■イカルスの星c/wワンス・アゲイン / ザ・ラブ (東芝)
ジャズでは定番用語の「幻の名盤」、そのGS版のひとつが本日ご紹介のザ・ラブ、おそらくは唯一残されたシングル盤ではないでしょうか?
尤も私が、このグループを知ったのは後の「廃盤アワー」ブームの昭和60年でしたし、リアルタイムでバンドが活動していた昭和44年当時の事は何ひとつ知りません。当然ならが、この「イカルスの星」も全くヒットしていませんでした。
ただ、楽曲としては越路吹雪の人気演目のひとつとして、良く知られていると思います。多分、当時は競作扱いだったんでしょうか?
と、???ばかりのザ・ラブなんですが、メンバーは元アウトキャストの藤田浩一(g) をリーダーに、高宮雄次(vo)、木幡ヒロミ(org,key)、荒井ヒデオ(b)、島田史雄(ds) という5人組で、レコードを聴く限りでも、なかなかの実力派だと思います。
そして昭和44(1969)年3月に発売された、恐らくはデビュー曲であろう「イカルスの星」は、作詞:岩谷時子&作曲:内藤法美、さらに編曲が村井邦彦というだけで、これはもう名曲名演は決ったようなもんですが、実際、ザ・ラブの歌と演奏は素晴らしい限り♪♪~♪
まずイントロから絶妙の透明感で泣きまくるエレキギターのせつないフレーズ♪♪~♪ 強いビートでドライヴするエレキベースと力感溢れるドラムス、そしてこの時期ならではのチープなオルガンが最高の彩りとなった演奏パートに、グッと惹きつけられます。
また適度な湿りっ気が琴線に触れまくりという高宮雄次のボーカルは、多分コーラスも含めたダブルトラックだと思いますが、その意図的かもしれない微妙なズレが絶品のプロデュースじゃないでしょうか。もちろん曲メロと歌詞の解釈も上手いと思います。
う~ん、それにしても、この低音域重視の「東芝サウンド」は素晴らしいですねぇ~♪ それは間奏から後半へと展開されるクライマックスで、さらに感動的です。
それとB面の「ワンス・アゲイン」は藤田浩一が自作したサイケデリック系のハードロックな歌謡曲なんですが、唸るファズを効かせまくったエレキギターとブリブリのエレキベースがリードする演奏パートに強いコントラストで存在感をアピールする湿っぽいボーカル&コーラスが、これまた素晴らしい限り! せつない失恋と情けない執着を素直に表現した歌詞と歌い回しが、たまりません♪♪~♪ またパワフルなビートを叩き出すドラムスも良い感じ♪♪~♪
しかし、これほどの両面傑作名演を作り出しても、ザ・ラブはブレイクすることなく、消えて行きました……。
時代は既にGSブームが下火となり、いろんなグループが歌謡コーラス系へと転身していく中で、ザ・ラブは新進の気概とともに、後にパワーポップなんて称されるラズベリーズやバッドフィンガーあたりにも通じる洋楽指向を強めていたのは特筆されるべきだと思います。
ただ、それが当時は、カッコ良すぎたんでしょうかねぇ……。
今となっては、このシングル盤を残してくれたことに感謝する他はありません。
ちょっと前にはCD化もされていたようですから、機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。