急激な人口移動と都市部の人口増大を防ぐのが目的だったのですが、安価な労働力を基にした経済成長に欠かせない農村部の人口流入は、黙認され戸籍を獲得しないで都市部に定住する人々が増えました。
差別は経済成長には寄与したのですが、当然人々の生活には犠牲のしわ寄せが発生し、年月が経過するにつれ深刻化しています。いつかテレビでも報じていましたが、都市での制限の為、農村に置き去りにされている児童の数が増え続けているのだそうで、情緒不安定な子供が増えて、将来大人になるとどうなるのか。日本でも犯罪者が多い中国人。先行きが懸念されます。
2030~40年に都市人口が10億人を超える:日経ビジネスオンライン
中国の戸籍制度と農民移住制限|石平の中国コラム|誰よりも中国を知る男 石平(せきへい)の公式サイト【seki-hei.com】
中国で、都市に出稼ぎに出た親と離れて農村で暮らす「留守児童」の増加が止まらず、社会問題化している。経済成長を支える出稼ぎ労働者(農民工)の生活支援制度の欠如が留守児童増加の背景にある。(広西チワン族自治区天等県 吉田健一)
区都・南寧の西約250キロにある天等県巴竜村は人口約1600人の半数が出稼ぎ中で、目につくのは高齢者や子供ばかりだ。村唯一の小学校を訪ねると、児童52人のうち47人が留守児童だった。
「家族で暮らした記憶がないの。毎週日曜のお母さんやお父さんからの電話が待ち遠しい」。小3の黄翠芸さん(10)が、うつむき気味に話した。両親が広東省で働き、祖父母と暮らす。表情の変化が乏しいのが気がかりだ。
同校へ児童書を届けるボランティア活動に取り組む陳秀洪さん(37)は、「留守児童には情緒面で問題を抱える子が多く、無表情なのも特徴の一つ」と指摘した。
広東省公安当局者は「留守児童は保護者の目が行き届かず、誘拐されやすい。集団で強盗を働くなど交友関係の乱れも目立つ」と懸念する。貴州省で昨秋、家出などをした男児5人が暖を取ろうと大型のゴミ箱の中で木炭に火をつけて一酸化炭素中毒死した。このうち4人が留守児童だった。
中華全国婦女連合会が5月に公表した2010年の留守児童数(0~17歳)は6103万人。05年から約242万人も増えた。農村の子供全体の38%を占め、206万人は一人で暮らす。
留守児童の増加が止まらない理由は、国民を都市戸籍と農村戸籍に分けて管理する戸籍制度にある。農村戸籍の農民工が都市に移り住むと、医療費は割高となり、医療保険支給額は低くなる。子供が公立校に入るのも制限される。制度的な差別は様々な分野に及ぶ。
同県宏魁村の黄健君(10)は両親が働く広東省深別で小学校に入ったが、1年で村に戻った。「公立校の農村戸籍枠がいっぱいで私立校に入ったが、年8000元(約13万円)の授業料を払えなかった」と祖父(59)は嘆いた。
留守児童問題の研究者からは「農村部の都市化が簡単には進まない以上、留守児童解消に向け、農村戸籍から都市戸籍への変更を容易にする改革が急務だ」との声が上がる。全国人民代表大会(国会)も改革策を審議中だが、都市の抵抗が強く、議論は進まない。農村住民に都市戸籍を与えると、社会保障費など1人当たり数百万円相当の公費支出増が見込まれるためだ。
日本にもその昔身分制度がありましたが、明治維新で撤廃されました。インドでもカースト制度が残っていますが、中国では、1958年にわざわざ法制定しているのですね。
そもそも共産主義(中国は社会主義)は、自由より平等を重んじる社会を唱えていたはずです。格差社会より、貧しくても平等だったと毛沢東時代への回帰を唱える人々が増えている所以ですね。
コミンテルンの指導で誕生した中国共産党は、毛沢東の農村に重点を置いた社会主義活動によって、人口の多数を占める農民の支持を得て成長したのですね。その農村を差別・冷遇する法制度を造り、今でも継続しているのです。
2010年の都市部の人口=6.66億人、農村部=6.74億人に対し、2040年には、都市部=約10億人、農村部=約4億人になるとの予測があるのだそうです。人口増と農村部からの移動人口による推定値ですが、都市部に人口が偏ることになります。
だだそれは、日本が経済成長する過程で辿った道と同じです。ところが、日本には身分差別はなく農村部でも都市部でも国民の権利は平等でした。それでも、人口移動の問題をなんとか乗り越えました。中国は、身分差別をしたままです。成都で戸籍統一の動きがある様ですが、どうなっているのか、情報が見つかりませんでした。
農村を基盤として、都市部基盤の国民党に武力で勝利した共産党。自由より平等を重んじるはずの共産主義(社会主義)なのに、農村を差別冷遇する中国共産党。そこで、少子化の未来を背負う子供に大きなしわ寄せを産んでいる戸籍差別。
対策のないまま、経済成長の過程で生じる人口移動に対処できなければ、同じ道を辿っても、日本の成功の結果とは異なる結果がでることになるでしょう。
社会保障費の増大など、膨大な軍事費や公安対策費に比べれば微々たるものでしょう。お金を使う方向が、国民を向いていない政治は、必ず滅びます。
中国国民の為に、日本はマスコミも国民も世界に向けてこの現状をPRしたり、戦う国民を支援すべきです。
# 冒頭の画像は、中国安徽省、合肥の農村部の子供
この花の名前は、福寿草
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共産党政権とは、社会的権利や、言論・リサーチの自由を奪うもので、言論界に権力移行のモラトリアムが存在する自由主義だが、各個が節義を守る安定した社会とは似て非なるものだと思います。管理人様が書かれているように、人口移動によって、犯罪の巣窟である、闇稼業が愈々重きを増す事を思えば、隣国である日本もおいおい放置できるものではないですね。中国の後進性は法治の不備で、それは、国内の法治勢力の弱勢、というよりも、法を基本とした国家と人権の意識、国際化から遅れたコンセンサスの欠如にあると思います。中共の精神や中華主義といった華夷通念と、万人平等の法治主義との確執を埋める事が、地域安定にも繋がると思います。
人治のしがらみには融和があっても、正義が無く、法の執行が融和のメンタルを煽り、共有する、という風の吹く社会情勢に無いのはいかがなものでしょう。
> 中国の後進性は法治の不備
御意。
中国の民主化活動家がまず求めているのは、法治国家になることですね。
法律の制定は徐々に進んでいても、三権分立がなされていないし、法の運用に関しても整備されていない。
法律より党が上位にあり、党中央政治局常務委員会の決定が優先される人治国家なのですね。
繰り返しになりますが、世界世論が中国の内情を知り、中国国民の人権確保を支援できるようになることが望まれます。