Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

プレシャス

2010-11-22 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2009年/アメリカ 監督/リー・ダニエルズ

「駄目と言われ続けてきた人生に終止符を打つ」

16歳のプレシャスは、極度の肥満体型のうえ読み書きも出来ず孤独に堪え忍ぶ日々。この年齢にして2度目の妊娠。どちらも彼女の父親によるレイプが原因。失業中の母親は、そんなプレシャスを容赦なく虐待し続ける。妊娠が理由で学校を停学になった彼女は、校長の勧めでフリースクールに通うことに。彼女はそこで若い女性教師レインと運命的な出会いを果たす。
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書籍が出た当初(もう10年近く前らしいが)読みました。本にはそれはそれは壮絶な人生が刻まれていたけど、読み物としての面白さは正直感じられなかった。だから、公開当初もあまり興味が湧かなかったんですけど、映画の方はすばらしい作品になっていました。今思えば、中学生にして英語のスペルさえ理解できなかった彼女だから、手記を書いただけでも凄いことだったんだと思う。

鬼のような実母。「おまえは馬鹿だ」「おまえにできるはずがない」と24時間プレシャスの存在そのものを否定する。身体的虐待よりも、むしろこうした言葉の暴力の方がどんなに過酷なことかと思う。プレシャスは極度の肥満だけど、その豊満な肉体の中身はこれらの母親の呪わしい言葉が詰まっているのではないかとすら思わせる。母親がひとつ、またひとつ、お前は駄目な子だという言葉を吐く度に、プレシャスの体に侵入し、脂肪と化して体に付着している。

母親の憎悪を体中に浴びた寡黙なプレシャスを演じるのはガボレイ・シディベ。物言わぬ巨体で圧倒的な存在感を放つ。

豪華な脇役陣の中でハッとされられるのは、ソーシャル・ワーカーを演じるマライア・キャリー。悲惨なストーリーの中で常にニュートラルなスタンスを外さない。非常に抑制された演技が光っていました。

そして、アカデミー助演女優賞、文句なし。母役モニークの演技が凄まじい。娘に男を寝取られた女。娘を生活保護を受けるための道具と考えている女。どう見ても鬼、なんだけど、なぜだろうねえ。私は後半彼女がとても可哀想に思えて仕方ないのだった。人を愛することを知らない憐れな女。モニークの深みのある演技でこの鬼母のキャラクターにひどく感情移入したのでした。

これら俳優陣の魅力を最大限に引き出した演出が見事。カウンセリングシーンなどは、敢えての演出だろうか、ドキュメンタリー風に撮影されている。喉の奥から絞り出すように吐露される真実、その瞬間にぐわんとカメラが不器用に揺れながら被写体にせまる。その様が全くあざとく感じられず、プレシャスの悲惨な人生を実にリアルに見せるのだった。秀作です。




Dr.パルナサスの鏡

2010-11-22 | 外国映画(た行)
★★★★ 2009年/アメリカ・カナダ 監督/テリー・ギリアム
<ブルーレイにて観賞>

「お目当てはリリー・コール」

現役ファッションモデルの中で誰が一番好きかと聞かれたら、「リリー・コール」と答える。だって、あの顔の小ささと言ったらハンパないもの!バツグンのスタイルに小動物のような顔立ち。あのアンバランスさがとっても魅力的。というわけで、本作でもテリー・ギリアムのおとぎ話にはピッタリの配役でした。

自分自身の欲望を映し出す鏡の中の世界。私が入ったらさしづめ、服と鞄と靴で埋もれるんでしょうか。そんなオバサンも登場していましたね。ギリアムらしい風刺の効いた摩訶不思議な世界。ようやくCGが追いつき、今だからこそリアルに具現化できたのかも知れません。この鏡の世界を満喫したくて、ブルーレイをレンタルしましたが正解でした。

しかしながら、この鏡世界の映像は堪能できたものの、本筋の面白さはビミョー。悪魔との駆け引き、トニーの正体など、仕掛けられた謎が明らかになる様がもっとスリリングに描かれていたらもっと楽しめたのになあ。