『アイス・ストーム』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000WCEGM4&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
1973年、コネティカット州ニューケイナン。ニューヨーク郊外のミドルクラスの住民のモダンなコミュニティを舞台に、音もなく静かに崩壊していく家族の姿を描いた物語。1997年の李安(アン・リー)作品。
公開時に劇場で観た記憶があるので8年ぶりの再見だけど、気に入ってた割りにはあまり内容を覚えてなかった(爆)。ショック。
いやでもやっぱりすごく好きな映画です。脚本はスゴイし(カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)、映像も美しい。音楽もすてき。美術も衣装もシックだし、なによりもキャスティングがクールだ。
70年代という時代の独特な空気感の表現も素晴しい。映画にはこの時代の社会情勢などはそれほどはっきりとは描かれてはいない。だが秋から冬へと移っていく季節のつめたい風景、隣人同士の不倫、家庭に無関心な親たちの放埒、思春期の子どもたちの性の目覚め、親子間の微妙な距離感といった、目には平穏にみえてその底にぴりぴりと漂う緊張感が、映画全体の空気を微妙なヴァイブレーションで包んでいて、その震動と時代背景のイメージがぴったりとシンクロしている。
ひとつひとつのエピソードは相当に衝撃的なのに、それらをあざとくなく上品に抑えつつ充分な淫靡さを醸し出す演出も見事。地味だけどウマイ、とゆー李安映画の真骨頂だろう。
それにしても人物描写の完璧さは奇跡的なほどだ。脳天気に独善的な父親(ケヴィン・クライン)、理由もなく不安感でいっぱいの母親(ジョーン・アレン)、暴力的なまでに早熟な娘(クリスティーナ・リッチ)、父親そっくりな息子(トビー・マグワイア)、超然と悪魔的に美しい隣人の妻(シガニー・ウィーバー)、天使のように可憐なその息子(イライジャ・ウッド)。額に入れて壁に飾っておきたいくらい芸術的。それくらいよくできてる。パーフェクト。
この映画に描かれてるのは、旧来人が求め続けた豊かに恵まれた価値観への警鐘だ。
ここに出てくる人物はいわゆる人生の勝ち組ばかり。きれいで健康で教養もあって、お金もそれなりに足りている。納得のいく相手と結婚して家族がいて、オシャレなおうちに住んで、いいクルマに乗っている。子どもたちはみんなお利口でかわいらしい。見た目には何もかもがうまくいっているようにみえる。
だが不幸なことに人間の欲には限りがない。そして欲しいものをぜんぶ手に入れたうえでなにもかも思い通りに出来るほど、世の中は甘くもないし人生は簡単じゃない。“完成された平和な生活”という幻想を目に見えない細かなヒビが徐々に覆いつくし、やがてこなごなに砕けていくさまを冬の嵐に喩えた情景描写が華麗だ。悲しいのにその完全な調和によって美しくみえるという意味では、この物語はギリシャ悲劇にも似ている。
原作小説が出ているようなので、今度読んでみます。DVDも買いですな。
原作レビュー:『アイス・ストーム』リック・ムーディ著
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1973年、コネティカット州ニューケイナン。ニューヨーク郊外のミドルクラスの住民のモダンなコミュニティを舞台に、音もなく静かに崩壊していく家族の姿を描いた物語。1997年の李安(アン・リー)作品。
公開時に劇場で観た記憶があるので8年ぶりの再見だけど、気に入ってた割りにはあまり内容を覚えてなかった(爆)。ショック。
いやでもやっぱりすごく好きな映画です。脚本はスゴイし(カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)、映像も美しい。音楽もすてき。美術も衣装もシックだし、なによりもキャスティングがクールだ。
70年代という時代の独特な空気感の表現も素晴しい。映画にはこの時代の社会情勢などはそれほどはっきりとは描かれてはいない。だが秋から冬へと移っていく季節のつめたい風景、隣人同士の不倫、家庭に無関心な親たちの放埒、思春期の子どもたちの性の目覚め、親子間の微妙な距離感といった、目には平穏にみえてその底にぴりぴりと漂う緊張感が、映画全体の空気を微妙なヴァイブレーションで包んでいて、その震動と時代背景のイメージがぴったりとシンクロしている。
ひとつひとつのエピソードは相当に衝撃的なのに、それらをあざとくなく上品に抑えつつ充分な淫靡さを醸し出す演出も見事。地味だけどウマイ、とゆー李安映画の真骨頂だろう。
それにしても人物描写の完璧さは奇跡的なほどだ。脳天気に独善的な父親(ケヴィン・クライン)、理由もなく不安感でいっぱいの母親(ジョーン・アレン)、暴力的なまでに早熟な娘(クリスティーナ・リッチ)、父親そっくりな息子(トビー・マグワイア)、超然と悪魔的に美しい隣人の妻(シガニー・ウィーバー)、天使のように可憐なその息子(イライジャ・ウッド)。額に入れて壁に飾っておきたいくらい芸術的。それくらいよくできてる。パーフェクト。
この映画に描かれてるのは、旧来人が求め続けた豊かに恵まれた価値観への警鐘だ。
ここに出てくる人物はいわゆる人生の勝ち組ばかり。きれいで健康で教養もあって、お金もそれなりに足りている。納得のいく相手と結婚して家族がいて、オシャレなおうちに住んで、いいクルマに乗っている。子どもたちはみんなお利口でかわいらしい。見た目には何もかもがうまくいっているようにみえる。
だが不幸なことに人間の欲には限りがない。そして欲しいものをぜんぶ手に入れたうえでなにもかも思い通りに出来るほど、世の中は甘くもないし人生は簡単じゃない。“完成された平和な生活”という幻想を目に見えない細かなヒビが徐々に覆いつくし、やがてこなごなに砕けていくさまを冬の嵐に喩えた情景描写が華麗だ。悲しいのにその完全な調和によって美しくみえるという意味では、この物語はギリシャ悲劇にも似ている。
原作小説が出ているようなので、今度読んでみます。DVDも買いですな。
原作レビュー:『アイス・ストーム』リック・ムーディ著