韓国大法院は、2018年10月30日、元徴用工が新日鉄住金株式会社を相手に損害賠償を求めた裁判で、新日鉄住金への支払い命令を確定させた。その後の11月29日には、三菱重工業に対しても同様の判決を確定させた。
新日鉄への判決は、「元徴用工の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権である」とし、このような請求権は、「1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(日韓請求権協定)の対象外である」とし、「韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していない」というものである。
安倍首相はこの判決に対し、2018年10月30日の衆院本会議において、元徴用工の個人賠償請求権は日韓請求権協定により「完全且最終的に解決している」とし、判決は「国際法に照らしてあり得ない判断」であり、「毅然として対応していく」と答弁した。
しかし、日本の最高裁判所の2007年4月27日の判決は、日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実態的に消滅させる事までを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」としている。この理は日韓請求権協定の「完全且最終的に解決」という文言についても当てはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。また、日本政府は、これまで日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり、個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明している。
これらによれば、実態的な個人の賠償請求権は消滅しておらず、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払う事は法的に可能であり、日韓請求権協定は法的障害にはならない。
安倍首相は、日本の最高裁判所の判決を故意に無視し、韓国国民に対するだけでなく、日本国民に対しても、フェイク発言を罪の意識に苛まれるでもなく振り撒き、欺こうとしていると言って良く、その発言はさらには歴史の書き換えをも狙うものであるといえる。
(2019年8月26日投稿)