安保関連法案成立に対する海外メディアの評価を、産経が報じています。
欧米メディアには「日本が同盟国とともに戦えるようになった」と歓迎する論評が多い。中国メディアは改憲や軍事大国化と結びつけて批判するが、東南アジアのメディアは周辺国への配慮を促しつつも、日本が世界で果たす役割に一定の評価を与えている主張もあるとし、英国、タイ、中国のメディアの記事を紹介しています。
英・タイムズは、歴史もしっかり捉えていて、的確な報道で、高い評価ですね。
英・ガーディアンは拓殖大学の武貞秀士教授のコメントを引用ですから、日本の主張を肯定。
タイ・バンコク・ポストは、アジア諸国の評価を報じています。
日本の謝罪姿勢について厳しい見方を示し、「再び戦争を行えるようになった」と指摘しつつ、日本が「バランスのとれた役割を世界で担えるようになった」と、一定の評価もしています。主権国家である日本が防衛政策を自由に決定できるのは当然だとも。
一方、韓国、中国、フィリピン、シンガポールについて触れ、軍国主義だった日本から「大規模な虐待」を受けた国には、「残虐行為、植民地化、市民の不当な扱いが、苦い記憶となって刻まれている」とし、日本が独自に決めた新たな軍隊の役割について、きちんとした説明がなされる必要があると主張しています。韓国、中国、台湾の反発は、日本が「罪のあがない」でつまずいているためだとの批判も。
第三者的立場での視点として傾聴すべき評価と言えますが、中国に配慮する色眼鏡での視点に感じるのは、遊爺が「罪のあがない」とやらの認識が不足しているからでしょうか。ただ、中国の札束外交で首根っこを押さえられている国が多い中、こうした視点は多いとの認識は必要ではあります。
中国の反応は想定の範囲内と言うか、むしろ想定より穏やかで拍子抜けです。ただひとつ面白いのは、環球時報の社説が「中国が発展を続ければ、中国軍は東シナ海で衝突が起きた場合、日本より優位に立てるだろう」と評論している点です。逆に、発展を続けなければ、日本より優位に立てない。つまり、現状では優位とは言えないと聞こえますね。
本気でそう思っているのかは不明ですが、東シナ海での戦力増強の必要性を説いているのは確かですね。
各国のお家の事情で評価はことなるのですが、英・タイムズの様に、歴史を正しく踏まえて記事にしていただけるメディアが増えることを願います。
# 冒頭の画像は、通常国会会期末にあたり首相官邸で記者会見(25日)し、成立した安全保障関連法などについて語る安倍首相
黒いアゲハ蝶
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欧米メディアには「日本が同盟国とともに戦えるようになった」と歓迎する論評が多い。中国メディアは改憲や軍事大国化と結びつけて批判するが、東南アジアのメディアは周辺国への配慮を促しつつも、日本が世界で果たす役割に一定の評価を与えている主張もあるとし、英国、タイ、中国のメディアの記事を紹介しています。
安保関連法が成立 (9/28 産経 【環球異見】)
集団的自衛権行使を限定的に可能にする安全保障関連法が今月19日に国会で成立した。日本の安全保障体制が歴史的転換点を迎えたことに、欧米メディアには「日本が同盟国とともに戦えるようになった」と歓迎する論評が多い。中国メディアは改憲や軍事大国化と結びつけて批判するが、東南アジアのメディアは周辺国への配慮を促しつつも、日本が世界で果たす役割に一定の評価を与えている主張もある。
□タイムズ(英国)
■同盟国と活動する自衛隊歓迎
英紙タイムズ(電子版)は、安全保障関連法の成立を前にした15日付で、「平和のシンボル」と題する社説を掲載し、「自衛隊を海外に派兵し、同盟国とともに戦うことを可能とする法案。歓迎される動きだ」と高く評価した。
「戦うことができない軍とは矛盾しているようだが、第二次大戦後の日本の軍はその役割を担わされてきた」。そう始まる社説は「日本は敗戦後、ソ連の脅威が拡大する中、米国が防衛を担い、日本は代わりに基地を提供してきた。その関係は変わろうとしている」と指摘した。
その上で、「日本は軍事への嫌悪感を戦後ずっと抱いてきた。だが、70年間にわたる平和至上主義の立場が米国との関係をゆがめてきた。日米両国にとり、時代遅れとなった安保条約を改めることはよいことだ。現在の家父長主義的な日米関係は、日本のナショナリストの不満に火をつけることにもなる」と主張し、日本の変化は正しいことだと歓迎した。
さらに社説は、戦後、日本を統治した当時のマッカーサー連合国軍最高司令官が日本に憲法を変えることを強要したとし、「彼の考えは、日本には永遠に軍隊の保有も、いかなる交戦権も認めないというものだった。それは、日本が必要なときにも、同盟国から要請されても(軍事的協力はできないという)行き過ぎた状況をつくり出した」と解説。その上で、平和を愛する民主国家は軍事力を放棄する必要はないのであって、むしろ必要なのは、「(自衛隊が)文民によって統制される仕組みを確かなものにすることであり、その逆ではない」と強調した。
一方、英紙ガーディアン(電子版)は18日付の分析記事で、安保関連法案採択の意味について、「これまで専守防衛の立場から紛争の当事者になってはいけない、としてきた時代が終わったという心理的なメッセージを世界に発した」とする拓殖大学の武貞秀士教授の言葉を引用している。(ロンドン 内藤泰朗)
□バンコク・ポスト(タイ)
■日本は懸念払拭を
タイの英字紙バンコク・ポスト(電子版)は23日付で、日本の安全保障関連法の成立が「批判者をいらだたせている」との社説を掲載した。第二次世界大戦におけるアジア周辺国での行為における日本の謝罪姿勢について厳しい見方を示し、新たな防衛政策が周辺国の警戒を招かないよう、「誠意」ある対応を日本に求めた。
社説は、安保関連法により日本が「バランスのとれた役割を世界で担えるようになった」と、一定の評価を与えた。一方で、「再び戦争を行えるようになった」とも指摘。米国に押しつけられた平和主義を捨て、「ナショナリスト」の安倍晋三首相が、国会と世論の激しい反発の中で安保関連法を通したとの見方を示した。
社説は国際社会の反応を3つに分類して分析する。タイを含む多くの国は「ほぼ中立」で、大戦終結からすでに数十年たち、直接の戦争経験者が少なくなるなか、主権国家である日本が防衛政策を自由に決定できるのは当然とした。また、一部諸国は「評価するだろう」とし、その例として、海外での隊員駐留による平和維持活動(PKO)は歓迎されると見通す。
一方、韓国、中国、フィリピン、シンガポールといった、かつて軍国主義だった日本から「大規模な虐待」を受けた国には、「残虐行為、植民地化、市民の不当な扱いが、苦い記憶となって刻まれている」とし、日本が独自に決めた新たな軍隊の役割について、きちんとした説明がなされる必要があると主張した。
事例として、朝鮮半島の有事で米軍が日本を戦闘行為に呼び込む事態を想定する韓国が困惑していると紹介。中国や台湾などでも日本がPKOを行うことは不可能だと指摘した。そして、これらの反発は第二次世界大戦の行為をめぐり、日本が「罪のあがない」でつまずいているためだと批判。安倍首相が謝罪の姿勢を強めなければ、「批判に甘んじなければならない」と結んだ。(シンガポール 吉村英輝)
□環球時報(中国)
■9月19日は災難の根源
安全保障関連法について、中国メディアは、憲法改正や軍事大国化と結びつけて批判している。中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は21日付の社説で、まるで安保関連法の成立が、日中の武力衝突に直結するかのような物言いをしている。
社説は日本メディアの報道を引用しつつ、「安保関連法の目的は、地域の平和を促進し、日本が紛争を回避することではないようだ。戦争の可能性が法案可決を推進した日本の政治家の心を支配している」と主張。その上で、日本が地域の安保情勢を変えようとしているとの持論を展開し、「もし北東アジアで日本が巻き込まれる戦争が起きた場合、その災難の根源は(安保関連法が成立した)9月19日にある」と周辺諸国の警戒心をあおっている。
国営新華社通信のニュースサイト「新華網」に至っては、安保関連法を安倍晋三首相の「野心」の一環と位置づけて個人攻撃を加えている。
19日付の評論では、「安倍氏は当初から民意に背き続けてきた」と非難。抗議活動の参加者数が水増しして発表されていたことなどには触れず、安倍首相が世論の反対に対し、「全く取り合わず、見て見ぬふりを貫いてきた」としている。
さらに、「さまざまな手段を弄し、いわゆる積極的平和主義の名のもとで戦争法案を推進、民主主義の名を借りた独裁を実行してきた」と強調。自身の求心力の拡大に余念がないように周辺国から映る習近平国家主席の振る舞いを棚に上げ、安倍首相を「独裁者」扱いしている。
環球時報の社説は「中国が発展を続ければ、中国軍は東シナ海で衝突が起きた場合、日本より優位に立てるだろう」とも述べている。一見、強気に映る論調だが、支持率低下などを理由に「日本政府が自衛隊に中国との対決を命ずることはないだろう」と推測するあたり、現状では武力衝突を回避したいようだ。(北京 川越一)
集団的自衛権行使を限定的に可能にする安全保障関連法が今月19日に国会で成立した。日本の安全保障体制が歴史的転換点を迎えたことに、欧米メディアには「日本が同盟国とともに戦えるようになった」と歓迎する論評が多い。中国メディアは改憲や軍事大国化と結びつけて批判するが、東南アジアのメディアは周辺国への配慮を促しつつも、日本が世界で果たす役割に一定の評価を与えている主張もある。
□タイムズ(英国)
■同盟国と活動する自衛隊歓迎
英紙タイムズ(電子版)は、安全保障関連法の成立を前にした15日付で、「平和のシンボル」と題する社説を掲載し、「自衛隊を海外に派兵し、同盟国とともに戦うことを可能とする法案。歓迎される動きだ」と高く評価した。
「戦うことができない軍とは矛盾しているようだが、第二次大戦後の日本の軍はその役割を担わされてきた」。そう始まる社説は「日本は敗戦後、ソ連の脅威が拡大する中、米国が防衛を担い、日本は代わりに基地を提供してきた。その関係は変わろうとしている」と指摘した。
その上で、「日本は軍事への嫌悪感を戦後ずっと抱いてきた。だが、70年間にわたる平和至上主義の立場が米国との関係をゆがめてきた。日米両国にとり、時代遅れとなった安保条約を改めることはよいことだ。現在の家父長主義的な日米関係は、日本のナショナリストの不満に火をつけることにもなる」と主張し、日本の変化は正しいことだと歓迎した。
さらに社説は、戦後、日本を統治した当時のマッカーサー連合国軍最高司令官が日本に憲法を変えることを強要したとし、「彼の考えは、日本には永遠に軍隊の保有も、いかなる交戦権も認めないというものだった。それは、日本が必要なときにも、同盟国から要請されても(軍事的協力はできないという)行き過ぎた状況をつくり出した」と解説。その上で、平和を愛する民主国家は軍事力を放棄する必要はないのであって、むしろ必要なのは、「(自衛隊が)文民によって統制される仕組みを確かなものにすることであり、その逆ではない」と強調した。
一方、英紙ガーディアン(電子版)は18日付の分析記事で、安保関連法案採択の意味について、「これまで専守防衛の立場から紛争の当事者になってはいけない、としてきた時代が終わったという心理的なメッセージを世界に発した」とする拓殖大学の武貞秀士教授の言葉を引用している。(ロンドン 内藤泰朗)
□バンコク・ポスト(タイ)
■日本は懸念払拭を
タイの英字紙バンコク・ポスト(電子版)は23日付で、日本の安全保障関連法の成立が「批判者をいらだたせている」との社説を掲載した。第二次世界大戦におけるアジア周辺国での行為における日本の謝罪姿勢について厳しい見方を示し、新たな防衛政策が周辺国の警戒を招かないよう、「誠意」ある対応を日本に求めた。
社説は、安保関連法により日本が「バランスのとれた役割を世界で担えるようになった」と、一定の評価を与えた。一方で、「再び戦争を行えるようになった」とも指摘。米国に押しつけられた平和主義を捨て、「ナショナリスト」の安倍晋三首相が、国会と世論の激しい反発の中で安保関連法を通したとの見方を示した。
社説は国際社会の反応を3つに分類して分析する。タイを含む多くの国は「ほぼ中立」で、大戦終結からすでに数十年たち、直接の戦争経験者が少なくなるなか、主権国家である日本が防衛政策を自由に決定できるのは当然とした。また、一部諸国は「評価するだろう」とし、その例として、海外での隊員駐留による平和維持活動(PKO)は歓迎されると見通す。
一方、韓国、中国、フィリピン、シンガポールといった、かつて軍国主義だった日本から「大規模な虐待」を受けた国には、「残虐行為、植民地化、市民の不当な扱いが、苦い記憶となって刻まれている」とし、日本が独自に決めた新たな軍隊の役割について、きちんとした説明がなされる必要があると主張した。
事例として、朝鮮半島の有事で米軍が日本を戦闘行為に呼び込む事態を想定する韓国が困惑していると紹介。中国や台湾などでも日本がPKOを行うことは不可能だと指摘した。そして、これらの反発は第二次世界大戦の行為をめぐり、日本が「罪のあがない」でつまずいているためだと批判。安倍首相が謝罪の姿勢を強めなければ、「批判に甘んじなければならない」と結んだ。(シンガポール 吉村英輝)
□環球時報(中国)
■9月19日は災難の根源
安全保障関連法について、中国メディアは、憲法改正や軍事大国化と結びつけて批判している。中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は21日付の社説で、まるで安保関連法の成立が、日中の武力衝突に直結するかのような物言いをしている。
社説は日本メディアの報道を引用しつつ、「安保関連法の目的は、地域の平和を促進し、日本が紛争を回避することではないようだ。戦争の可能性が法案可決を推進した日本の政治家の心を支配している」と主張。その上で、日本が地域の安保情勢を変えようとしているとの持論を展開し、「もし北東アジアで日本が巻き込まれる戦争が起きた場合、その災難の根源は(安保関連法が成立した)9月19日にある」と周辺諸国の警戒心をあおっている。
国営新華社通信のニュースサイト「新華網」に至っては、安保関連法を安倍晋三首相の「野心」の一環と位置づけて個人攻撃を加えている。
19日付の評論では、「安倍氏は当初から民意に背き続けてきた」と非難。抗議活動の参加者数が水増しして発表されていたことなどには触れず、安倍首相が世論の反対に対し、「全く取り合わず、見て見ぬふりを貫いてきた」としている。
さらに、「さまざまな手段を弄し、いわゆる積極的平和主義の名のもとで戦争法案を推進、民主主義の名を借りた独裁を実行してきた」と強調。自身の求心力の拡大に余念がないように周辺国から映る習近平国家主席の振る舞いを棚に上げ、安倍首相を「独裁者」扱いしている。
環球時報の社説は「中国が発展を続ければ、中国軍は東シナ海で衝突が起きた場合、日本より優位に立てるだろう」とも述べている。一見、強気に映る論調だが、支持率低下などを理由に「日本政府が自衛隊に中国との対決を命ずることはないだろう」と推測するあたり、現状では武力衝突を回避したいようだ。(北京 川越一)
英・タイムズは、歴史もしっかり捉えていて、的確な報道で、高い評価ですね。
英・ガーディアンは拓殖大学の武貞秀士教授のコメントを引用ですから、日本の主張を肯定。
タイ・バンコク・ポストは、アジア諸国の評価を報じています。
日本の謝罪姿勢について厳しい見方を示し、「再び戦争を行えるようになった」と指摘しつつ、日本が「バランスのとれた役割を世界で担えるようになった」と、一定の評価もしています。主権国家である日本が防衛政策を自由に決定できるのは当然だとも。
一方、韓国、中国、フィリピン、シンガポールについて触れ、軍国主義だった日本から「大規模な虐待」を受けた国には、「残虐行為、植民地化、市民の不当な扱いが、苦い記憶となって刻まれている」とし、日本が独自に決めた新たな軍隊の役割について、きちんとした説明がなされる必要があると主張しています。韓国、中国、台湾の反発は、日本が「罪のあがない」でつまずいているためだとの批判も。
第三者的立場での視点として傾聴すべき評価と言えますが、中国に配慮する色眼鏡での視点に感じるのは、遊爺が「罪のあがない」とやらの認識が不足しているからでしょうか。ただ、中国の札束外交で首根っこを押さえられている国が多い中、こうした視点は多いとの認識は必要ではあります。
中国の反応は想定の範囲内と言うか、むしろ想定より穏やかで拍子抜けです。ただひとつ面白いのは、環球時報の社説が「中国が発展を続ければ、中国軍は東シナ海で衝突が起きた場合、日本より優位に立てるだろう」と評論している点です。逆に、発展を続けなければ、日本より優位に立てない。つまり、現状では優位とは言えないと聞こえますね。
本気でそう思っているのかは不明ですが、東シナ海での戦力増強の必要性を説いているのは確かですね。
各国のお家の事情で評価はことなるのですが、英・タイムズの様に、歴史を正しく踏まえて記事にしていただけるメディアが増えることを願います。
# 冒頭の画像は、通常国会会期末にあたり首相官邸で記者会見(25日)し、成立した安全保障関連法などについて語る安倍首相
黒いアゲハ蝶
↓よろしかったら、お願いします。