OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

暴走コルトレーン

2008-01-08 17:15:38 | Weblog

買ってから1回しか楽しんでいないどころか、全く封も切っていないブツが、私の所には多々あります。こんなバチアタリは若い頃には想像も出来なかった悪行に他なりません。

深く反省するしかないのですが、実際には買ってしまうと安心して、時間が無い所為にしているのですから、タチが悪いです。

特にボックス物は鬼門というか、無駄遣いモードになりがちです。深く反省せねば……。

ということで本日は、そんな中から――

Miles Davis OLYMPIA mar. 20th, 1960 (Laserlight)
 

1960年春の欧州巡業から、パリで行われたライブの放送録音用音源をCD化した2枚組で、以前にも出ていたブツですが、音像がしっかりしたリマスターで、しかも不安定だったモノラルの定位がかなり改善されています。

またブラケースに入ったCDが2枚、さらに紙の箱に入れられているという仕様で、またまた購買意欲を刺激されました。

メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という御馴染みのクインテット♪ しかしこの日のバンドは野放図というか、かなりの暴れが聴かれます――

disc 1 / part 1 (画像左)

01 All Of You
 マイルス・デイビスが十八番のスタンダードで、入魂のミュートを聞かせてくれます♪ 思わせぶりな歌心の妙技が絶品ですねぇ。リズム隊も気合が入っていて、特に2分57秒目でのカッコ良すぎるキメは最高ですし、ジョン・コルトレーンのアドリブへ受け渡す直前にはジミー・コブが怒濤の裏技!
 そしてジョン・コルトレーンが物凄いです。完成の域に達したシーツ・オブ・サウンドを駆使して烈しく音符を羅列しながら、実は歌心も忘れていません。
 このあたりは鉄壁のリズム隊があればこそでしょう。クールで熱いグルーヴに乗っかって縦横無尽に暴れるジョン・コルトレーンは、モダンジャズの至福の一時を謳歌する歓喜の叫び! これに浸りきるのがジャズ者の宿命かもしれません。8分30秒を過ぎたあたりから突入する擬似フリーの部分には圧倒されます。
 そしてウイントン・ケリーの歯切れの良いピアノには、心底和みます。というか、ややアドリブ構成の詰めが甘いところもあるんですが、ビシッとキメるジミー・コブにビンビンビンのポール・チェンバースが居ますから、やっぱり楽しいですよ♪
 それにしても、なんと17分も演奏して、全然ダレないのですから、このバンドはやっぱり最高なのでした。

02 So What
 これもステージでは定番ながら、スタジオバージョンよりもテンポが上がっている分だけ、ますます自由度が高い演奏になっています。
 まずポール・チェンバースがリードするテーマ部分の勢いが、そのまんま、マイルス・デイビスのアドリブに繋がっていく快感は、不滅の良さがあります。
 しかし肝心の親分が、些かトホホのスタート……。まあ、そこから盛り返していくところが、ジャズの楽しみでもあるんですが、正直、マイルス・デイビスもロクなフレーズを吹いていませんねぇ。それでもカッコイイというのが、この人の真骨頂なんでしょうが……。
 するとジョン・コルトレーン&リズム隊が怒りの反逆というか、はっきり言うと「Impressions」状態! 後のエルビン・ジョーンズが入った演奏に耳が馴染んでいると、やや違和感もあるのですが、ジミー・コブを中心としてクールなビートを出してくるこのリズム隊があってこその味わい、そしてスリルが強烈です。というか、この違和感の中で暴走するジョン・コルトレーンは、桁外れに過激だと思います。あぁ、嵐のようなの音符過多症候群!
 もちろん観客は大拍手! その中でアドリブを引き継ぐウイントン・ケリーも強烈にスイングし、例の飛跳ねフレーズにはジミー・コブのリムショットがジャスミートですから、たまりません。絶対に揺るがないポール・チェンバースの4ビートも最高です。

03 On Green Dolphin Street
 マイルス・デイビスが取上げてから有名になったといって過言ではないスタンダード曲ですから、絶妙なウイントン・ケリーのイントロからポール・チェンバースのアルコ弾きにリードされて、あのミュートトランペットが出た瞬間、グッと気分が高揚します。
 タイトなジミー・コブのブラシも素晴らしく、スタジオバージョンよりもテンポが速くなっていますが、かえってそれが快感♪ マイルス・デイビスも相等にツッコミの烈しいフレーズを吹いています。
 そしてもちろん、ジョン・コルトレーンは疾走フレーズの連発連打で大暴れ! 激烈な痙攣フレーズまでも飛び出して、もはやリズム隊もお手上げ状態ながら、ちゃ~んと、今、テーマメロディのどこを吹いているか判るのですから、流石です。
 するとウイントン・ケリーが待ってましたとばかりに大ハッスル♪ メキシコのプロレスのようにシャープで楽しく、飛跳ねまくったピアノには歓喜悶絶させられますよ。ちなみにこの部分では音の定位が左右に揺れるのですが、今回のブツではかなり改善されていて、ホッとします。

disc 2 / part 2 (画像右)

01 Walkin'
 大歓声の中から、あのテーマが鳴り出せば、あたりはすっかりハードバップ♪ マイルス・デイビスは何時もと同じ、お約束のフレーズしか吹かないのも潔く、不安定な音色も許してしまうのです。
 もちろんクールなグルーヴが素晴らしいリズム隊は驚異的で、特にジミー・コブのビシッとしたドラミングが痛快ですねぇ~♪ マイルス・デイビスとの相性もバッチリだと思います。
 そしてジョン・コルトレーンは些かスケール練習の様で、手がつけられないほどの大暴走なんですが、これが如何にも当時のジャズ界最先端という良い感じ♪ 烈しい痙攣節の連発に、ウイントン・ケリーなんか、途中で伴奏を投げ出してしまったんでしょうか……。
 それでも途中で必死のカウンターリフをぶっつけたり、アドリブパートでは十八番の展開に持っていく奮闘ぶりで、演奏を軌道修正しています。
 ただしジョン・コルトレーンのアドリブの最中に湧き上がる大歓声が、あまりにも強烈な印象なので、虚しい抵抗という気も……。う~ん、全然、ブルースっていう感じがしないです。

02 Bye Bye Blackbird
 またまたマイルス・デイビスのミュートが冴える歌物演奏ですから、会場の中には忽ち和みが広がり、そんな拍手がスピーカーから流れてくれば、気分は最高♪
 ただしマイルス・デイビスはコードを外したり、些か荒っぽい雰囲気です。それでも抜群のリズム隊が最高の伴奏で、モダンジャズの楽しさが横溢するんですねぇ。
 またジョン・コルトレーンも、あんまり尖がらずにハードバップの基本を聞かせ、逆に熱くなり過ぎたリズム隊が危なくなっているところが、ジャズの面白さでしょうか。すると、一瞬ですが、バンドがフリーの領域に踏み込みそうになる場面まで……。
 後半になって疲れが感じられるリズム隊もムベなるかなです。

03 Round About Midnight
 お待たせしました、やはりこれが出ないと収まらないでしょうねぇ。もちろんマイルス・デイビスは繊細で豪胆、ミステリアスなミュートの妙技を聞かせてくれます♪
 そして、例の強烈なリフ! ジョン・コルトレーンのアドリブが始っているのに、遠慮しないで打ちまくりですから、全く危険きわまりないです。
 リズム隊のビートも一段とアクセントが強くなっていきますが、意外にもジョン・コルトレーンが冷静なので肩透かし……。演奏も5分ほどで終了するのでした。

04 Oleo
 ところが続くこの演奏が力いっぱい凄いです!
 まずマイルス・デイビスがミュートで鋭く突進すれば、ジミー・コブはシャープなブラシで応戦し、ポール・チェンバースのエグイ4ビートが快感!
 そしてジョン・コルトレーンがアドリブに入るところでは、マイルス・デイビスもグルになって不気味な音を連続させるんですねぇ。なんとも悪い予感に満たされるんですが、案の定、その後はシーツ・オブ・サウンドの地獄巡りです。うっ、ジャイアント・ステップス!?
 と思ったところで、親分がミュートで横槍を入れ、息の合ったラストテーマが痛快です。

05 The Theme
 前曲ラストから、そのまんま始るのが御馴染みのテーマというわけでした。これがハードバップです♪

ということで、とにかく全篇、ジョン・コルトレーンが凄すぎます! リズム隊がクールなセンスを全開させているだけに、余計に毒々しさが表出した感じでしょうか。烈しい痙攣フレーズまでも繰り出してフリーに突進する瞬間まであります。しかし観客が大興奮ですから、他のバンドメンバーも諦め顔……。

そんな野放図な演奏が、ここにはたっぷりと記録されています。録音状態はモノラルですが、普通に聴けるほどに良いので、覚悟を決めて楽しみましょうね。

コメント
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