Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

第9地区

2010-11-16 | 外国映画(た行)
★★★★★ 2009年/アメリカ 監督/ニール・ブロムカンプ

「偶然ではなく必然」

様々な知り合いからオススメの嵐を受ける中、期待に胸を膨らませて息子と共に映画館で観賞。小1から映画の世界に引きずり込んで早7年。初めて息子が自分からパンフレットを買ってくれとせがんだ記念すべき作品(笑)。

映画が公開されるその時、奇しくも表裏一体のような作品が生まれることがある。そうした偶然性に何らかの意味を見いだしたくなり、そんなことのあれこれに思いを巡らせることも映画を見る醍醐味の一つだと思う。この「第9地区」を観賞後、「アバター」に思いを巡らし、まさにこの偶然性に唸ってしまった。「アバター」には数多くの疑問を持ったけど、「第9地区」を見た後は、両者を見比べるという意味において、大きな価値がある映画に思えてきた。いや、こうした作品が同時に生まれるのは、偶然ではなく必然としか思えない。

結局エイリアンとの遭遇って、異文化との衝突だの、人間の暴力性だの、とても普遍的な問題を突き付けているのよね。これまで手を変え品を変え、SFというトンデモシチュエーションを引っ張り出してきては、同じ命題を問いかけてきたわけだけど、飛躍的なテクノロジーを身に付けたハリウッドという土壌において、人間の体がエイリアンになってしまうという同じモチーフで「アバター」は臭いものに蓋をしたのに対し、「第9地区」はその蓋をこじあけ、さらにその悪臭をまき散らしちゃったような作品。我々の社会に正義なんて、どこにあるんだよ。自分さえよけりゃいいっていう人間のエゴイズムだけは、何万年、何百万年経とうが、どす黒い塊となってエイリアンの攻撃も寄せ付けずにどっかと居座っている。

いい大人がよってたかってエイリアンを撃つようにヴィカスに引き金を引かせるところなんて、吐き気がするほど気分が滅入る。そんでも最終的には見ちゃいけないようなものを見た不快感は全くなくて、キャットフードが好きに代表される馬鹿馬鹿しいエイリアンの設定や、SFエンターテイメントとしての見応えの方が勝っているんだよね。しかも、フェイク・ドキュメンタリーっつーのが私は大嫌いなんだけども、この映画は初めてこの演出が心にストンと落ちた。

「クローバー・フィールド」も「パラノーマル・アクティビティ」も見てないけど、フェイク・ドキュメンタリーって、そういう演出にすることでむしろ「これは嘘ですよ。作り物ですから。でへへ」って、製作者が小賢しく逃げ道を用意しているように感じるんですよ。だけども、本作はすごくリアルだよね。南アフリカの上空に宇宙船が止まってて、エイリアンが被差別者だなんていう特異な設定がこのフェイク・ドキュメンタリーの手法によって、まるで今この時に起こっているかのようなスリルと興奮を生みだしている。緻密な企画と構成でできた作品に間違いはないんだろうけど、フェイク・ドキュメンタリーの手法が作品のダイナミズムに直結していて、見事だと思いました。

「第10地区」?そりゃ、あるでしょう。こうなったら、「アバター2」の公開に合わせてくれないかな。