『少女売買 インドに売られたネパールの少女たち』 長谷川まり子著
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4334975291&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
こないだアグネス・チャンが児童ポルノ根絶キャンペーンの記者会見をやってましたが(ニュース)。
もうねえ、ポルノどころじゃないよ。
この夏に公開される映画『闇の子供たち』(ニュース)にも登場するが、東南アジアの売春窟では6〜7歳の幼児が売春をさせられている。彼/彼女たちは物心もつかないうちから言葉巧みに騙されるか、あるいは誘拐同然にさらわれて売春宿に連れてこられ、いっさいの自由を奪われて売春を強要される。賃金など一円も渡されない。彼/彼女たちの生活は人間のそれではない。家畜以下である。
この本はいわゆる一般的なノンフィクション、ドキュメンタリーとはかなり違った本だ。
著者の長谷川氏はネパール人セックスワーカーの救助・自助活動を支援するNGOを実に12年にもわたって主催するボランティア活動家である。もともとはジャーナリストとしてインドの売春窟を訪れ、そこで働かされるネパール人少女たちの存在を知り、成りゆきのままに支援に参加することになったという。
だからこの本は、インド/ネパール間の人身売買の実態を暴いたノンフィクションであると同時に、活動家としての長谷川氏個人の手記・体験記という側面もある。それがこの本を、テーマの重さのわりに読みやすくしている。もうホントにわかりやすい、たぶん中学生くらいの子どもが読んでもじゅうぶん理解できる、非常にやさしい本です。
ネパールからインドへ売られてくる少女がいる。
彼女はどこでどんな家庭に生まれてどんな生活をしていたのか、なぜ売られて来たのか、彼女を騙したのはどんな人で何をいわれたのか、どんな道程を経てインドに来たのか、売られて来たらどんな生活が待っているのか、彼女たちの仕事はどんなもので、現地の売春窟と人身売買システムはどんなものなのか、助けようとする人たちを阻む壁はいったいどんなものなのか。
人身売買の実態といってもそこにはさまざまな側面がある。生半可な潜入取材ではとても全体像を知るほどのじゅうぶんな記録はとれない。その点、この本は12年間という長い時間をかけて集められた個人的経験という、これ以上はとても望めないほどのリアリティがある。少なくとも、インドで働くネパール人セックスワーカーの現実だけは相当にリアルだ。
できることなら、他の各国の実態についても、同じように支援者自身の手でこれくらい読みやすい本がもっとたくさん書かれるようになるといいと思う。
ネパール人の少女たちのセックスの値段は1回¥200〜¥300から。1日に40〜50人の客を相手にし、多いときは100人を数えることもあるという。長谷川氏が居合わせた客のように1回10分程度なら不可能ではない数字である。
まだ初潮も迎えていない子どもがそういう仕事をしている。いや、仕事じゃないな。無給なんだから。労働だ。
コンドームの使用率が極端に低いため彼女たちの何割かはHIVに感染していて、救援団体に助け出されても実家には戻れないケースも多い。世界で最も貧しい国のひとつであるネパールでは、一般市民ばかりか医療関係者の間でもHIVに対する偏見と誤解は根強い。
そんな子どもがなぜ性奴隷の商品になるのか。処女性を尊ぶヒンドゥー教圏では女性は若ければ若いほど好まれ、また肌の色がカーストを象徴するインドでは色白なネパール人が高貴さをイメージさせるからなのだそうだ。
処女が聞いて呆れる。高貴が聞いて呆れる。しかしすべてを無知と貧困ゆえの誤解ともいいきれはしない。豊かでじゅうぶんな教育を受けた日本人にも欧米人にもそんな幻想は間違いなくあるはずだ。それに、インドの売春窟にはたまたま日本人客はいない(いないことになってる)けど、タイやベトナムじゃいちばんの上客は日本人だともいう。この本に、たまたま日本人客が出てこないってだけのことである。たまたま。
この本のいちばんすごいところは、やっぱり長谷川氏の究極なまでの正直さだろう。
彼女は、取材も支援活動もぜんぶ自分のためにやっているという。被害女性たちに深く関わることにも、なんらかの責任を負うことにも、初めは抵抗を感じたことがきっちりしっかり率直に書いてある。人間ここまで素直になるのはなかなか難しいんじゃないかと思う。でもだからこそ、書かれた言葉のすべてに、ずっしりとした信頼感を感じることができる。
『ホテル・ルワンダ』が日本で公開されて話題になったころ、某SNSで「自分もルワンダのために何かしたいけどどうしたらいいか」などという若者が何人もいた。それはそれで殊勝な心がけだとは思う。彼らがひとりでも多く、実際に何か行動を起こしてくれていればいいなとは思う。
でもほんとうの慈善活動とは、長谷川氏のいうように、誰かのためではなく、自分自身のためにすることで、自分のためにやっていると堂々といえることなんじゃないかと思う。
ぐりはこの本、男性に読んでほしいです。
貧困と無知と売春に対する偏見を持つすべての人に、読んでほしい。
ラリグラス・ジャパン 長谷川氏が代表を務めるNGO
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こないだアグネス・チャンが児童ポルノ根絶キャンペーンの記者会見をやってましたが(ニュース)。
もうねえ、ポルノどころじゃないよ。
この夏に公開される映画『闇の子供たち』(ニュース)にも登場するが、東南アジアの売春窟では6〜7歳の幼児が売春をさせられている。彼/彼女たちは物心もつかないうちから言葉巧みに騙されるか、あるいは誘拐同然にさらわれて売春宿に連れてこられ、いっさいの自由を奪われて売春を強要される。賃金など一円も渡されない。彼/彼女たちの生活は人間のそれではない。家畜以下である。
この本はいわゆる一般的なノンフィクション、ドキュメンタリーとはかなり違った本だ。
著者の長谷川氏はネパール人セックスワーカーの救助・自助活動を支援するNGOを実に12年にもわたって主催するボランティア活動家である。もともとはジャーナリストとしてインドの売春窟を訪れ、そこで働かされるネパール人少女たちの存在を知り、成りゆきのままに支援に参加することになったという。
だからこの本は、インド/ネパール間の人身売買の実態を暴いたノンフィクションであると同時に、活動家としての長谷川氏個人の手記・体験記という側面もある。それがこの本を、テーマの重さのわりに読みやすくしている。もうホントにわかりやすい、たぶん中学生くらいの子どもが読んでもじゅうぶん理解できる、非常にやさしい本です。
ネパールからインドへ売られてくる少女がいる。
彼女はどこでどんな家庭に生まれてどんな生活をしていたのか、なぜ売られて来たのか、彼女を騙したのはどんな人で何をいわれたのか、どんな道程を経てインドに来たのか、売られて来たらどんな生活が待っているのか、彼女たちの仕事はどんなもので、現地の売春窟と人身売買システムはどんなものなのか、助けようとする人たちを阻む壁はいったいどんなものなのか。
人身売買の実態といってもそこにはさまざまな側面がある。生半可な潜入取材ではとても全体像を知るほどのじゅうぶんな記録はとれない。その点、この本は12年間という長い時間をかけて集められた個人的経験という、これ以上はとても望めないほどのリアリティがある。少なくとも、インドで働くネパール人セックスワーカーの現実だけは相当にリアルだ。
できることなら、他の各国の実態についても、同じように支援者自身の手でこれくらい読みやすい本がもっとたくさん書かれるようになるといいと思う。
ネパール人の少女たちのセックスの値段は1回¥200〜¥300から。1日に40〜50人の客を相手にし、多いときは100人を数えることもあるという。長谷川氏が居合わせた客のように1回10分程度なら不可能ではない数字である。
まだ初潮も迎えていない子どもがそういう仕事をしている。いや、仕事じゃないな。無給なんだから。労働だ。
コンドームの使用率が極端に低いため彼女たちの何割かはHIVに感染していて、救援団体に助け出されても実家には戻れないケースも多い。世界で最も貧しい国のひとつであるネパールでは、一般市民ばかりか医療関係者の間でもHIVに対する偏見と誤解は根強い。
そんな子どもがなぜ性奴隷の商品になるのか。処女性を尊ぶヒンドゥー教圏では女性は若ければ若いほど好まれ、また肌の色がカーストを象徴するインドでは色白なネパール人が高貴さをイメージさせるからなのだそうだ。
処女が聞いて呆れる。高貴が聞いて呆れる。しかしすべてを無知と貧困ゆえの誤解ともいいきれはしない。豊かでじゅうぶんな教育を受けた日本人にも欧米人にもそんな幻想は間違いなくあるはずだ。それに、インドの売春窟にはたまたま日本人客はいない(いないことになってる)けど、タイやベトナムじゃいちばんの上客は日本人だともいう。この本に、たまたま日本人客が出てこないってだけのことである。たまたま。
この本のいちばんすごいところは、やっぱり長谷川氏の究極なまでの正直さだろう。
彼女は、取材も支援活動もぜんぶ自分のためにやっているという。被害女性たちに深く関わることにも、なんらかの責任を負うことにも、初めは抵抗を感じたことがきっちりしっかり率直に書いてある。人間ここまで素直になるのはなかなか難しいんじゃないかと思う。でもだからこそ、書かれた言葉のすべてに、ずっしりとした信頼感を感じることができる。
『ホテル・ルワンダ』が日本で公開されて話題になったころ、某SNSで「自分もルワンダのために何かしたいけどどうしたらいいか」などという若者が何人もいた。それはそれで殊勝な心がけだとは思う。彼らがひとりでも多く、実際に何か行動を起こしてくれていればいいなとは思う。
でもほんとうの慈善活動とは、長谷川氏のいうように、誰かのためではなく、自分自身のためにすることで、自分のためにやっていると堂々といえることなんじゃないかと思う。
ぐりはこの本、男性に読んでほしいです。
貧困と無知と売春に対する偏見を持つすべての人に、読んでほしい。
ラリグラス・ジャパン 長谷川氏が代表を務めるNGO
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