■ギターを持った渡り鳥 / 小林旭 (コロムビアレコード)
ギタリストはカッコイイ!
これが常識になったのは、ロックンロールがロックへと進化した1960年代に入り、そのバンドでのギタリストの存在でしょう。時にはボーカリストよりもカッコイイですし、演奏しながら歌うというバディ・ホリーという大スタアも既に登場していたとはいえ、やはりギターを持っている姿、そのものがカッコイイという真実も確かにあると思います。
それを直截的に証明してくれたのが、我国では小林旭でしょう。
本日ご紹介のシングル曲は、自身が主演して大ヒットとなった昭和34(1959)年の日活作品「ギターを持った渡り鳥」の主題歌として、全く特別な名曲名唱ですが、何よりも「ギターを持った」という部分が映像的にもカッコイイ!
しかも「渡り鳥」と称される、つまりは流れ者という不良性が、イカシているんですねぇ。
物語は流れ者とはいえ、一応は流しの歌手で稼いでいる小林旭が、気の向くままにやって来た地方都市で、悪い奴らに苛められている人達を助けるというヤクザな勧善懲悪を描いていますが、その演出スタイルの基本は西部劇! 後に「無国籍」と称された日活お得意のアクション物ですから、必然的に主題歌も、そのムードが色濃いメロディになっています。
そして哀愁と一抹の虚しさを歌い込んだ歌詞が、これまた小林旭のハイトーンボイスで表現される時、そこにはスマートで気分はロンリーな、所謂ハードボイルドな風情が横溢するんですねぇ~~~♪
もちろん映画は小林旭の代表作となるほどのヒットを記録し、以降はシリーズ化される人気を呼びますが、それもこれも、この主題歌の存在効果が絶大だったゆえの事じゃないか? と私は思います。
ちなみに歌う映画スタアといえば、些か逆説的なところもありますが、アメリカのエルビス・プレスリーが代表的なところで、なんと1964年に公開された主演映画「青春カーニバル」では、ギターを担いでバイクで放浪するエルビス・プレスリーがドサ回りのサーカス一座を助けるという物語が展開され、まさに小林旭っぽいスタイルを披露しています。当然ながら劇中では歌いまくっているんですが、本家の小林旭は日本国内を馬に乗って放浪するんですよねぇ~♪
そんなこんなから、子供時代の私は、エルビス・プレスリーって小林旭のようなスタアかと、本気で思っていたほどです。
それと昭和50(1975)年に公開された東映作品「新仁義なき戦い・組長の首」では、劇中で「こばやしあきら」を名乗る三上寛が、この「ギターを持った渡り鳥」をシミジミと歌っていましたが、そこはボロい安宿に背景が夕陽という、なかなか味わい深い演出でした。
ということで、やはり映画は、こうでなくっちゃ~! という演出にはジャストミートの歌なんですよ、これは♪♪~♪
後年、「エレキは不良」なんて戯言が実しやかに喧伝された昭和の日本のある時期も懐かしいですが、その本元は案外、不良な小林旭がギターを持っていた、このあたりの作品から来ているのかもしれませんね。もちろん持っているのはアコギなんですが……。
ズパリ、カッコイイ奴は妬まれる!?!
この世には、女にモテたくて、ギターの練習をする奴が大勢出現し、そのうちの何人かは歴史を作ってきた事実は間違いないところですが、しかし誰もが小林旭のように自然体ではギターを持てないでしょうねぇ……。