『きっと、うまくいく』
大学の同窓生チャトゥール(オミ・ヴァイディア)に呼び出されたファルハーン(R・マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は、かつて万年2位だったチャトゥールが主席のランチョー(アーミル・カーン)に一方的にふっかけた「卒業後10年でどちらが成功しているか」という賭けの結果を知るために、長年音信不通だったランチョーの行方を探すことに。
名門工科大ICE在学当時、頭脳明晰、成績優秀なランチョーだったが、彼は教師に無理難題を吹っかけては自由に学識を身につけることこそが教育と主張し、仲良しのファルハーンとラージューを巻き込んで問題ばかり起していたのだった。
2009年にインドで歴代興行成績ランキングナンバーワンとなった大ヒットボリウッド映画。
原題『3idiots』=3馬鹿トリオってとこか?コメディです。そしてミュージカル。そして長い。170分だよ。長いよ。
でもその長さをいっさい感じさせない。ムチャクチャおもしろかったです。ここ数年では一番のヒットかも。
笑えるという点ではそこまで大爆笑というのではない。工科大学が舞台ということもあって登場人物のほとんどが男性(女性はファルハーンとラージューの母親の他は2名のみ)、若い男しか出てこないから笑いの質も自然とお下劣になる。とはいえそこは信仰深いお国柄のせいか、エロネタというよりは純粋に下ネタ、下半身ネタばっかり、日本でいうと小学生が喜ぶようなジャンルの笑いである。ニヤっとは笑えるけど、さすがに腹を抱えてゲラゲラというわけにはいかない。むしろここまで低レベルのギャグをこれだけのバリエーション連発できるってのはある意味スゴイけど。
おもしろいのは、とにかく二転三転とぐいぐい凄まじいドライブで観客を引っ張っていくストーリーテリング。決して完成度が高いというのではないんだけど、観てる方を一瞬も飽きさせない、気を抜かせない、考えさせない。冷静に考えたら突っ込みどころがあり過ぎるんだけど、そこもなんぼか狙ってる感じもする。狙われてる感じが悔しい。
とくにこれはスゴイと思ったのが、物語の始まりが大学卒業10年後の設定だから、画面に登場するチャトゥール、ファルハーン、ラージューの結末はある程度わかっている。にも関わらず、在学中のパートでは劣等生の彼らが一体どうなるのか、いかにしてランチョーたちが学生生活の困難を乗り越えていったか、いちいち手に汗握らされるのだ。
荒唐無稽なほど極端に競争社会化した現代のインド。とくにカーストによって職業選択の自由が阻まれる中、ITや工学系の職業は身分に関係なく出世が見込めることから、親は誰もが男の子の教育に期待をかける。就職率の高い大学の入試倍率は年々異常に上昇し、極度のプレッシャーの中で若者の自殺件数も増えている。
そんな歪んだ社会システムに、ランチョーは正面から異論を唱える。ただ情報を詰めこんだり、優劣だけを競うのは教育ではない。学問を愛すること、楽しむこと、優秀になることは結果、成功することもその結果だという。正論である。
競争教育と権威主義という固定概念の権化として登場するのがICEの学長(ボーマン・イラニ)なのだが、いってみれば彼は悪人で、ラージューは完全無欠な神様みたいな正義の味方という、勧善懲悪のような図式になっている。
どの登場人物も現実には絶対に存在しないようなキャラクターだから、ストーリーがどんなに奇想天外でも罪がない。それでも考えさせられるのが、ランチョーが求めて断じて妥協しようとしない理想が、今の世の中で誰もが求めてなかなか手が届かないものだからだ。
競争至上主義が正しくないことはみんなわかっている。愛するが故に学問は大成するもので、愛のためにはまず楽しくなくてはならないこともわかっている。要領よく成功を得たとしても、それはほんとうの成功じゃないこともみんな知っている。わかってるのに、それを誰もがランチョーのように体現できないのはなぜなんだろう。誰もがみんな、ランチョーのように優秀じゃないからだ。残念ながら。
ぐりはボリウッド映画をまったく観ないので、この映画の出演者を誰も知らなかったんだけど、ランチョー役のアーミル・カーンてすごいスターなんだってね。ごめん、トム・ハンクスにしかみえなかったよ。似てない?そっくりだよ。
邦題の『きっと、うまくいく』はランチョーの口癖の「All is well!」からきてるみたいです。なぜか「オールイズウェル」ではなく「アールイズウェル」というのがずっと謎だったんだけど、なんか意味あるのかな?どっちせよ「あ~るい~ずうぇ~る」という語感がなんかバカっぽくて非常に気に入りましたけど。字幕の「うまーくいーく」の字面も良い。なんかお気楽で。
個人的には学長の娘ピア(カリーナ・カブール)の婚約者(名前わからん)のキャラクターがすんごい気になり。やたらに高級品が好きでモノの尺度が全部金額、というその一面しか表現されない可哀想な人。見た目すごいかっこよかったから、よけいなんか哀れでした。
あと宇宙専用ペンのくだりはとってもためになりました。ぐりも学生のころにランチョーみたいなのに出会ってたら、もっと勉強好きになったかな?どうかなー?
大学の同窓生チャトゥール(オミ・ヴァイディア)に呼び出されたファルハーン(R・マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は、かつて万年2位だったチャトゥールが主席のランチョー(アーミル・カーン)に一方的にふっかけた「卒業後10年でどちらが成功しているか」という賭けの結果を知るために、長年音信不通だったランチョーの行方を探すことに。
名門工科大ICE在学当時、頭脳明晰、成績優秀なランチョーだったが、彼は教師に無理難題を吹っかけては自由に学識を身につけることこそが教育と主張し、仲良しのファルハーンとラージューを巻き込んで問題ばかり起していたのだった。
2009年にインドで歴代興行成績ランキングナンバーワンとなった大ヒットボリウッド映画。
原題『3idiots』=3馬鹿トリオってとこか?コメディです。そしてミュージカル。そして長い。170分だよ。長いよ。
でもその長さをいっさい感じさせない。ムチャクチャおもしろかったです。ここ数年では一番のヒットかも。
笑えるという点ではそこまで大爆笑というのではない。工科大学が舞台ということもあって登場人物のほとんどが男性(女性はファルハーンとラージューの母親の他は2名のみ)、若い男しか出てこないから笑いの質も自然とお下劣になる。とはいえそこは信仰深いお国柄のせいか、エロネタというよりは純粋に下ネタ、下半身ネタばっかり、日本でいうと小学生が喜ぶようなジャンルの笑いである。ニヤっとは笑えるけど、さすがに腹を抱えてゲラゲラというわけにはいかない。むしろここまで低レベルのギャグをこれだけのバリエーション連発できるってのはある意味スゴイけど。
おもしろいのは、とにかく二転三転とぐいぐい凄まじいドライブで観客を引っ張っていくストーリーテリング。決して完成度が高いというのではないんだけど、観てる方を一瞬も飽きさせない、気を抜かせない、考えさせない。冷静に考えたら突っ込みどころがあり過ぎるんだけど、そこもなんぼか狙ってる感じもする。狙われてる感じが悔しい。
とくにこれはスゴイと思ったのが、物語の始まりが大学卒業10年後の設定だから、画面に登場するチャトゥール、ファルハーン、ラージューの結末はある程度わかっている。にも関わらず、在学中のパートでは劣等生の彼らが一体どうなるのか、いかにしてランチョーたちが学生生活の困難を乗り越えていったか、いちいち手に汗握らされるのだ。
荒唐無稽なほど極端に競争社会化した現代のインド。とくにカーストによって職業選択の自由が阻まれる中、ITや工学系の職業は身分に関係なく出世が見込めることから、親は誰もが男の子の教育に期待をかける。就職率の高い大学の入試倍率は年々異常に上昇し、極度のプレッシャーの中で若者の自殺件数も増えている。
そんな歪んだ社会システムに、ランチョーは正面から異論を唱える。ただ情報を詰めこんだり、優劣だけを競うのは教育ではない。学問を愛すること、楽しむこと、優秀になることは結果、成功することもその結果だという。正論である。
競争教育と権威主義という固定概念の権化として登場するのがICEの学長(ボーマン・イラニ)なのだが、いってみれば彼は悪人で、ラージューは完全無欠な神様みたいな正義の味方という、勧善懲悪のような図式になっている。
どの登場人物も現実には絶対に存在しないようなキャラクターだから、ストーリーがどんなに奇想天外でも罪がない。それでも考えさせられるのが、ランチョーが求めて断じて妥協しようとしない理想が、今の世の中で誰もが求めてなかなか手が届かないものだからだ。
競争至上主義が正しくないことはみんなわかっている。愛するが故に学問は大成するもので、愛のためにはまず楽しくなくてはならないこともわかっている。要領よく成功を得たとしても、それはほんとうの成功じゃないこともみんな知っている。わかってるのに、それを誰もがランチョーのように体現できないのはなぜなんだろう。誰もがみんな、ランチョーのように優秀じゃないからだ。残念ながら。
ぐりはボリウッド映画をまったく観ないので、この映画の出演者を誰も知らなかったんだけど、ランチョー役のアーミル・カーンてすごいスターなんだってね。ごめん、トム・ハンクスにしかみえなかったよ。似てない?そっくりだよ。
邦題の『きっと、うまくいく』はランチョーの口癖の「All is well!」からきてるみたいです。なぜか「オールイズウェル」ではなく「アールイズウェル」というのがずっと謎だったんだけど、なんか意味あるのかな?どっちせよ「あ~るい~ずうぇ~る」という語感がなんかバカっぽくて非常に気に入りましたけど。字幕の「うまーくいーく」の字面も良い。なんかお気楽で。
個人的には学長の娘ピア(カリーナ・カブール)の婚約者(名前わからん)のキャラクターがすんごい気になり。やたらに高級品が好きでモノの尺度が全部金額、というその一面しか表現されない可哀想な人。見た目すごいかっこよかったから、よけいなんか哀れでした。
あと宇宙専用ペンのくだりはとってもためになりました。ぐりも学生のころにランチョーみたいなのに出会ってたら、もっと勉強好きになったかな?どうかなー?