6月11日、トルクメニスタンのシャキム・アブドラクマノフ副首相は「ガルキニシュのガス田開発と天然ガスパイプライン建設のために中国から融資を受けた数十億ドルを完済した」と発表したのだそうです。
ネットメディア「ユーラシアネット」は、「トルクメニスタンは中国の『債務の罠』から解き放たれた」とする見出しでこれを伝えたと、フリージャーナリストの姫田小夏さん。
悪名高い中国の「債務の罠」を、自国の経済発展に逆利用した国があるとの情報。しかも日本も一枚絡んでいたとの話。
備忘録として取り上げさせていただきました。
中央アジアのトルクメニスタン。名前を聞いたことはある程度しか知らない国ですが、1991年に旧ソ連から独立した中央アジア5カ国のうちの1つで、“謎の国”と呼ばれることもあると、姫田さん。
アジアの最西部に位置し地政学的に重要な国であると同時に、天然ガスや石油を産出する資源国で、独立翌年の1992年から、中国と緊密な関係を築いてきていて、「一帯一路」よりも前からインフラ建設プロジェクトを進めてきたのだそうです。
トルクメニスタンと中国の新疆ウイグル自治区コルガスの間の天然ガスパイプラインは、2009年12月に全線が開通。
中国からトルクメニスタンへの融資額は、中国では約80億ドルと報道されているのだそうです。
中国の資本で開発が進められたガルキニシュガス田は世界2位の埋蔵量を誇り、現在、パイプラインで年間約400億立方メートルの天然ガスが中国へ輸出されていると。
両国の間でパイプライン建設が合意されたのは、「一帯一路」提唱前の2007年で、厳密には、中国の206件にわたる「一帯一路」の協力文書には入っていないのだそうですが、このパイプライン建設によってトルクメニスタンが潤ったことは間違いないと姫田さん。
現在、トルクメニスタンの天然ガス輸出は総輸出額の9割以上を占め、その最大の輸出先は中国。
ガスパイプラインが開通した2009年以降は急速な経済成長を遂げ、2009年の1人当たりGDPは4,036ドルで世界192カ国中101位だったが、2020年には7,967ドルで74位まで順位を上げたのだそうで、近年の経済成長率は6%以上の高い水準を維持しているのだそうです。
債務を完済し、経済成長したものの、中国のおかげで発展し、すっかり経済的に依存しているようにも見えるトルクメニスタン。今や完全に中国陣営に取り込まれていると思いきや、そうではない様なのです。
JICA東・中央アジア部中央アジア・コーカサス課の担当者によれば、「トルクメニスタンをはじめ中央アジアの国々は、周辺国全体を見渡して外交的バランスを取ろうとしている」のだそうで、トルクメニスタンは決して中国だけを見ているわけではなく、JICAの担当者は「現在、トルクメニスタンなど中央アジア諸国が連携し、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどと対話の枠組みを作る動きが進んでいます」と。
「2004年から『中央アジア+日本』対話を実施した日本が、この動きのきっかけを作ったと言えるかもしれません」
「確かに中国は絶対的なプレゼンスを示していますが、トルクメニスタンは特にロシアや日本との関係を重視している様子もうかがえます」とも。
ただ、情報が完全に統制された“閉ざされた国”という印象は相変わらず強く、世界銀行は「信頼に足る情報がない」という理由から、世界経済見通しのレポートからトルクメニスタンを除外しているのだそうです。
中国は「一帯一路」で現代版シルクロードを築こうとし、トルクメニスタンもまた「ニューシルクロード計画」を政策に掲げるのだそうで、大統領が独裁者として君臨するトルクメニスタン。
中国への債務を活用し、中国以外の日露他の国々とも関係を拡大しようというトルクメニスタン。
要注目ですね。
# 冒頭の画像は、トルクメニスタンの首都アシガバート。中央の像はトルクメニスタンの国犬「アラバイ」
この花の名前は、ニチニチソウ
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ネットメディア「ユーラシアネット」は、「トルクメニスタンは中国の『債務の罠』から解き放たれた」とする見出しでこれを伝えたと、フリージャーナリストの姫田小夏さん。
悪名高い中国の「債務の罠」を、自国の経済発展に逆利用した国があるとの情報。しかも日本も一枚絡んでいたとの話。
備忘録として取り上げさせていただきました。
中国の「債務の罠」から解き放たれた“謎の国” 中央アジアの資源国トルクメニスタンはどの国を見ているのか | JBpress (ジェイビープレス) 2021.7.6(火) 姫田 小夏:ジャーナリスト
情報の少なさから“謎の国”と呼ばれることもある中央アジアのトルクメニスタン。1991年に旧ソ連から独立した中央アジア5カ国のうちの1つだ。アジアの最西部に位置し地政学的に重要な国であると同時に、天然ガスや石油を産出する資源国でもある。
6月11日、同国のシャキム・アブドラクマノフ副首相は「ガルキニシュのガス田開発と天然ガスパイプライン建設のために中国から融資を受けた数十億ドルを完済した」と発表した。ネットメディア「ユーラシアネット」は、「トルクメニスタンは中国の『債務の罠』から解き放たれた」とする見出しでこれを伝えた。
中国への天然ガス輸出で経済成長
トルクメニスタンは独立翌年の1992年から、中国と緊密な関係を築いてきた。中国の習近平国家主席がカザフスタンのナザルバエフ大学で「一帯一路」構想を提唱したのは2013年9月。習主席はその後の中央アジア4カ国公式訪問で、いの一番にトルクメニスタンを訪れた。中国がトルクメニスタンとの関係を戦略的パートナーシップに格上げしたのもこのときだ。
両国は、「一帯一路」よりも前からインフラ建設プロジェクトを進めてきた。
トルクメニスタンと中国の新疆ウイグル自治区コルガスの間には、ウズベキスタン、カザフスタンを経由する天然ガスパイプラインが通っている。2007年に両国がプロジェクトに合意して建設が始まり、2009年12月に全線が開通した。中国からトルクメニスタンへの融資額は、中国では約80億ドルと報道されている。中国の資本で開発が進められたガルキニシュガス田は世界2位の埋蔵量を誇り、現在、パイプラインで年間約400億立方メートルの天然ガスが中国へ輸出されている。
中国商務部のある資料では、このパイプラインが「『一帯一路』構想の重要な成果」と位置付けられていた。だが、前述したように、両国の間でパイプライン建設が合意されたのは、「一帯一路」提唱前の2007年である。ちなみに中国は140カ国および32の国際組織と、206件にわたる「一帯一路」の協力文書に署名(2021年6月23日時点)しているが、そのリストにトルクメニスタンの国名は見当たらない。
とはいえ、このパイプライン建設によってトルクメニスタンが潤ったことは間違いない。現在、トルクメニスタンの天然ガス輸出は総輸出額の9割以上を占め、その最大の輸出先は中国である。1992年に9.5億ドルだったトルクメニスタンの名目GDPは、2020年には473.5億ドルと49倍になった。特に、ガスパイプラインが開通した2009年以降は急速な成長を遂げた。2009年の1人当たりGDPは4036ドルで世界192カ国中101位だったが、2020年には7967ドルで74位まで順位を上げた。近年の経済成長率は6%以上の高い水準を維持している。
中国だけを見ているわけではない
旧ソ連の構成国だったトルクメニスタンは中国のおかげで発展し、すっかり経済的に依存しているようにも見える。今や完全に中国陣営に取り込まれていると見ていいのだろうか。
JICA(国際協力機構)東・中央アジア部中央アジア・コーカサス課の担当者によれば、「トルクメニスタンをはじめ中央アジアの国々は、周辺国全体を見渡して外交的バランスを取ろうとしていることがうかがえます」という。
実際、トルクメニスタンは、カスピ海の対岸に位置するアゼルバイジャンとの間で、海底油田・ガス田を共同開発することで合意した(東京新聞)。トルクメニスタンの天然ガスをインドやパキスタン、アフガニスタンに供給するパイプライン建設計画も存在する。
トルクメニスタンは決して中国だけを見ているわけではないようだ。JICAの担当者は「現在、トルクメニスタンなど中央アジア諸国が連携し、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどと対話の枠組みを作る動きが進んでいます。2004年から『中央アジア+日本』対話を実施した日本が、この動きのきっかけを作ったと言えるかもしれません」と話す。「確かに中国は絶対的なプレゼンスを示していますが、トルクメニスタンは特にロシアや日本との関係を重視している様子もうかがえます」という。
相変わらず謎の国だが・・・
JICA東・中央アジア部によると「近年、トルクメンスタンは国際社会に積極的に関わろうという動きを見せている」というが、情報が完全に統制された“閉ざされた国”という印象は相変わらず強い。
世界銀行は「信頼に足る情報がない」という理由から、世界経済見通しのレポートからトルクメニスタンを除外した。「統計情報もあるのかないのか・・・。私たちのもとにも情報がなかなか入ってこず、コミュニケーションが取りにくい一面があります」と担当者は関係構築の難しさを語る。
トルクメニスタンと中国は、古代シルクロードでつながっていた。中国は「一帯一路」で現代版シルクロードを築こうとし、トルクメニスタンもまた「ニューシルクロード計画」を政策に掲げる。一党独裁国家の中国と、大統領が独裁者として君臨するトルクメニスタン。“似た者同士”の両国は、果たしてどんな協力関係を展開するのだろうか。
情報の少なさから“謎の国”と呼ばれることもある中央アジアのトルクメニスタン。1991年に旧ソ連から独立した中央アジア5カ国のうちの1つだ。アジアの最西部に位置し地政学的に重要な国であると同時に、天然ガスや石油を産出する資源国でもある。
6月11日、同国のシャキム・アブドラクマノフ副首相は「ガルキニシュのガス田開発と天然ガスパイプライン建設のために中国から融資を受けた数十億ドルを完済した」と発表した。ネットメディア「ユーラシアネット」は、「トルクメニスタンは中国の『債務の罠』から解き放たれた」とする見出しでこれを伝えた。
中国への天然ガス輸出で経済成長
トルクメニスタンは独立翌年の1992年から、中国と緊密な関係を築いてきた。中国の習近平国家主席がカザフスタンのナザルバエフ大学で「一帯一路」構想を提唱したのは2013年9月。習主席はその後の中央アジア4カ国公式訪問で、いの一番にトルクメニスタンを訪れた。中国がトルクメニスタンとの関係を戦略的パートナーシップに格上げしたのもこのときだ。
両国は、「一帯一路」よりも前からインフラ建設プロジェクトを進めてきた。
トルクメニスタンと中国の新疆ウイグル自治区コルガスの間には、ウズベキスタン、カザフスタンを経由する天然ガスパイプラインが通っている。2007年に両国がプロジェクトに合意して建設が始まり、2009年12月に全線が開通した。中国からトルクメニスタンへの融資額は、中国では約80億ドルと報道されている。中国の資本で開発が進められたガルキニシュガス田は世界2位の埋蔵量を誇り、現在、パイプラインで年間約400億立方メートルの天然ガスが中国へ輸出されている。
中国商務部のある資料では、このパイプラインが「『一帯一路』構想の重要な成果」と位置付けられていた。だが、前述したように、両国の間でパイプライン建設が合意されたのは、「一帯一路」提唱前の2007年である。ちなみに中国は140カ国および32の国際組織と、206件にわたる「一帯一路」の協力文書に署名(2021年6月23日時点)しているが、そのリストにトルクメニスタンの国名は見当たらない。
とはいえ、このパイプライン建設によってトルクメニスタンが潤ったことは間違いない。現在、トルクメニスタンの天然ガス輸出は総輸出額の9割以上を占め、その最大の輸出先は中国である。1992年に9.5億ドルだったトルクメニスタンの名目GDPは、2020年には473.5億ドルと49倍になった。特に、ガスパイプラインが開通した2009年以降は急速な成長を遂げた。2009年の1人当たりGDPは4036ドルで世界192カ国中101位だったが、2020年には7967ドルで74位まで順位を上げた。近年の経済成長率は6%以上の高い水準を維持している。
中国だけを見ているわけではない
旧ソ連の構成国だったトルクメニスタンは中国のおかげで発展し、すっかり経済的に依存しているようにも見える。今や完全に中国陣営に取り込まれていると見ていいのだろうか。
JICA(国際協力機構)東・中央アジア部中央アジア・コーカサス課の担当者によれば、「トルクメニスタンをはじめ中央アジアの国々は、周辺国全体を見渡して外交的バランスを取ろうとしていることがうかがえます」という。
実際、トルクメニスタンは、カスピ海の対岸に位置するアゼルバイジャンとの間で、海底油田・ガス田を共同開発することで合意した(東京新聞)。トルクメニスタンの天然ガスをインドやパキスタン、アフガニスタンに供給するパイプライン建設計画も存在する。
トルクメニスタンは決して中国だけを見ているわけではないようだ。JICAの担当者は「現在、トルクメニスタンなど中央アジア諸国が連携し、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどと対話の枠組みを作る動きが進んでいます。2004年から『中央アジア+日本』対話を実施した日本が、この動きのきっかけを作ったと言えるかもしれません」と話す。「確かに中国は絶対的なプレゼンスを示していますが、トルクメニスタンは特にロシアや日本との関係を重視している様子もうかがえます」という。
相変わらず謎の国だが・・・
JICA東・中央アジア部によると「近年、トルクメンスタンは国際社会に積極的に関わろうという動きを見せている」というが、情報が完全に統制された“閉ざされた国”という印象は相変わらず強い。
世界銀行は「信頼に足る情報がない」という理由から、世界経済見通しのレポートからトルクメニスタンを除外した。「統計情報もあるのかないのか・・・。私たちのもとにも情報がなかなか入ってこず、コミュニケーションが取りにくい一面があります」と担当者は関係構築の難しさを語る。
トルクメニスタンと中国は、古代シルクロードでつながっていた。中国は「一帯一路」で現代版シルクロードを築こうとし、トルクメニスタンもまた「ニューシルクロード計画」を政策に掲げる。一党独裁国家の中国と、大統領が独裁者として君臨するトルクメニスタン。“似た者同士”の両国は、果たしてどんな協力関係を展開するのだろうか。
中央アジアのトルクメニスタン。名前を聞いたことはある程度しか知らない国ですが、1991年に旧ソ連から独立した中央アジア5カ国のうちの1つで、“謎の国”と呼ばれることもあると、姫田さん。
アジアの最西部に位置し地政学的に重要な国であると同時に、天然ガスや石油を産出する資源国で、独立翌年の1992年から、中国と緊密な関係を築いてきていて、「一帯一路」よりも前からインフラ建設プロジェクトを進めてきたのだそうです。
トルクメニスタンと中国の新疆ウイグル自治区コルガスの間の天然ガスパイプラインは、2009年12月に全線が開通。
中国からトルクメニスタンへの融資額は、中国では約80億ドルと報道されているのだそうです。
中国の資本で開発が進められたガルキニシュガス田は世界2位の埋蔵量を誇り、現在、パイプラインで年間約400億立方メートルの天然ガスが中国へ輸出されていると。
両国の間でパイプライン建設が合意されたのは、「一帯一路」提唱前の2007年で、厳密には、中国の206件にわたる「一帯一路」の協力文書には入っていないのだそうですが、このパイプライン建設によってトルクメニスタンが潤ったことは間違いないと姫田さん。
現在、トルクメニスタンの天然ガス輸出は総輸出額の9割以上を占め、その最大の輸出先は中国。
ガスパイプラインが開通した2009年以降は急速な経済成長を遂げ、2009年の1人当たりGDPは4,036ドルで世界192カ国中101位だったが、2020年には7,967ドルで74位まで順位を上げたのだそうで、近年の経済成長率は6%以上の高い水準を維持しているのだそうです。
債務を完済し、経済成長したものの、中国のおかげで発展し、すっかり経済的に依存しているようにも見えるトルクメニスタン。今や完全に中国陣営に取り込まれていると思いきや、そうではない様なのです。
JICA東・中央アジア部中央アジア・コーカサス課の担当者によれば、「トルクメニスタンをはじめ中央アジアの国々は、周辺国全体を見渡して外交的バランスを取ろうとしている」のだそうで、トルクメニスタンは決して中国だけを見ているわけではなく、JICAの担当者は「現在、トルクメニスタンなど中央アジア諸国が連携し、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどと対話の枠組みを作る動きが進んでいます」と。
「2004年から『中央アジア+日本』対話を実施した日本が、この動きのきっかけを作ったと言えるかもしれません」
「確かに中国は絶対的なプレゼンスを示していますが、トルクメニスタンは特にロシアや日本との関係を重視している様子もうかがえます」とも。
ただ、情報が完全に統制された“閉ざされた国”という印象は相変わらず強く、世界銀行は「信頼に足る情報がない」という理由から、世界経済見通しのレポートからトルクメニスタンを除外しているのだそうです。
中国は「一帯一路」で現代版シルクロードを築こうとし、トルクメニスタンもまた「ニューシルクロード計画」を政策に掲げるのだそうで、大統領が独裁者として君臨するトルクメニスタン。
中国への債務を活用し、中国以外の日露他の国々とも関係を拡大しようというトルクメニスタン。
要注目ですね。
# 冒頭の画像は、トルクメニスタンの首都アシガバート。中央の像はトルクメニスタンの国犬「アラバイ」
この花の名前は、ニチニチソウ
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