■Thelonious Monk At Raris, 1969 (Jazz Vip = DVD)
セロニアス・モンクの映像は相当に残されていて、その復刻も着々と進んでいる今日、またまた嬉しい発掘が本日ご紹介のDVDです。
なんとフィリー・ジョー・ジョーンズとの共演!?!
しかも1969年!
もう、この一事だけで、即ゲットさせられました。
ただし結論から言うと、お目当ての共演は2曲だけなんですが、親分のセロニアス・モンク以下、バンドメンバーのテンションもなかなか高く、全篇約81分がきっちりと楽しめます♪♪~♪
☆Thelonious Monk Quartet At Paris, 1969
収録は1969年12月15日、パリはサル・プレイエルでのライプから、メンバーはセロニアス・モンク(p)、チャーリー・ラウズ(ts)、Nate Hygelund(b)、パリス・ライト(ds)、そして既に述べたように、2曲だけですが、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) が交代参加しています。
01 I Mean You
02 Ruby, My Dear
03 Straight, No Chaser
まずは楽屋裏の風景から映し出されるそこには、既にフィリー・ジョーや多分、ケニー・クラークと思われる旧知の面々が居並び、セロニアス・モンクもグラスを片手に上機嫌♪♪~♪ それがこの日の演奏の好調さに繋がったのかもしれません。
ちなみに画質は「-A」程度のモノクロですが、時代を考慮すれば何の問題も無くご覧になれるでしょう。そしてバックには観客の拍手やチューニングの音声が重ねられ、いよいよステージに登場するセロニアス・モンクが弾き始めるのは十八番の「I Mean You」なんですが、このあたりの編集とカメラワークの良さも秀逸だと思います。もちろんセロニアス・モンクの手と指の動きもバッチリ映し出されていますから、あの神秘的で怖いコードワークの一端がっ!
肝心の演奏そのものは、チャーリー・ラウズが余裕と貫録の存在感! 正直言えば、何時も同じようなフレーズばっかり吹いている気も致しますが、このライプではベースとドラムスが新顔の所為でしょうか、イヤミにならない程度の緊張感が結果オーライだと思います。
気になる、その新顔では、ベースの Nate Hygelund が白人ながら、豪快にして繊細なベースワークが素晴らしく、またパリス・ライトのドラミングは如何にも黒人らしいビート感が最高! 小型アート・テイラーというところかもしれません。
04 Nutty
05 Blue Monk
ここでいよいよフィリー・ジョーが登場♪♪~♪ もちろん観客からは拍手喝采です。
しかも始まるのが人気曲の「Nutty」ですからねぇ~♪ その楽しいリズムに彩られた親しみ易いテーマメロディが出た瞬間から、フィリー・ジョーのスティックが躍動します。
チャーリー・ラウズも何時も以上に唯我独尊のアドリブを聞かせてくれますし、フィリー・ジョーが親分モンクの様子を確かめならが敲いているのも、映像作品ならではの発見というか、なかなか興味深々でした。もちろん演奏の充実度は最高で、特にピアノトリオとなってからのパートは、Nate Hygelund の頑張りもあって、素晴らしい限り!
そしてついに炸裂するフィリー・ジョーのドラムソロは、あの絶妙のクッションと弾けるビートが一体化した強烈な瞬間の連続で、全く目が離せません! セロニアス・モンクもドラムセットの近くまで寄って、じっくりと見ていますが、フィリー・ジョーは例よって半眼状態で自分を貫き、十八番のリックを敲きまくりですよ。
確証は無いのですが、この2人の共演セッションは極めて珍しいのではないでしょうか。それを映像で楽しめるのですから、長生きはするもんです。
またフィリー・ジョーの動く姿にしても、最近発掘されたビル・エバンスとの1978年のライプがあるぐらいですからねぇ。その約9年前というところにも、嬉しいものがあります。当然、その場の観客からも大拍手!
しかし続く「Blue Monk」は本当に短い演奏で、もしかしたら編集してあるのかもしれませんが、バンドテーマみたいな扱いが残念……。
06 Bright Mississippi
07 Light Blue
08 Epistrophy
09 Don't Blame Me
10 3 O'clock In The Morning
11 Interview With Thelonious Monk
12 Crepuscule With Nellie
ここからは後半というか、再びレギュラーカルテットに戻っての熱演が楽しめます。特にドラマーのパリス・ライトはフィリー・ジョーへの対抗意識が良い方向へ働いたのでしょう。その溌剌として新鮮なドラミンクは感度良好!
セロニアス・モンクにしても、この頃にはライプ活動が散発的となっていた時期とはいえ、既に述べたように、毎度お馴染みの演目をやっても、そのテンションの高さはモダンジャズ至高の輝きです。つまりマンネリのようでいて、緊張感とスリルに溢れたセロニアス・モンクの音楽だけが表現しうる世界は不滅!
チャーリー・ラウズもセロニアス・モンクとの共演は、ほとんど末期の頃ですから、何時もながらのパターンとはいえ、それは決して「おざなり」のプレイではないと思います。なんというか、セロニアス・モンクの世界の中では、ひとつの完成形を演じているんじゃないでしょうか。それがこの時期でさえも、変りなかったのは、凄いと思います。
☆Thelonious Monk Solo Pian, 1969
こちらはボーナストラックというか、同時期の欧州巡業から11月6日、ベルリンでのソロピアノ演奏を収録しています。ちなみに映像はカラーで、画質は「A」クラスだと思いますが、如何にもこの時代ならではという「光と影」の照明とカメラワークが個人的には気に入っています。
13 Sophisticated Lady
14 Caravan
15 Solitude
上記演目はデューク・エリントンが書いた名曲集という趣ですから、セロニアス・モンクにとっても気合いが入ったのでしょうか、こちらもなかなかにテンションの高い演奏となっています。まさに孤高の世界!
しかし同時に不思議な和みも一緒に感じられるのが、この時期のセロニアス・モンクならではのソロピアノ♪♪~♪ そこには決して「円熟」なんていう言葉だけでは表現しきれない、「何か」が確かにあると思います。このDVDでは他にも前パートにおける「3 O'clock In The Morning」や「Crepuscule With Nellie」での絶妙の味わいとか、なかなか素敵ですよ。
ということで、セロニアス・モンクの発掘物というと、何時も同じような演目ばかりという事実は否定出来ませんが、その何れもが、実は常に平均点以上のモダンジャズになっているという真実はひとつです。それは実質的に晩年になっていた、このパリでのライプでも明らかだと思います。
そして、もうひとつのウリであるフィリー・ジョーとの共演が映像で楽しめるのは、最高に嬉しいプレゼントでした。
音質は当然、モノラルですが、全く問題無いレベルですし、個人的にはちょっとセロニアス・モンクを再発見したような気分になっています。