落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

やる気はわかるが

2006年12月16日 | movie
『ヒマラヤ王子』

長かった!開会セレモニーが。
1時間半だよ。長過ぎ。とりあえず主催者3人が3人ともハンコで押したみたいにまったく同じ挨拶ってどーゆーことよ?しかもくどいし。この他に5人のゲストが挨拶したんだけど、スピーチそのものは栗原小巻女史がいちばんうまかったです。とくにどーっちゅーことはいってないんだけど聞かせる。内容は『ヒマラヤ王子』の胡雪樺(フー・シュエフォア)監督の挨拶が興味深かった。自ら「反日教育を受けた」という若い世代らしい話でした。なんつーか、反日教育を受けた人たちもある意味時代の被害者なのかもなとふと思い。
監督はこの映画で『前の世代の恨みは、新しい世代の愛で許そう』ということをいいたかったと発言したけど、それって日中関係だけじゃなくて、世界中どこでもいえることなんだよね。肩に入った力の強さはわかるんだけど、モチーフが古典劇「ハムレット」ってちょっとアプローチがカタかったんじゃないすかね。

シェイクスピアを元にした映画は古今東西いろいろつくられてるけど、ストーリーがしっかりしてるぶんだけ却って難しいところもある。だってオチとかもうみんな知ってるから、原作に縛られず、原作をうまく活かして自由な表現をしないと、ただただ重いだけ、退屈なだけになってしまう。『ヒマラヤ王子』はもうモロにそのパターンにハマってます。
ストーリーはまんま「ハムレット」じゃなくて割りに大胆な加工が入ってるんだけど、それでもあの独特の説明的・観念的なタッチにかなり引きずられてしまってる。よくいえば、舞台をチベットに持って来たわりには原作の雰囲気を忠実に再現してるとはいえるかもしれない。けどね〜〜〜長いよ〜〜〜眠いよ〜〜〜。雰囲気はホント悪くないんだけどね〜〜〜。
編集がところどころ不自然だったり、唐突なベッドシーンとか全裸乗馬シーンとか、ツッコミどころも各所にあり、全体の品位そのものはやや怪しい。逆にコミカルな要素は排除されちゃってるみたいなんだけど。

オールチベットロケ(なんと海抜5000m)でチベット族出演/チベット語による劇映画というのは実に50年ぶり、これがやっと2作めというレアな映画、という点では一見の価値はあると思います。とりあえず雄大な山岳地帯の風景の美しさは圧倒的に素晴しいし、衣装とかヘアメイクは非常におもしろい。ある意味『大奥』みたい(笑)。羊から水牛からオオカミからキツネからウサギからミンクからバンビからリンクスから、ありとあらゆる動物の毛皮、角、歯や爪を使った衣装やアクセサリーがふんだんに出て来ます。ふつう王家・宮廷を舞台にした映画といえば金銀宝石、絹や刺繍なんて豪華な装飾物が富の象徴として出てくるけど、いやもちろん『ヒマラヤ〜』にもその手の工芸品も出てくるんだけど、それよりも画面を埋め尽くす毛皮の凄まじい量にビビりました。コレ欧米で公開したら動物愛護団体とかにメチャ怒られそう・・・オチもアレだし(笑)。
あと少数民族のチベット族俳優の魅力も堪能出来ます。目鼻立ちがくっきりしてて肌が浅黒くて、人種的にはアーリア人に近い容貌の人が多いみたいでした。ゲストに来てた主演の蒲巴甲(プー・バージャ)も顔濃かったです。濃い王力宏(ワン・リーホン)。ホントよく似てました。まだゼンゼン垢抜けなくて、ちょーふつーのにーちゃんだったけど。演技はどーなんでしょね?熱演だったけど・・・ちょっと頭のめぐりのよくない、どっちかとゆーとおマヌケな「ハムレット」ぶりはハマってた気はします。新人だからこれからなんだろーね。もう既にボードとか持ったおっかけがいたのにはビックリしましたがー。

ところでコレ、なんで邦題を『ヒマラヤ王子』にしなかったんだろね?『ヒマラヤ王子』ってなーんか語呂がもうひとつ軽い気がするんだけど。少なくとも文芸映画って感じはしない。
なんでですかー?