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10月4日、岸田文雄内閣がスタート。中国の習近平国家主席、李克強首相は岸田新首相に相次ぎ祝電を送ったのだそうです。
祝電の挨拶からは真意をうかがい知ることは出来ませんが、中国としては今後の日中関係を決して楽観はしていない。むしろ、かなり強い警戒心を持っているようではあると、チャイナウオッチャーの福島香織さん。
中国メディアに今回の日本の首相交代に関連して登場した「新中日戦争」という言葉に注目していると。
中国は、日本の次の首相が誰で、与党執行部や内閣がどのような顔ぶれであるかに神経をとがらせていて、総裁選を非常に注意深く見守ってきたと福島さん。
おなじみの「環球時報」が社説で、「岸田文雄は中日関係を敵対化させるな」とかなり強い調子で牽制しているのだそうです。
それだけ、次の日本の政権が対中強硬に動くという予測を持っているということだろうと。
自民党の総裁選で安全保障の観点から中国への対応が争点になり、それが党員のみならず日本人の大きな関心事として報じられる状況など、過去にほとんど見ることがなかったので、中国としても気にせずにはいられなかったようだとも。
中国としては、自民党は伝統的に親中派議員が中枢にあり、話の通じる相手とみてきたのだそうです。
米国やオーストラリアに対するあからさまな戦狼外交のような矛先を日本に向けることはなかった。中国の主だった日本政治研究者たちの岸田文雄に対する人物評も「温和派」「対中ハト派」「バランス派」という見方が主流であったのだそうです。
ところが、今回の総裁選のプロセスをみて、中国としても今後、日中関係が大きく変わる、しかも厳しい方向に変わらざるを得ないと受け止めていることが、いくつかの論評や識者コメントから透けて見えると。
環球時報の9月29日の社説では「かつて穏健派とラベリングされていた岸田文雄ですら、敵基地攻撃ミサイルや台湾海峡有事などについて、デリケートな方向に重い発言をしていた」「極右の、ややもすると直接的に中国を敵と宣言しそうな高市早苗が第1回投票で188票もの議員票を取ったことは、特に注目すべき意味がある」「我々は、岸田文雄がこうした日本の反中世論の高まりを緩和するように、政治指導者としての影響力を発揮でき、これ以上に対中強硬競争が高まらないようにするよう望んでいる」と強い調子で牽制をかけてきていると。
そして具体的に6つのやってほしくないことを挙げているが、注目すべきは(4)の台湾問題で、「新中日戦争」というこれまであまり聞くことのなかった、穏やかでない言葉だと。
「新中日戦争」という言葉は、「多維新聞」という華僑向け華字ネットニュースに寄稿された在日特約記者の劉海鳴のリポートにも使われている。
2009年以降、親中派香港ビジネスマンの于品海による買収を経て中国の対外プロパガンダメディアに変貌。親習近平メディアではないとみられており、若干、反習近平風味がただよっているのだそうです。
自民党親中派の重鎮の二階俊博から対中強硬派の甘利明に交代したこと、対中強硬派の急先鋒と見なされ、総裁選期間にわざわざ台湾の蔡英文総統とリモート会談を行った高市早苗を自民党執行部の政調会長に就けたことが、「一つの中国」に対する強烈なメッセージであると受け取られている。
岸田政権も安倍政権に続き憲法改正を目標に挙げているのだが、この憲法改正の狙いが、台湾海峡に対する日本の軍事介入を可能にするためではないか、という疑念が中国側にあり、このままでは中日関係が戦争臨界点に達するまでの猶予はそう長くない、と。
内閣の顔ぶれをみても、親台湾派の岸信夫が防衛大臣を続投、注目の経済安全保障担当相の小林鷹之も親台湾派で知られ、TPP加盟を申請している台湾の中央通信社などは、かなり期待を寄せた論評記事。
シンガポールの華字紙「聯合早報」は、中国人民大学国際関係学院の黄大慧副院長のコメントを引用し、岸田政権が対中政策を強硬化させる主な理由は、日本の国内世論が(反中から)変わらないのと同時に、米中の戦略的競争関係という国際環境も変化が起きないからだと指摘している。
日中関係に関しては比較的楽観論の南京大学国際関係学院の朱鋒院長ですら、日本の戦略の選択として完全に米国に依存し米国を支持することは、誰が首相になったところで変えようのないものだ、という見方をしている。
ただ朱鋒は、「日本が米国の支援を借りて対中強硬姿勢をとり、安全保障上、中国と拮抗しようとすることは、必ずしも経済面で中国とデカップリングすることを意味しない」として、経済面での日中関係は維持されるはず、との期待を残しているのだと。
福島さんは、台湾有事に関しては、1995~96年の第3次台湾海峡危機以上の危機感をもっていると。
主たる要因は、習近平が来年(2022年)の秋の党大会で、鄧小平が作りあげた10年ごとの最高指導権力の座の禅譲システムを破壊してまで長期独裁政権の確立に固執しており、党内および中国社会の不安定化を抑え込んで、政権のレジティマシー(正統性)を主張するために、台湾統一のプランと、それが可能であるという実力を国内に強くアピールしていることにあるのだそうです。
中国による台湾の武力統一に対して、米国も日本も具体的に身構える必要が出てきて、台湾海峡有事への軍事的介入を見据えた、法整備などを含めた具体的な対応に迫られている。
習近平政権が長期独裁政権を目指し、米中新冷戦構造の中で権威主義体制の中華秩序圏を世界に打ち立て、米国に変わる国際社会の機軸になろうという野望を捨てない限りは、そのプロセスの比較的前半に台湾海峡有事は必然的に起こりうる、と福島さん。
日本が開かれた民主的自由な社会の体制を守るつもりならば、新政権が対中強硬に大きく舵を切るのも必然、ということになる。台湾の民主が失われ中国の一部となれば、尖閣諸島や沖縄の主権も危うくなり、日本が領土や領海を侵されるのだから、台湾海峡有事は存立危機事態に違いない。
環球時報が岸田新政権にやってくれるなと要請する6つの項目のすべてが、日本の安全と開かれた民主的な自由な社会の価値観と体制を守るために積極的に取り組むべきテーマだと思うと福島さん。
「政令経熱」という言葉は今後は通用しないかもしれない。
今の習近平政権の、経済成長を犠牲にしても強引に推し進めようとする市場コントロール強化路線、規制強化路線が続けば、市場としても公平性、安全性はさらに揺らぎ、中国の民営企業は委縮し、経済のパイも縮小していく。
そうすれば、いかに義理堅い日本企業としても、これまでのように中国市場に恋々とし続けなければならない理由にはならない。
中国メディアに今回登場した「新中日戦争」という言葉を、日本の政権と国民がきちんと正面から受け止めねばならないと福島さん。
連日尖閣諸島近海に「海警」を出没させ、領海侵入も混ぜながら、実効支配実績を積み重ねる中国。台湾海峡の台湾の航空色部健に侵入し、台湾の軍事支配の機を伺う中国。
力で覇権拡大を進める習近平への抑止力は、自由を尊重する国々の団結が効果的です。
米国がトランプ氏時代から進めてきていましたが、バイデン氏も継承しています。欧州各国も同調。具体的に尖閣で侵入被害に遭っている日本は、習近平を国賓で迎えるなんて寝言を言っている場合ではないですね。
# 冒頭の画像は、発足した岸田内閣の面々
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この花の名前は、ペンタス
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祝電の挨拶からは真意をうかがい知ることは出来ませんが、中国としては今後の日中関係を決して楽観はしていない。むしろ、かなり強い警戒心を持っているようではあると、チャイナウオッチャーの福島香織さん。
中国メディアに今回の日本の首相交代に関連して登場した「新中日戦争」という言葉に注目していると。
中国が岸田新政権に「やってほしくない」こと 台湾有事が近い?中国メディアに登場した新中日戦争という言葉 | JBpress (ジェイビープレス) 2021.10.7(木)
福島 香織:ジャーナリスト
10月4日、岸田文雄内閣がスタートし、中国の習近平国家主席、李克強首相は岸田新首相に相次ぎ祝電を送った。それはCCTV(中国中央電視台)の新聞「聯播」のトップニュースとして伝えられた。
祝電の内容はいたって普通。習近平は「中日は一衣帯水、睦隣友好協力関係を発展させることが両国人民の根本利益に合致し、アジアと世界の平和、安定、繁栄にも利する。中日双方は、中日間の4つの政治文書が確立させた各項目の原則をしっかり守るべきであり、対話コミュニケーションを強化し、お互いの信頼協力を増進させ、新時代の要請に応じた中日関係の構築に努力すべきだ」と呼び掛けた。李克強は「双方ともに政治の共通認識を保ち、交流協力を強化し、両国関係を正しい軌道に沿って健康的安定的に発展させていくべきだ。ともに来年の中日国交正常50周年を迎えよう」と述べた。
岸田政権に対して中国側が本音ではどう思っているかは、こうした祝電の挨拶からはあまり伝わらない。だが、いくつかの体制内学者や官製メディアの論評を参考にざっくりと見てみると、中国としては今後の日中関係を決して楽観はしていない。むしろ、かなり強い警戒心を持っているようではある。中には「新中日戦争」に言及する見方もある。中国はこれからの日中関係をどう見ているのだろう。
中国が岸田政権に「やってほしくない」こと
中国では自民党総裁選の結果が速報で報じられ、論評も五月雨式に出てきている。中国は総裁選を非常に注意深く見守ってきた。それだけ日本の次の首相が誰で、与党執行部や内閣がどのような顔ぶれであるかに神経をとがらせているということだ。
党中央機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」が社説で、「岸田文雄は中日関係を敵対化させるな」とかなり強い調子で牽制しているが、それだけ、次の日本の政権が対中強硬に動くという予測を持っているということだろう。
そもそも、自民党の総裁選で安全保障の観点から中国への対応が争点になり、それが党員のみならず日本人の大きな関心事として報じられる状況など、過去にほとんど見ることがなかったので、中国としても気にせずにはいられなかったようだ。
中国としては、自民党は伝統的に親中派議員が中枢にあり、話の通じる相手とみてきた。実際、安倍政権も安倍晋三個人の考え方はともかく、「釣魚問題」「靖国問題」などについては中国側に配慮してくれていたと評価され、政権末期には「日中関係を正常な軌道に回帰させた」と称えられた。“親中勢力”と受け止められている二階派を後ろ盾にしていた菅政権に対しても、米バイデン政権の動きに引っぱられて対中強硬姿勢が強まったという見方はあったものの、北京としては「主体性のない内閣であり、米国に影響されるのは致しかたなない」との理解を示し、米国やオーストラリアに対するあからさまな戦狼外交のような矛先を日本に向けることはなかった。また、中国の主だった日本政治研究者たちの岸田文雄に対する人物評も「温和派」「対中ハト派」「バランス派」という見方が主流であった。
だが、今回の総裁選のプロセスをみて、中国としても今後、日中関係が大きく変わる、しかも厳しい方向に変わらざるを得ないと受け止めていることが、いくつかの論評や識者コメントから透けて見える。
環球時報の9月29日の社説では「かつて穏健派とラベリングされていた岸田文雄ですら、敵基地攻撃ミサイルや台湾海峡有事などについて、デリケートな方向に重い発言をしていた」「極右の、ややもすると直接的に中国を敵と宣言しそうな高市早苗が第1回投票で188票もの議員票を取ったことは、特に注目すべき意味がある」「我々は、岸田文雄がこうした日本の反中世論の高まりを緩和するように、政治指導者としての影響力を発揮でき、これ以上に対中強硬競争が高まらないようにするよう望んでいる」と強い調子で牽制をかけてきている。
そして具体的に以下の表のような6つのやってほしくないことを挙げている。

「日本の軍事介入」を警戒
ここで注目すべきは(4)の台湾問題で、「新中日戦争」というこれまであまり聞くことのなかった、穏やかでない言葉を使っている。
「新中日戦争」という言葉は、「多維新聞」という華僑向け華字ネットニュースに寄稿された在日特約記者の劉海鳴のリポートにも使われている。多維新聞はもともと在米華人の何頻が立ち上げた在外華人向けのニュースサイトだ。かつては中国では読むことのできない特ダネも多い独立系メディアであったが、2009年以降、親中派香港ビジネスマンの于品海による買収を経て中国の対外プロパガンダメディアに変貌している。ただ、親習近平メディアではないとみられており、若干、反習近平風味がただよっている。
劉海鳴の記事では、北京の日本を焦らせる外交が、日本国内の反中世論を刺激しており、日中双方が互いの民族主義を煽動しあうような負のスパイラルに陥っている、という意見を日本人研究者に言わせている。そのせいか知らないが、この論評ページはまもなく削除された(2021年10月7日追記:その日本人研究者の存在は確認されなかったという)。
この多維の論評では、自民党幹事長職が自民党親中派の重鎮の二階俊博から対中強硬派の甘利明に交代したこと、対中強硬派の急先鋒と見なされ、総裁選期間にわざわざ台湾の蔡英文総統とリモート会談を行った高市早苗を自民党執行部の政調会長に就けたことが、「一つの中国」に対する強烈なメッセージであると受け取られている。
岸田政権も安倍政権に続き憲法改正を目標に挙げているのだが、この憲法改正の狙いが、台湾海峡に対する日本の軍事介入を可能にするためではないか、という疑念が中国側にあり、このままでは中日関係が戦争臨界点に達するまでの猶予はそう長くない、としている。
実際、内閣の顔ぶれをみても、親台湾派の岸信夫が防衛大臣を続投、注目の経済安全保障担当相の小林鷹之も親台湾派で知られ、TPP加盟を申請している台湾の中央通信社などは、かなり期待を寄せた論評記事を流している。
シンガポールの華字紙「聯合早報」は、中国人民大学国際関係学院の黄大慧副院長のコメントを引用し、岸田政権が対中政策を強硬化させる主な理由は、日本の国内世論が(反中から)変わらないのと同時に、米中の戦略的競争関係という国際環境も変化が起きないからだと指摘している。自民党総裁(次期首相)が親中派、中国の古い友人と称される河野洋平の息子の河野太郎であれば、中日関係の緊張を緩和させうる希望があったかもしれない、と論評していた。
日中関係に関しては比較的楽観論の南京大学国際関係学院の朱鋒院長ですら、日本の戦略の選択として完全に米国に依存し米国を支持することは、誰が首相になったところで変えようのないものだ、という見方をしている。ただ朱鋒は、「日本が米国の支援を借りて対中強硬姿勢をとり、安全保障上、中国と拮抗しようとすることは、必ずしも経済面で中国とデカップリングすることを意味しない」として、経済面での日中関係は維持されるはず、との期待を残している。
必然的に起こり得る台湾海峡有事
私個人の見方を言えば、台湾有事に関しては、1995~96年の第3次台湾海峡危機以上の危機感をもっている。
その主たる要因は、習近平が来年(2022年)の秋の党大会で、鄧小平が作りあげた10年ごとの最高指導権力の座の禅譲システムを破壊してまで長期独裁政権の確立に固執しており、党内および中国社会の不安定化を抑え込んで、政権のレジティマシー(正統性)を主張するために、台湾統一のプランと、それが可能であるという実力を国内に強くアピールしていることにある。
このため、中国による台湾の武力統一に対して、米国も日本も具体的に身構える必要が出てきて、台湾海峡有事への軍事的介入を見据えた、法整備などを含めた具体的な対応に迫られているわけだ。それを習近平政権側が、日米の挑発だと言ってさらに国内世論の民族主義高揚や政権への求心力に利用しようとしている、ということだろう。
つまり習近平政権が長期独裁政権を目指し、米中新冷戦構造の中で権威主義体制の中華秩序圏を世界に打ち立て、米国に変わる国際社会の機軸になろうという野望を捨てない限りは、そのプロセスの比較的前半に台湾海峡有事は必然的に起こりうる、ということだ。
日本が中国の打ち立てる中華式権威主義体制の一部に甘んじず、開かれた民主的自由な社会の体制を守るつもりならば、中国の体制内学者、官製メディアが論評するように、新政権が対中強硬に大きく舵を切るのも必然、ということになる。台湾の民主が失われ中国の一部となれば、尖閣諸島や沖縄の主権も危うくなり、日本が領土や領海を侵されるのだから、台湾海峡有事は存立危機事態に違いない。個人の意見を言えば、環球時報が岸田新政権にやってくれるなと要請する6つの項目のすべてが、日本の安全と開かれた民主的な自由な社会の価値観と体制を守るために積極的に取り組むべきテーマだと思う。
「政令経熱」という言葉に象徴されるように、「日中関係が政治的に冷え込んでも、歴史ある日中経済関係は変わらないはずだ」という見方についても、今後はそのとおりではないかもしれない。
今の習近平政権の、経済成長を犠牲にしても強引に推し進めようとする市場コントロール強化路線、規制強化路線が続けば、市場としても公平性、安全性はさらに揺らぎ、中国の民営企業は委縮し、経済のパイも縮小していくのではないか。そうすれば、いかに義理堅い日本企業としても、これまでのように中国市場に恋々とし続けなければならない理由にはならない。
中国メディアに今回登場した「新中日戦争」という言葉を、日中国交正常化50年目を祝う前に、日本の政権と国民がきちんと正面から受け止めねばならないと思うわけだ。
福島 香織:ジャーナリスト
10月4日、岸田文雄内閣がスタートし、中国の習近平国家主席、李克強首相は岸田新首相に相次ぎ祝電を送った。それはCCTV(中国中央電視台)の新聞「聯播」のトップニュースとして伝えられた。
祝電の内容はいたって普通。習近平は「中日は一衣帯水、睦隣友好協力関係を発展させることが両国人民の根本利益に合致し、アジアと世界の平和、安定、繁栄にも利する。中日双方は、中日間の4つの政治文書が確立させた各項目の原則をしっかり守るべきであり、対話コミュニケーションを強化し、お互いの信頼協力を増進させ、新時代の要請に応じた中日関係の構築に努力すべきだ」と呼び掛けた。李克強は「双方ともに政治の共通認識を保ち、交流協力を強化し、両国関係を正しい軌道に沿って健康的安定的に発展させていくべきだ。ともに来年の中日国交正常50周年を迎えよう」と述べた。
岸田政権に対して中国側が本音ではどう思っているかは、こうした祝電の挨拶からはあまり伝わらない。だが、いくつかの体制内学者や官製メディアの論評を参考にざっくりと見てみると、中国としては今後の日中関係を決して楽観はしていない。むしろ、かなり強い警戒心を持っているようではある。中には「新中日戦争」に言及する見方もある。中国はこれからの日中関係をどう見ているのだろう。
中国が岸田政権に「やってほしくない」こと
中国では自民党総裁選の結果が速報で報じられ、論評も五月雨式に出てきている。中国は総裁選を非常に注意深く見守ってきた。それだけ日本の次の首相が誰で、与党執行部や内閣がどのような顔ぶれであるかに神経をとがらせているということだ。
党中央機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」が社説で、「岸田文雄は中日関係を敵対化させるな」とかなり強い調子で牽制しているが、それだけ、次の日本の政権が対中強硬に動くという予測を持っているということだろう。
そもそも、自民党の総裁選で安全保障の観点から中国への対応が争点になり、それが党員のみならず日本人の大きな関心事として報じられる状況など、過去にほとんど見ることがなかったので、中国としても気にせずにはいられなかったようだ。
中国としては、自民党は伝統的に親中派議員が中枢にあり、話の通じる相手とみてきた。実際、安倍政権も安倍晋三個人の考え方はともかく、「釣魚問題」「靖国問題」などについては中国側に配慮してくれていたと評価され、政権末期には「日中関係を正常な軌道に回帰させた」と称えられた。“親中勢力”と受け止められている二階派を後ろ盾にしていた菅政権に対しても、米バイデン政権の動きに引っぱられて対中強硬姿勢が強まったという見方はあったものの、北京としては「主体性のない内閣であり、米国に影響されるのは致しかたなない」との理解を示し、米国やオーストラリアに対するあからさまな戦狼外交のような矛先を日本に向けることはなかった。また、中国の主だった日本政治研究者たちの岸田文雄に対する人物評も「温和派」「対中ハト派」「バランス派」という見方が主流であった。
だが、今回の総裁選のプロセスをみて、中国としても今後、日中関係が大きく変わる、しかも厳しい方向に変わらざるを得ないと受け止めていることが、いくつかの論評や識者コメントから透けて見える。
環球時報の9月29日の社説では「かつて穏健派とラベリングされていた岸田文雄ですら、敵基地攻撃ミサイルや台湾海峡有事などについて、デリケートな方向に重い発言をしていた」「極右の、ややもすると直接的に中国を敵と宣言しそうな高市早苗が第1回投票で188票もの議員票を取ったことは、特に注目すべき意味がある」「我々は、岸田文雄がこうした日本の反中世論の高まりを緩和するように、政治指導者としての影響力を発揮でき、これ以上に対中強硬競争が高まらないようにするよう望んでいる」と強い調子で牽制をかけてきている。
そして具体的に以下の表のような6つのやってほしくないことを挙げている。
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「日本の軍事介入」を警戒
ここで注目すべきは(4)の台湾問題で、「新中日戦争」というこれまであまり聞くことのなかった、穏やかでない言葉を使っている。
「新中日戦争」という言葉は、「多維新聞」という華僑向け華字ネットニュースに寄稿された在日特約記者の劉海鳴のリポートにも使われている。多維新聞はもともと在米華人の何頻が立ち上げた在外華人向けのニュースサイトだ。かつては中国では読むことのできない特ダネも多い独立系メディアであったが、2009年以降、親中派香港ビジネスマンの于品海による買収を経て中国の対外プロパガンダメディアに変貌している。ただ、親習近平メディアではないとみられており、若干、反習近平風味がただよっている。
劉海鳴の記事では、北京の日本を焦らせる外交が、日本国内の反中世論を刺激しており、日中双方が互いの民族主義を煽動しあうような負のスパイラルに陥っている、という意見を日本人研究者に言わせている。そのせいか知らないが、この論評ページはまもなく削除された(2021年10月7日追記:その日本人研究者の存在は確認されなかったという)。
この多維の論評では、自民党幹事長職が自民党親中派の重鎮の二階俊博から対中強硬派の甘利明に交代したこと、対中強硬派の急先鋒と見なされ、総裁選期間にわざわざ台湾の蔡英文総統とリモート会談を行った高市早苗を自民党執行部の政調会長に就けたことが、「一つの中国」に対する強烈なメッセージであると受け取られている。
岸田政権も安倍政権に続き憲法改正を目標に挙げているのだが、この憲法改正の狙いが、台湾海峡に対する日本の軍事介入を可能にするためではないか、という疑念が中国側にあり、このままでは中日関係が戦争臨界点に達するまでの猶予はそう長くない、としている。
実際、内閣の顔ぶれをみても、親台湾派の岸信夫が防衛大臣を続投、注目の経済安全保障担当相の小林鷹之も親台湾派で知られ、TPP加盟を申請している台湾の中央通信社などは、かなり期待を寄せた論評記事を流している。
シンガポールの華字紙「聯合早報」は、中国人民大学国際関係学院の黄大慧副院長のコメントを引用し、岸田政権が対中政策を強硬化させる主な理由は、日本の国内世論が(反中から)変わらないのと同時に、米中の戦略的競争関係という国際環境も変化が起きないからだと指摘している。自民党総裁(次期首相)が親中派、中国の古い友人と称される河野洋平の息子の河野太郎であれば、中日関係の緊張を緩和させうる希望があったかもしれない、と論評していた。
日中関係に関しては比較的楽観論の南京大学国際関係学院の朱鋒院長ですら、日本の戦略の選択として完全に米国に依存し米国を支持することは、誰が首相になったところで変えようのないものだ、という見方をしている。ただ朱鋒は、「日本が米国の支援を借りて対中強硬姿勢をとり、安全保障上、中国と拮抗しようとすることは、必ずしも経済面で中国とデカップリングすることを意味しない」として、経済面での日中関係は維持されるはず、との期待を残している。
必然的に起こり得る台湾海峡有事
私個人の見方を言えば、台湾有事に関しては、1995~96年の第3次台湾海峡危機以上の危機感をもっている。
その主たる要因は、習近平が来年(2022年)の秋の党大会で、鄧小平が作りあげた10年ごとの最高指導権力の座の禅譲システムを破壊してまで長期独裁政権の確立に固執しており、党内および中国社会の不安定化を抑え込んで、政権のレジティマシー(正統性)を主張するために、台湾統一のプランと、それが可能であるという実力を国内に強くアピールしていることにある。
このため、中国による台湾の武力統一に対して、米国も日本も具体的に身構える必要が出てきて、台湾海峡有事への軍事的介入を見据えた、法整備などを含めた具体的な対応に迫られているわけだ。それを習近平政権側が、日米の挑発だと言ってさらに国内世論の民族主義高揚や政権への求心力に利用しようとしている、ということだろう。
つまり習近平政権が長期独裁政権を目指し、米中新冷戦構造の中で権威主義体制の中華秩序圏を世界に打ち立て、米国に変わる国際社会の機軸になろうという野望を捨てない限りは、そのプロセスの比較的前半に台湾海峡有事は必然的に起こりうる、ということだ。
日本が中国の打ち立てる中華式権威主義体制の一部に甘んじず、開かれた民主的自由な社会の体制を守るつもりならば、中国の体制内学者、官製メディアが論評するように、新政権が対中強硬に大きく舵を切るのも必然、ということになる。台湾の民主が失われ中国の一部となれば、尖閣諸島や沖縄の主権も危うくなり、日本が領土や領海を侵されるのだから、台湾海峡有事は存立危機事態に違いない。個人の意見を言えば、環球時報が岸田新政権にやってくれるなと要請する6つの項目のすべてが、日本の安全と開かれた民主的な自由な社会の価値観と体制を守るために積極的に取り組むべきテーマだと思う。
「政令経熱」という言葉に象徴されるように、「日中関係が政治的に冷え込んでも、歴史ある日中経済関係は変わらないはずだ」という見方についても、今後はそのとおりではないかもしれない。
今の習近平政権の、経済成長を犠牲にしても強引に推し進めようとする市場コントロール強化路線、規制強化路線が続けば、市場としても公平性、安全性はさらに揺らぎ、中国の民営企業は委縮し、経済のパイも縮小していくのではないか。そうすれば、いかに義理堅い日本企業としても、これまでのように中国市場に恋々とし続けなければならない理由にはならない。
中国メディアに今回登場した「新中日戦争」という言葉を、日中国交正常化50年目を祝う前に、日本の政権と国民がきちんと正面から受け止めねばならないと思うわけだ。
中国は、日本の次の首相が誰で、与党執行部や内閣がどのような顔ぶれであるかに神経をとがらせていて、総裁選を非常に注意深く見守ってきたと福島さん。
おなじみの「環球時報」が社説で、「岸田文雄は中日関係を敵対化させるな」とかなり強い調子で牽制しているのだそうです。
それだけ、次の日本の政権が対中強硬に動くという予測を持っているということだろうと。
自民党の総裁選で安全保障の観点から中国への対応が争点になり、それが党員のみならず日本人の大きな関心事として報じられる状況など、過去にほとんど見ることがなかったので、中国としても気にせずにはいられなかったようだとも。
中国としては、自民党は伝統的に親中派議員が中枢にあり、話の通じる相手とみてきたのだそうです。
米国やオーストラリアに対するあからさまな戦狼外交のような矛先を日本に向けることはなかった。中国の主だった日本政治研究者たちの岸田文雄に対する人物評も「温和派」「対中ハト派」「バランス派」という見方が主流であったのだそうです。
ところが、今回の総裁選のプロセスをみて、中国としても今後、日中関係が大きく変わる、しかも厳しい方向に変わらざるを得ないと受け止めていることが、いくつかの論評や識者コメントから透けて見えると。
環球時報の9月29日の社説では「かつて穏健派とラベリングされていた岸田文雄ですら、敵基地攻撃ミサイルや台湾海峡有事などについて、デリケートな方向に重い発言をしていた」「極右の、ややもすると直接的に中国を敵と宣言しそうな高市早苗が第1回投票で188票もの議員票を取ったことは、特に注目すべき意味がある」「我々は、岸田文雄がこうした日本の反中世論の高まりを緩和するように、政治指導者としての影響力を発揮でき、これ以上に対中強硬競争が高まらないようにするよう望んでいる」と強い調子で牽制をかけてきていると。
そして具体的に6つのやってほしくないことを挙げているが、注目すべきは(4)の台湾問題で、「新中日戦争」というこれまであまり聞くことのなかった、穏やかでない言葉だと。
「新中日戦争」という言葉は、「多維新聞」という華僑向け華字ネットニュースに寄稿された在日特約記者の劉海鳴のリポートにも使われている。
2009年以降、親中派香港ビジネスマンの于品海による買収を経て中国の対外プロパガンダメディアに変貌。親習近平メディアではないとみられており、若干、反習近平風味がただよっているのだそうです。
自民党親中派の重鎮の二階俊博から対中強硬派の甘利明に交代したこと、対中強硬派の急先鋒と見なされ、総裁選期間にわざわざ台湾の蔡英文総統とリモート会談を行った高市早苗を自民党執行部の政調会長に就けたことが、「一つの中国」に対する強烈なメッセージであると受け取られている。
岸田政権も安倍政権に続き憲法改正を目標に挙げているのだが、この憲法改正の狙いが、台湾海峡に対する日本の軍事介入を可能にするためではないか、という疑念が中国側にあり、このままでは中日関係が戦争臨界点に達するまでの猶予はそう長くない、と。
内閣の顔ぶれをみても、親台湾派の岸信夫が防衛大臣を続投、注目の経済安全保障担当相の小林鷹之も親台湾派で知られ、TPP加盟を申請している台湾の中央通信社などは、かなり期待を寄せた論評記事。
シンガポールの華字紙「聯合早報」は、中国人民大学国際関係学院の黄大慧副院長のコメントを引用し、岸田政権が対中政策を強硬化させる主な理由は、日本の国内世論が(反中から)変わらないのと同時に、米中の戦略的競争関係という国際環境も変化が起きないからだと指摘している。
日中関係に関しては比較的楽観論の南京大学国際関係学院の朱鋒院長ですら、日本の戦略の選択として完全に米国に依存し米国を支持することは、誰が首相になったところで変えようのないものだ、という見方をしている。
ただ朱鋒は、「日本が米国の支援を借りて対中強硬姿勢をとり、安全保障上、中国と拮抗しようとすることは、必ずしも経済面で中国とデカップリングすることを意味しない」として、経済面での日中関係は維持されるはず、との期待を残しているのだと。
福島さんは、台湾有事に関しては、1995~96年の第3次台湾海峡危機以上の危機感をもっていると。
主たる要因は、習近平が来年(2022年)の秋の党大会で、鄧小平が作りあげた10年ごとの最高指導権力の座の禅譲システムを破壊してまで長期独裁政権の確立に固執しており、党内および中国社会の不安定化を抑え込んで、政権のレジティマシー(正統性)を主張するために、台湾統一のプランと、それが可能であるという実力を国内に強くアピールしていることにあるのだそうです。
中国による台湾の武力統一に対して、米国も日本も具体的に身構える必要が出てきて、台湾海峡有事への軍事的介入を見据えた、法整備などを含めた具体的な対応に迫られている。
習近平政権が長期独裁政権を目指し、米中新冷戦構造の中で権威主義体制の中華秩序圏を世界に打ち立て、米国に変わる国際社会の機軸になろうという野望を捨てない限りは、そのプロセスの比較的前半に台湾海峡有事は必然的に起こりうる、と福島さん。
日本が開かれた民主的自由な社会の体制を守るつもりならば、新政権が対中強硬に大きく舵を切るのも必然、ということになる。台湾の民主が失われ中国の一部となれば、尖閣諸島や沖縄の主権も危うくなり、日本が領土や領海を侵されるのだから、台湾海峡有事は存立危機事態に違いない。
環球時報が岸田新政権にやってくれるなと要請する6つの項目のすべてが、日本の安全と開かれた民主的な自由な社会の価値観と体制を守るために積極的に取り組むべきテーマだと思うと福島さん。
「政令経熱」という言葉は今後は通用しないかもしれない。
今の習近平政権の、経済成長を犠牲にしても強引に推し進めようとする市場コントロール強化路線、規制強化路線が続けば、市場としても公平性、安全性はさらに揺らぎ、中国の民営企業は委縮し、経済のパイも縮小していく。
そうすれば、いかに義理堅い日本企業としても、これまでのように中国市場に恋々とし続けなければならない理由にはならない。
中国メディアに今回登場した「新中日戦争」という言葉を、日本の政権と国民がきちんと正面から受け止めねばならないと福島さん。
連日尖閣諸島近海に「海警」を出没させ、領海侵入も混ぜながら、実効支配実績を積み重ねる中国。台湾海峡の台湾の航空色部健に侵入し、台湾の軍事支配の機を伺う中国。
力で覇権拡大を進める習近平への抑止力は、自由を尊重する国々の団結が効果的です。
米国がトランプ氏時代から進めてきていましたが、バイデン氏も継承しています。欧州各国も同調。具体的に尖閣で侵入被害に遭っている日本は、習近平を国賓で迎えるなんて寝言を言っている場合ではないですね。
# 冒頭の画像は、発足した岸田内閣の面々
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この花の名前は、ペンタス
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