2020年2月2日投開票の京都市長選において、4選を目指す現職市長・門川大作氏の選挙母体が1月26日付の京都新聞や朝日新聞、読売新聞に掲載した広告文言は、彼らが民主主義を原則とする現憲法に基づく現行国体を破壊し、ファシズム国体へ変質させる運動の先鋒的役割を担う存在である事を明らかにするものであり、その意味で重大な問題であると捉えるべきである。
メディアはこの広告事件をそれほど深刻にとらえていないような取り上げ方をしていたが、つまり、「推薦者の名前と顔写真の無断使用問題」として報道したが、メディアは読者や国民に対し、広告文言の重要点を「はぐらかし」ていると見るべきである。この広告事件は敗戦後の日本史上、民主主義を原則とする憲法に対する最大の攻撃と見做すべき事件と考えるべきなのである。
メディアは、著名人数名が、顔写真を無断で掲載され反発している点に重点をおいて報道しているが、それはそれで問題ではあるが、この広告事件の問題の本質はそこではなく別の所にあるのだ。メディアがその本質に重点を置いて報道しようと考えたならば、読者や国民がその事にすぐ気づくように、広告に掲載された文言のすべてを見て分かる文字の大きさで報道しただろう。
広告は上下三段に分けて構成し、上段にはタイトル「大切な京都に共産党の市長」は『NO』」と横書きの文言があり、そのすぐ下に小さな文字で「京都はいま大きな岐路に立たされています。わたしたちの京都を共産党による独善的な市政に陥らせてはいけません。国と県との連携なしには京都の発展は望めません」としている。中段には鴨川の写真を配し、下段にはタイトル文字の3分の1ほどの大きさでサブタイトル「いまこそ ONE TEAMで京都を創ろう!」とあり、そのすぐ下に小さな文字で「「地下鉄延伸」「北陸新幹線延伸」「文化庁本格移転」、改行して「夢と希望に満ちた様々なプロジェクトも国と県との協力なしでは実現できません。市民のみなさまの多様な意見をしっかりと受け止めて国や府との強力な連携と幅広い政党や団体との絆の下に確かな京都の未来を築いていける人はただひとり」としている。その下には「ONE TEAMで京都の未来を守りましょう」との文字とともに、横一列に9名の推薦者の顔写真と氏名肩書を配してある。
市長選の立候補者は3名ですべて無所属であった。それに対し、門川氏の広告には明確に京都は門川氏側のものであると主張し、「共産党」を排斥し敵視攻撃し貶める事だけを目的とする文言ばかりを並べているとしか思えない。それは「大切な京都」「わたしたちの京都」の文言であり、そこには京都市は門川氏を支持する市民だけのものであるとする認識があり、加えておそらくその京都が天皇家に縁のある御所を有している事からも、その市政は「共産党」には任せない(街宣では「市庁舎に赤旗が立ってはいけない」)と訴えているのである。しかし、その理由については市民や国民が理解できる説明は一切しておらず、共産党に対しては一方的には「独善的である」とする偏向した意識で決めつけ排斥しており、タブー視させることを狙っているのである。これこそ「独善的」な「ハラスメント」「ヘイトスピーチ」「ヘイトクライム」というべきであり、共産党支持者の人格を侮蔑し人権を侵害するハレンチ行為というべきである。敗戦までの神聖天皇主権大日本帝国政府が生み出した「アカ」という言葉を利用した「タブー視させる効果」と同じ手法を使用したのである。そして、京都市の発展は門川陣営が目指すゼネコン型にあるとし、その発展を実現していくためには、国や府、そしてあらゆる政党や団体、経済界が「ONE TEAM」(一致協力、全体主義)となって協力する事こそ重要であり、そのためには共産党を排除する必要があると訴えているのである。そして、それができるのは門川氏だけであると訴えているのである。
門川陣営の吉井章・自民府連幹事長は「推薦人として広告などに名前と写真を使用する事については了承を得たと思っていた。内容は確認していなかった。ご迷惑をおかけしたなら申し訳ない」と述べているが、これは巧妙に上記のような問題点を故意に「推薦者の名前と写真の無断使用」の問題に「はぐらかし」、市民や国民を欺こうとしているのである。
また公職選挙法は、政治団体による広告について、「特定の候補者の氏名や氏名が類推されるような事項を記載する事」や「虚偽の事項を公けにする事」を禁止しているが、誰が見ても明らかであるにもかかわらず、京都市選管事務局はこれまた門川陣営に忖度してとぼけ、「共産党の市長は『NO』」という表現について、「氏名などは書かれておらず、違反には当たらない」との見解を表明しているが、誰が見ても「特定の候補者の氏名が類推できる事は明確」であり、公選法にも憲法にも違反している事は明確である。京都市選管事務局も「公平」「公明正大」の原則を放擲したといえる。
最後に追及しなければならない事は、メディア(京都新聞、朝日新聞、読売新聞)は、門川氏の「広告」を掲載する際に、文言についてどのような判断をしたのかを説明すべき責任があるだろう。それに頬かむりをする事は許されない。文言が明確に憲法や公職選挙法に違反している門川氏の「広告」をなぜ掲載したのかを。