中国経済の成長率鈍化は、今年3月の全人代で李克強首相が政府活動報告で「中国の経済状況が新常態(ニューノーマル)に入った」と語り認めていて、目標を7%に引き下げていました。
中国国家統計局が15日に公表した1~3月の成長率は、前年同期比7%だったということで、前期(昨年10~12月期)から0.3ポイント減速し、リーマン・ショック後に景気が落ち込んだ09年1~3月(6.6%)以来、6年ぶりの低い伸びとなったのだそうですね。原因は、諸兄がご承知の通りの、住宅・不動産市況の不振から企業の生産や投資が伸び悩んでいることですね。
各紙が一斉に取り上げています。
例
中国GDP減速止まらず 6年ぶり低水準 統計数字に疑問も - 政治・社会 - ZAKZAK
中国、1~3月7.0%成長に減速 6年ぶり低い伸びに:日本経済新聞
そうは言っても7%の成長率は、世界第二位と言うGDPの分母に対しての巨額であり、3位の日本の数値の倍以上の値であり、数値が本物であれば偉大なものと言えます。ただ、真偽はさておいて、偽としてもそれなりの比較で観れば実勢トレンドは判るのですから、減速は明らかですし、7%を下回ると失業や格差が拡大し社会問題が顕著化すると言われる中国経済では、デッドラインの値なのですね。
しかし、日経の社説は、明るい傾向もあり、世界経済への影響を鑑み、持ちこたえる事への期待も示しています。
中国の1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動を除く実質で前年同期比7.0%増にとどまった。成長率は2014年10~12月期から0.3ポイント下がり、リーマン・ショックの影響が強く表れた09年1~3月期以来、6年ぶりの低い伸びとなった。
住宅・不動産市場の落ち込みから生産も投資も伸び悩んでいる。特に1~3月の不動産販売額は前年同期に比べて1割近く減った。景気の減速は鮮明だ。
政府は今年の成長目標を7%前後とし経済の質と効率を重視する方針だ。習近平指導部が掲げる経済の「新常態(ニューノーマル)」に沿う動きで、1~3月期は目標水準まで成長ペースが鈍った形だ。かつてのような高成長でなく構造改革を通して持続可能な成長を目指す方向は評価したい。
とはいえ問題点は多い。構造改革は重要だが、打つ手を間違えると景気が腰折れする懸念がある。中国景気の想定以上の減速は、世界経済にも大きく影響する。
中国では幹部の業績評価の重点は高成長の達成だった。昇進のため彼らは投資の呼び込みに全力を傾けたが、方向転換を迫られた。強引に成長率を追えば習指導部の「反腐敗運動」の標的になりかねず、萎縮している。政策の遂行が滞るおそれは否定できない。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や、欧州・アフリカまで陸と海で結ぶシルクロード構想には、国外のインフラ需要を喚起することで能力過剰に陥っている国内の製造業を救う狙いがある。だが、そうした枠組みが機能するには時間が要る。
住宅ローン規制の緩和など当局はすでに不動産市場のてこ入れに乗り出している。今後も、不健全な過熱を招かないよう目配りしながら、政策金利の引き下げといった追加策をとる必要があろう。
底堅い消費など好材料はある。ネットショッピングの普及などで新たな雇用が伸びてもいる。上海と香港の株式相互取引制度で株式市場は活況だ。こうしたダイナミズムを生かしてもらいたい。
今年は16年から始まる第13次5カ年計画を練る年になる。既得権を持つ国有企業が幅をきかせ民間企業を圧迫する「国進民退」という問題に対する取り組みが、問われよう。経済の質や効率を高めると同時に景気の腰折れを防ぐには、民間企業の活動を強く後押しする具体的な措置が求められる。
中国国内の好材料として挙げていることでは、「ネットショッピングの普及による新たな雇用の伸び(ネットで雇用が伸びる?)」「上海と香港の株式市場の活況」が上げられていますが、注目されるのは、「底堅い消費」でしょう。
政府(含む地方政府)の財政投資(不動産、インフラ)で支えられた中国の経済成長に、個人、企業の消費や投資がついてこないのが弱点とされていた中国経済で、通期には及ばなかったとはいえ「底堅い消費(小売売上高)」は、念願の好材料でしょう。
政府が対策を施しているのも評価できます。利下げなど金融緩和、鉄道建設などインフラ整備の加速がありますが、大きく期待できるのは、国内の余剰生産力の解消策である、成長するアジア市場への投資、「シルクロード構想」(古典的例ではニューディール政策に類似)であり、ガジノとか、薬の通販と言っているアベノミクス第三の矢よりよほど基盤強化の経済政策と言えます。
そして、この中国の余剰生産力を活かすための投資資金調達ツールが、AIIB!
遠い極東の出来事としか欧州では疎い中国の力による現状変更(G7外相会談では、けん制を入れましたが)には目をつぶり、おこぼれにあずかろうという、英、独、仏、露等。メルケル氏は、信用担保の為に日本の参加を促す、中国のセールスマン役をする始末。
中国経済減速を、再浮上に転換させる妙策のアジア市場の取り込み。その重要なツールのAIIB。
日米も当然アジア市場の取り込みは進めているのですから、世界各国の争奪戦が激化することになります。
日本のアベノミクス第三の矢でも、TPPだけでなく、基盤に係る妙策の立案が望まれます。
モウソウチク
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