Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

王の男

2011-01-22 | 外国映画(あ行)
★★★★☆ 2006年/韓国 監督/イ・ジュニク

「生命感あふれる旅芸人たちをとらえるカメラがすばらしい」

韓国史上最悪の暴君と言われる実在の王、燕山君(ヨンサングン)をモチーフに、その暴君に気に入られたことで運命を狂わされていく2人の芸人の姿をドラマティックかつ絢爛豪華に綴る歴史巨編。時は16世紀初頭。旅芸人一座の花形チャンセンと女形のコンギルは、国一番の芸人になろうと誓い合い、一座を抜け出し漢陽の都にやって来る。そこで時の王、ヨンサングンの悪評を耳にした2人は、宮廷を皮肉る芝居を思いつく。たちまち民衆の人気を博した2人だったが、噂を聞きつけた王の重臣によって捕らえられ、王が芝居を見て笑わなければ死刑にすると言い渡されてしまう…。

女形のコンギルを演じるイ・ジュンギがとっても美しいから見て!と、友人に勧められていたのですけど、韓流イケメンに全く興味がないので、棚の隅においやってました。
で、何となく取り出して見てみたら、すごく良かった。

旅芸人たちの躍動感が伝わるカメラワークがすばらしいんです。冒頭、帽子の先に白いリボンをくくり付けてぐるんぐるんと弧を描く舞踏が出てきますけど、あのリボンの動きをとらえるカメラでこの作品の虜になってしまいました。大地のエネルギーが感じられる生命感、そして芸人たちの生き生きとした表情。当時の韓国文化を知らないだけに、彼らの繰り広げる大道芸の数々が面白くて面白くて。クレーンも多用していますが、これがとても効果的です。

王を揶揄した芝居で大衆に大ウケするのだが、それが重臣の目に触れあやうく打ち首になりそうになる。そこで、主人公チャンセンが提案する。「この芸を王の前でやらせてくれ。そして、もし王が笑ったらそれは王を侮辱したことにはならないだろう?」と。すると、王は芝居を気に入ったどころか、彼らを宮中に住まわせるようになる。

もう、この展開で芸人たちの行く末が哀しい顛末になることは想像に難くない。だから、彼らの芸を王が気に入れば気に入るほど、切なさがこみ上げてくる。
そして、コンギルが王に見せる人形劇や影絵のシーンに心がじいんとなる。

後で予告編なんかを見ると、男たちの愛憎劇みたいな風に紹介されてるんだけど、全然違うよね。
自らの芸と自らの意思で人生を切り開いてきた旅芸人たちの哀しい運命。
ヨンサングンのつらさも伝わってきて、ほんといい映画だった。



ゴールデンスランバー

2011-01-22 | 日本映画(か行)
★★★★ 2009年/日本 監督/中村義洋

「原作そのままの映像化。だから?」

好評レビューが多いので、ちょっと気が引けるだけど。

原作の世界観をそのまま表現できているのかも知れない。だけど、映画としてのトキメキを感じない。見ていて、キュンとなる瞬間はある。でも、それは原作が持っているものだ。と、私は感じる。原作の世界観を損なわないよう完成できるというのも、それはそれで大したスキルなんだろう。だけど、ショットやシークエンスで、ドキッとさせてくれないと、私は物足りない。だって、素材がもともといいんだもの。

「重力ピエロ」を見た時のこと。春が教室が飛び降りるシーンがあるのだが、カメラはジャンプする岡田くんを下から捉え(その飛び降りる姿がやけにカッコいい)桜散る青空がその向こうに広がっていた。小説内の印象的なシーンを映像化するとこうなるんだなあとじぃんとしてしまった。「ゴールデンスランバー」には、そうした目が喜ぶシーンが少なくて残念だった。ちょっと期待しすぎたってこともあるんだけど、やっぱり中村監督と相性が悪いです。

でも、堺雅人はハマリ役だし、暗殺犯に仕立て上げられた男の逃亡劇そのものは面白いし、最後にはあっと驚くどんでん返し。見て損はない作品だと思います。