Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

アブラクサスの祭

2011-01-15 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2010年/日本 監督/加藤直輝
<梅田シネ・リーブルにて観賞>

「シンクロニシティ」


かつてロック・ミュージシャンだった鬱病の僧侶・浄念(スネオヘアー)は、福島の小さな町で妻子と共に暮らしていた。何事にも不器用で、法事や説法すら思い通りにいかない彼が、ある日この町でライブを行うと言い出す。応援する人もいれば罰あたりだと怒り出す人も現れ、彼を温かく見守っていた妻の多恵(ともさかりえ)や住職の玄宗(小林薫)は困惑するのだが…。


ノイズに悩まされる主人公は、今も薬が手放せない。
そんな死にたい願望の鬱病患者が、常に「死」と隣り合わせの坊主になる。
それは、実に耐え難くつらいことなんだろうけど、こんな理想的な療法もないだろう。
修業=治療。

今いるここから始めなければいけない。
それが浄念が得た最初の悟り。
「From here to eternityですよ」と住職に語るシーンはかなり笑える。
本作、かなり暗い作品だが、こうした笑いのシーンがそこかしこでとても効いている。
このシーン、スネオヘアーをアップで真正面でとらえ、絶妙な間を醸し出していて、
ちょっと北野映画を思い浮かべたりするのだけど、
調べてみるとなるほどこの監督、東京藝術大学大学院で北野武、黒沢清らに学んだ人らしい。

そして、ライブを行うことを決意し、
全ては順調かに思えた矢先に思わぬ事件が起きてしまう。

現在日本での自殺は年間3万人を超える。
「なぜ気づけなかったのか」と苦しんだ経験を持つ当事者の友人も多いはずだろう。

そんな人は、ろくにお経も読めなかった浄念が変わってゆく後半にとても惹きつけられるはずだ。
「シンクロしないと、ライブをやる意味がない」
というセリフが出てきますけど、私もシンクロするってことに
とても重きをおいてる人間なもんで、ひどく共感。

なかなかノイジーなサウンドもてんこ盛りで観る人を選ぶかも知れないけど、
あらすじで惹かれる人は観て損はないと思う。
ともさかりえと本上まなみもいいです。