Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

凪待ち

2019-06-29 | 日本映画(な行)
★★★★ 2019年/日本 監督/白石和彌

(映画館)

舞台が海辺の町で主人公が犯した取り返しのつかないやらかしとその欠落を擬似家族の絆で取り戻す物語としてマンチェスター・バイ・ザ・シーを想起させる。香取慎吾もケイシーアフレックに負けない熱演ぶりだ。何をやってもうまくいかない。わかっていても悪い方へ悪い方へ流れてしまう。悪いのは全部俺のせいなんだ。大なり小なり人生でそんな経験をした人は郁男の自暴自棄に共感するだろう。脇を固める役者陣もすばらしいがとりわけ持っていくのは吉澤健。白石作品では「牝猫たち」の演技もすばらしかった。

ラストシーン、郁男はあるものを海に沈める。そこから、エンドロールに映し出されるものがあまりに不意打ちで胸を締め付けられた。津波は新しい海を作った。ようやく郁男に訪れた凪を3人で穏やかに航行していくのだろうか。余韻の残るラストシークエンスだ。

ただ、ポスターキャッチにもなっている「誰が殺したのか なぜ殺したのか」については消化不良感が残る。犯人の動機についてはもっと描き込んでも良かったんじゃないだろうか。また、他の白石作品と比べるとエロも暴力もそれほど突き抜けてはいない。郁男と亜弓の夜のシーンはもっと突っ込めなかったか。やはりそこは香取慎吾主演の限界なんだろうか。