OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これに尽きるディック・ジョンソン

2009-04-09 10:54:08 | Jazz

Music For Swinging Moderns / Dick Johnson (EmArcy)

白人アルトサックス奏者の名手といえばリー・コニッツ、アート・ペッパー、フィル・ウッズあたりが即座に挙がるところでしょう。そして別格がポール・デスモンドでしょうか。

バリバリのチャーリー・パーカー信奉者というフィル・ウッズを除いては、3人ともが如何にも白人らしいスマートなフィーリング、流麗なフレーズ展開と歌心の妙が実にクールで耽美秀麗な名人でしたから、その味わいに深くシビレるサイケおやじにとって、同じスタイルのプレイヤーを探究してしまうのは、ご理解願いたいところです。

で、そんな精進の中で巡り合ったのが、本日の主役たるディック・ジョンソンです。

この人はどうやらビックバンドで活躍していたマルチリード奏者らくし、クラリネットも巧みですが、やはり本領はクールにして甘美、そしてスイングしまくるアルトサックスに絶大な魅力を感じてしまいます。

ポール・デスモンド系の音色でリー・コニッツとアート・ペッパーをミックスさせたようなアドリブを演じられたら最後、完全に虜のアルバムが本日ご紹介の1枚というわけです。

録音は1956年2月29日&3月27日、メンバーはディック・ジョンソン(as)、ビル・ハバーマン(p)、チャック・セイゲル(b)、ボブ・マッキー(ds)、そして3月のセッションではデイヴ・ポスコンガ(b) が交代参加していますが、いずれもほとんど無名に近い面々ながら、演奏はバンド全員の意思統一も鮮やかな素晴らしさです。

 A-1 The Belle Of The Ball (1956年3月27日録音)
 A-2 The Lady Is A Tramp (1956年2月29日録音)
 A-3 Honey Bun (1956年3月27日録音)
 A-4 Why Was I Born (1956年3月27日録音)
 A-5 Poinceana (1956年3月27日録音)
 B-1 The Things We Did Last Summer (1956年2月29日録音)
 B-2 Like Someone In Love (1956年3月27日録音)
 B-3 Stars Fell On Alabama (1956年3月27日録音)
 B-4 You've Changed (1956年3月27日録音)

上記演目は良く知られたスタンダード曲も嬉しいかぎりで、結論からいうとA面がアップテンポの爽快サイド、そしてB面がしっとり愁いのスローサイドという感じでしょうか。もちろんディック・ジョンソンは、既に述べたようなスマートな歌心を全開させた名演を披露し、バンドのノリも最高にスイングしまくっています。

痛快なアップテンポでドライヴし、流麗なフレーズ展開と甘美なアルトサックスの音色が素晴らしい「The Belle Of The Ball」では、ジョン・ウィリアムスも顔負けの弾みまくったピアノを聞かせてくれるビル・ハバーマンも熱演で、これ1曲だけでツカミはOK! 後半のバロック風室内楽というアレンジも気が利いています。

そうした素晴らしさは続く「The Lady Is A Tramp」のウキウキした演奏でも存分に楽しめ、特にテーマのサビで聞かせるラテンビートのグルーヴは最高に白人っぽくてお洒落♪♪~♪ もろちんディック・ジョンソンの歌心も満点です。

ということは、リズム隊のスマートな熱演も言わずもがな、「Honey Bun」での楽しい雰囲気やビシッとした4ビートを堪能させてくれる「Why Was I Born」、さらに浮かれたラテンビートが疾走感溢れる4ビートへと一瞬にして転換する「Poinceana」のスピード感!

それがあってこそ、ディック・ジョンソンのアルトサックスが冴えわたりのフレーズを連発出来ると思うほどです。実際、そのアドリブやメロディフェイクにはリー・コニッツとアート・ペッパーの「イイトコ取り」が満載とはいえ、それは物真似というよりは、実に気持良い時間が楽しめるのです。

そしてB面は既に述べたようにスロバラの桃源郷♪♪~♪

まずは「The Things We Did Last Summer」での、せつないメロディフェイクに感涙しますよ。ポール・デスモンド直系の音色もイヤミがありませんし、それでアート・ペッパー流儀のフレーズを演じられたら、しんぼうたまらん状態は必至でしょう♪♪~♪

さらに優しさがジワジワと広がっていく「Like Someone In Love」、クールな忍び泣きという「Stars Fell On Alabama」、悔恨の情が滲む「You've Changed」という抜群の表現がダイレクトに歌心へと転化した3連発が続きますから、あぁ、何時までも聴いていたほどです。

録音も、このレーベル特有の明るくてパンチの効いた音作りですし、要所で上手く使われているエコーも素晴らしいスパイスだと思います。

ちなみにディック・ジョンソンは、これがおそらく初リーダー盤でしょう。そしてこの後にはリバーサイドへもリーダー作を残していますが、そちらは何故か黒人色が強くなったスタイルなのが、個人的にはちょっと……。

ですから私にとって最高のディック・ジョンソンは、このアルバムに尽きています。そして春の陽気な日々にはジャストミートの演奏集として、ぜひとも皆様にもお楽しみ願いたいと思います。

所有はもちろん、1980年代後半に出た日本盤アナログLPですが、これも何時かはオリジナルが欲しいもんです。

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