遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

米中首脳会議以降、トランプの対中政策は明らかにまともではなかった

2017-05-31 23:58:58 | 米国 全般
 経済でも安全保障でも、パンダハガーと化してしまっていたオバマ政権と異なり、対中強硬姿勢を掲げて大統領になったトランプ氏。4月の首脳会談では、晩餐会の席で、シリア空軍基地を攻撃したことを告げ、核とミサイル開発にまい進する北朝鮮を牽制、中国に対北強硬姿勢を迫ったと見えていました。
 晩餐会でシリア空軍基地攻撃を明かされた習近平は絶句し、攻撃を容認せざるをえなかったのでした。
 しかし、実際に軍事行動を起こすには犠牲が大きい事から、北朝鮮問題解決のために中国側の協力を得ようと、トランプは習近平に譲歩を重ねてきました。選挙で掲げた為替管理国制裁をひっこめた様な経済でのディールはともかく、南シナ海における譲歩は米国の安全保障問題の基礎を揺るがしかねない話だ。中国に南シナ海の実効支配強化と軍事拠点化の猶予を与えるだけの"米中協力関係"はさっさと見切る方がよかろうと説くのは、中国問題に精通している福島香織氏。


 
怒る中国、惑う米国、揺れる「南シナ海」情勢:日経ビジネスオンライン 福島 香織 2017年5月31日(水)



 トランプ政権が初めて南シナ海で「航行の自由」作戦を実施した。これに中国は大激怒である。続いてイタリア・タオルミナで開催されたG7サミットで採択された首脳コミュニケで、中国を念頭においた東シナ海・南シナ海の非軍事化を再確認する文言が盛り込まれた。



 南シナ海の領有権をめぐる問題では、2016年7月、ハーグ国際仲裁裁判所で中国が全面的に敗北した裁定が出たものの、中国はこれを完全に無視。親中派のフィリピンのドゥテルテ大統領の登場やトランプ政権の北朝鮮問題解決優先姿勢もあって、
中国が国際法を無視していることに対しては、国際社会としてさして大きな圧力をかけることはなかった。だが、5月になって、少し情勢が変わってきた。今回のコラムでは、ハーグ裁定から約1年近く経った南シナ海をめぐる国際情勢の変化について、整理しておこうと思う。

<中略>



 全体的な流れをみると、
南シナ海問題は確実に中国の有利に動いていた。まず、フィリピンのドゥテルテ大統領は、「信頼できるのはロシアと中国だけ」と発言し、米国と距離をおき、中ロから武器購入するなど、軍事同盟の軸足を変えようというそぶりまで見せていた。4月から5月にかけてマニラで行われた、フィリピンが議長国となったASEAN首脳会議では中国批判は完全に封印した。

 ドゥテルテはその後、フィリピンの
南シナ海の島々の資源採掘を行うとその領有権を習近平に対して主張したところ、「戦争になる」と脅されたことを明らかにした。ドゥテルテの姿勢は一貫していて「戦争は絶対しない」だ。つまり、戦争を盾に脅された時点で、主張を引っ込めたということだろう。



 そもそも3月の段階で、中国に武力で実効支配を奪われたスカボロー礁に中国が建造物(環境モニタリング基地?)を造ることは止められない、中国に宣戦布告でもしろというのか、と発言しており、
国際社会ではこれをフィリピンの事実上の敗北宣言と見ていた。フィリピン世論には、ドゥテルテの対中弱腰を批判する声もあるのだが、それに阿るように強気の発言をしたとたん、中国から恫喝されて、前言を撤回するということを何度か繰り返している。



トランプは、容易に路線変更するタイプ

 中国はスカボロー礁の実効支配については、すでに
米国に干渉の余地を与えないレベルにまで固めていたのだから、「航行の自由」作戦やG7も、もう少し忍耐をもって対応してもよかっただろう。だが、中国サイドの反応は、かなり焦った感じで、激しい反論をしてきたなぜだろうか



 一つには、
中国側がトランプ政権の対中政策が再び転換するかもしれない、と見ているからかもしれない。環球時報の解説をみるに、5月下旬の米国の動きは、米国内部のタカ派の圧力によって、トランプ政権のこれまでの「北朝鮮問題で米中が協力していくために、南シナ海の問題は妥協していく」という対中路線を変更せざるを得なくなっている、という分析が党内にあるようだ。もし、トランプ政権がこの圧力に対して抵抗するだけの意思があるなら、中国としてもトランプのメンツを立てるという意味で、忍耐を示したかもしれないが、中国側は、トランプが容易に路線変更するタイプだと見定めているようである。



 
国防大学戦略研究所の元所長の楊毅(海軍少将)は、こう説明している。

 「ペンタゴン、国務総省、財務省、商務省など米国各省庁がそれぞれ別の方向を向いている。南シナ海を緊張させればペンタゴンは予算を多く取れるが、財務、商務は中国との衝突を願わない。問題は
トランプが誰の意見に耳をかたむけるか、だ。…米国がシビリアンコントロールの国である一方で、軍部がホワイトハウスに無理な決断を迫る芝居を何度も上演している



 あるいは、
トランプが「航行の自由」作戦をしないと信じていたのに、裏切られたという思いがあり、激しい反応が出たのかもしれない。つまり、米中の間で、南シナ海については当面は双方、表立った挑発行為はしない、中国は北朝鮮問題について真剣に制裁に参加する代わりに、南シナ海問題は保留される、という水面下の合意があったのではないか。中国側からすれば、それを米国から突然反故にしてきた、というならば、その条件反射的怒りもよくわかる。



 しかしながら、
もしトランプが中国との水面下の合意や、暗黙の了解を裏切って対中強硬路線に切り替えるのだとしたら、これは日本など、同盟国の立場から言わせてもらえば、ようやく正しい東アジア政策の軌道に戻る、とほっとさせられる

 4月上旬の米中首脳会議以降、トランプの対中政策は明らかにまともではなかった。
北朝鮮問題解決のために中国側の協力を得ようと、トランプは習近平に譲歩を重ねてきたが、経済問題はともかく、南シナ海における譲歩は米国の安全保障問題の基礎を揺るがしかねない話だ。



 その一方で、
中国が米国と協力して武力で北朝鮮を叩くということも、普通なら考えにくい。明らかに、トランプに対しての中国の"協力約束"は口先だけの、秋の党大会までの時間稼ぎである。しかも、韓国に文在寅政権という親北親中政権ができたとなると、ますます中国が北朝鮮に対し武力を背景にした圧力を行使するのは得策ではない。いずれこの協力体制は破たんする



ASEANを巻き込んだ中国包囲網の復活を

 ならば、
中国に南シナ海の実効支配強化と軍事拠点化の猶予を与えるだけの"米中協力関係"はさっさと見切る方がよかろう。香港の一部のメディアは、南シナ海で中国に圧力を少しかけて見せて、緩みかけている中国の北朝鮮制裁のねじを巻き上げるつもりである、という見方も報じていたが、それよりは、これまでの対東アジア政策が過ちであったことに気づいたトランプ政権がようやく修正しはじめたのだ、と期待したい



 米国が中国に南シナ海問題で配慮を示すようになると中国の脅威に直接脅かされている東南アジアの近隣国は、本音を偽りながらも中国に恭順的な姿勢をとらざるを得ない。その
中国と東南アジア諸国との"柵封体制"が完成してしまえば、南シナ海から米軍のプレゼンスは排除され、米国のアジア政策は大きく後退する。それは北朝鮮の核兵器保有よりも、米国の安全を脅かす事態ではないだろうか



 
もう一度、ASEANを巻き込んだ中国包囲網の復活を、日本の安全保障のためにも、願う。だが、トランプの本音がどこにあるのかは、中国当局ですら予測できないのだから、私の期待も裏切られるかもしれない。もっとも、そうなる前にトランプ自身が弾劾される可能性もそれなりに高いのだが。


 (記事引用の為、<中略>させていただいた部分は、福島氏ならではの現状分析をされています。お時間が許す様でしたら、記事タイトルのリンク部をクリックいただき、元記事をご一読ください。)


 会談でのトランプ大統領の鮮やかな先制パンチで守勢に立たされた習近平。トランプ大統領側は、空母派遣(現在では3隻に達した)で牽制強化しつつ、核とミサイル開発をとどまらせる役割を中国に押し付ける戦術。うまい戦術とみえましたが、どうやら中国への譲歩が速すぎるのと、経済、安全保障の大きな課題に及ぶことで、中国側が失地回復し、むしろ優位にさえ立ってきている様に見えるのは、遊爺の気のせいでしょうか。


 止まらぬ北のミサイル開発実験。そこで圧力を高めるための「航行の自由作戦」や、G7での一致した批難ですが、どうやら焼け石に水。効果は見られ載せん。中国は強く反論して来る始末。

 中国の"協力約束"は口先だけの、秋の党大会までの時間稼ぎだ。いずれこの協力体制は破たんする。中国に南シナ海の実効支配強化と軍事拠点化の猶予を与えるだけの"米中協力関係"はさっさと見切る方がよかろう。と、提言されるのが福島氏。


 中国が動かないのなら、米国が動くと迫っていたトランプ大統領。動きが鈍い中国への牽制は、福島氏が提言される、オバマ・クリントンコンビの一期目に採った、アジア回帰政策の強化・再現です。

 習近平が、米国に追いつき追い越す「中華の夢」政策の一環の「一帯一路」に対抗する、新たな自由貿易圏構築の規範とすべく構築された「TPP」の普及です。


 国内基盤が揺らいでいるトランプ大統領に代わって、安倍首相がアジアの雄国として、リード・推進していただき、米国の復帰の道も開けて置いてあげたいものです。



 # 冒頭の画像は、イタリア G7サミットの後、米軍基地で演説するトランプ大統領




  ノハラアザミとホウジャクスズメガ


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia






コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月30日(火)のつぶやき | トップ | 5月31日(水)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

米国 全般」カテゴリの最新記事