■John Barleycorn Must Die / Traffic (Island)
トラフィックはブリティッシュロックの歴史を作った名バンドのひとつですが、ご存じのようにデイヴ・メイソン(g,vo) とジム・キャパルディ(ds,vo) が組んでいたザ・ヘリオンズという売れないグループに、当時は既にスタアになっていたスティーヴ・ウインウッドが参加して作られたという経緯は、後になって凄腕プロデューサーのクリス・ブラックウェルが目論んだ真相として、明らかにされています。
それゆえトラフィックというバンドは離散集合の繰り返しが、1967年のデビュー当時からの繰り返され、特にデイヴ・メイソンに至っては、素晴らしい曲と演奏を残している反面、アルバム単位では全てに参加していないという真相が、さもありなんです。
今となっては、その大きな原因がスティーヴ・ウインウッドのワンマン主義というか、ピアノもオルガンもギターもベースもボーカルさえも、全部自分で演じていたというところに、他のメンバーの反発がミエミエでしょう。
しかしスティーヴ・ウインウッドの才能は圧倒的!
全く、痛し痒しという結果がトラフィックの魅力でもあったわけですが、そこに居て、バンドをしっかりと纏めていたのが、クリス・ウッド(sax,fl) ではなかっでしょうか?
さて、このアルバムはスティーヴ・ウインウッドがトラフィックを一端は解散させ、例のスーパーバンドだったブラインド・フェィスの結成と分裂を経た後、再びトラフィックとして発表した傑作盤です。
録音は1970年の早春とされ、当初はスティーブ・ウインウッド(vo,p,org,g,etc) のソロアルバムとなるはずでしたが、セッションに参加したジム・キャパルディ(ds,per.vo) &クリス・ウッド(sax,key,fl,vo) という元トラフィック勢と意気投合した結果、トラフィックの再結成となったようです。
A-1 Glad
何とも印象的なピアノイントロのキメフレーズからノリノリのテーマ演奏が流れてくると、あぁ、この雰囲気は1970年代の日活ロマンポルノのサントラ音源、そのまんま!
という、実に魅惑的なインスト曲です。
しかも驚くのは、メンバー3人だけの演奏なので、ベースやピアノ、キーボードは当然ながらスティーヴ・ウインウッドが何役もこなした多重録音であるにもかかわらず、極めて自然体のグルーヴが強烈無比! 重心の低いエレキベースの蠢きも、全く私の好むところですし、ヘヴィなビートと転がるようなドライヴ感は、明らかにニューオリンズ系R&Bの影響が大きいと感じます。
その中で時にはワウワウ系の電気サックスまで聴かせるクリス・ウッドは、イノセントなジャズファンからすれば物足りないところもありましょうが、如何にも英国産ロックジャズと多国籍フィーリングが好ましく混ぜ合わされたスタイルとして、これも私は大好き♪♪~♪
そして訪れるクライマックスは、スティーヴ・ウインウッドが弾く、まさにヨーロッパ教会音楽を強く連想させられるオルガンとピアノの様式美です。あぁ、この美しき流れの心地良さ♪♪~♪ その静謐な盛り上がりには、感動するしかありません。
A-2 Freedom Rider
前曲からいきなり繋がって始まるのが、この熱いボーカル曲! そこに絡んでくるクリス・ウッドのフルートも最高にビューティフルです。
プログレもソウルもジャズロックもゴッタ煮とした曲調は、これぞトラフィックなんですが、このあたりは後のスティーリー・ダンにもパクられたキメのリフがあったり、演奏パートの熱気は唯一無二の素晴らしさとして、これも後々のプログレバンドに大きな影響を与えていると思います。
もちろん蠢きまくるエレキベースの快感は言わずもがな、アドリブパートでのフルートの響きを聴いていると、これまた1970年代の我が国アクション&エロ映画のサントラ音源がモロ♪♪~♪ 唸り続けるオルガンも最高ですから、全くサイケおやじには御用達の演奏として、永遠に不滅です。
強烈なクライマックスの盛り上がりから、すぅぅ~とクールダウンしていくエンディングも素敵の決定版ですよ。
A-3 Empty Page
英国メロディと黒人R&Bが巧みにミックスされた曲だと思いますが、その悪びれない演奏スタイルには好感が持てます。なんかブラインド・フェィスが演じてもOKかもしれませんね。
しかしここでもエレピやオルガンが主体ですから、エレキギターが出ないロックの典型として、これも立派だと思いますし、エレキベースの大活躍はニクイほど!
それとスティーヴ・ウインウッドのボーカルは本当に真っ黒で、流石は16歳の頃から天才少年として人気を確立していたのもムベなるかなです。
B-1 Stranger To Himself
英国トラッドとスワンプロックの素敵な結婚という感じでしょうか、生ギターの凝ったキメのリフとかファンキーに躍動するリズムとビート、酔いどれてヤケッパチ気味のコーラスや暑苦しいギターソロあたりを聴いていると、気分はまさに1970年代ロックのど真ん中!
その中にあって、スティーヴ・ウインウッドの歌唱は本当にツボを抑えたものでしょうねぇ。なんか出来すぎが逆に物足りないという……。
B-2 John Barleycorn
そして続くのが、このアコースティックで素朴なメロディのアルバムタイトル曲♪♪~♪ 英国トラッドをメンバーがアレンジしたそうですけど、生ギターの素敵な味わいとクリス・ウッドのフルートが、なんとも魅力的です。
そしてスティーヴ・ウインウッドのボーカルが原曲のメロディを大切にした歌い方というか、その気負いの無い説得力が最高じゃないでしょうか。
B-3 Every Mothers Son
比較的自然主義の曲が続いた後に置かれた大団円が、この名曲にして名演です。
熱いボーカルが冴えわたり、オルガンが唸り、ギターが叫ぶ展開の中で進む演奏は、メインの泣きメロが絶妙のスパイスとなって、グングンと盛り上がっていくのです。あぁ、聴いているだけで、力が漲ってきますよっ!
そして中盤からのオルガンソロ、それを支えるジム・キャパルディのドラミングにもシンプルな魅力がありますから、重層的にダビングされたピアノやギターが尚更に演奏を熱くしているようです。
最後のゴスペル大会も美しき「お約束」だと思います。
ということで、ロックジャズなA面、英国トラッドのゴスペル的展開というB面、と味わいが少し別れていますが、どちらもトラフィックというゴッタ煮バンドでしか作り出しえない演奏が楽しめます。
そこにはスティーヴ・ウインウッドという天才的なボーカリストにしてマルチプレイヤーの存在が、もちろん強いわけですが、A面でのクリス・ウッドの存在感も侮れませんし、作曲面でも貢献しているジム・キャバルディのドラミングが、けっこう良い味だと思います。
既に述べたように、A面はギター抜きが顕著なトリオということで、発表当時は違和感が確かにあったようです。実際、リアルタイムで聴いた私にしても、完全に??? なにしろ当時はエマーソン・レイク&パーマーもブレイク前でしたし、英国トラッドブームも我が国では無縁でした。もちろんフュージョンなんて分野もありませんでしたから、ジャズロックとしても中途半端だった感は否めません。
しかし虚心坦懐に聴いていると、とても心地良く、少しずつ私の感性にジャストミートしていったのです。
ちなみにその頃、これを聴いていたのは、某国営FMラジオ局からのエアチェックで、当時はアルバムを丸ごと流す豪気な番組があったのですよっ! ありがたい思い出です♪♪~♪
そしてアルバムを買ってからも、現在まで愛聴している1枚となりました。う~ん、やっぱり良いです♪♪~♪ 元祖ジャムバンド!?