『切羽へ』 井上荒野著
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九州地方の小さな島で、小学校の養護教員をしている30代のセイ。亡父はこの島で療養所を開いており、セイも島で生まれ育った。夫も島出身の画家で、3歳上の元級友である。
春、島に新しい音楽教師が赴任してくる。石和というぶっきらぼうな青年の存在を、セイは初めて会った瞬間からはっきりと性的に意識する。
自然豊かな静かな島の生活が、季節の移り変わりとともに穏やかに描かれる。全文にみちみちた官能と死の匂いも、あるいはこうした自然描写のひとつなのだろう。
セイと夫は深く愛しあい、互いを自らの一部のように許しあい、受け入れあっている。とても幸せだ。
それでもセイは石和を意識せずにはいられない。彼とどうなりたいという明確な意志があるわけではない。それなのに、身体が、心が、どうしようもなく、石和の異物感を求めてしまう。
その感覚以外に何もないのに、彼女は夫に罪悪感を感じる。甘い疼きのように。
エロティックである。ちょーーーーーーエロである。
実際に文中には性描写はない。ほとんどない。微妙に性的な描写はなくもない。でも大体ないといって差し支えない。
それなのにエロなんである。あーエロい。
しかしエロなんてものはもともと、こうしてちょっと距離をおいて、あるいは間に障害物を挟んで鑑賞するからこそ、より強く官能的に感じられるものなのかもしれない。
といってもこの小説のエロティシズムはいわゆるチラリズムというのともちょっと違う気がする。いってしまえば、ものすごく全体的に露骨でもあるからだ。露骨にエロいのに、直接的にはセックスを描かない。田舎の話だし、ヒロインは保健の先生なんとゆう、平和を絵に描いたような人妻。エロな要素といえば、不倫中の同僚と、ひわいな話が好きな近所の老婆くらいなものである。つまり設定はぜんぜんエロくない。だから、なんだかすごく新鮮なエロティシズムのような気がしてしまう。
ヒロインは激しく石和を求めながらも、同時に夫を愛し、大切にもしている。そのふたつは彼女の中で矛盾していない。そこに女の不可解な怖さも感じる。
けどさ、ちょっとくらい怖いぐらいな方がかわいいよね。女ってさ。それも女の甲斐性なんじゃないかと思う。
ものすごくおもしろくて一気読みしてしまったし、セイというヒロインは好きになれないけど、彼女の境遇は素直にすごく羨ましかった。
だっていいじゃないですかー。芸術家の夫と、海が見える丘の上の古い実家でのふたり暮らし。地元でとれる旬の食材にいろどられた日々の食卓。小学校の子どもたち。そして、ときにはぴりりと刺激的な恋の予感。
この作家も初読だけど、ちょっとファンになったかも。他のも読んでみたいなー。
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九州地方の小さな島で、小学校の養護教員をしている30代のセイ。亡父はこの島で療養所を開いており、セイも島で生まれ育った。夫も島出身の画家で、3歳上の元級友である。
春、島に新しい音楽教師が赴任してくる。石和というぶっきらぼうな青年の存在を、セイは初めて会った瞬間からはっきりと性的に意識する。
自然豊かな静かな島の生活が、季節の移り変わりとともに穏やかに描かれる。全文にみちみちた官能と死の匂いも、あるいはこうした自然描写のひとつなのだろう。
セイと夫は深く愛しあい、互いを自らの一部のように許しあい、受け入れあっている。とても幸せだ。
それでもセイは石和を意識せずにはいられない。彼とどうなりたいという明確な意志があるわけではない。それなのに、身体が、心が、どうしようもなく、石和の異物感を求めてしまう。
その感覚以外に何もないのに、彼女は夫に罪悪感を感じる。甘い疼きのように。
エロティックである。ちょーーーーーーエロである。
実際に文中には性描写はない。ほとんどない。微妙に性的な描写はなくもない。でも大体ないといって差し支えない。
それなのにエロなんである。あーエロい。
しかしエロなんてものはもともと、こうしてちょっと距離をおいて、あるいは間に障害物を挟んで鑑賞するからこそ、より強く官能的に感じられるものなのかもしれない。
といってもこの小説のエロティシズムはいわゆるチラリズムというのともちょっと違う気がする。いってしまえば、ものすごく全体的に露骨でもあるからだ。露骨にエロいのに、直接的にはセックスを描かない。田舎の話だし、ヒロインは保健の先生なんとゆう、平和を絵に描いたような人妻。エロな要素といえば、不倫中の同僚と、ひわいな話が好きな近所の老婆くらいなものである。つまり設定はぜんぜんエロくない。だから、なんだかすごく新鮮なエロティシズムのような気がしてしまう。
ヒロインは激しく石和を求めながらも、同時に夫を愛し、大切にもしている。そのふたつは彼女の中で矛盾していない。そこに女の不可解な怖さも感じる。
けどさ、ちょっとくらい怖いぐらいな方がかわいいよね。女ってさ。それも女の甲斐性なんじゃないかと思う。
ものすごくおもしろくて一気読みしてしまったし、セイというヒロインは好きになれないけど、彼女の境遇は素直にすごく羨ましかった。
だっていいじゃないですかー。芸術家の夫と、海が見える丘の上の古い実家でのふたり暮らし。地元でとれる旬の食材にいろどられた日々の食卓。小学校の子どもたち。そして、ときにはぴりりと刺激的な恋の予感。
この作家も初読だけど、ちょっとファンになったかも。他のも読んでみたいなー。