峡。ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡でもある。
インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしては不可能。
沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったことで、中国海軍にとっては最大のチャンス到来となったと、軍事社会学者の北村氏。
群島国家インドネシア周辺海域には多くの海峡が存在。
いずれの海峡も国際海上交通にとって極めて重要な海峡ですが、マラッカ海峡とロンボク海峡は国連海洋法条約によって国際海峡に指定されているのだそうですね。
マラッカ海峡はインド洋と南シナ海を接続する最短ルートであり船舶通航量は極めて多い。しかし水深が浅い。そのため、巨大タンカーや超大型貨物船は通航できず、船舶の最大サイズは「マラッカマックス」と呼ばれる大きさに制限されているのだと。
一方、ロンボク海峡の水深は深いため、マラッカマックスを上回る巨大船がインド洋から南シナ海へ抜ける際には(逆方向に抜ける際も)ロンボク海峡を抜けることになる。
潜水艦にとっては、水深の深いロンボク海峡は極めて重要。
ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡。
海中にはいくつかの密度が違う水層が存在しており、それらの水層の境で、海面で生ずるような波が発生する。そのような海中で発生する波が内部波であり、潜水艦の潜航にとり極めて危険な存在。
インドネシア海軍潜水艦の沈没も、おそらくはロンボク海峡海中で発生した内部波によって潜水艦が海底に向かって引き込まれた可能性が極めて高いと推測されているのだそうです。
潜水艦にとっては天敵ともいえる内部波が多発するロンボク海峡を安全かつ迅速に潜航するには、ロンボク海峡海中の詳細な科学的調査が必須。
しかし、インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしてはいずれの国にとっても至難の業。
沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったのであるから、中国海軍にとっては最大のチャンス到来ということになると北村氏。
インドネシア側も、中国に沈没潜水艦引き上げを依頼した以上、中国海軍がロンボク海峡の海洋調査を実施することは十二分に承知の上。
ということは、潜水艦引き上げ作業を機に今後予想される中国海軍からの合同訓練や共同パトロールを通しての協力関係構築の促進も、ある程度は前提にしているものと考えられなくもないと北村氏。
インドネシア海軍はアメリカからの艦艇をはじめとする武器兵器の輸入を嫌っており、国産化の努力も重ねている。そんなインドネシア海軍への艦艇売り込みにも、中国は拍車をかけるものと思われるとも。
高速鉄道建設では、日中の競合があり、価格や工期の点で中国が落札しましたが、未だに未完成。
1つは計画自体の甘さ。土地買収の遅れ。インドネシア政府は自らに財政負担を求めない中国案を採用した。
2つ目は新型コロナウイルスの感染拡大。工事に携わっていた中国人スタッフの多くが感染を避けるため帰国。中国からの関連資材の供給も滞った。
3つ目は自然災害。
当初設定した開業目標から幾度となく計画の先延ばしを強いられた中国、インドネシア両国はインフラ開発協力に関する国際的信用を落としたことは否定できない。
インドネシア高速鉄道 着工5年、遠い開業: 日本経済新聞
失敗に懲りずに、またまた中国に発注したインドネシア政府。もっとも、日本他、自由主義諸国が引き揚げ受注競争に参画したかどうかは、知らないのですが。
インドネシアが、中国に翻弄支配されないことを願っています。
# 冒頭の画像は、インドネシア周辺の重要海峡
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この花の名前は、ヤマブキソウ
↓よろしかったら、お願いします。
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水深の深いロンボク海峡は、潜水艦にとって極めて重要な海峡。ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡でもある。
インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしては不可能。
沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったことで、中国海軍にとっては最大のチャンス到来となったと、軍事社会学者の北村氏。
インドネシア潜水艦引き揚げに協力する中国海軍の舌なめずり インドネシア領域の真っただ中で海洋調査、合同訓練の展開も | JBpress (ジェイビープレス) 2021.5.20(木) 北村 淳:軍事社会学者
2021年4月にロンボク海峡で沈没したインドネシア海軍潜水艦「KRI Nanggala(ナンガラ)402」(ドイツ製)を850メートルの海底から引き上げる作業に中国が名乗りを上げ、インドネシア当局は中国海軍の協力を得て引き上げ作業を開始した。
中国海軍は遠洋曳船「南拖195」、潜水艦救難艦「永興島863」ならびに海洋深海科学調査船「探索2号」をロンボク海峡に派遣した。
重要航路になっているインドネシア周辺海域の海峡
多数の島々で構成される群島国家インドネシア周辺海域には多くの海峡が存在している。なかでもマラッカ海峡、シンガポール海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡はいずれも国際海運にとって重要航路になっている。
マラッカ海峡はインドネシアのスマトラ島とマレーシアのマレー半島の間に横たわる長大な海峡であり、シンガポール海峡はインドネシアのリアウ諸島とシンガポールの間の狭小な海峡である。そしてスンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡はそれぞれ海峡の両岸がインドネシアの領土であり、インドネシアの領海内に位置する海峡となっている。
いずれの海峡も国際海上交通にとって極めて重要な海峡であり、マラッカ海峡とロンボク海峡は国連海洋法条約によって国際海峡に指定されている。
マラッカ海峡(そして隣接するシンガポール海峡)はインド洋と南シナ海を接続する最短ルートであり船舶通航量は極めて多い。しかし水深が浅い(平均水深25メートル)ため巨大タンカーや超大型貨物船は通航できず、船舶の最大サイズは「マラッカマックス」と呼ばれる大きさに制限されている。
一方、ロンボク海峡の水深は深いため、マラッカマックスを上回る巨大船がインド洋から南シナ海へ抜ける際には(逆方向に抜ける際も)ロンボク海峡を抜けることになる。また、インド洋と日本沿海や北西太平洋を結ぶ場合には、ロンボク海峡から南シナ海を北上する代わりに、ロンボク海峡からマカッサル海峡をフィリピン海へ抜ける航路も使われる。
このように、インドネシアの諸海峡とりわけマラッカ海峡とロンボク海峡は国際海上交易の死命を制しかねない重要ポイント、すなわちチョークポイントになっている。
潜水艦の“天敵”が多発するロンボク海峡
それらのチョークポイントは、海上交易にとってのみ重要なのではなく軍事的にも極めて重要である。マラッカ海峡やロンボク海峡、それにその他のインドネシア周辺の海峡の通航を軍事的に制圧されてしまうと、インド洋と太平洋を行き来するにはオーストラリア南方海域を大迂回しなければならなくなってしまう。
とりわけ潜水艦にとってロンボク海峡は極めて重要だ。有事に際して潜水艦が水深わずか25メートル程度のマラッカ海峡を敵に探知されずに通過することは不可能であり、ロンボク海峡を抜ける必要がある。
ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡である。水温や塩分濃度などの違いなどによって海中にはいくつかの密度が違う水層が存在しており、それらの水層の境で、海面で生ずるような波が発生する。そのような海中で発生する波が内部波であり、潜水艦の潜航にとり極めて危険な存在である。今回のインドネシア海軍潜水艦の沈没も、おそらくはロンボク海峡海中で発生した内部波によって潜水艦が海底に向かって引き込まれた可能性が極めて高いと推測されている。
潜水艦にとっては天敵ともいえる内部波が多発するロンボク海峡を安全かつ迅速に潜航するには、ロンボク海峡海中の詳細な科学的調査が必要となる。いくら国際海峡に指定されており公海に準じた位置づけがなされているとは言っても、インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしてはいずれの国にとっても至難の業である。
中国海軍に最大のチャンス到来
このような海峡での沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったのであるから、中国海軍にとっては最大のチャンス到来ということになる。
水深850メートルほどの海底に沈没しているインドネシア潜水艦を引き上げるには当該海中の各種科学調査が必要になる(と中国海軍が主張する)のは当然である。実際に中国海軍は海洋深海科学調査船「探索2号」を投入している。
インドネシア側も、中国海軍に沈没潜水艦引き上げを依頼した以上、中国側がロンボク海峡の海洋調査を実施することは十二分に承知の上である。
ということは、潜水艦引き上げ作業を機に今後予想される中国海軍からの合同訓練や共同パトロールを通しての協力関係構築の促進も、ある程度は前提にしているものと考えられなくもない。
また、インドネシア海軍はアメリカからの艦艇をはじめとする武器兵器の輸入を嫌っており、最近は、韓国から潜水艦やミサイル艇を、オランダからフリゲートやコルベットを調達しながら、国産化の努力も重ねている。そんなインドネシア海軍への艦艇売り込みにも、中国は拍車をかけるものと思われる。
2021年4月にロンボク海峡で沈没したインドネシア海軍潜水艦「KRI Nanggala(ナンガラ)402」(ドイツ製)を850メートルの海底から引き上げる作業に中国が名乗りを上げ、インドネシア当局は中国海軍の協力を得て引き上げ作業を開始した。
中国海軍は遠洋曳船「南拖195」、潜水艦救難艦「永興島863」ならびに海洋深海科学調査船「探索2号」をロンボク海峡に派遣した。
重要航路になっているインドネシア周辺海域の海峡
多数の島々で構成される群島国家インドネシア周辺海域には多くの海峡が存在している。なかでもマラッカ海峡、シンガポール海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡はいずれも国際海運にとって重要航路になっている。
マラッカ海峡はインドネシアのスマトラ島とマレーシアのマレー半島の間に横たわる長大な海峡であり、シンガポール海峡はインドネシアのリアウ諸島とシンガポールの間の狭小な海峡である。そしてスンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡はそれぞれ海峡の両岸がインドネシアの領土であり、インドネシアの領海内に位置する海峡となっている。
いずれの海峡も国際海上交通にとって極めて重要な海峡であり、マラッカ海峡とロンボク海峡は国連海洋法条約によって国際海峡に指定されている。
マラッカ海峡(そして隣接するシンガポール海峡)はインド洋と南シナ海を接続する最短ルートであり船舶通航量は極めて多い。しかし水深が浅い(平均水深25メートル)ため巨大タンカーや超大型貨物船は通航できず、船舶の最大サイズは「マラッカマックス」と呼ばれる大きさに制限されている。
一方、ロンボク海峡の水深は深いため、マラッカマックスを上回る巨大船がインド洋から南シナ海へ抜ける際には(逆方向に抜ける際も)ロンボク海峡を抜けることになる。また、インド洋と日本沿海や北西太平洋を結ぶ場合には、ロンボク海峡から南シナ海を北上する代わりに、ロンボク海峡からマカッサル海峡をフィリピン海へ抜ける航路も使われる。
このように、インドネシアの諸海峡とりわけマラッカ海峡とロンボク海峡は国際海上交易の死命を制しかねない重要ポイント、すなわちチョークポイントになっている。
潜水艦の“天敵”が多発するロンボク海峡
それらのチョークポイントは、海上交易にとってのみ重要なのではなく軍事的にも極めて重要である。マラッカ海峡やロンボク海峡、それにその他のインドネシア周辺の海峡の通航を軍事的に制圧されてしまうと、インド洋と太平洋を行き来するにはオーストラリア南方海域を大迂回しなければならなくなってしまう。
とりわけ潜水艦にとってロンボク海峡は極めて重要だ。有事に際して潜水艦が水深わずか25メートル程度のマラッカ海峡を敵に探知されずに通過することは不可能であり、ロンボク海峡を抜ける必要がある。
ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡である。水温や塩分濃度などの違いなどによって海中にはいくつかの密度が違う水層が存在しており、それらの水層の境で、海面で生ずるような波が発生する。そのような海中で発生する波が内部波であり、潜水艦の潜航にとり極めて危険な存在である。今回のインドネシア海軍潜水艦の沈没も、おそらくはロンボク海峡海中で発生した内部波によって潜水艦が海底に向かって引き込まれた可能性が極めて高いと推測されている。
潜水艦にとっては天敵ともいえる内部波が多発するロンボク海峡を安全かつ迅速に潜航するには、ロンボク海峡海中の詳細な科学的調査が必要となる。いくら国際海峡に指定されており公海に準じた位置づけがなされているとは言っても、インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしてはいずれの国にとっても至難の業である。
中国海軍に最大のチャンス到来
このような海峡での沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったのであるから、中国海軍にとっては最大のチャンス到来ということになる。
水深850メートルほどの海底に沈没しているインドネシア潜水艦を引き上げるには当該海中の各種科学調査が必要になる(と中国海軍が主張する)のは当然である。実際に中国海軍は海洋深海科学調査船「探索2号」を投入している。
インドネシア側も、中国海軍に沈没潜水艦引き上げを依頼した以上、中国側がロンボク海峡の海洋調査を実施することは十二分に承知の上である。
ということは、潜水艦引き上げ作業を機に今後予想される中国海軍からの合同訓練や共同パトロールを通しての協力関係構築の促進も、ある程度は前提にしているものと考えられなくもない。
また、インドネシア海軍はアメリカからの艦艇をはじめとする武器兵器の輸入を嫌っており、最近は、韓国から潜水艦やミサイル艇を、オランダからフリゲートやコルベットを調達しながら、国産化の努力も重ねている。そんなインドネシア海軍への艦艇売り込みにも、中国は拍車をかけるものと思われる。
群島国家インドネシア周辺海域には多くの海峡が存在。
いずれの海峡も国際海上交通にとって極めて重要な海峡ですが、マラッカ海峡とロンボク海峡は国連海洋法条約によって国際海峡に指定されているのだそうですね。
マラッカ海峡はインド洋と南シナ海を接続する最短ルートであり船舶通航量は極めて多い。しかし水深が浅い。そのため、巨大タンカーや超大型貨物船は通航できず、船舶の最大サイズは「マラッカマックス」と呼ばれる大きさに制限されているのだと。
一方、ロンボク海峡の水深は深いため、マラッカマックスを上回る巨大船がインド洋から南シナ海へ抜ける際には(逆方向に抜ける際も)ロンボク海峡を抜けることになる。
潜水艦にとっては、水深の深いロンボク海峡は極めて重要。
ところがロンボク海峡は内部波が生ずることで悪名が高い海峡。
海中にはいくつかの密度が違う水層が存在しており、それらの水層の境で、海面で生ずるような波が発生する。そのような海中で発生する波が内部波であり、潜水艦の潜航にとり極めて危険な存在。
インドネシア海軍潜水艦の沈没も、おそらくはロンボク海峡海中で発生した内部波によって潜水艦が海底に向かって引き込まれた可能性が極めて高いと推測されているのだそうです。
潜水艦にとっては天敵ともいえる内部波が多発するロンボク海峡を安全かつ迅速に潜航するには、ロンボク海峡海中の詳細な科学的調査が必須。
しかし、インドネシアの領域の真っただ中に位置するロンボク海峡で海洋調査を実施することは、インドネシア政府の同意なくしてはいずれの国にとっても至難の業。
沈没潜水艦引き上げ作業を中国が請け負ったのであるから、中国海軍にとっては最大のチャンス到来ということになると北村氏。
インドネシア側も、中国に沈没潜水艦引き上げを依頼した以上、中国海軍がロンボク海峡の海洋調査を実施することは十二分に承知の上。
ということは、潜水艦引き上げ作業を機に今後予想される中国海軍からの合同訓練や共同パトロールを通しての協力関係構築の促進も、ある程度は前提にしているものと考えられなくもないと北村氏。
インドネシア海軍はアメリカからの艦艇をはじめとする武器兵器の輸入を嫌っており、国産化の努力も重ねている。そんなインドネシア海軍への艦艇売り込みにも、中国は拍車をかけるものと思われるとも。
高速鉄道建設では、日中の競合があり、価格や工期の点で中国が落札しましたが、未だに未完成。
1つは計画自体の甘さ。土地買収の遅れ。インドネシア政府は自らに財政負担を求めない中国案を採用した。
2つ目は新型コロナウイルスの感染拡大。工事に携わっていた中国人スタッフの多くが感染を避けるため帰国。中国からの関連資材の供給も滞った。
3つ目は自然災害。
当初設定した開業目標から幾度となく計画の先延ばしを強いられた中国、インドネシア両国はインフラ開発協力に関する国際的信用を落としたことは否定できない。
インドネシア高速鉄道 着工5年、遠い開業: 日本経済新聞
失敗に懲りずに、またまた中国に発注したインドネシア政府。もっとも、日本他、自由主義諸国が引き揚げ受注競争に参画したかどうかは、知らないのですが。
インドネシアが、中国に翻弄支配されないことを願っています。
# 冒頭の画像は、インドネシア周辺の重要海峡
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この花の名前は、ヤマブキソウ
↓よろしかったら、お願いします。
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