OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クールダウン

2008-01-31 16:45:28 | Jazz

憧れのスタアからいただいたサインをオークションに出してしまう人の気持ちが分からないなぁ、どんな事情があるにせよ……。

そういうサインは、直接もらえた本人だけに価値があるもので、第三者の手に渡った時には、単なる落書きと同じでしょう。つまり、憧れの人との絆として、サインを貰うという行為が成り立つと、私は思います。

しかし中には大バカ者が居て、関係者であることを利用して、イベントに集ったスタアの寄せ書きサインを入手、それをヤフオクに出す愚行がっ!

こんなものを落札したって、それが本物か否かなんて、鑑定書が付いていない限り、騙されているのと同じでしょう。

と、ひし美ゆり子様のブログから理不尽な行為を知り、憤ってしまいました。

そこで本日は冷静な1枚を――

The Influence / Jimmy Raney (Xanadu)

白人ギタリストのジミー・レイニーは、常に沈着冷静、それでいてツッコミ鋭くスリル満点の演奏をしてくれますから、そこんとこが、根強い人気の秘密でしょう。

そのスタイルはジム・ホール同様に豊かなハーモニー感覚、歌心に満ちたフーズ、絶妙のリズム感、クールで暖かい音色が本当に魅力で、もちろん優れたテクニックに裏打ちされているのですが、厭味がありません。

そのキャリアではウディ・ハーマンやアーティ・ショウのオーケストラ、あるいはスタン・ゲッツやレッド・ノーボのバンドでの活躍が特に有名ですが、残されたレコーディングを聴くかぎり、きわめてハズレの少ない演奏家だと思います。

ですから、前述したジム・ホール、ルネ・トーマス、パット・マルティーノ、そして息子のダグ・レイニーまで、多大な影響を受けたギタリストは多いのですが、何故か1960年代には些かレコーディングに恵まれていませんでした。

それが1970年代に入ると、次々に優れたリーダー盤を発表し、このアルバムもそのひとつです。

録音は1975年9月2日、メンバーはジミー・レイニー(g)、サム・ジョーンズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、けっこう気になるギタートリオです――

A-1 I Love You
 有名な歌物スタンダードですから、初っ端からジミー・レイニーの卓越した歌心が素敵ですが、テーマ部分から絡みまくるサム・ジョーンズの唯我独尊とシュワシュワ気持ちが良いビリー・ヒギンズのブラシにも耳を奪われます。
 しかしトリオの一体感は流石の響きで、左にベース、真ん中にギター、そして右にドラムスというステレオミックスの定位も快感という、リラックスした快演だと思います。
 
A-2 Body And Soul
 これも有名スタンダード曲が定石どおり、スローテンポで演じられますが、トリオの絡み具合が如何にも1970年代という雰囲気ですし、些か忙しないビリー・ヒギンズのブラシが、後々で効いてきます。
 つまり演奏が何時しかグイノリ気味に変化していくところから、もう絶妙のアドリブパートに変化しているんですねぇ♪ もちろんジミー・レイニーの弾く複雑なキメを多用したフレーズの連続は圧巻ですが、微妙にチューニングが狂っているようなチョーキングは、賛否両論かもしれません。

A-3 It Could Happen To You
 これも選曲が良いですねぇ~♪ もちろんジャズ者ならば、誰もが知っているメロディですから、楽しげにテーマを演じるトリオのノリの良さ、ちょっと皮肉っぽい解釈までもが感度良好♪
 そしてアドリブパートではビリー・ヒギンズの快適なドラミングに煽られて、ジミー・レイニーが流麗なフレーズを積み重ね、そこにサム・ジョーンズがツッコミを入れるという展開が、当時の4ビートジャズの典型になっていくのでした。
 ちょっと無機質なようで、実は豊かなメロディ感覚を発揮するジミー・レイニーの醍醐味が味わえます。

A-4 Suzanne
 ジミー・レイニーのオリジナル曲で、なんと多重録音を使い、ひとり二役で桃源郷を作り出しています。それは現代音楽のようでもあり、バルトークとか、そのあたりを意識した曲構成とギターソロだけで展開されるフリージャズのようでもあり、不思議な深みが個人的に気に入っています。

B-1 Get Out Of Town
 ボサノバアレンジで演じられるスタンダード曲ですが、ここでもジミー・レイニーのギターが多重録音されています。
 とはいえ、ビリー・ヒギンズのドラミングが正統派のキレ味なんで、特に気にならず、ジミー・レイニー特有のコード感やフレーズ構成の妙が楽しめるでしょう。

B-2 Therek Will Never Be Another You
 グッとアップテンポで演じられる御馴染みのスタンダード♪ というだけでファンには嬉しいところなんですが、バリバリと弾きまくるジミー・レイニーは、相等に新しいフレーズも繰り出しています。
 う~ん、これも1970年代ということなんでしょうか……?
 ちょっとラリー・コリエルとかジョン・マクラフリンのような部分さえ感じれます。ビリー・ヒギンズも過激なドラミングを聞かせてくれますし、もしかしたらベテランの意気地を聞かせようとしていたのかなぁ……。
 個人的には爽快な演奏に聞こえるのですが……。

B-3 The End Of A Love Affair
 これこそ、完全なるジミー・レイニーのギターソロ演奏です。
 もちろん良く知られたテーマメロディを巧みに変奏していくワザの冴えが印象的ですし、ちょっと???というコードも使っているようですが、その意味不明なところが妙に魅力的♪
 あぁ、酔わされますねぇ♪

B-4 Danceing In The Dark
 ビリー・ヒギンズが叩くラテンビートを上手く活用するジミー・レイニーの名人芸! コード弾き主体のテーマ部分から単音弾きが素晴らしいアドリブパートへの流れだけで、グッときます。
 もちろんそこは溌剌とした4ビートになりますから、サム・ジョーンズの気合が入ったウォーキング、刺激的で抑制されたビリー・ヒギンズの好サポートがあって、ジミー・レイニー本人も気分良さそうにギターを弾くという、幸せな演奏になっているのでした。

ということで、メンツの魅力としては期待するほどハードバップ色は強くありません。しかし力強くて要所を締めるリズム隊としてのドラムス&ベースの存在感ゆえに、ジミー・レイニーも何時に無く力んだ部分が楽しいところです。

また多重録音については賛否両論あろうかと思いますが、実際に聴いてみれば違和感はそれほど感じないでしょう。スタンダード曲主体のプログラムも嬉しいですね♪

ちなみにアナログ盤、CD共に収録曲順が異なるブツが数種類出回っているそうですから、要注意です。もちろんジャケット違いもあると思いますが、そこまでは確かめていませんので……。

コメント
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