Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

インサイド・マン

2007-01-20 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2006年/アメリカ 監督/スパイク・リー

「一番最初の花火が一番でかかった」


常に人種問題を扱ったシニカルなエンターテイメントムービーを作ってきたスパイク・リー。そんな彼がクライム・サスペンスに挑戦。序盤の銀行強盗のシーンから、人質に全員同じ服を着せる、という奇想天外な展開にぐぐっと引き付けられる。しかも、冒頭のクライヴ・オーエンは一体、どこにいるの?そして間、間に入ってくる人質の尋問、犯人はこの中にいるの?など意味ありげな伏線が多く、サスペンス好きにはたまらない展開。

あまりに伏線や意味ありげなシーンが多いため、ラストの結末によほど大きなカタルシスが待ち受けているのだろう、と期待してしまう。ところが、である。盛り上げるだけ、盛り上げておいて、なんだかちょっと肩透かしなんである。一応、オチ的なものは用意されているが、カタルシスを得られるような大どんでん返しでもないんだな、これが。

どうせ「ナチス」の話を引っ張ってくるんだったら、犯人の動機や盗んだものをどう使うかに関してきっちりケリを付けてもらいたい。これなら「ナチスネタ」でなくともいい、ということになってしまう。最終的には、デンゼル・ワシントン演じるキース刑事がこの事件をうまく利用して出世できました、ちゃんちゃん。ってことで、えーそれでいいの?なんて思ってしまうのは私だけだろうか。序盤であれだけ、大々的に犯人一味の強盗事件をぶちあげたんだから、ラストは彼らがどうなるか、どうするかをオチにもってきて欲しいと思っちゃったなあ。

さて、人種差別を扱ったシーンは、スパイク・リーの本領発揮。「ターバンを返してくれ」の連呼にはつい笑ってしまった。もちろん、同義的には笑っちゃいけないシーンなんだよ。でも、きっと観客も笑っちゃうことをちゃんと見透かしてスパイク・リーは作ってる。この差別ネタを堂々と笑っていいよ、と提示するスパイク・リーの懐の広さやセンスは大好きです。

それからジョディ・フォスターがもったいなかったなあ。あと、ウィリアム・デフォーね。いつ、正体見せんねんと前のめりになってたのに、ホンマに何にもなかった。新喜劇ばりにずっこけてしまいました。