ようやく仕事地獄から脱出の兆しが見えてきました。
しかし、寒い……。
ということで本日は、心温まる1枚を――
■Piano Interpretations By Bud Powell (Norgran / Verve)
一般的にヴァーヴ吹き込みのバド・パウエルは良くないというのが、定説です。確かに1950年代中頃のバド・パウエルは好不調がはっきりした演奏が多く、実際、ヴァーヴから発売された作品の中にはボロボロになっているトラックも散見出来ます。
しかし良いというか、この時期特有の味わい深い演奏は一部のジャズ者にとっては捨てがたい魅力があるはずで、ジャズ喫茶では滅多に鳴ることもないヴァーヴ期のアルバムが、自宅では愛聴されているに違いないと、私は思っているのですが……。
さて、このアルバムはジャケットデザインも人気の秘密ですが、演奏が当時のレギュラートリオだったこともあって、なかなか纏まりがしっかりしています。
録音は1955年4月25日、メンバーはバド・パウエル(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、アート・テイラー(ds) です――
A-1 Concepition
A-2 East Of The Sun
A-3 Heart And Soul
A-4 Willow Groove
A-5 Crazy Rhythm
B-1 Willow Weep For Me
B-2 Bean And The Boys
B-3 Lady Byrd
B-4 Stairway To The Stars
――という演目は、ジャズファンには御馴染みのスタンダードとモダンジャス系オリジナルが主体ですが、バド・パウエルのオリジナル曲「Willow Groove」が、なんともこたえられない魅力です。アート・テイラーのラテンリズムが瞬時に4ビートへ変化するイントロ~テーマのスリル♪ ダミ声と共にスイングしまくるバド・パウエルのノリの良さ♪ ブリブリに場を盛り上げていくジョージ・デュヴィヴィエのベースも良い感じです。
同じくアップテンポの「Bean And The Boys」や「Lady Byrd」といったビバップがモロ出しになった演奏も、ちょっと余裕の解釈ですし、ド頭の「Concepition」なんかトリオ全員が力んだ雰囲気で、好感が持てます。
またスローな「Willow Weep For Me」は、この曲が特有のブルースっぽい表現が、ここではバド・パウエルだけの哀感、あるいは「情けなさ」みたいな雰囲気に聞こえてしまいます。
このあたりは、この天才ピアニストの生涯を知っているからかもしれませんが、リアルタイムでは、どうだったでしょう……。う~ん、実に良い演奏だと私は思います。
それとアート・テイラーのシンバルがガンガンギンギンに録音されていますし、重くキマるスネアやタムもジャズの魅力と楽しさを伝えてくれます。これはブルーノートやプレスティッジの録音では、決して味わえないアート・テイラーの魅力ですねっ♪
ということで、今日のような日には、突然に聴きたくなるアルバムなのでした。