落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

腐女子上等、BL上等。

2023年08月18日 | movie

『赤と白とロイヤルブルー』

初の女性大統領(ユマ・サーマン)の長男アレックス(テイラー・ザハール・ペレス)とイギリス王子ヘンリー(ニコラス・ガリツィン)は些細なきっかけで犬猿の仲となるが、米英関係を円満にするためのキャンペーンのなかで急接近。親しくなるにつれて互いの秘めた想いに気づくのに、時間はかからなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー小説を映画化、アマゾンプライムで公開中。

アマゾンのレビューでは賛否両論あるみたいだったのでどうかな?と思ってたけど、あるオープンリーゲイの方がX(ツイッター)で「こういうのが観たかった」と書いていたので鑑賞。
うん。おもしろかった。

ストーリー自体はすごく単純だし、あくまでもファンタジック(非現実)なラブコメとして楽しむための軽いコンテンツとしては、気持ちよく観られる作品に仕上がってます。
もちろんラブシーンもあるにはあるけど昨今の規制はきっちりまもられていて、これなら親子で観ても問題ないと思う。というかむしろ親子で観てほしいかもしれない。

物語のベースは古き善き少女漫画のテンプレートとよく似ている。
王子様とお姫様が出逢って、恋に落ちて、なんやかんやの障害を乗り越えてゴールインする。現実にはあり得ないけど、おとぎ話としてなら誰もが子どものころに絵本で読み親しんだ話だ。
違うのは、王子様と出会うのがお姫様ではなくてアメリカ大統領の息子(しかも政治家志望)という設定である。
そこが21世紀だよね。まさに。

アレックスはヘンリーとの関係にほとんど葛藤らしい葛藤は抱かない。だがヘンリーはそうはいかない。日本でもそうだけど、王室の人にプライバシーはない。人権もない。どんなにアレックスが好きでも、本気でのめりこむわけにはいかない。
だから常に自分を欺き、恋した相手をも突き放し、傷つけ、ただ背を向けて涙を堪えるしかない、そんな恋愛を彼は繰り返してきたのではないだろうか。画面には直接は出てはこないが、彼の挙動には、そんな孤独な過去がうっすらと見え隠れして切ない。

この映画を、セクシュアルマイノリティを商品化した低俗なBL作品だといって怒る人もいる。
その気持ちはとてもよくわかる。確かにその通りだ。
だけど、ヘンリーの苦しみを我がことのように感じる人もいるだろうし、アレックスの両親の愛情深さや、アレックスのスピーチに感動する人もいると思う。彼らのセリフは徹頭徹尾正論だし、青少年を含めて、家族でセクシュアリティについて語りあう機会があったら、是非参考にしてほしい作品でもある。あくまで入り口としてだけど。
少なくとも私はそう考える。

この物語には悪人は出てこないし、暴力シーンもない。肌の露出は必要最小限、下品な単語も(ほぼ)出てこない。
ポリティカリーコレクトネスにおいてはこれ以上ないくらいコレクトです。
老若男女、お子さんからお年寄りまで、誰でも楽しめます。
腐女子上等、BL上等。
セクシュアルマイノリティの恋物語をこんなキラキラハリウッド映画に仕立てて、みんなで楽しく観て、笑える。これこそ平和じゃないかと私は思うんだけど…。

本編はこちら。

あと、英語でもアメリカ英語とイギリス英語の違いが会話のなかでちょこっと出てきて、英語使う人ならそこも楽しめるかもです。
ヘンリーのお気に入り映画が『花様年華』だったり、アレックスがネックレス代わりにチェーンで鍵を首にかけていたり、深夜にふたりが抱き合って踊るシーンがあったりと『ブエノスアイレス』のオマージュらしき部分があって、監督か原作者はウォン・カーウァイ(王家衛)推しではないかと思う。どうかなー。

 



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