『ハリウッド・バビロンⅠ』『ハリウッド・バビロンⅡ』 ケネス・アンガー著 海野弘監修 明石三世訳
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雑誌でもインターネットでもなんでも、とにかくハリウッドのスキャンダルの歴史について触れたテキストにしょっちゅう参考文献として挙げられる『ハリウッド・バビロン』。
原著はもともと1965年頃に出版されたそうだが、あまりにあまりな内容から何度か絶版と再発行を繰り返し、その間に時代の変化に伴う加筆修正もくわえられてバージョンアップした。
今回ぐりが読んだのは1988年(Ⅰ)90年(Ⅱ)の邦訳版。
著者のケネス・アンガーは1930年サンタモニカ生まれの映像作家。つまり著述家でもジャーナリストでもない。
なのでこの本は書かれている内容はノンフィクションだが、系統立ててハリウッドの歴史をひもとくといった整理された書かれ方はしていない。タブロイド紙の記事の寄せ集めのような感じ。まあひらたくいってあんまり読みやすい書物ではない。
Ⅰの方はユダヤ人事業家たちがカリフォルニアのみかん畑で映画スタジオを立ち上げたところから始まって、映画業界がいかにして自ら堕落し腐敗しながらその乾燥地帯に悪徳の花園を育てていったかを、一応時系列に沿ってスキャンダルのひとつひとつを挙げて説明している。ところがⅡの方になると、Ⅰに書きもらされたスキャンダル─製作者のスキャンダル、成功しなかったスターの自殺など─やゴシップ写真で紙面を埋めるような構成になってくるものだから、不勉強なぐりには聞いたこともない個人名や作品名ばかり書き連ねられた文章はやや読みにくくなってくる。
それでもやはり、この本はハリウッド映画を観る人なら誰にでも必読の書といえるだろう。
ハリウッド、世界中の誰もが憧れ夢みる希望の土地。映画の仕事を求めて世界中から才能ある人々が集まる魔都。
だが集まってくるのはスターや巨匠を目指す人たちや一獲千金を狙う山師だけではない。金の集まるところには犯罪者もやってくる。ハリウッドはその黎明期からマフィアと娼婦とジゴロの巣窟だった。
だがハリウッドでのスキャンダルといえば、薬物濫用や不倫や殺人はどっちかというと小粒な部類にはいるのかもしれない。この本を読んでるとそんな風に思えてくるからコワイ。たとえば例のイエロージャーナリズムの熾烈な実態や、禁酒法時代に酒の密売で大儲けしたJFKの父親も映画興業チェーンを経営していたこと、ナチスドイツが大西洋を超えてハリウッドを弾圧したこと、ロナルド・レーガン元大統領が俳優時代はハリウッドの大多数と同じく左派だったこと、あのジェームス・ディーンがクローゼットだったこと、ジーン・セバーグがFBIのいやがらせに堪えきれず自殺したことなどは今日では決してショッキングというほどのことはないけど、それでも、それをあえて誰も語らないという事実が、ハリウッドの暗闇の深さを能弁に物語っているように思える。語りだしたら困る人間がいったい何人いるのかわからない、といった種類の暗闇。こええ。
確かにこの本はハリウッドの暗闇の歴史について書かれているが、同時に、映画という娯楽を生み出し育てて来た先達たちが、何にどれほどどんな情熱を傾けて現在のハリウッドを築いてきたかを、裏側から密着して知るにはまさにうってつけの教科書でもある。
彼らは確かに虚栄心やセックスやドラッグや酒に溺れた。でも、それよりもなによりも映画を愛し、観客を愛していた。空中ブランコのような、綱渡りのような、常にいつなんどきまっ逆さまに放り出されるかわからない、そんな映画稼業の苦しみゆえに、彼らも、そして観客のわれわれも、映画の魅力に取り憑かれるのだろう。
それにしてもぐりはホントにハリウッド映画、観てないなあ。出てくる人の名前や作品名がわからなすぎ。聞いたことはあっても観たことがなかったり、観たことはあっても内容が思いだせなかったり。
てゆーか数が多過ぎるよ。人も、作品も。
ハリウッド映画の奥行きってそういう層の厚さによるところも大きいと思うんだけど、たぶん、それだってハリウッドにいる人にとっては、魔物のような巨大さにも感じるんだろーなー。
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雑誌でもインターネットでもなんでも、とにかくハリウッドのスキャンダルの歴史について触れたテキストにしょっちゅう参考文献として挙げられる『ハリウッド・バビロン』。
原著はもともと1965年頃に出版されたそうだが、あまりにあまりな内容から何度か絶版と再発行を繰り返し、その間に時代の変化に伴う加筆修正もくわえられてバージョンアップした。
今回ぐりが読んだのは1988年(Ⅰ)90年(Ⅱ)の邦訳版。
著者のケネス・アンガーは1930年サンタモニカ生まれの映像作家。つまり著述家でもジャーナリストでもない。
なのでこの本は書かれている内容はノンフィクションだが、系統立ててハリウッドの歴史をひもとくといった整理された書かれ方はしていない。タブロイド紙の記事の寄せ集めのような感じ。まあひらたくいってあんまり読みやすい書物ではない。
Ⅰの方はユダヤ人事業家たちがカリフォルニアのみかん畑で映画スタジオを立ち上げたところから始まって、映画業界がいかにして自ら堕落し腐敗しながらその乾燥地帯に悪徳の花園を育てていったかを、一応時系列に沿ってスキャンダルのひとつひとつを挙げて説明している。ところがⅡの方になると、Ⅰに書きもらされたスキャンダル─製作者のスキャンダル、成功しなかったスターの自殺など─やゴシップ写真で紙面を埋めるような構成になってくるものだから、不勉強なぐりには聞いたこともない個人名や作品名ばかり書き連ねられた文章はやや読みにくくなってくる。
それでもやはり、この本はハリウッド映画を観る人なら誰にでも必読の書といえるだろう。
ハリウッド、世界中の誰もが憧れ夢みる希望の土地。映画の仕事を求めて世界中から才能ある人々が集まる魔都。
だが集まってくるのはスターや巨匠を目指す人たちや一獲千金を狙う山師だけではない。金の集まるところには犯罪者もやってくる。ハリウッドはその黎明期からマフィアと娼婦とジゴロの巣窟だった。
だがハリウッドでのスキャンダルといえば、薬物濫用や不倫や殺人はどっちかというと小粒な部類にはいるのかもしれない。この本を読んでるとそんな風に思えてくるからコワイ。たとえば例のイエロージャーナリズムの熾烈な実態や、禁酒法時代に酒の密売で大儲けしたJFKの父親も映画興業チェーンを経営していたこと、ナチスドイツが大西洋を超えてハリウッドを弾圧したこと、ロナルド・レーガン元大統領が俳優時代はハリウッドの大多数と同じく左派だったこと、あのジェームス・ディーンがクローゼットだったこと、ジーン・セバーグがFBIのいやがらせに堪えきれず自殺したことなどは今日では決してショッキングというほどのことはないけど、それでも、それをあえて誰も語らないという事実が、ハリウッドの暗闇の深さを能弁に物語っているように思える。語りだしたら困る人間がいったい何人いるのかわからない、といった種類の暗闇。こええ。
確かにこの本はハリウッドの暗闇の歴史について書かれているが、同時に、映画という娯楽を生み出し育てて来た先達たちが、何にどれほどどんな情熱を傾けて現在のハリウッドを築いてきたかを、裏側から密着して知るにはまさにうってつけの教科書でもある。
彼らは確かに虚栄心やセックスやドラッグや酒に溺れた。でも、それよりもなによりも映画を愛し、観客を愛していた。空中ブランコのような、綱渡りのような、常にいつなんどきまっ逆さまに放り出されるかわからない、そんな映画稼業の苦しみゆえに、彼らも、そして観客のわれわれも、映画の魅力に取り憑かれるのだろう。
それにしてもぐりはホントにハリウッド映画、観てないなあ。出てくる人の名前や作品名がわからなすぎ。聞いたことはあっても観たことがなかったり、観たことはあっても内容が思いだせなかったり。
てゆーか数が多過ぎるよ。人も、作品も。
ハリウッド映画の奥行きってそういう層の厚さによるところも大きいと思うんだけど、たぶん、それだってハリウッドにいる人にとっては、魔物のような巨大さにも感じるんだろーなー。