落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

帝王伝説

2014年11月01日 | movie
『イヴ・サンローラン』

1957年、20歳そこそこでディオールの助手となったイヴ(ピエール・ニネ)。若くしてその後継者に指名され一大メゾンの伝統を受け継ぐ重責を負うが、1960年、故郷アルジェリアのフランスからの独立戦争に召集され、まもなく精神を病んで施設に収容される。
デザイナーとしての才能には恵まれていたものの内向的で人格的にもろく繊細なイヴを、公私ともに献身的に支え続けたピエール・ベルジェ(ギヨーム・ガリエンヌ)の視点から描いた伝記映画。

映画を観ていて、学生時代、学園祭でのファッションショーに参加したことを思い出した。
ぐりの母校は美術系で舞台衣装をベースに服のデザインを学ぶクラスがある。デザイナーはその学科の学生たち、モデルも彼らが学内でスカウトした学生、運営スタッフも学生で全員あわせると100人単位。予算も100万円単位で舞台美術や照明・音響装置やヘアメイクなどは人材育成のためにプロがサポートしてくれるという、それなりに規模の大きいものだった。ぐりは運営スタッフの中にいた。
入場料を徴収しスポンサーも募る本格的なショーとはいえ参加者は全員素人学生、毎年恒例でいくらかノウハウは引き継がれるもののメンバーも入れ替わり世の中の景気も変化するから、想定通りにいかないことばかりである。なにしろ美術系の学生でしかもファッション系といえばその当時はスポイルされ放題で奔放さだけが自慢のような子ばかりだったから、マニュアルをつくってそれを周知し守ってもらうだけでひと苦労だった。準備から残務整理までの1年近くの間、日々忍耐の連続だった。

だからファッションデザインそのものには興味はあったし、ホントにメゾンのファッションショーに行ったり、コレクションラインをまめにチェックしてた時期もある。実際にサンローランも何点か持ってました(もちろんリヴ・ゴーシュ。オークションで入手)。でもそれも10年くらい前までで、いまは着るものにもう興味はない。ファッションが好きなだけで簡単に服飾史を独学しただけだから大した知識もない。
ちょっともったいなかったのは、もしこの映画をそのころ、ファッションが好きだった若いころに観てたらすごく共感しただろうなということ。残念ながらいま観てもさほど心動かされない。映画が悪いんじゃないと思うんだけど。
逆にいえば、ファッションが好きとかサンローランが好きという人がこの作品を観ればどう感じるのかが、とても気になる。

映画はイヴという地味でおとなしい若者がパリで見いだされ若くして成功しモードの帝王と呼ばれるようになり、プレッシャーや孤独と戦いながらファッション界に革命を起こし続けた日々を、ただただ淡々とパートナー側の視点から描いている。
ファッションという華やかな世界を描いていながら、サンローランのキャラクターがストイック過ぎて、物語に盛り上がりとか色気というものがほとんどない。そのわりに視点がパートナーのピエールに限定されているのでやや一面的に偏っていて、繊細で移り気なサンローランの内面の描写にもうひとつ踏み込みが足りないような気がしてしょうがない。ピエールというパートナーがいながらこれみよがしに浮気を繰り返したり薬物に溺れたりするサンローランがいったい何を恐れていたのか、その背景がもうひとつクリアに伝わってこなかった。

サンローランを演じたピエール・ニネはメディアで見かける生前のサンローランそっくりで、その演技は確かにピエール・ベルジェのお墨付きというだけあって真に迫ってたと思う。
でも見どころといえばそこ以外にもう思い出せないのは、観てから1週間経っちゃってるからではないと思う。
サンローランとかファッションデザインのファンにとってはもっとアツく感じるのかもしれないけど、ゴメン、ぐりはもうそうじゃないからムリでした。



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