落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

愛が降る街

2008年12月20日 | movie
『ラースと、その彼女』

妊娠中のカリン(エミリー・モーティマー)は自宅敷地内のガレージに住む心優しい義弟ラース(ライアン・ゴズリング)がいつもひとりぼっちなのが心配でたまらない。
ある夜、兄(ポール・シュナイダー)と彼女にガールフレンドを紹介するといってラースが連れて来たのはリアルドールのビアンカ。困惑する夫婦だが・・・。

リアルドールに愛を注ぐ日本人男性のブログ「正気ですかーッ 正気であればなんでもできる!(しょぼーん)」も大人気ですが。もう最近はこういう趣味もまったく特殊でも何でもなくなってしまった気がして、映画の中の兄夫婦の、とくに兄ガスの混乱はちょっと滑稽にも感じた。そこまでビビるほどのことでもないんとちゃう?みたいな。って冷静に考えたらそれもおかしいやろ。<自分

映画を観ていても、いつまでどれだけ観てもラースが何をどう感じどう考えているのかという心の中はまったく読めない。映画としてもそこはあえて観念的に説明しようとはしていない。はなからそんなものは投げている。
実はこの物語は、ラースやビアンカの話ではなくて、それをとりまく家族と地域社会に求められるべき愛のお話だからだ。
ラースの妄想は確かに奇想天外かもしれない。気味が悪いかもしれない。それを頭がおかしい、狂ってる、オタクだ、変態だなどといって排除し無視するのは簡単なことかもしれない。
でもそうしたところで何も解決したりはしない。無理解と無関心という無意味な敵意が助長されるだけである。
大人になるってどういうこと?とラースに訊ねられたガスは「人のためにできることをすること」と答えている。ほんとうの大人なら、相手が求めていること、自分が求められていることに応え、自ら払えるだけの犠牲は惜しむべきではないのだ。
たとえビアンカがものいわぬ人形だとしても、ラースの妄想を尊重することで誰かが損をしたり傷ついたりするわけではない。
愛やあたたかさというものは、太陽や雨のように無償で与えられるものではない。人が自らうみだし与えない限りは、どこからもうまれてこない。

コメディなんだけど全体に淡々としていて静かな映画。それなのに笑えるシーンもいっぱいあって、ちょっと不思議な雰囲気の作品でした。
あとこれはちょっとマニアックな話ですが、脇役でドラマ『Queer as Folk』に出演していたLindsey ConnellとAlec McClureがちょこっと出てました。どういうつながりがあるのかはわからないけど、このふたりはQaF以外に他の映画でも見かけたことがなかったのでちょっとびっくりしましたです。
他にも『グッドナイト&グッドラック』のパトリシア・クラークソン、『サムサッカー』のケリ・ガーナーなど、キャスティングになかなかセンスを感じる作品でした。

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