OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

あの頃のジャズ

2007-02-05 18:05:22 | Weblog

昨日、NHKで「おやじバンド」の特集があったとか!?

私は見ていませんが、それに刺激された同世代の人達から、一緒にバンド、やりませんか? なんていう嬉しいお誘いがありました♪

とは言え、練習する時間の確保が、皆の課題という結論に達しているのですが……。

それはそれとして、本日はそんな青春の滾りがある1枚を――

Breaking Point / Freddie Hubbard (Blue Note)

フレディ・ハバードは正式デビュー当時から、バリバリの実力者として認知された存在でした。当然、ニューヨークに出てきてからは、すぐに名門プルーノート・レーベルと契約し、さらにジャズ・メッセンジャーズのレギュラーになるなど、常に陽のあたる場所にいたわけですが、さて、代表作となると、これっ! というブツが即座に思い浮かびません。

なにしろハードバップ、モード、フリー、ジャズロックからフュージョンまで、何をやらせても平均点以上の素晴らしさですからねぇ~。しかも自分のスタイルを完全に確立していて、聴いた瞬間にフレディ! って分かる明快さが大きな魅力になっているのにです。

ジャズ入門用のアルバムを選んでも、フレディ・ハバードのリーダー盤は、まず100枚の中には入らないと思われます。

しかしジャズ喫茶で、この人の音が鳴り始めると、店内は完全にジャズになるんですねぇ~♪ それが例えフュージョンやジャズロックであろうともです!

そこがフレディ・ハバードの凄さなのかもしれません。

さて、このアルバムは、そんなフレディ・ハバードがジャズメッセンジャーズから独立し、自分のレギュラーバンドを結成した直後の演奏と言われる、力いっぱい張り切った時期に吹き込まれた傑作です。

録音は1964年5月7日、メンバーはフレディ・ハバード(tp) 以下、ジェームス・スポールディング(as,fl)、ロニー・マシューズ(p)、エディ・カーン(b)、ジョー・チェンバース(ds) という、いずれも一癖ある俊英揃いです――

A-1 Breaking Point
 フレディ・ハバードのオリジナルで、いきなりフリー系の混濁した音が流れてくるんですから、嫌な予感に満たされます。しかしバンドは少しずつ、独自の文法を確立させ、ハードバップ~カリプソ調のテーマに持っていくあたりが、まずスリル満点です。
 その傾向はアドリブパートでも継承され、まずは大ハッスルのフレディ・ハバードが訳分からずの吹きまくり! 背後ではロニー・マシューズがデタラメ寸前の伴奏ですし、ドラムスとベースも好き放題ですが、突如、飛び出す楽しいカリプソテーマが何とも言えず、それを合図に次はジェームス・スポールディングの熱に浮かされたアルトサックスがブリブリやってくれますからねぇ~♪
 しかも最後にはフレディ・ハバードとの過激な絡み、おまけにロニー・マシューズの擬似フリーなピアノソロが、完全にジャズを聴いている雰囲気にさせてくれます。
 そうです、これは雰囲気を演出する演奏じゃないでしょうか……?
 決して心から夢中になれるものではないと……。
 しかし熱いです! 終盤のエディ・カーンのベースソロなんて、この時代でなければ表現されない「何か」に満ちていると思います。ジョー・チェンバースのドラムスも流石の煽りになっているのでした。

A-2 Far Away
 モード全開のエキゾチック曲は、もちろんフレディ・ハバードが書いたものです。
 しかも全体の主導権を完全にリズム隊が握っている雰囲気というか、それゆえにジェームス・スポールディングもフレディ・ハバードも心置きなくアドリブに専念出来ているように思います。
 う~ん、ジェームス・スポールディングの神経質で過激なフルートが熱いですねぇ~♪ まさに1960年代の音がしています。またロニー・マシューズは饒舌で暗い情念を吐露! 明らかにマッコイ・タイナー系のスタイルなんですが、もう少しサラリとしたところが好みです。
 そしてフレディ・ハバードが爆裂トランペットの真髄を発揮して、何処までも突進していく姿は爽快です。おそらく音そのものも、大きいんじゃないでしょうか!?

B-1 Blue Frenzy
 尖がっていたA面とは一転して、B面はハードバップがたっぷりです♪
 これもフレディ・ハバードのオリジナルですが、まずは一緒に口ずさめるテーマが楽しく、アドリブパートでもブルースっぽいフレーズばかりで迫るあたりが、サービス満点です。
 ツボを押えた伴奏のロニー・マシューズ、刺激的なジョー・チェンバースも実に良いですねぇ♪
 そしてジェームス・スポールディングは、力みのアルトサックスで痺れる感覚に挑戦していますが、やや煮え切らないのが残念……。ただし続くロニー・マシューズが、お約束満載のソウルフルピアノですから、たまりません! 心から暖まっていく良さが全開です。

B-2 D Minor Mint
 またまた、如何にもフレディ・ハバードという張り切ったハードバップです。
 シャープで重量感のあるリズム隊に煽られて飛び出すフレディ・ハバードは、十八番のメタリック系フレーズに加え、味のあるキメを密かに用いています。スケールアウトしそうでギリギリ、止まるあたりの上手さは本当にニクイほどです。
 しかしジェームス・スポールディングは直情径行というか、ややセンが細いながらも大健闘の情熱節を全開させています。
 そしてロニー・マシューズ! こういう突進型の演奏が本当に楽しくて仕方がないという雰囲気です。おい、自分でそんなに楽しんで、どうするの!? いえいえ、聴いているアンタも楽しいはずだぜっ! そんな会話を楽しんでいたら、演奏は終わっていたというオチがついています♪

B-3 Mirrors
 これだけがジョー・チェンバースのオリジナルですが、なかなか素敵なムードのスロー曲です。優しさとか思いやりがある雰囲気で……♪
 テーマ吹奏ではフレディ・ハバードのハスキーなトランペットとジェームス・スポールディングのミステリアスなフルートがベストマッチですし、続くアドリブパートでも、フレディ・ハバードが最高の歌心を聞かせてくれます。本当に即興でしょうか? という疑惑さえ浮かんでくるほどの完成度だと思います。
 またジェームス・スポールディングのフルートは、大野雄二の映画音楽世界♪ と、こう書いてもご理解願えないでしょうが、ハードボイルドな良さがあるんです♪
 そうです、これをちょっと直したら、松田優作主演の「最も危険な遊戯」のサントラになりそうな……♪ とにかく私は大好きです。

ということで、ツッパリのA面に、和みのB面と、気配りも万全のプロデュースが光るアルバムです。ちなみに現行CDでは「B-1」と「B-2」のシングルバージョンがボーナス収録されていますが、全く、さもありなんですねっ♪

おそらくジャズ喫茶ではA面を鳴らすのが主流でしょうが、自宅ではB面ばかり聴いている私でした。で、本日、久々にA面から聴いてみたら、良いんですねぇ~♪ 過ぎ去った青春の思い出というか、あの頃の、あてどない情熱がシミジミと思い出されるのでした。

コメント
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