Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

セブン

2020-06-14 | 外国映画(さ行)
★★★★★ 1995年/アメリカ 監督/デヴィッド・フィンチャー

アマプラ覗いたらつい最後まで。何度見ても傑作。昔は猟奇殺人にのめり込んだが年を重ねた今、モーガンの一挙手一投足に釘付け。定年間近に陰惨な事件に出会ってしまった運命への呪いと諦め。
殺人現場の強烈なビジュアルよりも、サマセットが図書館でダンテを読む、おもむろにダーツを始める、その姿が深く心に刺さる。
彼の演技がどれほど本作を高尚な作品に押し上げたか。本作で早々にオスカーを取るべきだった。




ヘレディタリー 継承

2020-06-09 | 外国映画(は行)
★★★★ 2018年/アメリカ 監督/アリ・アスター

もっと後味の悪い厭な映画かと予測したが、オカルトだとわかってからはすっかりトーンダウン。悪魔崇拝って自分には完全にファンタジーの領域。尼子の落ち武者の呪いが山崎努を通過して小川真由美に継承される方がよっぽど怖いよ。

祖母が亡くなる前にこの家族がどう構築されてきたのかさっぱり見えないのも辛い。夫はなんでこの女と結婚した?兄と妹はこれまでどういう距離感で生きてきた?家族間の焦燥や深層心理が描かれず、物語にのめり込めない。終盤アニーが夫に「愛してる」と言うが、そんな風に全然見えなかったぞ。

英国総督 最後の家

2020-06-09 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2017年/イギリス 監督/グリンダ・チャーダ

久しぶりの掘り出し物。アマプラのゆるいサムネに反し、インド・パキスタンの分離独立の歴史を地に足つけ描いた秀作。血で血を争う宗派の対立。統治国が勝手に決める境界線。異教徒同士の成就しない恋。壮大な歴史大河で総勢500名の従事者が働く荘厳な総督家のロケもすばらしい。

マウントバッテン卿の妻エドウィナの人物造形が印象的。政治に詳しく、平等主義で長期的な視野に立てと夫を諭す。ところが調べるとこの女性、なかなか奔放な生涯。こうした作り手による人物像の改訂は実像との違いを生むかもしれないが、そこも込みで楽しむのが歴史大河物の醍醐味ではないかと思う。

VHSテープを巻き戻せ! 

2020-06-05 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2013年/アメリカ 監督/ジョシュ・ジョンソン

VHSをこよなく愛する収集家(オタク)の熱い思いを微笑ましく眺めつつ、VHSがもたらした様々な功績を振り返る。B級ホラーの量産、ジャケ買い、日本のポルノやVシネマ…。VHSの登場は見る側、作る側、映画産業を根底から変えた。映画ファンは見て損なし。

映画だけではなくヨガやゴルフレッスンまで集めている人もいて可笑しい。VHSの映像の手触りは独特だもんね。ジャケ買いしたらハズレだったという文化も懐かしい。本作を見ながら小さい頃わが家にビデオデッキが来た時の喜びを思い出した。多分20万円以上したと思う。「巻き戻せる」って革命だったよね。

ハッピー・デス・デイ

2020-06-04 | 外国映画(は行)
★★★ 2017年/アメリカ 監督/クリストファー・ランドン

ホラーコメディは主演の振り切れた演技が肝。ジェシカ・ロースが気持ちよくビッチを演じているのがいい。何度もループするが少しずつ設定が変わるため飽きさせないし、テンポも良く笑させてくれる。だが自分の生き方を見直すという予測通りの展開で巷の評判ほどはハマらず。

(名作と比較するのも野暮だが)元ネタ「恋はデジャ・ブ」のすばらしさは「自分を変える」ことより「退屈と思っていた日常こそすばらしい」というところに着地点を持ってきたことだと思う。そうした別の価値観まで踏み込めていたらもっと良かったなあ。でも、そこまで描くなら96分じゃ収まらないよね。

リチャード・ジュエル

2020-06-01 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2019年/アメリカ 監督/クリント・イーストウッド

サムロックウェルやキャシーベイツというオスカー俳優を脇に、堂々と主演を務めたポール・ウォルター・ハウザーの演技に驚き。「こいつならやりかねない」と「愚直で誠実」の双方の表現を行き来できるからこそ、最後までハラハラが持続し、一級品のサスペンスに。

色仕掛けのネタ取りにアトランタ紙からクレームが入っていることは看過できないし、その後の改心ぶり(あんな豪胆な女が記者会見で泣くわけない)含め、脚本気になるところ多々。緻密な映画かというと全然でツッコミどころは多い。シリアスな告発物と思ってみると肩透かし。でも十分面白かったけどね。