日本も参戦して進められていた原発商戦。主力天然ガス田の枯渇が間近に迫り、北極圏の高コスト油田開発を余儀なくされている資源頼みの経済発展国ロシアは、原発需要を懸念しながら商戦を有利に展開しようと、福島原発と自国原発との差別化PRにやっきなのだそうです。
緊急停止が年10回、疑問視も
東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故で原発の安全性への懸念が世界的に高まる中、チェルノブイリ原発の大事故(1986年)を経験したロシアが、今後も原発建設を国内外で推進するとの強気の姿勢を際立たせている。近年のロシアは原子力を石油、天然ガスに次ぐ「エネルギー帝国」の柱と位置づけて原発のシェア拡大に邁進(まいしん)してきた経緯があり、内外の原発不信を払拭しようと躍起だ。(モスクワ 遠藤良介)
国内外 最大69基増
ロシア国内で稼働する原発は旧ソ連製も含めて32基と世界4位。国外では14基のロシア製原発が運用されており、ロシアはインドやトルコ、ベトナムなど8カ国で25基を計画もしくは建設している。2025年までに国内で24基、国外で30~45基を新設し、世界でのシェアを20%に高めるのがロシアの戦略だ。
この野心的計画にブレーキをかけまいと、関係者らは「ロシアの原発は福島第1原発よりも安全だ」と主張するのに余念がない。
「福島の事故では、原発が長時間にわたって外部電源も冷却水補給もない状態に置かれたことが深刻な事態につながった。この間に外部の援助を得られていたら問題はなかったはずだ」
国策原子力統合企業「ロスアトム」のボヤルキン計画部長はこう語り、「ロシアの各原発には自前の消防も予備電源も備えられ、緊急時に国の支援に頼らない即応体制がある」と強調。「チェルノブイリ事故の教訓を得て、ロシアの原発は世界で最も安全な水準にある」と訴える。
メドベージェフ大統領は最近のビデオ・ブログで「原発は最も経済的な発電方法であり、しかるべき規則を守れば安全だ」と発言。「地震多発地帯での原発建設は国際的に規制すべきだ」と日本の原発政策をも暗に批判した。
福島第1原発の事態が緊迫していた最中の3月15日、ロシアはチェルノブイリ事故被害者の多い隣国ベラルーシで同国初の原発2基を建設することで合意し、原発推進路線を見直す考えがないことを鮮明にした。
海上原発も推進
しかし、国際環境保護団体「グリーンピース」ロシア支部のチュプロフ・エネルギー部長は政権側の説明に真っ向から反論する。
同部長によると、ロシアでは原子炉の緊急停止が年平均で約10回も発生。「福島のように電力供給が途絶え、原子炉の冷却機能が停止する事態は津波以外の要因でも起き得る」という。 実際、2000年9月には、ウラル地方のマヤーク核燃料施設で1時間半にわたって電力供給が停止し、重大事故につながる恐れがあった。
ロシアは船上の原子炉で発電を行う「海上原発」の建造も進めており、12年の実用化を目指している。ロスアトムは「遠隔地に電力を供給する革新的技術だ」として海上原発を輸出ビジネスの切り札とする考えも示す。海上原発の第1号は過去に津波被害に見舞われている極東のカムチャツカ地方に配備する計画とされている。
操作ミスなのか、構造の欠陥なのか議論が続いているようですが、核分裂が制御不能になって炉心が爆発し、上空はるかに放射能を拡散し世界中にばらまき、今はまた老朽化し崩壊が懸念される石棺にたいする対策を明快に打ち出せないでいるチェルノブイリを抱えるロシアに、「止める」は出来た福島の原発に対し優越感を持って上から言われる筋合いはないと言いたいところですが、日々悪化している(悪い情報が発見されている)状況では、大声て言い返せないのが残念です。
10日でとりあえず封じ込めたチェルノブイリを、日数では超えてしまっています。
チェルノブイリの事故も電源に関するもので、電源が切れた時にタービンで発電し非常電源に切り替える間の短い時間を繋ぐ実験が失敗して発生したものでした。
福島では、原子炉を止め、バッテリーで凌いで非常用発電に繋ぐ計画が津波で非常用発電が出来なかった。非常用発電の津波による喪失が、設計者による"割り切り"で、考慮されなかったことに起因しています。女川や福島第二では凌いだのですが。
「冷やす」に時間がかかっているうちに、「封じ込める」が出来ていない状況が明らかになってきています。悪化が進んでいるのか、悪い状況が解るようになったのかは、報道の範囲ではよくわかりません。
設計思想が異なった東北電力の女川がギリギリとはいえ凌いだことは、日本の技術のすべてが駄目ということではありません。
福島第一が、米仏の支援を仰いでここで踏ん張って冷却・燃料棒の回収にこぎつけられれば、新たなノウハウを世界で共有することが出来るようになります。
是非成功させて、近隣住民の方々が普段の生活に戻れる日が一日も早く来ることを願っています。
ロシア空軍機が、被災後、日本海上空の領空近辺に出没していましたが、ロシアに近接する領域の安全のための放射能のモニタリングが目的であり、日本のマスコミの騒ぎぶりは理解に苦しむと言い訳しています。
ロシアも中国も、日米の「トモダチ作戦」の大規模かつ長期にわたる展開が気がかりで仕方ないのですね。
# 冒頭の写真は、ロシア空軍の電子情報収集機「IL(イリューシン)20」です。
↓よろしかったら、お願いします。