OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

50年代コニッツの輝き

2007-02-19 17:21:37 | Weblog

リアルタイムでは見られなかった東京大マラソンの映像をニュースで見ると、走っているランナーが、怪獣特撮で避難する群衆に見えてきました。

実際、都心のビル街に溢れて走る人の群れは、ド迫力!

どうせなら映画用に撮影しておけば!?

と思っていたら、本家の東宝はゴジラを封印していたのですねぇ……。

ということで、本日はお宝音源の発掘盤です――

Jazz From The Nineteen Fifties / Lee Konitz (Wave)

ジャケ写は近影を使っていますが、中身はタイトルどおり、リー・コニッツが全盛期の1957年に録音されたライブ音源ですから、たまりません♪

これはリー・コニッツの盟友、ピーター・インドが所有していたものらしく、今回の発売に合わせて自身がリマスターしたものですから、なかなか良好な音質になっています。

さて、リー・コニッツと言えば、ビバップ期に孤高のクールジャズを確立したレニー・トリスターノ(p) の高弟として、その鋭い感性を見事にモダンジャズとして表現した天才アルトサックス奏者ですが、もちろん基本はモダンジャズでは誰も乗り越えられない天才のチャーリー・パーカー(as) です。

しかし師匠のレニー・トリスターノはチャーリー・パーカーを認めつつも、その呪縛から逃れんとするタイプの演奏を編み出していましたから、リー・コニッツに対しても、チャーリー・パーカー禁止令を出していたそうですが……。

まあ、リー・コニッツにしてみれば大きなお世話だったと思います。実際、両者はそのあたりの確執から、1950年代中頃には袂を分かったような状況だったそうです。そしてこの音源が、ちょうどその頃の記録とあれば、一層、興味深いものがあります。

録音は1957年2月、ペンシルヴァニアの「ミッドウェイ・ラウンジ」におけるライブ演奏で、メンバーはリー・コニッツ(as)、ドン・フェララ(tp)、ビリー・バウアー(g)、ピーター・インド(b)、ディック・スコット(ds) という、クール派の俊英が揃っています――

01 Background Music
 盟友のウォーン・マーシュ(ts) が書いたクール派の聖典曲♪ いきなりアップテンポで抑揚の無いメロディラインが綴られていくのですが、妙なテンションが心地良い刺激的な演奏です。
 アドリブ先発はドン・フェララが古いんだか、新しいんだか意味不明のフレーズをミュートで綴り、続くリー・コニッツはスリル満点な「コニッツ節」に没頭しています。あぁ、このフニャフニャのフレーズの連続とグサリと突き刺さる音の跳躍、さらにビートに対する切れの良いノリは、唯一無二の素晴らしさです!
 気になる音質は、とてもプライベート録音とは思えないバランスの良さで、リマスターを手掛けたピーター・インドは、自分のベースを思いっきり目立たせている仕事をしていますが、憎めません♪

02 Scrapple From The Apple
 前述したような経緯から、この当時のリー・コニッツはチャーリー・パーカーの曲も積極的に演奏していたようですが、これはその証拠のひとつです。
 ここではもちろんチャーリー・パーカーのような、ブッ飛んだノリは出来ていませんが、些かホンワカした全体の流れが妙に和みます。特に中間派っぽいドン・フェララのトランペットからは不思議な歌心が♪ まあ、この曲の元ネタが1929年頃のヒット曲「Honeysuckle Rose」ですから、ムベなるかなではありますが♪
 またビリー・バウアーのギターが伴奏&アドリブソロで良い味ですし、ドラムスのディック・スコットもテンションが高く、ピーター・インドは我が道を行くスタイルに撤しています。

03 You Go To My Head
 リー・コニッツが十八番のスタンダード曲ですが、ここではドン・フェララがテーマメロディをリードするという展開が、いかにもナイトクラブの雰囲気になっています。酒瓶のガシャガシャいう雑音も良い感じ♪
 そしてリー・コニッツは、思いっきり泣いてくれます。バックのリズム隊が相当に強いビートを送り出している分、泣きも本気というか、せつないアドリブメロディの積み重ねには、グッときますねぇ~。
 もちろんビリー・バウアーの伴奏も、控えめながら流石だと思いますが、無遠慮に笑っている客にはねぇ……。その所為か、後半は客を置き去りにしたようなリー・コニッツのプレイが印象的です。

04 Groovin' High
 これもチャーりー・パーカーが十八番にしていたビバップの定番曲! そしてリー・コニッツが独自のドライブ感で熱いアドリブを聞かせてくれます。
 しかしバックのリズム隊がシラケ気味というか、ノリが悪くて残念……。
 ところがドン・フェララがアドリブに入ると目が覚めたというか、急にバンド全体のグルーヴが活発になるんですから、???です。ビリー・バウアーさえも、珍しく派手なフレーズを弾いているんですよっ!

05 Foolin' Myself
 これもリー・コニッツが十八番の歌物であり、私の大好きな演目ですから、聴く前からワクワクしていました。
 ところが、ここではピーター・インドのベースがリードして、いささか肩透かし気味の早いテンポで演奏され、アドリブもベースソロ中心なのが???です。まあ、それ自体は悪くないですが……。
 で、ようやく終盤になって登場するリー・コニッツは、それなりに吹いてくれますが、如何せんテンポが早すぎるというか、十八番の泣きが活かせていない雰囲気なのでした……。意図が良く、わからんです。

06 There'll Never Be Another You
 これは快適なテンポによる歌心優先のスタンダード解釈として、なかなか満足度が高い演奏になっています。とにかくリー・コニッツからは、あのスラスラとして突然泣き出すという、全くこの人だけの「芸」が連発されるのですから、たまりません。途中で少~し考えているような部分もありますが、それが逆に良いバランスというか、マンネリ寸前の心地良さに繋がっていると思います。
 またビリー・バウアーが素晴らしく好調で、アドリブソロは美メロの宝庫♪ かなりテンションの高い、黒っぽいフレーズも混ぜ込んでいるあたりも要注意です。

07 Stollin' On A Riff
 リー・コニッツのオリジナルとなっていますが、特にテーマらしいメロディは出ず、多分元ネタは「Cherokee」でしょうか? 全篇がアドリブだけという雰囲気ですが、厳しさがあって良いですねぇ~。通常の歌心は徹底的に排除され、クール派特有のノリとツッコミのフレーズだけで11分あまりを押し切っていく潔さが痛快です。
 う~ん、それにしてナイトクラブでこんな演奏をやられたら、和みなんか望むべくもないでしょう。真剣に彼等の演奏を聴きに来ているコアなファンは大満足でしょうが! 物分りが良いと思われるビリー・バウアーでさえも鋭いフレーズの連発ですし、ピーター・インドとディック・スコットはインタープレイの境地に入っているのでした。

08 Limehouse Blues
 何時もは楽しい演奏になるはずの曲なんですが、ここでも厳しさ優先の展開が凄いところです。ディック・スコットのブラシもシャープで素晴らしく、リー・コニッツも気持ち良さそうにアドリブしていますが、ライブ特有の荒っぽさとか段取の悪さもあったりして、意外に楽しめます。それがジャズなんですねぇ。
 中盤からはドラムスとベースの対決になるあたりが、如何にもという感じです♪

ということで、全体で1時間弱の音源ですが、音質は予想外に良く、普通に聴けます。またドン・フェララの参加は前半の4曲だけですが、この人とリー・コニッツのコンビは、この演奏から半年後に行われたセッションで「ベリー・クール(Verve)」という名盤を生み出していますから侮れず、残念です。

そして実は5年ほど前に入手したブツなんで、現在の発売状況が不明なんですが、聴かずに死ねるかというテンションの高い内容です。そしてこんな演奏が連日連夜、各所で行われていた1950年代は本当にジャズの全盛期だったと羨ましいかぎりですが、その一部でもこうして聴ける現在の幸せも、大切にしたいものです。