■Pops In Japan No,1 & 2 + 7 / The Ventures (東芝=CD)
人気グループの過去音源や人気盤の復刻に伴い、特にCD時代になって嬉しいプレゼントだったのが、所謂ボーナストラックの存在だと思います。そして本日ご紹介のCDについても、発売されたのは既に10年ほど前ですが、サイケおやじは全く、それに魅了されてゲットしたもののひとつです。
内容はご存じ、エレキインストでは大御所のベンチャーズが、その全盛期にタイトルどおり、我国の歌謡ポップスを演じてくれたベストセラー盤の復刻なんですが、既に述べたようにオマケが侮れません。
☆Pops In Japan
01 ブルー・シャトウ (A-1)
02 恋のハレルヤ (A-2)
03 涙のギター (A-3)
04 別れた人と (A-4)
05 東京ナイト (A-5)
06 夕陽が沈む (A-6)
07 北国の青い空 (B-1)
08 この手のひらに愛を (B-2)
09 霧雨の歩道 (B-3)
10 横浜の灯は遠く (B-4)
11 ブラック・サンド・ビーチ (B-5)
12 銀色の道 (B-6)
以上は昭和42(1967)年6月に発売された、日本制作による名演集です。
もちろん中身は当時のGSやフォークソングのヒット曲がメインであり、また同時に所謂Jポップのルーツにもあたる、なかなかお洒落なメロディばかりですが、加えてベンチャーズが特に書いてくれた所謂「ペンチャーズ歌謡」の自演もあるという大サービス♪♪~♪
言うまでもなくエレキインストを生業にしているベンチャーズは、名曲ヒットのカパー演奏が得意技であり、ギターアンサンブルと最高のロックビートを上手く融合させたアレンジ、そして痛快なバンドスタイルは他を寄せつけない唯一無二の魅力として、忽ち世界中を熱狂をさせましたが、特に我国では社会現象となるほどの影響力がありました。
ですから、それがGSブームに直結したことを思えば、ここでブルーコメッツの「ブルー・シャトウ」や黛ジュンの「恋のハレルヤ」をカパーしているのは至極当然です。そしてこのアルバムとほとんど同時に発売され、奥村チヨの歌で大ヒットした「北国の青い空」、そのシングル盤B面に収録され、後には山内賢&和泉雅子のデュエットでも歌われた「東京ナイト」の本家バージョンが演じられているのも、また必然でした。
さらにお目当てなのが、寺内タケシが十八番の持ちネタ大ヒット「涙のギター」のベンチャーズバージョン! 加えて加山雄三がベンチャーズとの共演を想定して書いたという「ブラック・サンド・ビーチ」も、オリジナルよりはエグイ味わいの名演として楽しめますよ。サイド&リズムギターが、実に素晴らしいんですねぇ~♪
現実的なベンチャーズの人気は、本国アメリカでは下降線をたどっていた時期ですが、ドン・ウィルソン(g)、ボブ・ボーグル(b,g)、ノーキー・エドワーズ(g,b)、そしてメル・テイラー(ds) という最強の4人組が演じてくれる「ニッポンのポップス」は、やはり一味違います! ここでは適宜、キーボード等々も加えたアレンジが妙に媚びることなく、これまでと同様のベンチャーズサウンドを構築しているのも嬉しいかぎり♪♪~♪
ただし、リアルタイムの当時から言われていたことですが、最先端のロックファンからは軽視されてしかるべき企画という側面は確かにあると思います。しかし、実際に大ベストセラーとして今日まで我国で親しまれ、海外のファンからも熱い支持を得ていることは、決して忘れてはならないと思います。
☆Pops In Japan No.2
13 いとしのマックス (A-1)
14 小指の思い出 (A-2)
15 霧のかなたに (A-3)
16 恋 (A-4)
17 マリアの泉 (A-5)
18 あの人 (A-6)
19 真っ赤な太陽 (B-1)
20 青空のある限り (B-2)
21 輝く星 (B-3)
22 風が泣いている (B-4)
23 北国の二人 (B-5)
24 ボンベイ・ダック (B-6)
前作の大好評に応えて翌年に制作・発売された「第二集」は、またまた魅力あるヒット曲ばかり♪♪~♪ 些かの試行錯誤もあった前セッションのアレンジから、グッとキマった演奏の流れは冴えわたりです。
特に荒木一郎が畢生のエレキ歌謡としてヒットさせた「いとしのマックス」は、個人的にベンチャーズの名演百選へ入れたいほど大好きですし、気になる「真っ赤な太陽」もストレートな味わいが高得点♪♪~♪
また随所に演目の「元ネタばらし」ともいうべきアレンジやオカズを配置しているあたりには、思わずニヤリ♪♪~♪ あえて、いちいち書きませんが、これは本当に楽しいですよ。
ちなみに「ボンベイ・ダック」はメイド・イン・ジャパンのインスト傑作曲で、書いたのはジャズ評論家の本多俊夫ですが、イギリスのシャドウズを筆頭に世界各国のインストグループから愛好されています。
それとワイルドワンズのヒット曲から「青空のある限り」と、そのシングル盤のB面だった「あの人」が演じられているあたりは、やはり東芝なんでしょうかねぇ。いやはやなんともです。
☆ボーナストラック
25 上を向いて歩こう
26 二人の銀座
27 君といつまでも
28 夜空の星
29 夕陽は赤く
30 京都慕情
31 君といつまでも (コーラス入りバージョン)
以上はシングル盤オンリーの発売やオムニバス盤に収録されていたレアトラックですが、なんといってもサイケおやじのお目当ては、オーラスの「君といつまでも (コーラス入りバージョン)」で、ほとんど、これ1曲のために、このCDを買ったといって過言ではありません。基本的にはトラック「27」と極めて近いテイクなんですが、ミックスの雰囲気も含めて、なかなかハートウォームで、しかも「せつない」度数がアップしている隠れ名演だと思います。
ということで、私の拙い文章が虚しくなるほど素敵なメロディが溢れている名演ばかりです。ただしCD化のリマスターの所為でしょうか、音が良くなりすぎて、些かの隙間が感じられるミックスが、個人的には違和感……。と言うよりも、アナログ盤に親しみすぎた贅沢な弊害でしょうね。
そしてこの大ヒットアルバムを出し、また歌謡曲ヒットにも手を貸したベンチャーズは以降、同一路線を大切にした第二の全盛期を迎えています。ただしそこにはノーキー・エドワーズが脱退するという現実もありますから、最強メンバー末期の演奏が楽しめるという意味でも貴重だと思います。
昭和の我国喫茶店には、この2枚のアルバムをBGMにしているところが普通に存在していました。やはり日本の文化史においてもベンチャーズは偉大です。しかし何よりも、グッと惹きつけられる音楽を気負わずにやってくれたことに、嬉しくなるばかりです。