Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

Shall we ダンス?

2007-02-07 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1996年/日本 監督/周防正行

「ウンチクを捨て、男の居場所を描いた」


修行僧、相撲と来て社交ダンス。マイナーな世界にスポットを当てた周防作品のトリを飾った作品がこれ。「ファンシィダンス」「シコふんじゃった」と連続して見て気がついたのは、この作品は社交ダンスのウンチクを訳知り顔で語ったりはしていない、ということだ。「ファンシィダンス」では主人公の生活ぶりをていねいに見せながら修行僧の作法や寺の習わしを語っていたし、「シコふんじゃった」では穴山教授が相撲の歴史や面白さを語ってくれた。

しかし、「Shall we ダンス?」では、社交ダンスってのはね、とあれこれ語るシーンはほとんどない。しかし、主人公の心の流れとオーバーラップさせながら社交ダンスを見せることで、最終的には「社交ダンスって面白いもんなんだ」という気づきを観客に与えている。その押しつけがましくない手法こそが、社交ダンスをここまでブームにさせた一因ではないだろうか。

また、マイナーな世界をおもしろおかしく紹介するだけではなく、周防監督は今作で「男の居場所」について提示して見せたことが多くの人々の心を捉えた。会社でもない、家庭でもない、ダンス教室こそが主人公杉山(役所広司)の居場所だった。ステップ一つ踏めない杉山が努力してどんどん上手くなる姿は、まわしが似合うようになるモックンよりも様々な意味を含んでいる。

しかも、杉山の思いはいったん断ち切られる。上手になりました、バンザイ!という結末にはしないところがニクい。杉山はダンスを好きであったと同時にダンスに逃げていたのだと観客に示すのだ。そうしていったん、落としておいてから再び心温まるラストのダンスシーンへ。この流れが実に巧みだ。

杉山に手紙を書いた後、ひとりダンス教室で踊る草刈民代のダンスシーンがいい。夕日の差し込む誰もいない教室で、白いワンピースを着て軽やかにターンする姿は、さすがバレリーナの美しさ。監督が惚れるのもわかります。