Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

オールド・ボーイ

2006-04-15 | 外国映画(あ行)
★★★★☆ 2003年/韓国 監督/パク・チャヌク
「人間とは、かくも血なまぐさい生き物」



流行の韓流ラブストーリーが苦手な私が、これまで「韓国映画」というくくりで韓国の映画をあまり観てこなかったことを、この作品を観てひどく後悔した。テーマは「不条理」そして「復讐」と非常に重いが、見終わった後、心が沈むかというと決してそうではなく、あの圧倒的なパワーに押された後の虚脱感がむしろ心地よいくらいだった。

主演のチェ・ミンシクがすばらしい。叫ぶ、殴る、泣く、どれを取っても自分の中のものを絞りきるような表現力で、演じているというより、全部出すという感じ。ここまで出し切れる日本の俳優っているのだろうか。まあ、日本の映画と比較することが無意味だとはわかっていてもついついしてしまう。日本の俳優はここまで映画に血を注ぐことができるんだろうか、と。

私は監禁されている部屋のインテリアなど、パク・チャヌク監督の美術センスが非常に気に入った。この監督は映画評論家をしていたようで、なるほど観客に映画をひきこませるポイントを実によく押さえていると感心した。根本的に「なぜ俺は15年も監禁されなければ行けなかったのか」という謎解きを軸にしているのがうまい。さもなければ、非常に説教くさく、心気くさい物語になるところが、しっかりエンターテイメントになっている。いかに、重要なテーマであったとしても、映画は常に観客がいてこそ成り立つもの。観客を楽しませつつ、ここまで暗く深遠なテーマをとことん描ききっているその手腕、おそるべし。

私は原作が未読なので、映画との違いについては何もわからない。が、この映画の結末は、ハッピーエンドだと思った。しかも、恐るべきハッピーエンドだ。